コメディアンBJ Foxの脱サラゲームブログ
連載第5弾
「音楽系ですか?」って言われて悔しかった六本木の夜。「South Park: The Fractured but Whole」から日本とアメリカのゲーム市場の違いを考えてみるよ
2018年9月26日 13:23
「日本のゲーム市場と欧米のゲーム市場が違う!」論の代表的な事例と言えるのは、「Grand Theft Auto」シリーズと「モンスターハンター」シリーズだ。前者は欧米において誰でも知っていて、ゲーマーならばみんながプレイしているモンスタータイトルなのに、それに比べたら日本ではまだまだ。国内の大ヒットタイトルに比べたらまだまだマイナーでしょう? ロックスター・ゲームスで働いていたとき、日本人の知人にさりげなく伝えたら「それって音楽系ですか?」と言われたことも多い! 自慢しようと思ったのに大失敗だ!!
逆に「モンスターハンター」シリーズは、日本国内のPSP、3DSそしてPS4の記録を次々に塗り替えるほどのヒットを記録したにもかかわらず、その素晴らしさ、楽しさ、そしてあの猫のセリフの長さは、ほとんどの海外のゲーマーに知られていないだろう。
それらと同様に、国によって人気がぜんぜん違うタイトルもいっぱいある。日本の場合、バンダイナムコのドラボー(ドラゴンボール)・ピース(ワン・ピース)・ガンダム(機動戦士ガンダム)系だろう。僕の母国のイギリスだと、熱狂的なファンが付いているサッカーシミュレーション「Football Manager」シリーズだ。(発売元は、日本のセガさま!)。アメリカの場合は、「FIFA」のアメフット版のような「Madden」シリーズも、毎年売れ上げランクインを席巻するだけど、他の国はぜんぜんだろう。
だから、9月に仕事の訳が合ってアメリカに行くこととなって、アメリカだからこそ楽しめるゲームをプレイしようと思って、今回のゲームを選んだ。「South Park: The Fractured but Whole」だ。
日本人の読者にはわからないかもしれないが、アメリカでは「サウスパーク」という“大人向け”アニメが20年間以上放送されている。このゲームはそのRPG版だ。
アニメ「サウスパーク」は、僕がまだ高校にいた1997年に炎上を巻き起こしながらデビューした。子供4人を主人公としたアニメなのに、放送NG言葉が溢れるし、テーマが、セックス、人種差別など、普段がアニメが取り上げないテーマばかり。でも、あのくらい幼稚なユーモアと地味な2.5Dアニメーションがあんなに20年間以上続いてきたかといううと、裏に世間に対して鋭い風刺も効いているからであり、今でも評判がめちゃくちゃ高いんだ。
大学時代以来ほとんど見ていないが、コメディの質の高さを学ぼうと思って、僕が主演したNHKのドラマ「Home Sweet Tokyo」のTVドラマの制作に当たって「サウスパーク」のメイキングドキュメンタリーまで見た。1個のエピソードのキックオフ打ち合わせから本番のオンエアーまで、1週間しかかからない、という他にないスピーディな制作方法もあり、時事的なネタをタイムリーに、容赦なく風刺が効いている番組が作れる訳だ。日本人にわかりにくいかもしれないが、面白いんだよ!
その番組に対する興味もあるし、たまたま目にしたレビューの評価も高かったし、そして本格的RPGメーカーであるObsidian Entertainmentが開発元であることで、久しぶり「South Park」フランチャイズに訪れた。2018年4月にNintendo Switch版も出たから、アメリカ風なダイナーでブレンドコーヒーを体験しながらプレイもできる!
最初の印象は、このゲームが本当にアニメのルック・アンド・フィールを完璧に再現していることに驚いた。日本のアニメよりも「サウス・パーク」のアニメとしてのスタイルはシンプルので、比較的ゲームにしやすい。アニメの技術としては、スタジオジブリの傑作とは比べ物にならないが、サウスパークという町の再現も素晴らしいし、番組のシナリオライターも声優も起用しているので、まるでエピソードをプレイしているかのような感覚に浸れるのだ。
調べてみると、アニメの素材をそのまま使用できるように、制作元がゲームエンジンを調整したらしく、そこまで頑張ってくれてありがたいもんだ。調べた過程で気づいたんだけど、開発元がObsidian Entertainmentではなく、Ubisoft San Franciscoだったようだ。Obsidianは1作目を製作して2作目はUbisoftへ。とはいえ、その本格的なRPGらしさは2作目も十分残っている。
プレーヤーは、アニメの主人公になりきることなく、South Parkの町に引っ越してきたばかりの「New Kid(新しいガキ)」というキャラとなる。
プレーヤーは仲間たちと共に、スーパーヒーローごっこをプレイしてライバルのスーパーヒーローグループと対決しながら、行方不明となった猫ちゃんのミステリーを解決していく。でも、サウスパークだけあって、ここにも風刺が効いている。スーパーヒーローなのに、善と悪のバトルではなく、どれが一番強いフランチャイズとなることを目指しているんだ。まるで映画館上においての「Avengers」対「Justice League」のようなバトルのようで、戦いながら、SNSの登録者も増やしていく必要がある。
ストーリーも半分ふざけている、残り半分は、意外と物語性が深いものである。スーパーヒーローごっこの目的とは、ライバルのスーパーヒーロー団より早く行方不明となった猫ちゃんを探すことだが、どんどんサウスパーク町の裏社会に入って犯罪組織の手があっちこっちに届いていることに気づく。が、別になにもしない。どんなにサウスパーク市長の席を狙っているマフィアの連中に囲まれていても、無邪気なスーパーヒーローの狙いはあくまでも猫ちゃんだ。また、おもしろいことに、バトルの途中にでも車が来てしまうと、「安全第一」という元子供達が一旦戦いをやめて、車が通ってからバトルを再開する! 「ごっこ」と「リアル」の境線があやふやなところがおもしろい。
自分のスーパーヒーローのクラスは様々な種類からも選べるし、ゲームの途中でも変えられる。うまくスーパーヒーロージャンルを再現しているな、と思った。対決となると、JPRG式のバトルが展開していく。自分側のThe New Kidには、3人の味方もチョイスできるので、よくグループのバランスを考える必要がある。敵は、ライバルのスーパーヒーローや虐めの六年生たちから、ストリッパーや未成年に手を出してくる神父たちまでだ。結構、ここまでやっていいのかという、過激な内容もある。でも、ゲームとしては、本格的なRPGに仕上がっていて、ゲームプレイも十分楽しめる。
どんどんキャラが成長して行くともに、RPGだけあって主人公が強くなり、新しいパワーやアイテムを使えるようになる。「おなら」関連のパワーがとにかく多い。相手のターンをミスさせるオナラ、邪魔となるオブジェクトを動かせるオナラもある。タイムスリップして過去の自分を現時点に引っ張って一時的に2度バトルできる状況を起こせるオナラまで。ある意味で、そのしつこさに感心した。ストーリーをこれからクリアしていきたいと思うが、どの新しいオナラパワーが見つかるのか楽しみにしている。
この記事を書いている現在は、まだプレイ途中だが、かなり楽しんでいる。正直に言うとそんなに大きな期待はしていなかったんだけど、意外と楽しんでいると言える。ただ、このゲームが、オナラゲームであることは、一緒に旅行している彼女に言いたくない。「サウス・パーク」というアニメは、幼稚なオナラジョークの表面の裏に、鋭い社会風刺のコメディを隠しているものだ。このゲームにおいても、スーパーヒーローごっこの裏に、奥深い、しかもストーリーが意外と感動的なRPGゲームが潜んでいると言える。
ただ、日本人には、オススメできるとは言いがたい。英語がある程度理解できても、字幕なしではシリーズのファンではないと、わかりにくいコンテンツも多いかも。また、英語の勉強のツールとしてもオススメしにくい。ここまで言っていいのかというヒドい英単語が多く、英会話教室で先生に使ったら即停学処分になり得る。まあ、言論の自由のアメリカへの下準備としては適切なゲームかもね。
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