素晴らしきかな魂アイテム

【魂レビュー】こういうエヴァが欲しかった! 「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」、鋼の筋肉、カッコ良すぎるディテール、そしてユニークなアレンジ

題字:浅野雅世
【第33回魂アイテム】
「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」、2月23日発売、価格は23,760円(税込)。エヴァンゲリオン初号機を山下いくと氏自らが大きくアレンジ。可動とディテール、キャラクター性を突き詰めた究極のエヴァンゲリオン商品とも言えるアイテムだ

【ライター:勝田哲也】

超合金と洋ゲーを愛するライター。エヴァは初登場時から大好きで、立体物も集めているが、特に好きなのが派手な活躍と壊れっぷりを見せてくれる弐号機。「ネクスエッジスタイル[EVA UNIT] エヴァンゲリオン2号機」など、様々なアイテムを持っている(絵:橘 梓乃)

 「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」の再販が決定した。2019年内に再販するという。本商品は発表より大きな人気を集め、「手に入れられない」という声が多かった商品である。今回の再販発表で入手できるユーザーが1人でも増えることを願いたい。筆者は何とか予約ができ、発売後数日、待ちに待った商品が届いた。

 「ああ、こういうエヴァが欲しかったんだ」というのが箱を開けた筆者の第一声だ。精密なディテール、幅広い可動範囲、金属製のしっかりとした関節、なにより初号機ならではのカッコ良さ……エヴァの立体物は様々なものがある。手に入れて楽しい商品も多かったが、今回の「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」は目にしたとき満足感がこみ上げた。そして手に持って動かして、その喜びはさらに大きくなった。

 本商品はユニークなアレンジが加えられている。アレンジデザインを担当したのは「エヴァンゲリオン」を手がけた山下いくと氏。「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」は、改めて「鋼の肉体を持った巨人」としてデザインされ、様々なアイディアが盛り込まれている。原型師は坂埜竜氏。坂埜氏の設計によってエヴァならではの可動を実現。そして彩色師の広瀬裕之氏による彩色によってハイクオリティなエヴァンゲリオン初号機の立体物が生み出された。その魅力を語っていきたい。


「鋼の筋肉を持つ巨人」、新しいコンセプトと共に、山下氏がデザインした初号機

 「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」は、各クリエイターの才能とノウハウを集結し、そして開発者達の熱い想いで生み出された商品だ。筆者は本商品を担当したBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の洲崎敦彦氏にインタビューを行なっている

 かつて筆者は1995年のアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」にドハマリした。最終回は自分の部屋に友人を呼んで「鑑賞会」をして、その後あまりの衝撃に無言になったりもした。もちろん劇場版、新劇場版も見ている。そういう筆者にとって、洲崎氏の商品とエヴァンゲリオンそのものの思い入れを聞くことができたのはとても楽しかったし、3人のクリエイターがどれだけ「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」にこだわりを込めたかと言う話を聞いて、「これは手に入れねば!」と強く思ったのである。

デザインとしてはほぼ全身が従来のものと異なっているという「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」。それでもぱっと見て初号機だとわかるデザインのバランスが楽しい

 「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」の最大の特徴、山下氏のアレンジの最も強い部分は、「肩の装甲板」だ。オリジナルのエヴァンゲリオン初号機の腕は大きく上に突き出した肩の装甲は腕と一体化している。このため腕を前方に大きく突き出すと肩の装甲は後ろに回ってしまい、シルエットが変化する。

 今回の初号機では肩装甲は腕とは独立し背中に取り付けられているため、腕を動かしても肩部分のシルエットが変わらなくなった。また元のデザインではこの肩装甲の内部に様々な武装を収納していたが、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」では五角形でオレンジ色のジョイントが取り付けられており、ここに様々な装備を接続するというコンセプトとなっている。このオレンジ色の五角形は今回のアレンジを象徴するデザインであり、追加装備でさらに印象的になる

 肩の装甲が武器プラットフォームになることで、様々な武器を身にまとうことができ、ロボットフィギュアとしての楽しさをふくらませてくれる。ガンダムのMSやボトムズのATは大きなバックパックをウェポンプラットフォームとして使用し、多彩な武器を装備するが、裸の人間に近い、生物的なシルエットを持つエヴァが武器を装備するならば、この方法は良いな、と思わせるものがあった。

大きく上に突き出した装甲板は肩とは独立し、背中の支柱で支えられている
腕を前にするポーズをとっても全体のシルエットが崩れない
接続パーツやケースを肩のジョイントに接続することで様々な武器を搭載できるようになった。ウェポンプラットフォームとしての役割がよりはっきりした

 そして「鋼の筋肉を持つ巨人」という「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」で大きく提示されたコンセプトである。原作のエヴァンゲリオンは肉体そのものが何の物質でできているのかぼかされている。人間の肉体を構成する筋肉や骨、血液を思わせる描写があるが、それが粘土のようなものか、ゴムのようなものか、金属製なのかわからない。

 山下いくと氏は「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」をデザインするにあたり、金属のような堅さの何かが板バネのように積層して筋肉を形成しているのではないかというイメージを盛り込んだ。エヴァが動くと金属のきしみが内部のパイロットに伝わる、そんなイメージでのデザインだという。

 「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」は金属パーツの関節で「鋼の筋肉」を表現している。赤銅色のパーツがアクセントとなり、硬質で、それでいながら生物的な、肉体を金属で代用したサイボーグのような質感が生まれている。このデザインで特に楽しいのが股関節と太ももの内側の表現だ。足を開いたときに腿の内側の筋肉パーツと外側の装甲が独立して可動し筋肉パーツが引き出されるので、腿部分の筋が伸びたような、機械生命体のような動きをするのだ。固いパーツで形成されているのに、生き物っぽいパーツの動きが「鋼の筋肉」というイメージを増幅させてくれる。

腿の内側のパーツが伸び縮みすることで、生物的な雰囲気が増す。とても楽しい演出だ

 もう1つ筆者のお気に入りは顎の下の“喉仏”部分の赤銅色のパーツ。このパーツはエヴァが首を上に向けたとき頭パーツに引っ張られて首から現われるのだが、このパーツがあることで頭と首が生物的に繋がっている雰囲気が生まれる。初号機の頭部はこれまでの立体物では基部のみがボールジョイントで接続されていることが多く、エヴァ特有の首を大きくそらせたポーズをさせると隙間が空いてしまうのだが、喉仏パーツのおかげで生物的な首の繋がりが表現されている。

 もちろん腕や膝のしなやかなライン、いくつもの可動パーツで構成された肩の自由度。人間の背骨とプレートで構成された背中と、細かいパーツ分解で高い自由度が持たされた胴体部分など、動かすたびに感心させられる部分ばかりだ。坂埜氏の可動設計、金属生命体のような質感をもたらす広瀬氏の塗装に本当に楽しくなる。繰り返すが、「ああ、こういうエヴァが欲しかったんだ」と思わせてくれる商品である。

赤銅色の喉仏パーツがあることで、首と頭の接続の自然さが増す
腕の内側や肩の付け根など、銀と赤銅色の色合いが、鋼の筋肉の上に装甲板をまとったエヴァの肉体を想像させる
武器を構えさせて色々な角度で眺める。ディテールの精度、可動範囲の広さに感嘆する。とても楽しい瞬間だ


追加装備でさらにカッコ良く! 巨大な刀や様々な武器を使う重装備に

 さらに「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」はよりアレンジを効かせた「オリジナル装備」が用意されている。山下氏が「コンセプト時のエヴァンゲリオン」をイメージしたというデザインだ。「ゼーレにエヴァ建造の許可を得るために提示したペーパープラン」というイメージで、より兵器らしさを強めた姿となっている。

 まず頭部は目の上のアンテナ部分を取り外し、目をゴーグルで覆った姿になる。目は生き物の弱点として大きなもので、零号機にはなく、弐号機も装甲の中に隠してカメラで代用しているところから考えても納得できる装備だ。初号機のキャラクター性のかなり大きな部分であり、これを覆うことでイメージが大きく変わるのが面白い。

目を覆うゴーグル。弱点である目を保護するのは納得できる強化装備だ。キャラクター性が大きく変わる

 そして太ももの外側には肩と同じウェポンジョイントを装備。オレンジ色の五角形のジョイントが片側に5つ配置されている。「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」は個のジョイントに対応した接続パーツが用意されていて、2種類の「マゴロクソード」の鞘やパレットガン、ハンドガンなどを装備できる。原作では兵装ビルから供給されていた各種武器をあえて身につけ“フル装備”にするのも楽しい。

 さらに脛部分に装甲を装備。この装甲はつや消しの黒で塗装されており、いかにも堅牢そうだ。特殊部隊のプロテクターを思わせ、“追加武装”のイメージを増してくれる。これらの追加装備と、各種武器により従来の初号機とは一味違う、新しいイメージが提示されるわけだ。

腿にウェポンジョイントを装備
足の脛に追加装甲を取り付ける
追加装備に武器をマウント「フル装備」の雰囲気に

 さらに立体フィギュアのプレイバリューを増してくれるアイディアとして、「パレットガンの組み替え」がある。パレットガンに各種オプションを取り付けることで、「ロングバレル」、「グレネードランチャー」、「銃剣」が装備できる。パレットガンはマガジンを取り外すことができる。ハンドガンはブローバック機構とマガジン取り外しが可能だ。こういった実銃を思わせる機構が楽しい。

パレットガンの先には3種類のオプションパーツが取り付けられる

 2振りの日本刀型武器「マゴロク・エクスターミネート・ソード」、「カウンターソード」はゲーム作品などで印象的な武器だが、いかにも着れそうなクロームのメッキ塗装が楽しい。基部にはメカの描写がアリ、どのような力で切れ味を増幅させているのか想像が広がる。刀を構える初号機というのは原作アニメを越えたイメージで、今回の兵器色の強くなった追加装備をまとった初号機に合っていると感じた。

 銃剣は手に持つことができ、ナイフの2刀流もできる。これらの武器はどのように装備させるかはユーザーの想像力にゆだねられている。刀を肩に接続し背負っているイメージにしてもいいし、ホルスターのようにハンドガンを腿につけるのも良い。「刀を振るときは、鞘は分離させるかも」などなど自由に活躍を想像させて組み替える、それこそがアクションフィギュアの楽しさだ。今後「METAL BUILD エヴァンゲリオン」はシリーズ化されるとしたら、武装の組み替えもとても楽しいだろう。

ケレン味たっぷりのマゴロクソード
ナイフの2刀流もできる


暴走! 最小限の変化で大きく印象を変える初号機の“本性”

 最後はやはり、“暴走”だ。エヴァンゲリオン初号機は暴走は大きな特徴だ。得体の知れない存在であるエヴァが、人の制御を離れ、その恐るべき正体をほんの少しだけ垣間見せる。アニメの第2話でのあの衝撃は、筆者を含めた多くの人をアニメに引き込ませただろう。

 個人的には、「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」では暴走をイメージした変形や換装システムもアリではないかと思ったが、「暴走は想定外の事態であり、それを予測した機構があることはおかしいのではないか?」という意見ももっともである。今回は最大の特徴である口の開閉、そして大きく開いた平手パーツによって暴走を表現できる。優れた可動によって胸を反らせ、雄叫びを上げる初号機を再現できるのは、とても楽しい。

暴走、口の開きは大きい者ではないが、ポーズと相まって印象が大きく変わる
専用の平手も用意されている。これと口の開き、ポーズで暴走状態を表現するのだ

 背中のプラットフォームはデザインとしてとても重要なパーツだが、肩パーツと干渉し腕の可動を妨げかねない一面がある。暴走状態のエヴァはこのパーツをまず引きちぎるのではないだろうか? ということで外してポーズをとらせてみた。つかみかかるような手、大きく開いた口、前傾姿勢と、怪獣のような初号機のポーズをとらせることができた。

 初号機は主役メカとは思えない凶暴なデザインのメカであるが、暴走状態でその恐ろしさがさらに増す感じになる。暴走状態の姿も、このアイテムの満足感を大きく高めてくれる。

雄叫びを上げる初号機。背中と首、頭の構造が背を反らせるポーズを可能とする
背中のパーツを外し、つかみかかるようなポーズ

 「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」は本当に「こういうエヴァが欲しかった」という気持ちを満たしてくれる商品だ。動かして感じたのは、個体差だとは思うが、右肩の肩アーマーが外れやすくなってしまった。これは肩のプラットフォームと肩アーマーがこすれやすくなっており、この干渉で1度外れてからクセになってしまったんだと思う。

 エヴァンゲリオンらしいデザインということで肩アーマーのフィット感を重視したんだと思うが、個人的にはもっと干渉しないデザインにして、肩のアーマーが触れないようにした方が良いと感じた。また、ナイフとマゴロクソードの持ち手のフィット感が少し甘かったのも気になった。

 現状「METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機」を手にできなかったユーザーも多かったとのことだ。これらの人達に再販でこの素晴らしい商品が届いて欲しい。本当にファンなら高い満足感を感じられる商品であり、動かすことでその楽しさはさらに高まる。ぜひ手にとって欲しい商品だ。

 筆者としては、やはり今後の展開がとても楽しみだ。筆者は「エヴァンゲリオン弐号機」が特に好きなのである。ヒーローのような激しいアクションを見せてくれる一方で、やられ役として壊されるシーンも多かった弐号機は“ロボット”としてのカッコ良さと哀しさを併せ持つ存在だと思うのだ。ぜひ、「METAL BUILD エヴァンゲリオン弐号機」も登場して欲しい! 今後の展開に注目したい。

台座のアームはフレキシブルに動き、エヴァを支える
台座は射出台を思わせる形に組むこともできる。各種武器を取り付けることも可能