【特別企画】
PS5コントローラーの新ハプティックで広がる次世代のゲーム体験
追加情報のキーワードからPS5のポテンシャルを改めて考察
2019年10月9日 13:57
既報の通り、ついにプレイステーション 5(以下、PS5)が発表された。発売は2020年の年末商戦ということで、大方の予想、そして筆者の予想の通りでもある。加えて、ハードウェア概要も公表されているが、そのほとんどは、すでに4月にマーク・サーニー氏が明らかにしている内容を超えるものではない。
その一方で、新ゲームコントローラー(以下、仮に「DS5」)について、ハプティックが搭載されることが発表されている。ハプティックの内容は異なるものの、筆者が9月に予想した機能が、やや的中した格好だ。そこで本稿では、今般の発表を踏まえて、筆者の視点から「PS5」の新機能を活用して、どんな新しいゲーム体験が提供できそうか、改めて考察を加えてみたい。
今回の発表内容から、新たなキーワードを列挙すると、“カスタム”SSD、3Dオーディオ処理“専用”ユニット、最大“8K”解像度出力、“ハプティック”技術搭載の4点ということになるだろうか。このうち、Ultra HD Blu-ray対応は8K/60Hz記録対応を意味すると考えられるため、今回も4K/8Kコンテンツの録画再生機能で、廉価なUHDレコーダーとしてゲームソフトの充実を待たずしてハード単体の魅力でも、広く一般に訴求しそうだ。
カスタムSSDについては、あえて“カスタム”と称していることから、既存のSSDやmSSDとは何かが違うことだけはわかる。あくまで推測の域を出ないが、9月時点の予想で筆者が言及したように、大容量化を目的にしたHDDとSSDを組み合わせたハイブリッドSSDではあるものの、SSD部分に次世代のMRAMやReRAMを採用した“カスタム”SSDで超高速アクセスを実現しているのではないかと考えられる。ハイブリッドであれば、SSD部分の容量は少なくて済むことから大容量とコスト抑制が両立できるだろう。
3Dオーディオ処理“専用”ユニットというのは、既報のようでいて、まったく新しいキーワードだ。4月にマーク・サーニー氏が述べていたのは、3Dオーディオの実現に、RDNA2で搭載されるレイトレーシングコアを活用して、物理的に正しい音源からの反射と拡散、減衰をシミュレートして、3Dグラフィックスにマッチしたリアルな音場を創り出すというものだったはずだ。
ところが、今回の発表では“専用”と特筆されている。これは、SIEがAMDに対して要求したAPUのカスタム内容が音にもこだわったものである可能性がある。具体的には、RTコア搭載するチップレットをふたつ搭載して、ひとつをRTに、もうひとつを3Dサウンドに使ったり、例えば、ふたつのRTコアを、局所的な反射とGIライティングといった用途別に処理を分散させてグラフィックスパフォーマンスを稼ぐ、といった使い方ができるものなのかもしれない。
そして、今回の発表内容で最大の目玉は、コントローラーに対して初めて具体的に言及されたことだ。「DS5」には“ハプティック”技術搭載が搭載される。ハプティックとは、感覚フィードバックのことで、その意味するところは、かなり広範囲だ。例年お伝えしているSIGGRAPHレポートでも、最先端テクノロジのブースで、さまざまな感覚を刺激する新技術が披露されている。
今回「DS5」に採用されるハプティックはふたつで、ひとつ目は従来のバイブレーションを進化させるものだ。ボイスコイルモーターを採用することによって、周波数と強弱をゲーム側から柔軟に変化させられるようになる。
Wiredの記事によると、SIEJ開発のデモにおいて、キャラクターを砂、沼、氷といった異なる地表面の上を走行させたとき、それぞれの地表面のイメージに相応しい感覚が得られたという。このうち高周波の氷は、木工の電動ノコギリや電動グラインダーからの振動を思い浮かべると、デモを触らなくともなんとなくイメージできる。小刻みな一定の速い振動を手に受けていると、手に持ったものがまるでちょっと宙に浮いているかのように軽く感じられる。視覚的なフィードバックを受けながらだと、氷で滑ってキャクターの動作おぼつかない様子と、プレイヤー自身の操作がおぼつかない様子がシンクロして感覚が強調されるのだろう。
砂の場合はキャラクターのフットプリントに同期して、低周波の振動を短い間だけ起きるようにしてやれば、だいたいちょうどいいフィードバックになるだろう。既存の「DS4」までに内臓されている振り子式振動モーターで実現している内容とそう大きな違いはなさそうだ。沼に関しては、ちょっと想像がつかないが、比較的低周波で強く始まった振動が、次第に弱く長く余韻が続くようなものかもしれない。
このほか、実際の応用事例として、次世代「グランツーリスモSPORT」のデモが公開され、路面状況に応じたフィードバックが得られたという。車体をコース脇の縁石をまたぐようにして、コースの内と外に左右の車輪を置いて走行すると、異なる地面の感覚が同時に感じされるというから驚きだ。こういった芸当は従来のモーターによる一定周期の振動では得られない。
ハプティックのうち、もうひとつの機能であるアダブティブトリガーは、今までの「DS」そしてゲームコンソールにない完全に新しいものだ。L2とR2トリガーに搭載されるこの機能のおかげで、弓を引き絞っていくほど強くなる弦の抵抗力を感じさせたり、マシンガンやショットガンといった銃の種類に応じて引き金を引く重さを変化させたりできるという。
これらの例以外にも、アダブティブトリガーはさまざまな活用が考えられる。例えば筆者なら、キャラクターのコンディションや、武器の使用経験、レベル成長に関連づけて、経験値蓄積型の要素として活用するかもしれない。
あるいは、プレーヤーが半分くらいトリガーを引いた状態で均衡を保つように常に一定の軽い反発をかけておき、半分トリガーを引いた状態でゲームプレイしなければ最大の能力を発揮できないルールにして、ジャンプや旋回といったXボタンやLスティックにアサインする操作を行う際にトリガーの反発力を強めると、手全体でグッと力を入れさせて、プレイヤー自身が“踏ん張っている”感覚を強調できるような気がする。逆に、あえてトリガーの反発を弱めると、思わず力が入ってしまうと失敗する軟弱な地盤を表現できそうな気がする。
「PS5」の新しい機能、特に「DS5」のハプティクス機能には、無限の可能性がある。正直、従来のバイブレーションには芸がないというか、若干の古さと単調さが否めなかった。アップデートされたとしても、ハードウェアの機能としては依然としてシンプルなものだが、人間の騙されやすい感覚との合わせ技であるハプティクスは奥が深い。
アクションやシューターにとどまらず、RPGに到るまで、この新しいハプティクスの活用範囲は広そうだ。最大限ゲームデザインに取り込んだゲームの登場を心待ちにしたい。