【特集】
次世代機から占うゲームコントローラーの未来像
プラットフォームのプレゼンスを発揮し続けるカギはゲームコントローラーにあり!
2019年12月27日 00:00
2019年も終わりが近づき、2020年のホリデーシーズンの投入が予想される次世代コンソールゲーム機のリリースに向けて、いよいよカウントダウンに入ったと言える。1年なんてまだまだ先のことだと思われるかもしれないが、ファーストパーティと契約を結ぶ多くのゲームデベロッパーは、すでに開発キットを入手して本格的な開発に着手している。開発の流儀にもよるが、大型のローンチタイトルに至っては、そろそろゲームデザインの主要な部分の実装を終えて、テストプレイと改善のループを繰り返しているかもしれない。
本稿では、ゲームコントローラー特集の締めくくりとして、10月のソニー・インタラクティブエンタテインメントが行なったプレイステーション 5の発表と、11月にロンドンで行なったPhil Spencer氏へのインタビュー、を踏まえ、PS5と正式名称が発表されたばかりのXbox Series Xそれぞれに予想される次世代コントローラーを切り口に、次世代機の視点から未来のゲームコントローラー像を占ってみたい。
ゲームコントローラーの過去と現在
私事ながら、筆者はわりと“入力”にはこだわるタチである。どの職場においても、自分の手に馴染んだマイキーボート、マイマウスを持参するし、ノートPCもオーダー時にUS配列へのカスタマイズを怠らない。2014年の時点では、US配列のSurfaceタイプカバーが日本のオンラインストアで販売されていなかったため、カナダに立ち寄った際に購入したぐらいだ。
ゲーム開発においても、若手の頃からユーザーインターフェイス部分の設計を担当することが多く、直接担当しなくなってからも、画面レイアウト、メニュー階層、フォント、アイコンの視覚的デザインといった細部に至るまで多くの注文を出す、とかく厄介で面倒臭い開発者であったと自認している。
ところが、コンソールゲームの開発者にとって、どれだけ野心的に頑張っても手の届かない領域がある。それは入力デバイスであるゲームコントローラーそのもののデザインで、こればかりは手の出しようがない。ゲームデザインに合わせてハードウェアと一体で開発できるアーケードゲームだけが例外で、大型体感ゲームにまだまだ勢いがあった頃は、アーケードゲームの開発者を大変うらやましく思ったものだ。
中にはセガの「電脳戦機バーチャロン」や、コナミの「beatmania」、「Dance Dance Revolution」、ナムコの「太鼓の達人」といった、専用コントローラーを採用したゲームも存在するが、これらはどれもアーケードゲーム発のゲームだ。唯一、カプコンの「鉄騎」だけが例外で、コンソール発にして、専用コントローラーなくしてはプレイできないという、常識を打ち破った意欲作だった。
これら、ごく一部の例外はあったものの、コンソールゲーム機の世代が移り変わり、スマホの登場によってゲームプレイ環境が多様化しても、ハードウェアによって入出力の限界が規定されるという大原則は変わっていない。ソフトウェア単独でハードの制約を打ち破ることはできないから、次世代機のスペック、ことコントローラーの仕様については、毎度毎度大きな期待を寄せてしまう。
標準コントローラーに準拠したもの以外で、どのハードに対しても発売される体感を優先した特別な入力ペリフェラルは、ガンコントローラーとハンドルコントローラーくらいのものだろう。ジャンルが確立しており多数のタイトルの発売が想定されることから、コントローラーにもある程度の市場性が見込めるからだ。アーケードコントローラーにも根強いファンはいるが、一時の勢いは今はないように思う。PCゲーム特有のものとしては、左手用ゲーミングキーボードが生き残っているくらいだろうか。どのプラットフォームにおいても、あまりにも奇をてらったような特殊なコントローラーは影を潜めてしまった。
その一方で、ゲームコンソールの標準的なゲームコントローラーの躍進は大きい。PSシリーズのコントローラーは、DUALSHOCK 3以降はPCで動作させることが可能だ。また、Xboxシリーズのコントローラーなら、Xbox360以降、特に問題なくPCで動作する。スマホに対しても、BluetoothをサポートするDUALSHOCK 4やXbox Oneコントローラーなら、iOSでもAndroidでも使用することができるようになっている。
PCゲームの世界では、即応性や同時入力時の認識精度の観点から、キーボードとマウスによる保守的なゲームプレイを好むゲーマーが多い。とはいえ、それほど複雑で素早い入力が要求されないゲームの場合、コントローラーを好む人も少なくない。PCゲームの取材において、開発者がコントローラーで操作しながらプレゼンテーションする姿を目にすることも多くなった。ハンズオンイベントのプレイ環境に、コントローラーが用意されていることも珍しくない。
実際、コンソール標準のゲームコントローラーでの入力は、人にやさしい。これは、コンソールゲーム機が玩具の延長に始まり、若年層をカバーするという至上命題をクリアしながら、ゲームプレイの楽しさを主眼に改良が重ねられてきたからこその成果だと言える。本格的な3Dゲームが楽しめるようになったPS2やDCの頃までは、アナログスティックやトリガーボタンの追加が盛んに行われたものの、それ以降は現世代のコントローラーに至るまで、ボタンの総数はそう大きく変化していない。
冒頭で述べたように、標準ゲームコントローラーには、つくりによってはゲームデザイン上の制約となってしまったり、提供できるゲーム体験の限界を規定しかねないというデメリットがある。その反面、ボタンやスティックの配置や形状から、操作体系を直感的に理解しやすいという大きなメリットがある。また、ボタン総数が限られているがゆえに、同一ジャンルのゲームにおいて、スタンダードな操作が確立しやすいこともメリットとして挙げられるだろう。標準的な操作に準拠したゲームであれば、ゲーマー側は慣れによる恩恵を受けることになり、初めてプレイするゲームでも操作を習得するところから始める必要がなくなる。ゲームが持つ遊びの本質に触れるまでのハードルが下がるというわけだ。
任天堂ゲームウォッチを前身にファミリーコンピューターで採用されたパッド型ゲームコントローラーが登場してから、すでに36年が経過した。これまでのコンソールゲーム機では、出力側の表現力が豊かになるとともに、入力側も進化を続けてきた。ボタンの追加に始まり、アナログスティックや感圧ボタンの採用、ジャイロや加速度センサー、ポジション検出、無線通信、バッテリー、サブディスプレイといった性能を強化する改良はもとより、ボタンのカスタマイズやカラーバリエーションといった物理機構的な部分にも、常に新しい提案が行われている。
来年2020年の今頃には、いよいよ次世代のハードウェアが発売されていることだろう。次世代機の入力ペリフェラルに相応しい進化には、いったい何が考えられるだろうか。
現世代コントローラーとの互換性保持の功罪
こと次世代機というと、そのビジュアル性能やコンピューティングパワーに注目が集まるわけだが、今回の世代交代を占う材料はAPUを供給するAMDの動向に注目していれば、次第に明らかになっていくことだろう。CES2020が迫る今、あとは時間の問題だと言っていい。
比較的スペック志向の強いソニーとマイクロソフトのハードでは、APU以外にも妥協することなく最新のテクノロジーを詰め込んでくるのは間違いなさそうだが、コンソールゲーム機が提案する遊びの楽しさが必ずしもスペックだけに依存しないことは、過去のハードウェアが証明している。特に任天堂のハードウェアは伝統的にその傾向か大きく、現世代でもNintendo Switchで成功を収めている。
前述したように、ともすれば遊びの幅を規定してしまう重要な役割を担っているのが、標準ゲームコントローラーの存在だ。コントローラーの進化については、ソニー側が一足お先にボイスコイルモーターを採用した“ハプティック”技術を搭載してバイブレーションを進化させることを明らかにしている。対して、マイクロソフトの次世代コントローラーの方は、Xbox Elite ワイヤレスコントローラー シリーズ2を継承したものになることが、つい先ごろの発表で明らかになった(参考記事)。シェアボタンが新設され、トリガーには滑り止めが施されることなどがわかっているが、ほかにもまだ秘密が隠されているかもしれない。
現行コントローラーと次世代機との互換性については、ソニー側が「PS5システム全体をPS4との互換性を最大限維持するように務めている」としながらも、PS5でのDUALSHOCK 4の動作については特段に言及していない。PS5の情報公開が始まっている現段階に至っても、現行のDUALSHOCK 4の機能を拡張する背面ボタンアタッチメントを発売することから、互換性をとるにしても考慮しなければならない状態がひとつ増えたことになる。もっとも、追加される背面ボタンが既存ボタンの“複製”に留まるなら、ゲーム機本体側からまったく同じに見えるようにもできるだろうから、そう大きな影響はないのかもしれない。カスタマイズ性でリードするXbox Elite ワイヤレスコントローラー シリーズ2に水をあけられないように、DUALSHOCK 5に標準搭載される機能の一部を切り分けて、先出ししてきたのではないかとも考えられる。
他方のマイクロソフト側は、ロンドンで11月に行なわれたプライベートイベントX019のインタビューのなかで、「Xbox Elite ワイヤレスコントローラー シリーズ2はXbox Series Xで使い続けることができる」と明言していた。また、「Xbox Series X向けに開発している新しい革新的なコントローラーを使うこともできる」とも発言していたことから、現行のコントローラーと次世代コントローラーの間には、何らかの差はあるものの、大きく異なることはないと予想していたが、今回の発表はそれを裏付けた形となった。
ここ最近の両社の動きを見ていると、ひとつの世代のコンソール機に対して、ひとつの標準コントローラーというお約束が、さらに崩れていくように感じる。従来から本体の長いライフサイクルの途中で、新機能を追加したコントローラーが発売されるいうことは珍しくないが、標準コントローラーの置き換えを意図したもので、従来品は販売終了に向かうというのが常だった。ところが次世代機においては、本体は本体、コントローラーはコントローラー、それぞれ区別して適切な製品サイクルで多様なバリエーションのものが開発され、共通の“標準”機能は満たすものの、それぞれ独自の個性を持つものが複数併売されるのが当たり前になるのかもしれない。
互換性という観点でコントローラーと本体の関係性を整理すると、おそらくどちらの次世代機でも、現世代のゲームをプレイする限り、現世代のコントローラーを接続しても次世代コントローラーを接続しても、まったく同じように動作すると考えられる。その一方で、次世代機専用のゲームでは、接続しているコントローラーが現世代のものである限り、同一の“操作”は可能なものの同一の“動作”はしない、という結果になるのだろう。
特にPS5の場合は顕著で、DUALSHOCK 4を接続してPS5専用ゲームをプレイする場合、おそらく振動による感覚フィードバックは不十分ながら従来の振動で代替されるだろう。ただし、アダプティブトリガーの方は代替する機能が存在しないから、アダプティブトリガー固有の反応は起きない。これが多くのPS5専用ゲームにおいて想定されるDUALSHOCK 4の振る舞いだ。
例示されていた“弓をひく感覚”のように、あくまで臨場感を演出するための活用法であれば、たとえアダプティブトリガーなくても、トリガーを引く量で弓を引いている強さを感覚的に捉える手段が残されていることから、ゲームプレイに重大な影響を及ぼす問題とまでは言えず、その制約は許容できるだろう。「100%のゲーム体験をしたければDUALSHOCK 5を接続してください」で済む話だ。
ところが、例えばフィッシングゲームで、ヒットした魚の動きに応じてかかる釣り竿のテンションの強弱を感覚フィードバックから得て、竿を引き上げる動作タイミングや強弱を工夫して駆け引きを楽しむゲームの場合、アダプティブトリガーが機能しないとゲーム性が大きく損なわれてしまうことになる。バイブレーションの強弱や画面表示でカバーできなくもないだろうが、まったく異なったゲーム体験になってしまうことを許容できるか判断が難しいところだ。
こうした場合に、機能しないまま許容する、他の表現で代替する、警告を出してゲーム実行を抑止するといった対処法の選択は、一定のガイドラインの範囲内でゲームパブリッシャーに委ねられることになると思われる。受け取り手であるゲーマーの感覚との兼ね合いの部分でもあるため、ゲームによっては期せずしてゲーム体験が大きく損なわれる可能性がつきまとう。DUALSHOCK 4を使用する限り、こうした懸念は払拭できないということを、ゲーマー側でも留意しておく必要があるだろう。
Xbox Series Xの新コントローラーを使用しないで従来のXbox Oneコントローラーを使用する場合に、どんな問題が生じるのかまだわからないが、Xbox Elite ワイヤレスコントローラー シリーズ2を継承したものであるため、新設されたシェアボタンがない以外は実用上ほぼ問題ないと思われる。
周辺機器にいたるまで世代を超えた互換性が維持されることは、ゲーマーのお財布にやさしい歓迎すべき事項ではあるが、歴史的にコンソールゲーム環境は機種依存性が低く、PCやスマホとは比較にならないほど画一的であるからこそ得られていたメリットも大きい。もっとも近年では当初からマルチプラットフォーム前提のゲームも多く、開発者側も機種依存性を織り込んだうえで開発することに慣れてきているため、さほど大きな問題にならないかもしれない。
なお、現行のPS4にDUALSHOCK 5を接続する場合は、PS4側にDUALSHOCK 5の新機能を制御するためのドライバがないため、現状のPS4システムソフトウェアのままでは、まったく認識されないかDUALSHOCK 4互換のコントローラとして認識されるかのどちらかだと考えられる。PS4システムアップデートによって対応したとしても、アダプティブトリガーは機能せず、バイブレーションの挙動もDUALSHOCK 4とは異なるものになる可能性もある。仮にPS4のシステム側の対応でアダプティブトリガーを制御可能にしたとしても、ゲーム側で対応しない限りアダプティブトリガーは動作しない。ゲームデザインを見直してまで旧作に対してアップデートを行なうとは考えにくいから、PS4ではそもそもDUALSHOCK 5は接続できないか、接続できてもアダプティブトリガーは動作しないものと考えていいだろう。
Xbox OneにXbox Series Xのコントローラーを接続した場合は、おそらくそのまま問題なく動作するだろう。ただしシェアボタンについては、Xbox One側のシステムが対応しない限り動作しないと考えられる。こちらも現行機にまで次世代機のシェアボタンを活用した機能を提供するかどうかはマイクロソフトの判断次第だ。
次世代のコントローラーの未来像と期待役割
確定情報がない今、あくまで妄想の域を出ないものの、DUALSHOCK 5にハプティクス以外の進化であり得るシナリオは、タッチパッド部分のディスプレイ化だろう。事実、コントローラーにタッチディスプレイを搭載する試みは過去にも行なわれている。任天堂のWii Uは、大型の6.2インチFWVGA(854×480)タッチスクリーンを搭載して我々を驚かせてくれた。現行のNintendo Switchも、広義に捉えればタッチスクリーン搭載型のコントローラーと言えなくもない。
ソニーの据え置き機では、コントローラーに対してディスプレイを搭載した実績は今までにないが、携帯機ではPS Vitaの実績がある。また、多少毛色は異なるが、PS時代のPocketStationと、その対抗馬だったセガDCのビジュアルメモリの存在も忘れてはならない。小型で気軽に持ち出せる、相互にデータ通信可能といったコンセプトを次世代のコントローラーに蘇らせるとするならば、マイクを搭載したうえで、コントローラーのタッチスクリーン部分を通信、入出力制御部、バッテリーともども分離できるようなものが考えられる。単独動作可能にすれば、小型のタッチスクリーン付リモコン、スマホ子機、スマートスピーカーとの連携と活用できるシーンが広がる。
相対的にコンソールゲーム機のプレゼンスが低下するなか、ゲームプレイ中のみならず、日常においても常にゲーマーの側にいて、何かの役に立ち、ふと気になる存在であり続けることは重要だ。コントローラーやゲーム機そのものを持ち歩くことはできなくても、スタイリッシュに演出された小型のタッチスクリーンなら、ライトなゲーマーにも訴求するだろう。
その他のソニー製品でのタッチスクリーン活用状況はどうか。スマホのXperiaシリースは当然のこととして、コンパクトデジカメにおいては、2012年のサイバーショットDSC-TX66から静電式のタッチスクリーンが搭載されており、レンズ交換式の高級デジカメでもα5100やα6500あたりからタッチスクリーンが採用されている。
デジカメのスクリーンの役割は限定的であることから、ゲームコントローラーを進化させるようなヒントは見受けられないが、チルトやバリアングルといったスクリーンを可動させるギミックは、ゲームコントローラーにも応用できそうだ。
具体的には、タッチスクリーン部分を引き出したり、ぐるっと回転させてコントローラー背面に反転できるようにする。反転状態でPS Vitaの背面タッチパッドのように操作可能にしたり、反対方向に回転させて任意の位置に立ち上げられるようにすると、ディスプレイとしての見やすさも、タッチパッドとしての操作性も向上しそうだ。前述した、タッチスクリーンを着脱式にするアイディアと両立することも可能なように思える。
現行のDUALSHOCK 4のタッチパッドは、アナログスティックとの配置の兼ね合いもあって、お世辞にも操作しやすい場所にあるとは言えない。その結果として、ゲームに活用しにくい操作部になってしまっていると言えるだろう。可動ギミックを採用すれば、この問題が解決するかもしれない。
他社製品に目を移すと、ノートPCでは、ASUSのZenBookに、2019年夏モデルからScreenPad 2.0と銘打ったタッチスクリーンが搭載されている。より大きなディスプレイを備えるノートPCにタッチスクリーンというと、なにやら奇妙に感じるかもしれないが、サブディスプレイとしてウィンドウを表示する以外にも、手書き入力やアプリランチャー、アプリ内のツールBOXとして動作させることができる。
これらのタッチスクリーンの活用方法は、ゲームにもそっくり当てはめることができるだろう。ゲームのデータボリュームとビジュアル表現が豊かになればなるほど、伝統的なカーソル選択式メニューUIで選択を行なうのは厳しくなる。タッチスクリーンであれば、フラットにより多くの選択肢を並べても、メニュー項目へのアクセスは容易になることから、RPGやストラテジーの操作性が向上する期待が持てる。現状、PS4のスマホ連携でできるセカンドスクリーンの機能をコントローラーに標準搭載してしまおうという発想だ。
Xbox Series Xの方は、現行のXbox Elite ワイヤレスコントローラー シリーズ2のコンセプトがハードコアゲーマーに受け入れられていることから、非常に似通ったデザインに仕上げてきている。全体感としては、部品点数を削減してコストダウンしたXbox Elite ワイヤレスコントローラー シリーズ2の普及版といった印象だ。
シェアボタンの存在も目を引くが、その一方で従来Xboxロゴで存在感を発揮していたガイドボタンが存続するのかは、ちょっと分からない。というのもサイト上のイメージもトレーラームービーの方も、どちらもレンダリングしたGCで実物ではないからだ。Xbox Series XコントローラーのXboxロゴの立体感は希薄で、単にロゴをプリントしただけのようにも見える。
同梱されるコントローラーは普及版でも、Xbox Series Xでは現行機同様、コントローラーの複数ライン展開が予想される。豊富なカスタマイズ性を有したXbox Series X版のXbox Elite ワイヤレスコントローラーが投入されるとみていいだろう。その際、今以上に機構的なカスタマイズ性を推し進め、現行のものと差別化されるかもしれない。右スティックやA、B、X、Y、L、Rボタン、トリガー以外にも、グリップ交換やカバーといった部分まで含めると、まだまだカスタマイズの余地はある。
XboxブランドのコントローラーはPC用ゲームコントローラーとしても受け入れられており、コントローラー単体の水平展開という意味では、ソニーのDUALSHOCKに先行していると言える。この方向性で進化させた上位コントローラーに仕上げたものをラインナップに加える可能性は高いと思われる。
Xbox Oneコントローラーがプラットフォームを超えて、ごく標準的なコントローラーとして普及した実績と、Xbox Series Xの標準コントローラーが妥当なものになったことを踏まえると、“新しい革新的なコントローラー”のラインナップに、かつて90年代に存在したPC向けペリフェラルブランドSidewinderにあったような奇抜なデザインのものを加えてくる可能性は限りなく低いだろうが、ここで毛色の違う他の展開の可能性についても考えてみたい。
そのヒントになるのが、10月に発表されたSurface Duoだ。トレーラーのSurface Duoでゲームをプレイするシーンをヒントに妄想してみると、物理ボタンを廃して全画面タッチ操作可能なシングルまたはデュアルスクリーンのコントローラーが浮かび上がってくる。外観はSurface Duoそのままに、内部のSoCをタッチスクリーンの動作に必要な最低限度のものにリプレイスしたイメージだ。
先に想定したPS5の着脱式タッチスクリーンとは、結果的にスクリーンサイズ以外大きな差はないが、手頃な価格でタッチスクリーンを主役に据え自由にボタン配置可能としたソフトコントローラーがラインナップに加われば、そのインパクトは絶大だ。
あるいは、これらふたつの方向性のアイディアを組み合わせて考えると、さらに進んだ究極のカスタマイズ性を持ったコントローラーが誕生するかもしれない。多様な追加改造パーツを揃えた上位コントローラーと、ユーザーが別途用意した任意のスマホと連携させれば、大型のサブディスプレイを搭載した拡張コントローラーとすることができそうだ。外観は、大型アンテナのないドローンのプロポのようなイメージで、シミュレーターやメカニカルな操作に相応しい。
現行のPS4やXbox Oneでもスマホとの連携はできるものの、まだまだ積極的に有効活用されていないように思う。Xbox Series Xには、メカやSFもので、かつての「鉄騎」を彷彿とさせるマニアックな操作のゲームの登場に期待したい。
ゲームセンターのジョイスティック、そして携帯ゲームのパッド操作を源流に持つゲームコントローラー最大の功績は、その“手触り”の良さでゲーム体験への優れたフロントエンドであり続けたことだ。
ハードウェアが、コンソール機からPCやスマートフォンと多様化しても、それぞれの標準入力であるキーボード&マウス、タッチスクリーンでは真似のできない快適な入力操作を、ゲームコントローラーなら提供してくれる。コンソール機以外のプレイ環境でも次々とゲームコントローラーがサポートされていることから、そのニーズの高さとゲームコントローラーの実力のほどが証明されていると言えるだろう。
2020年には、5GとWi-Fi 6ことIEEE 802.11axが急速に普及し、いよいよクラウドゲーミングが現実的になる期待がある。そうなれば、モバイルデバイスのみならず、セットトップやテレビ単体ですら本格的なゲームプレイ環境になるかもしれない。ハードを選ばない互換性を獲得したコントローラーが、ゲーマーの手の中の“定位置”に収まり続け、今と変わらないかそれ以上のプレゼンスを発揮できれば、マルチゲーミング環境から次世代コンソールゲーム機への導線として重要な役割を果たすことになるはずだ。