【号外】 Report / manga:ジョン・カミナリ logo design:フランチェスコ・アッカッターティス |
電遊。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。道。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。 |
今年も4日間に渡り、日本の最大ゲームイベント「東京ゲームショー」が開催された。日本のゲームメーカーが新作を出展し、商戦となるこれからのクリスマスシーズンに向けて、目玉タイトルの魅力をステージイベントでアピールしていた。過去の来場者数最高記録を更新した「東京ゲームショー」だったが、それでも欧州からのプレス関係者が少なくなった印象を抱かずにはいられなかった。
スクウェア・エニックスのように過去と比べて意外と規模が小さくなったブースもあれば、ソーシャルゲームの大手ゲームメーカーであるグリーのブースが巨大化しつつあるという現象も目立った。ゲーム市場がスマートフォンへと傾きつつある証拠でもあると言えるだろう。とはいえ、もちろん家庭用ゲーム機や携帯ゲーム用の優れた新作も多く出展されていたので、各ブースで体験してきた、僕にとっての1番面白いと思ったタイトルをピックアップして、感想をお届けしたいと思う。レッツスタート!
【お知らせ】諸般の事情により、2012年10月の電遊道はお休みさせていただきます。次回の電遊道は11月中旬の掲載となります。何卒ご了承ください。
毎年「東京ゲームショー」の舞台となる幕張メッセ。僕の取材はもちろん巨大なポスターの写真撮影から始まったのだ | 「GAMEで笑顔がつながっていく」。今年のスローガンはとても明るいメッセージだったと思う。これからもゲームが、友達を見つけるようなきっかけになることを願っている |
国籍:イタリア 年齢:36歳 職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家 趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ 主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役) ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記 Twitter:https://twitter.com/John_Kaminari Facebook:http://www.facebook.com/johnkaminari | ||
イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること |
セガの目玉タイトル「龍が如く5 夢、叶えし者」 |
「龍が如く5 夢、叶えし者」のコーナーでは、魅力的なキャバ嬢達がジャーナリスト達の目を独り占めにしていた |
■ セガブース
出展タイトルは少ない印象だったが、大きなサイズで目立っていたセガブースでは、今年の12月に発売されるプレイステーション 3用「龍が如く5 夢、叶えし者」が目玉タイトルとなっていた。僕も真っ先にこの新作を体験するために行列に並んだ。クローズドシアターで本作のストーリーやゲームプレイの特徴を紹介した動画を感動の巨大なスクリーンで観賞した後、試遊台が設置されたホールへと案内された。
体験版は大ボリュームを誇っており、まず、ストーリーパートか自由探索パートを選択するところからスタート。僕は桐生一馬が主人公の福岡を舞台にした探索パートを選ぶことにした。日本を代表する5つの大都市を取り入れることにより舞台がスケールアップし、日本全国を歩き回っているかのような感覚を覚えてしまう。それぞれの都市の文化や生活スタイルも住人の台詞や行動によって楽しめるという面もあり、日本人はもちろんのこと、外国人プレーヤーも本作を通じて東京以外の大都市の魅力を実感することになるのではないだろうか。
福岡の中を歩き回っていると、まず、ゲームエンジンが進化し、そのおかげで表現力が増したということに気がついた。自社製作の新ゲームエンジンだが、その活用で都市の様子は前作以上にダイナミックになり、住人達の動きなどもさらにリアルになったと感じた。臨場感が増し、本物の街の中を散策しているかのような錯覚に陥った。
ローディング時間もさらに短縮されたのではないだろうか。歩いていると、シームレスにヤクザ達との格闘パートが始まる。このパートの操作性は圧倒的に向上したと思った。技を繋げやすくなり、たとえアクションゲームのエキスパートでなくても、気持ちいい爽快感を味わいながら敵をさくっと倒していくことができるようになったと思う。非常に操作が快適になったし、画面の桐生一馬がプレーヤーのあらゆるインプットに瞬時に応えてくれるような、さらに頼もしい存在になった。
強いて言えば、1つだけ気になったことがある。それは、自動車が多く通り過ぎる福岡ではフレームレートが少し不安定な場面にも出くわした。建造物が近づくにつれ、テクスチャーのディテールが唐突に切り替わるところも少し気になった。発売日まではまだ時間があるので、きっと開発チームはこの課題を見事にフィックスするだろう。
各主人公をメインにする「アナザードラマ」も、本作の大きな新要素で、特に遥の厳しい芸能界の中での“アイドルサクセス物語”がプレイしたくなった。ボリュームで言えば、これまでの作品で見られたサブストーリーを遥かに超えるようなレベルに達していると思うので、是非、皆さんにも遊んで頂きたい。
他のブースよりもスペースを確保し開放感があった |
■ レベルファイブブース
前年と同様に、レベルファイブの巨大なブースは開放感で際立っていた。試遊台の数も多かったし、体験スペースのレイアウトも非常に良くできていたので、行列が長い場合でも比較的にスムーズに進むようになっていた。そのおかげで、3つのタイトルを遊ぶことができた。その感想を簡潔に届けたいと思う。
まずニンテンドー3DS用「レイトン教授と超文明Aの遺産」についてだ。前作と同じく、キャラクター達がポリゴンで表現されており、豊かなアニメーションがそれぞれのキャラクターに独特なコミカルさを吹き込んでいる。ゲームの流れはこれまでのシリーズを受け継いでおり、安定したお決まりの「レイトン教授」ではあるが、その反面、新鮮さもあまり感じられなかった。
やっぱり、これからもシリーズが続いていくのであれば、特にゲーム性の面でもっと大胆な進化を施すべきだと思う。そして、操作性に関しても疑問は残っている。DSの作品ではタッチパネルがメイン画面になっており、直接ターゲットに触ることができるようになっていたが、3DSになってからは、下画面が上画面の操作パネルとして使用されるようになったので、直感的さ、快適さの面ではDS版よりも後退したと言えるだろう。
「逆転裁判」シリーズの大ファンである僕は、3DS用「レイトン教授VS逆転裁判」を試さずにはいられなかった。体験版では「レイトン教授パート」か「逆転裁判パート」を選択できるようになっていた。僕は迷わず、後者を選ぶことにした。
まず、綺麗なポリゴングラフィックスに魅了された。昔からの保守的なファンは、このポリゴン化に違和感を覚えたかもしれないが、僕は逆に大きな魅力に感じた。ポリゴンになったとはいえ、“アニメ感”が受け継がれており、非常にマッチしていると思う。
このパートのゲーム性はメインシリーズとほぼ同様のものになっているので、「レイトン教授」に興味を持っていない人でも、このパートの為にだけでも本作をプレイする価値があると思う。しかし製品版では、2人の主人公が独立した感覚で登場するのではなく、お互い密接に干渉し合いながら、協力するという場面が多く用意されていることに対して期待している。
最後にプレイしたソフトは3DS「ファンタジーライフ」だ。RPGというジャンルに定評のある豪華スタッフによる新感覚RPG。初公開された頃と違い、ハードがDSから3DSへと変わり、そしてグラフィックスもドットからポリゴンの世界へと進化した。釣り人、料理人など多種多様なライフを楽しむことができるゲームになっているが、僕は、戦闘パートの流れを体験したかったので、体験版で用意された職業から王国兵士を選んだ。
まず、レベルファイブならではの、ポリゴングラフィックスのクオリティに圧倒された。やっぱり、レベルファイブが開発を手がけている8作目や9作目の「ドラゴンクエスト」作品との共通点が多いのではないだろうか。RPGファンが安心するような、正真正銘の王道ファンタジーになっていると思う。
戦闘はリアルタイムで展開しており、アクションRPG的な要素が濃い。さくさく敵を倒していく、とてもテンポのいい戦闘になっていると感じた。シングルプレイも十分面白そうだが、ネットワークプレイでのプレーヤー達のライフがどのようにお互い影響していくのかという部分が最も重要だと思うので、続報を楽しみにしている。
「ファンタジーライフ」は以前から楽しみにしていた新作だ。今回のTGSで体験できて、嬉しかった | もちろん、欧米でも大人気の「イナズマイレブン」シリーズの最新作も出展されていた |
■ KONAMIブース
KONAMIといえば、まず「METAL GEAR」が思い浮かぶだろう。今年のKONAMIは、プラチナゲームズ開発のPS3用「METAL GEAR RISING REVENGEANCE」が、派手にライトアップされたコーナーで常時、来場者の注目を引きつけていた。E3バージョンも体験可能だったが、操作方法が微妙に変わったTGS2012の専用バージョンも用意されていた。行列はより長かったが、僕はもちろん、新しいバージョンで遊ぶことにした。
スピンオフ作品ではあるが、メインシリーズの主な特徴や演出などは共通しているので、昔からのファンたけでなく、アクションゲームというジャンルに興味を持つプレーヤーも本作に大きな魅力を感じるのではないだろうか。
本作では雷電が主人公なので、体験版の最初に選択できるチュートリアルで、あっという間に、新鮮味あふれる操作方法になじむことができた。戦闘での見所は「斬撃モード」であり、そのモードに移ると、アクションがスローモーションになり、雷電はブレードで思う存分ターゲットになっている敵を切り刻んでいくことになる。アナログスティックで斬る方向や角度を細かく調節し、ターゲットの特定の部位を狙うことができる。非常に爽快感を味わえる戦闘パートになっていると思う。
グラフィックスは、解像度も、モデリングも高いレベルに達しているし、雷電を始めとしたキャラクター達のリアルな表情の変化や、躍動感あふれるアニメーションに圧倒された。既にアクションゲームという分野で有名なKONAMIが、アクションゲームのスペシャリストであるプラチナゲームズとタッグを組んだことで、最高に面白いスピンオフ作品が誕生したのではないかと思う。
「METAL GEAR RISING REVENGEANCE」の体験版は、ボリューム満点で本作の魅力がよく伝わった | パンフレットを配っていたKONAMIのコンパニオン達もとても魅力的だった |
■ カプコンブース
カプコンブースは巨大だっただけでなく、建築/芸術の面でも、とても綺麗な作りをしていた。例えば、3DS用「モンスターハンター4」のコーナーでは、ゲームの世界観にマッチしたエキゾチックな雰囲気が漂っていた。モンスターやマスコットの大きな像も設置されていたし、入り口ではゲームキャラクターの衣装を着たモデル達が来場者を迎えていた。見た目より、もちろんゲームが面白いという点のほうが重要だが、こういった、臨場感あふれるスペースの中で好きなソフトを体験できるという点では、カプコンは他社のブースを凌駕していたと思う。
カプコンブースで真っ先に試したのは3DS用「逆転裁判5」だった。1作目からの大ファンだし、やっぱり、3DSで初めての「逆転裁判」が非常に気になっていた。先日公開されたばかりだが、既にネット上で、キャラクター達のポリゴン化に反対しているという、コメントが相次いでいるようだ。
僕は正直に言って、ポリゴンになっても、成歩堂龍一を始めとしたキャラクター達は本来の魅力をそのまま持っていると思った。ポリゴンだが、意外とイラスト的な雰囲気を醸し出している。よく観察すれば、口の動きや身振りなどはアニメのように強調されており、ポリゴンでもアニメキャラクターかのような振る舞いを見せているという点は非常に新鮮だ。もちろん主人公だけでなく、証人や被告人たちのアニメーションも丁寧に作り込まれているし、ポリゴンになったとしても、皆が愛している「逆転裁判」であることに変わりはない。
ゲーム性でいうと、体験版の後半に出てくる、証人の気持ちを分析するパートがとても面白いと思った。被告人が事故で記憶を失っており、相手の証言の内容と、その時の表情の変化を比較することで矛盾を見つけていくという発想は非常に面白いと思った。今回の体験版では少ししか体験できなかったが、この新システムの奥深さにとても期待している。
「モンスターハンター4」は、今年のTGSの最も長い行列を記録した。僕はビジネスデイの2日目にTGSが開場した途端に、カプコンブースへ走って向かい、10時の整理券をすぐもらうことができた。一般日の9月22日、23日は比較できないほど混雑していたので、遊べずに帰ってしまった来場者も多くいたようだ。いくら体験スペースを拡大させようと、それが足りないぐらい「モンハン」の人気ぶりはすごいものなのだと、改めて実感した。
「モンスターハンター4」の感想だが、まずグラフィックスは雑誌で見ていたスクリーンショットよりも、ずっと美麗だということに驚いた。携帯ゲーム機とは思えないほどのディテールと安定したフレームレートにびっくりした。3DS LLでの体験だったが、やはり画面が大きいと、繰り広げられるアクションがさらに見やすくなり、ゲーム性もよくなると言えるだろう。裸眼立体視については賛否両論だが、3Dモードだと臨場感が増し、大きなモンスターと対峙している時の緊張感が倍増する。
本作には初めて段差の概念が導入された。段差からジャンプし、モンスターに真上から攻撃を仕掛けることができるようになっているのだ。そして、PS3/Xbox 360用「ドラゴンズドグマ」でも見られたように、大きなモンスターの背中に飛び移り、捕まったまま戦闘を続けることができる。この新アクションの導入で、4人のプレーヤーがより深く協力することができ、巨大なモンスターを討伐した瞬間の達成感はさらに格別なものになることは間違いないだろう。
「逆転裁判5」のコーナーは、所々に崩壊した箇所がある裁判所になっており、体験版の中の爆破事件を再現していた。こういう丁寧に作りこまれたスペースの中で遊ぶと、臨場感が増し、来場者達はきっと喜んだと思う | 成歩堂龍一の原寸大フィギュアが、とても存在感に満ち溢れていた |
巨大なスペースを誇っていたSCEJのブースでは、PS VitaやPS3のあらゆる新作を体験できるようになっていた。タイトルによって、試遊台が1台だけというケースもあり、待ち時間が非常に長くなっていた |
■ ソニー・コンピュータエンタテインメントブース
SCEJのブースも大きなスペースを占めていた。ジャパンスタジオ制作の作品も出展されていたし、他社の目玉ソフトももちろん体験可能になっていた。SCEJタイトルの中で特に僕の注目を引いたのは、日本が世界に誇る、数々のヒット作品を生み出してきたゲームクリエーター、稲船敬治氏によるPS Vita用「ソウル・サクリファイス」だった。
総合的に考えると、本作は「モンスターハンター」と同じ部類に入るのではないだろうか。とはいえ、本作が醸し出している雰囲気や世界観は大きく違っている。ゲームに出てくるモンスターはヨーロッパの神話からインスピレーションを受けており、特に海外ではそういった世界観が高い注目を浴びると思う。
僕もPS Vitaを手に取り、フィールドに突入したその瞬間、戦場の放っていた幻想的で異様な雰囲気に心を奪われた。あまりにも新鮮で、最初は戸惑いも感じた。しかし次の瞬間、魔法を積極的に使い始め、他のプレーヤーと力を合わせ、空を飛ぶ巨大な魔物を攻撃しまくった。なんていう爽快感だろう! これこそが、PS Vitaユーザーがずっと待ち望んでいたアクションRPGに違いないと確信した。
プレーヤーは魔法使いを操ることになるのだが、これまでのRPGと違い、本作の魔法使いはとてもダークな存在になっている。元々魔物も人間であり、倒した時に魔物が人間の姿に戻る。そこで、プレーヤーは「生贄にするか」、それとも、「救済するか」という重要な選択枝に迫られる。今回の体験版はマルチプレイだったので、4人で魔物を倒したわけだが、「救済」を選んだのは僕だけだったので、魔物は「生贄」にされることになった。
昨今のゲームでは、バーチャル的とはいえ、正々堂々と兵士やモンスターを殺している傾向になっているが、こんなに“生き物を犠牲する”ということの因果関係を深く考えさせられるのは、ゲーム史上で初めてだったのではないかと思う。芸術面やゲーム性でも優れたゲームではあるが、メンタル部分でも非常にプレーヤーに大切なことを教えてくれる素晴らしい作品だったと強く感じた。
残念ながら試遊台が用意されず、動画を見るだけになったが、SCEのジャパンスタジオ制作による「パペッティア」も、とても注目度の高いゲームだと思う。「リトルビッグプラネット」的なグラフィックスを持っていると同時に、日本人だけが考えられるような世界観やゲーム性を提供する“プラットフォームゲーム”になっている。
人形に変えられた少年「クウタロウ」が、魔法のハサミ「カリバス」を使って、地球に戻るための壮大な冒険をすることになる。どこか、イタリアの有名な童話、「ピノキオ」を連想させるような設定だが、それと同時に日本人スタッフならではの新鮮な場面やどこか憎めないような敵たちも数多く登場していく。動画を見るだけで、幸福感を得られるような素敵な作品だと直感した。
体験コーナーに入場する前に、どのゲームが体験できるかと確認できる看板が設置されていた。とてもわかりやすいレイアウトだったと思う | SCEJブースの目玉タイトルは、言うまでもなく「ソウル・サクリファイス」だった。そのおかげでPS Vitaの注目度がこれから上昇していくだろう |
「鉄拳タッグトーナメント2 Wii U Edition」の試遊台は意外と少なかった。そのせいで待ち時間が延びる一方だった |
■ バンダイナムコゲームスブース
出展作品が多いバンダイナムコゲームスだったが、その中からピックアップしたいのは、次の2つの作品だ。Wii U用ソフト「鉄拳タッグトーナメント2 Wii U Edition」と、PS3用ソフト「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」だ。Wii U GamePadを体験できるという付加価値もあり、「鉄拳タッグトーナメント2 Wii U Edition」は4日間に渡り、長い行列を記録した。海外から来たジャーナリスト達の姿も特に目立ったコーナーだった。
まず、Wiiで実現できなかったHDグラフィックスの美麗さに感動した。これで、ライバルゲーム機と同等のクオリティを持つ作品が制作できるようになる。しかも、任天堂ならではのプラスアルファ要素も追加できるだろう。
本作のプラスアルファ要素は、格闘家達に「スーパーマリオブラザーズ」シリーズの名キャラクター達の衣装を着せることだし、そして、「キノコバトル」という“レトロ感”に満ち溢れた新ゲームモードだ。バトル中は、奥から近づいてくるキノコをゲットすると、自分のキャラクターが大きくなったり、あるいは小さくなったりする。キノコの取り合いは、勝敗を分けるような戦略的な要素になっている。コミカルさが増した、もう1つの「鉄拳」が生まれたのではないだろうか。
1つだけ気になったのは、Wii U GamePadによる操作だ。製品版ではクラシックコントローラーによる操作も可能になっているそうだが、今回の試遊台ではWii UのトレードマークであるWii U GamePadによる操作のみ提供されていた。ボタンとスティックによるコマンドを入れなくても、画面から好きな技の項目を選ぶだけで技を実行できるという点は、格闘ゲームが苦手な人にとって朗報だろう。しかし僕のようなゲーマーは、やはり従来の操作システムを好み続ける。
もう1つおススメする新作は、PS3用「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」だ。数々のアニメゲームを手がけてきたサイバーコネクトツー開発による、荒木飛呂彦氏の名作漫画をベースにした格闘ゲームだ。原作を愛している人には、本作が必須アイテムであることはいうまでもないだろう。
キャラクター達は見事にポリゴンで再現されているし、プレーヤーが抱くのは、漫画が動いているかのような格別な感覚だ。攻撃がヒットしたときに擬音語が表示されるという演出も、漫画のひとコマを見ているかのような錯覚に陥らせる。操作性に関しても申し分なし。カッコいいと同時に、独立した格闘ゲームとしても大きな価値を持っていると思う。原作を読んだことのない人も、本作がきっかけで、荒木飛呂彦氏のファンになって欲しい。
イタリアでも多くのファンを持つ「ジョジョの奇妙な冒険」。「オールスターバトル」の欧州発売を楽しみしているプレーヤーが沢山いる | PS3用「テイルズ オブ エクシリア2」や3DS用「PROJECT X ZONE」など、RPGの分野でも多くの面白い新作が体験できたブースだった |
コーエーテクモのブースに設置された巨大なスクリーンで「真・北斗無双」の紹介動画が流れていた |
■ コーエーテクモゲームスブース
今年もコーエーテクモのブースは大盛況を見せた。コーエー側もテクモ側も人気シリーズの新作を出展した。僕が一押しタイトルとして選んだのは、世界中で愛され続けている「北斗の拳」をベースにした新作PS3/Xbox 360/Wii U用「真・北斗無双」だ。ローマのゲームショップでも日本の予告動画が流されるほど、期待度の高い作品になっている。
前作も面白かったが、海外ではアクションがやや単調気味である点が指摘されたようだ。この続編で、アニメシリーズの名場面が網羅されているし、そして操作できるキャラクターや体験できるエピソードも圧倒的に増えた。そのおかげで、バラエティが増し、前作の問題点が解消されたのではないかと思う。
今回の体験版では、「ケンシロウ」と「ファルコ」を主人公にしたエピソードをプレイすることができた。僕はスタッフに勧められ「ファルコ」のほうを選ぶことにした。会話シーンは漫画のように1コマずつ展開している。キャラクター達はポリゴンで表現されているが、漫画のページになっているから、ほとんど動かないようになっていた。少し違和感をおぼえさせる演出で、もしかしたらオリジナルイラストを使ったほうがファン達は喜んでいたのではないかと思う。
ゲームパートは、コーエーテクモならではの爽快感あふれる無双アクションになっている。敵の群れに向かって、パンチやキックを連発していく。ファルコはケンシロウとはまた違う魅力を持っている。ゲージが満タンになると、華麗な必殺技が発動し、さくっと周囲の敵を次から次へと倒していくという気持ちいい感覚を味わえる。これまでの「無双」シリーズでみられた構造と流れが、きっちり受け継がれている感じだ。サプライズは少ないが、安定したゲーム性が提供されている。
1つだけファンとして期待していたのは、本編中、昔のアニメの音楽を採用することだった。残念ながら、今回聴いたところ、新しい曲になっているようだ。決して悪くはなかったが、やっぱり最高に盛り上がるためには、あの場面のあの名曲が聴きたかった。
「真・北斗無双」を体験する為の待ち時間は比較的長かった。大人気ソフトである証拠だろう | ケンシロウの原寸大フィギュアが、来場者達のフラッシュをずっと浴び続けた |
嬉しいことに、「真・北斗無双」のPREMIUM BOXも展示されていた。よだれが止まらなかった! | Team Ninja開発のPS3/Xbox 360用「DEAD OR ALIVE 5」も大盛況を見せた。そのコーナーで、外国人の姿が特に見かけられた |
グリーのブースは開放感あふれる巨大なスペースで展開していた |
■ グリーブース
年を重ねる毎に盛況を増してきているグリーのブース。今や、いわゆる“スマートフォンゲーム”や“ソーシャルゲーム”はもう無視できない存在になっている。僕はやはり、家庭用ゲーム機や3DSやPS Vitaなどの携帯ゲーム機の、じっくりプレイできるような本格的なゲームを好み続けるが、今、電車の中のカジュアルゲーマーが圧倒的に増えてきているし、この分野でのビジネスのチャンスが、従来のゲームよりも多いというのも事実だろう。
とはいえ、グリーがカジュアルゲームというジャンルに当てはまらないほどの本格的なゲームソフトの開発にも力を入れてきているのはコアゲーマーにとっても朗報だろう。例えば、ブースで大人気を博したAndroid/iOS用「METAL GEAR SOLID SOCIAL OPS」もそうだし、先日初公開されたばかりの豪華スタッフによるスマートフォン向け本格的RPG「Project Fantasm:A」も、カジュアルゲームの領域を越える可能性を秘める、とても魅力的なタイトルになっていると思う。
グリーは、カプコンやKONAMIといった従来の大手ゲームメーカーのライバルではなく、逆にそれらにとって、頼もしいパートナーであると思う。これからも他社とタッグを組み、有名フランチャイズのスマートフォン用アプリやソーシャルゲームを提供していけば、お互いのブランドが強くなるし、世界的に知名度や普及率が上がることは間違いない。
タイトルの数で他社を遥かに超えたグリーブース。それは、カジュアルゲーマーの数が、コアゲーマーの数を超えたということなのか? | 他社とのコラボレーションが増えたおかげで、カジュアルゲームと呼べないほどの本格的なRPGやアクションゲームが誕生してきている |
グリーのブースは開放感あふれる巨大なスペースで展開していた |
■ スクウェア・エニックスブース
PS3/Xbox 360用「ライトニングリターンズ ファイナルファンタジーXIII」を発表したばかりのスクウェア・エニックスだが、東京ゲームショーのブースは規模が小さく、試遊台も用意されていなかった。Wii U版「ドラゴンクエストX」のデモプレイを公開したステージイベントが唯一の大きなサプライズで、もちろん来場者達の注目を引きつけたが、やはり、新作もその場で試したかったというのが正直な気持ちだ。
「ライトニングリターンズ ファイナルファンタジーXIII」が気になっていたし、3DS用「ブレイブリーデフォルト」のTGSバージョンも是非遊んでみたかった。TGSで小さい規模で出展したのは、もしかするとこれから、大きなプライベートショーの開催を予定しているのではないだろうかと推測している。皆に支持されているスクウェア・エニックスだからこそ、大手という言葉にマッチした大きなブースで出展して欲しかった。
「ドラゴンクエストX」を中心にしたステージイベントは大人気を博した | 「ブレイブリーデフォルト」の巨大なイラストはあったものの、体験コーナーは残念ながら設けられていなかった | スクウェア・エニックスが出版するiPad用のデジタル漫画は、閲覧できるようになっていた |
■ 傑作の如く ~TGS2012出張版~
(C)Sony Computer Entertainment Inc. All Rights Reserved. |
1位:ソウル・サクリファイス
プラットフォーム:PS Vita
ジャンル:アクション
発売元:ソニー・コンピュータエンタテインメント
発売日:2013年春
価格:未定
プレイ人数:1~4人
これまでのアクションRPGの魔法使いのイメージが覆されるようなグロテスクな世界観。魔物になっていた人間を生贄にするか、救済するか、というプレーヤーの精神を試すような斬新なゲームシステム。優れたボスデザインや幻想的なステージデザインも圧倒的な魅力を持っている。海外でも既に高く注目されているゲームだ。
□プレイステーションのホームページ
http://www.jp.playstation.com/
□関連情報
【2012年9月21日】SCEJ、PS Vita「ソウル・サクリファイス」
稲船敬二氏にインタビュー!~プレス向けセッション+インプレッション~
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120921_561381.html
(C)SEGA |
2位:龍が如く5 夢、叶えし者
プラットフォーム:PS3
ジャンル:アクションアドベンチャー
発売元:セガ
発売日:12月6日
価格:8,800円
プレイ人数:1人
シリーズの集大成的な作品ともいえる「龍が如く5 夢、叶えし者」。TGSの体験版で、新たに使用されたゲームエンジンのパワーが伝わった。舞台になっている五つの大都市がよりリアルになり、躍動感に溢れていると思う。アナザードラマの導入でボリュームやバラエティが増したし、格闘パートの操作性も快適になっているし、見所満載の続編だ。
□セガのホームページ
http://sega.jp/
□関連情報
【2012年9月14日】セガ、PS3「龍が如く5 夢、叶えし者」
新しいスタイルのバトルシステム「ダンスバトル」を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120914_559529.html
(C)Sony Computer Entertainment Inc. All Rights Reserved. |
3位:パペッティア(仮)
プラットフォーム:PS3
ジャンル:アクション
発売元:ソニー・コンピュータエンタテインメント
発売日:2013年
価格:未定
プレイ人数:1~2人
過去のノスタルジックなプラットフォームゲームを思わせると同時に、芸術性に満ち溢れたHDポリゴングラフィックスで展開するPS3用の新作アクションゲーム「パッペティア」が、今年のTGSの最も大きなサプライズだった。こういうゲームこそ、日本人にだけしか開発できないゲームなのではないだろうか。続報に期待度が高まる一方だ。
□プレイステーションのホームページ
http://www.jp.playstation.com/
□関連情報
【2012年9月21日】SCEJブースレポート、PS3「God of War: Ascension(仮)」など
主要タイトルのファーストインプレッションをお届け!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120921_561315.html
(C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED. |
4位:逆転裁判5
プラットフォーム:3DS
ジャンル:法廷バトル
発売元:カプコン
発売日:2013年
価格:未定
プレイ人数:1人
「逆転検事」のスピンオフシリーズも面白いが、やっぱりメインシリーズは最高だ。しかも、久しぶりに主人公として、成歩堂龍一が帰ってきた! キャラクターは今回、ポリゴングラフィックスで表現されているが、全体的なフィーリングは過去の作品とほぼ変わらない。コミカルな証人キャラクターの連続登場で法廷バトルも見逃せない!
□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□関連情報
【2012年9月20日】カプコン、「逆転裁判5」ステージイベント&プレイレポート
“成歩堂龍一”復活!! 3Dモデルになり、シリーズの良さと新しさを持った最新作
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120920_561022.html
(C)Konami Digital Entertainment Developed by PlatinumGames Inc. |
5位:METAL GEAR RISING REVENGEANCE
プラットフォーム:PS3
ジャンル:アクション
発売元:KONAMI
発売日:2013年2月21日
価格:6,980円(通常版)
6,480円(DL版)
プレイ人数:1人
アクションゲームのジャンルで確固たる評判を持つプラチナゲームズ開発による、もう1つの「METAL GEAR」。主人公の雷電はブレードで敵をカッコよく切り刻んでいく。時間の流れが遅くなり、何回も敵の体を切り刻む「斬撃モード」が爽快感抜群だった。PlayStation Moveによる操作方法もあったら、さらに楽しくなるのではないだろうか。
□KONAMIのホームページ
http://www.konami.jp/
□関連情報
【2012年9月23日】KONAMIブースレポート
小島プロダクションとソーシャルゲームを中心に多方面へのタイトルを展示
期待の「MGR」は50台もの試遊台を用意!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120923_561816.html
■ 最後に……
「モンスターハンター4」や「龍が如く5 夢、叶えし者」など、各社のブースで大作が輝いたが、前年と比べてやや規模が小さくなった「東京ゲームショー2012」だったともいえるだろう。ビジネスデイには、海外プレス関係者の人数が過去に比べて減ってきているという印象を受けた。もっと正確に言うと、日本のメーカーが毎年、東京ゲームショーの開催中に、都内の会場や幕張メッセのすぐ隣のホテルなどで海外プレス用のイベントを設けているので、欧米のプレス関係者が幕張メッセのホールよりも外のイベントに参加しているというイメージがある。
「東京ゲームショー」を国際的に注目度の高いゲームイベントに戻らせるためには、以下の対策が必要だと思う。
まず、海外プレス関係者を外で設けられたプライベートイベントへと“逃がす”のではなく、国内ゲーム関係者との交流が図れるように、幕張メッセの会場にずっと留まらせるべきだと思う。それを実現させるには、各社のブースで出展されたタイトルの体験版を日本語/英語の言語選択ができるようにするべきだし、英語を流暢に話せるスタッフの増加も必要だと思う。
例えば、「ソウル・サクリファイス」を体験した時、もう1人外国人がいたが、その人には日本語が通じなかった。スタッフの日本語を理解できるはずもなかったし、画面に表示された漢字も読めるはずもなかった。その人に「ソウル・サクリファイス」の本当の良さが伝わったのだろうかと、正直に疑問を抱いた。
小島秀夫氏や名越稔洋氏のステージイベントも、全て日本語だけだった。例えば、ステージの前に立っている外国人にイヤフォンを貸し、それで英語の同時通訳が聞こえるというのが常識になってきたら、外国人もイベントを楽しめるようになり、もっと日本と海外との距離が近づくのではないかと思う。あるいは、同時通訳ではなくても、せめて、英語字幕を付けていれば、台詞の全てが通訳されなくても、ある程度、クリエーター達の話を理解できるようになるだろう。
そして、もう1つ対策が必要だ。日本のメーカーが昨今、大作を初公開する場としてE3を選ぶという常識になってきているが、それと同時に「東京ゲームショー」でも、同じく、世界が注目するような大作をもっと公開して欲しい。欧州のプレス関係者が12,000キロの距離を飛行機を使って移動しなければならないため、出張のモチベーションを高めるような大作がもっと必要なのではないかと思う。
現在、8月にドイツで開催される「Gamescom」というゲームショーが注目度を増している。「東京ゲームショー」の開催日と近いので、そういった意味でも「TGS」の海外来場者が少なくなってきていることが考えられる。とはいえ、「Gamescom」を遥かに超えるような新作のラインナップが公開されたら、開催日が近いからといって、必ず欧米人もその新作を試したくなり、東京に来る確率が非常に高くなると確信している。
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(2012年9月26日)