3Dゲームファンのための「(スーパー)ストリートファイターIV」グラフィックス講座(前編)
美化された「ストII」の記憶を3Dグラフィックスで再現した秘密のレシピに迫る!


会場:Dimps本社





CEDEC AWARD 2011授賞式の様子。写真は綾野智章氏と亀井敏征氏

 国内最大級のゲーム開発会議であるCEDECにおいて、毎年、各分野における優秀者、優秀チームを表彰するCEDEC AWARDが開催されるが、今年のCEDEC AWARD 2011において、名だたる近年大作群を押さえて「ビジュアルアーツ部門」賞を受賞したのが「ストリートファイターIV」(以下「ストIV」)だった。

 「ストIV」は、アーケードでの稼動開始が2008年7月なので、初リリースから3年後の受賞となった。ただ、2011年の現在に至るまでの3年間、「ストIV」シリーズは、常に格闘ゲームファンの話題の中心となっていたので、この受賞には誰もが納得していたはずだ。

 「ストIV」シリーズに限定して、その歴史を紐解くならば、2009年にはアーケード版の「ストIV」の移植作品として家庭用機(PS3、Xbox 360向け、以下同)向けがリリースされ、2010年春にはその拡張仕様スペシャル版として家庭用機専用の「スーパーストリートファイターIV」(以下「スパIV」)がリリース、さらにはファンからの熱望をうけて2010年冬には「スーパーストリートファイターIV アーケードエディション」(以下「スパIV AE」)が登場した。

 そして今年、2011年春には「スパIV」を任天堂3DS向けにほぼフルスペック移植した「スーパーストリートファイターIV 3Dエディション」が登場し、2011年夏には「スパIV AE」が家庭用機向けに移植されている。2011年末には、「スパIV AE」のバランス調整版の「スパIV AE Ver.2012」が家庭用機向けのリリースが予定されており、間を置かずに、これがアーケードでも稼動する予定となっている。

 数ある格闘ゲームが比較的短命で消えていく中で、3年以上のロングランを達成していることだけでも凄いことだが、常にその人気を一線級で維持している「ストIV」シリーズは、まさに奇跡の作品だと言えよう。格闘ゲーム史に記録されるのはもちろんのこと、全てのゲームファンの記憶に強く刻まれるタイトルとなるはずだ。

 というわけで、今回は「ストリートファイターIV」を取り上げることにした。これまで「ストIV」シリーズに関しては、諸事情で技術的な取材がNGだったが、今回の「CEDEC AWARD受賞記念」という機会もあって、めでたく取材対応をして頂けるととなった。なお、本稿のタイトルに「(スーパー)」が付けられているのは、取り扱う話題がオリジナル「ストIV」から「スパIV」、そして「スパIV AE」にまで及ぶためだ。あらかじめご了承頂きたい


【著者近影】
「ストリートファイターIV」シリーズの取材は2009年時から何度か試みていたのだが、毎回叶わず。しかし、今回ついに取材が実現して嬉しい限り。ちなみに筆者は「ストII」時代からのプレーヤーで、ヒャウヒャウやかましいクレイジーなキャラクター性に惹かれてずっとバルログ一筋でプレイ中。Ver.2012で、バルログにどんな調整が入るのか、いまからドキドキワクワクしている。端っこに追い詰められてのタコ殴りはもう勘弁して!(笑)。ブログはこちら




■ 難航した「美化された『ストリートファイターII』」の世界観の再現

 「ストリートファイター」シリーズと言えば、カプコンブランドの対戦格闘ゲームなのは多くの読者が知っている事実だと思うが、「ストIV」シリーズの開発は、カプコン内製ではなく、同じく大阪府に開発本部を構える実力派スタジオのDimpsが担当している。Dimpsと言えば、「ドラゴンボールZ」シリーズ(バンダイナムコゲームズ)、「ザ・ランブルフィッシュ」シリーズ(セガ)、「SPIKEOUT BattleStreet」(セガ)など、格闘ゲーム開発には一家言あるスタジオだ。開発を任されたのも自然な流れではある。

 トリビア的なことを言わせてもらえれば、Dimpsの社長の西山隆志氏は初代「ストリートファイター」の開発者の1人であり、シリーズの主人公リュウは、同氏の名前からとったとも言われている。Dimpsが「ストIV」シリーズの開発が委託されたことは、「ストリートファイター」シリーズ復活プロジェクトの意味合いもあった「ストIV」のコンセプトからすると、なんとも因果な運命を感じる。

 Dimpsでは、「ストIV」シリーズの開発プロジェクトの立ち上げに同期して、自社ライブラリをPS3、Xbox 360などの今世代機(DirectX 9世代グラフィックスハードウェア搭載ゲームプラットフォーム)向けに対応させる作業へと入った。この際に構築された開発支援ライブラリ集は、Dimps社内的には「XG」と呼ばれているという。なお、XGの“X”にはクロスプラットフォームの意味が込められているとのこと。

 「XG」はゲームエンジンではなくライブラリ群の総称とのことだが、バージョン名は付けられており、「ストIV」がXG1.0ベース、「スパIV」シリーズになってXG2.0ベースとなった。

 「ストIV」シリーズの開発コンセプトは、「ストリートファイターII」(以下、「ストII」)の21世紀への復活であり、同時に「ユーザーの脳内で美化された『スト2』の記憶の具現化」だった。この「ストIV」シリーズの開発コンセプトについての秘話は、「ストIV」シリーズプロデューサの小野義徳氏(カプコン CS開発統括 副統括)がGDC2009にて詳しく発表している。この講演については筆者自身がGDC2009レポートにて「『ストリートファイターIV』原点回帰 課せられた使命。それは「美化された思い出に答えること」としてまとめているので興味のある人は是非とも参照頂きたい。

亀井敏征氏(Dimps 開発本部 ソフトウェア技術部 ソフトウェア技術課 テクニカルデザイングループ チーフ)

亀井敏征氏(Dimps 開発本部 ソフトウェア技術部 ソフトウェア技術課 テクニカルデザイングループ チーフ):当時は、我々も今世代機での本格開発が初めてだったこともあって、掲げられたそうしたテーマに対して、技術的にどう実現していけばいいのかについて試行錯誤しました。

 「ストIV」の開発は2006年5月頃から開始され、約2年の開発期間を経てアーケード版のリリースを果たしている。家庭用機向けの開発プロジェクトはアーケード版の開発最後期よりオーバーラップして開始され、およその開発期間は約8カ月となっている。

 開発プロジェクトの最初期時、Dimps側の開発チームでは、「ストIV」が「ストリートファイターIII」(以下、「ストIII」)の延長線上にあると考え、できるだけ「ストIII」のドット絵の雰囲気を残した3Dグラフィックスを試作する(下)。なお、これらは実機上での実装ではなく、DCCツール上で製作した実機風のコンセプトアニメーションになる。セルシェーダー風の絵画調、そこに墨絵風の味付けを行なったものなど、のちの「ストIV」の完成形を知る我々が見ても、なかなか見応えのあるものだ。


【「ストIV」プロトタイプ】
こちらがDimps側で提案した最初期のデザイン稿のクローズアップ
様々なコンセプトアニメ。左からチョーク風シェーダー、墨絵+トゥーンシェーダー、墨絵+水彩

亀井氏:これは打ち合わせを1度も行なっていない段階で、我々が提案の意味合いで製作したものですが、第1回目の打ち合わせで言われた一言が「これではない」でした(笑)。小野プロデューサーから言われたのは、まず「ベースはストIIである」ということと、「ストII」に息づいていた「泥臭さ」、「殴り合う格闘の“痛さ”」、「闘い合うことの“ライブ感”」の再現を目指して欲しい、と言うことでした。ここからが“苦難の道”でしたね(笑)。挑戦しがいはありましたけれども。

 そうした指示を受けてDimps側で再デザインして起こしたのがこちらだ。だいぶ骨太となり手足がデフォルメされて大きくなっていることが見て取れる。初期稿と比べると、やや歳をとったというか人生経験を積んだというような印象を見る者に与える感じだ。いずれにせよ、だいぶ完成形に近づいたような印象を受ける。

【「ストIV」プロトタイプその2】
左がカプコン側との打ち合わせを経てDimps側がモディファイしたデザイン稿。右がそのシェーディングモデルと実際のシーンに登場させたイメージ

亀井氏:これでも「まだまだ」でした(笑)。まず、指摘されたのは「デザイン(形状)面では適度にデフォルメがあるが、陰影の出方がリアルで面白くない」という点でした。また、「情報量が少ない」ということも指摘されました。リアル系のシェーディングでは、陰影としての情報量は多くなりますが、それらは“整理されていない情報”として見えるというのです。

 一言で言うならば、3Dモデルの形状がデフォルメされているのに、シェーディングがリアル傾向だったため、デザイン(形状)と塗りで、不一致感があるという点を指摘されたようだ。

亀井氏:そこで我々はSFシリーズを初めとした、カプコンさんの過去作のドット絵を研究しました。そこでドット絵としての筋肉に対する陰影の付け方や、筋肉の省略の仕方、影色の付け方の傾向などを取りまとめ、それらをシェーダーに落とし込むことに取り組みました。一連のアートディレクションにはカプコンのデザイナーの池野大悟(イケノ)氏に協力頂いています。

 こうして“苦難の道”を乗り越えて、「ストIV」シリーズのビジュアルの方向性がまとまることとなる。筋肉の筋は強調された表現ではあるが、陰影の明部にはそういった情報が消えるような一口ではセルシェーディングとも拡散反射モデルともいえないような、独特なカスタム異方性シェーディングが行なわれていることが見て取れる。

亀井氏:小野プロデューサーから「入口が見えたね」と言われたのがこの時です(笑)。

【「ストIV」プロトタイプその3】
左が「ストIV」のビジュアルデザインがほぼ確定した段階でのコンポジットビジュアル。Autodesk Softimage上で製作された。右が最初期のプロトタイプ版
【「ストIV」プロトタイプ映像その1】
【「ストIV」プロトタイプ映像その2】
【「ストIV」プロトタイプその3】
完成されたキャラクターのイメージショット



■ 「ストIV」シリーズのシェーダーアーキテクチャ

竹歳正史氏(Dimps 開発本部 ソフトウェア技術部 ソフトウェア技術課 R&Dグループ アシスタントチーフ リードデザインエンジニア)

竹歳正史氏(Dimps 開発本部 ソフトウェア技術部 ソフトウェア技術課 R&Dグループ アシスタントチーフ リードシステムデザインエンジニア):この後、このビジュアルコンセプトに基づいて実機に落としたプロトタイプ版の製作を行ないました。シェーダーにもてあそばれていた時期と言えるかも知れません(笑)。法線マップを使わないといけない。だったらスペキュラも乗せるべきかとか。ビジュアルコンセプトをどう実機に落とし込んでいくかだいぶ試行錯誤しましたね。

 アーティストがDCCツールのXSI(Softimage)に立ち戻り、GUI上でシェーダーの設計やテストが行なえるレンダーツリー機能を用いて実機に載せるシェーダー設計に取り組んだという。ゲームでは、1枚の絵を作り上げることだけが目的ではなく、実機上でシステマティックにシェーダーを動かさなければならないため、なるべく全キャラで一貫したシェーダーを動かし、表現の幅はそれに与えるパラメーターで実現することが望まれる。どうしても特異なシェーダーを動かさなければならない場合は仕方ないとしても、できるだけ、全キャラクター(場合によってはシーンに登場する全てのオブジェクトも)を共通するシェーダーで表現したい。そのために、「ストIV」シリーズのキャラクター表現に用いるシェーダーを、要素分解して設計することにしたというわけだ。


これが完成版
試行錯誤の末、「ストIV」シリーズが目指すべきビジュアルコンセプトがほぼ確定する。これがDCCツール上で仕上がったビジュアルコンセプト。現在の「ストIV」シリーズのビジュアルに近い

 様々な試行錯誤の結果、

(1)基本カラー
(2)拡散反射(ディフューズ)
(3)鏡面反射(スペキュラ)
(4)リムライト
(5)セルフシャドウ
(6)アンビエントオクルージョン
(7)コントラスト強調化
(8)照り返し表現

の要素に分解され、これらがほぼ全てのキャラクターのシェーディングに利用されることとなった。

竹歳氏:これらの要素を自分が実機に載せるための設計を行ないました。その際には、パフォーマンスが出るような最適化や、場合によっては同等の効果が出るフェイク的手法を導入しています。

 少しここで、上の各要素の補足解説と、各要素を実現するために竹歳氏が実践したシェーダーテクニックを紹介しよう。

 (1)基本カラーについては、拡散反射の結果とカラーテクスチャ(albedo)を元に、独自の疑似セルシェーダーで算出している。単なる二値的な濃淡をもたらすセルシェーダーとは異なり、テクスチャを拡散反射の計算結果で変調して色の濃淡をアグレッシブに付ける効果をもたらすのが特徴だ。この「絵筆で陰影を付けたようなタッチ」を実現したシェーダーは、開発チーム内では「Brush Shader」(ブラシ・シェーダー)と呼ばれていた。

【基本カラー】
「ストIV」シリーズで用いたブラシシェーダーをグラフ化したもの(左)。ブラシシェーダーの仮想コード(右)
ただテクスチャを貼り付けた結果(左)。ブラシシェーダーを適用した結果(右)

 (2)拡散反射の要素を用いて、「ストIV」シリーズでは、主要キャラクターに対しては、疑似的なスキンシェーダーを適用している。とはいっても表面下散乱シミュレーションを実施しているわけではなく、算術的な疑似手法になる。アルゴリズム的には「拡散反射の“陰”領域に対して赤みをやや強く演出する」という簡易的なものだ。

【ディフューズ】
疑似スキンシェーダーの仮想コード(左)。拡散反射の結果(右)
疑似スキンシェーダーの結果(左)。両方を加算した結果(右)

 (4)リムライト(Rim Light)は、逆光時にハイライトが溢れ出てくる効果のこと。これは視線と光源が相対に近い関係にあるときに、輪郭付近に光源色を混ぜて実現している。

 (5)セルフシャドウは自己遮蔽によってできる影のことだが、これについての詳細は影生成の解説のところで後述する。

 (6)は自己遮蔽項ともいわれる要素で、その箇所が他の箇所からどのくらい遮蔽されているかを事前計算して与える静的なセルフシャドウのことだ。「ストIV」シリーズでは、事前計算したこの自己遮蔽項を頂点単位で持つ形としている。

 (7)コントラスト強調化は、主に外周部(その視点から見て輪郭となる領域)に色味を強調させる効果をもたらす。多くの場合は黒ずんだような結果を生む。これは、拡散反射の陰影結果から、アーティストが設定した条件(視点と各面上の法線の位置関係から判定)に当てはまる箇所の特定色をハイライト色として付加することで実現している。

【自己遮蔽】
事前計算された頂点単位の自己遮蔽項(左)、輪郭線強調前(中央)、輪郭線強調後(右)

 (8)照り返し表現は、主に環境光からの影響で実現されるものになる。環境光とは、大局照明効果の簡略形の1つだ。「ストIV」シリーズでは、この環境光に関しては半球ライティング(Hemi-Sphere Lighting:HSL)の独自拡張系である「Mulitplex Hemi-Sphere Lighting」(MHSL)を使用している。

 天球光、地球光の2方向からなるHSLは「メタルギア ソリッド 4」で採用されていたことは本連載でも紹介したが、「ストIV」のMHSLは、天球光、地球光に加えて中空光の3方向から与えるものになる。「ストIV」シリーズではキャラクターが常に縦方向に大きく描かれるため、HSLの2方向の環境光では、豊かさが不足するのだ。

 例えば、上が空で、下が地面となるシーンでは、常に上半身が明るく下半身が暗くなるし、顔を下に向けただけで顔が暗くなってしまう(HSLでは高さではなく、面の向きで影響が決まるため)。「ストIV」シリーズで採用したMHSLによる3方向の環境光では、中空光がやや支配的になるため、そうした単調な陰影にはなりにくくなっている。なお、このMHSLのパラメータは、各ステージにつき1つの固定仕様で、ステージ中の各地点に設定されているわけではない。

【ライティング】
最も原始的な一様な環境光
半球ライティングによる2方向の環境光。今でもしばしば用いられる
「ストIV」シリーズで採用したMHSL(3方向の環境光)
3方向に拡張した半球ライティングの概念(左)、MHSLの仮想コード(中央)、MHSLの仮想コード(最適化バージョン)(右)

竹歳氏:セービング動作に入ったときに発動する墨絵エフェクトは、この照り返し部分がMHSLによる環境光ではなく、黒色になって「墨色」を表現します。同様にリムライトも意図的に黒くしています。こうすることで、輪郭付近から内部に墨が染み渡ってきたようなビジュアル効果を実現させています。なお、セービング動作時にメラメラっと燃えるオーラのような物自体はパーティクルです。

亀井氏:この他、「ストIV」シリーズ独特のシェーダーテクニックと言えば、「筆タッチシェーダー」の存在があります。これはいわゆる鉛筆画シェーダーに代表されるリアルタイムハッチングに近いものになります。

【筆タッチシェーダー】
筆タッチシェーダー適用前(左)、筆タッチシェーダー適用後(右)
リムライトを意図的に黒くした状態。製品版のセービングアタック時の表現ではこれにさらにパーティクルによる黒いオーラを付加してより墨絵らしい表現にさせている(左)。陰影の陰り部分で強く見られる、筆のストローク跡状の濃淡に注目。これが筆タッチシェーダーによる効果だ
筆タッチシェーダーあり/なしの比較。ハイライト付近には筆のストロークは抑えめになる

 これは、具体的には、ハイライト“以外”の箇所で出る、筆のストローク跡のような色の濃淡のことを指している。あまりにも「ストIV」シリーズのビジュアルにしっくりとハマっているため、気がつかなかったユーザーもいるのではないだろうか。これは、実はプロシージャル的に規則的なノイズを事前付加した法線マップを用いて実現されている。

 「ストIV」シリーズでも、法線マップは浮き出る血管や筋肉の隆起、シワなどの微細凹凸の表現手段として利用されているが、その法線マップに対して、一定条件を満たす箇所に対して、事前処理で筆のタッチに相当する凹み上の平行線を付加しているのだ。効果的にはPhotshopでいうところの「縮緬皺」(ちりめんじわ)フィルタに相当するとのことだが、ツール上で自動的にこの効果を付加した後、アーティストの手で補正や直しを入れている。

 この縮緬皺を付加した法線マップ自体は静的なものだが、ライティング自体は動的に行なわれるため、光源との位置関係が変わると、この筆タッチ効果による色の濃淡は出方が変わる。傾向としては、光が当たっている箇所にはあまり出ず、陰影の陰りの部分に強く出るシェーダー設計となっているようだ。

【縮緬皺(ちりめんじわ)フィルタ】
腕部分の法線マップ。縮緬皺フィルタ適用前
腕部分の法線マップ。縮緬皺フィルタ適用後
綾野智章氏(カプコン 東京制作部 制作室 編成チーム アシスタントプロデューサー)

綾野智章氏(カプコン 東京制作部 制作室 編成チーム アシスタントプロデューサー):もともと「ストIV」は、ストリートファイター生誕20周年プロジェクトとしてスタートしています。プロデューサーの小野がGDC2009で発表したように、「ストIV」は、ユーザーの脳内で補間されて残っている「ストII」の記憶の具現化ですから、イケノの描いたイラストが実際に動いているようなイメージが目標に掲げられていたんです。こうしたイラストテイストをリアルタイムに3Dグラフィックスで動かすために、Dimpさんには相当、難しい要求を出してしまいましたね(笑)。


【コンセプトアート】
イケノ氏のコンセプトアート(左)。方向性の確定した最終ビジュアル(右)



■ 「ストIV」シリーズのグラフィックススペック

 続いて、「ストIV」シリーズのグラフィックススペックについてみていくことにしよう。  「ストIV」シリーズのレンダリング解像度は1,280×720ドット。フレームレートは60fpsとなっている。

 プレーヤーキャラクターの1体当たりのポリゴン数は約16,000ポリゴン(約9,000頂点)。LOD(Level of Detail)の仕組みは採用しておらず、プレイ中とイベントシーンやウルトラコンボシーンなどのクローズアップにおいては同一モデルを使用している。プレイ中の1シーンあたりの総ポリゴン数は、キャラクター、背景、特殊エフェクト(VFX)、リアルタイム生成された影など全ての要素を合計すると約30万ポリゴン前後となっている。100万ポリゴン超が常態化している現行機の中にあっては控えめなポリゴン予算だ。

【ワイヤーフレームショット】
ファイナルショットとそのワイヤーフレームショット
メインキャラクターのファイナルショットとそのワイヤーフレームショット

 逆に、プレーヤーキャラクターの総ボーン数は約350本程度と相当リッチな仕様となっている。ダルシムに関しては特別仕様でやや多めになっているというが、標準仕様の主要プレイキャラクターのボーンは、身体本体が58本、手が40本、顔面で54本、この他、補助制御用のセカンダリボーンが約200本ほどという内訳になっている。一般的なゲームで言うところのイベントシーン向けの高品位モデルがそのままゲーム中に使われているという印象だ。

【ボーンとフェイシャルリグ】
メインキャラクターのボーンとフェイシャルリグを可視化したショット

 プレーヤーキャラクターの総テクスチャ枚数は8枚。内訳はカラーテクスチャが512×512テクセル仕様で4枚、法線マップが1,024×1,024テクセルで4枚だ。レンダリングパイプラインとしては、まず最初に描画されるのは2体のプレーヤーキャラクターで、続いて背景の描画が行なわれる。

 2体のプレーヤーキャラクターは確実に登場するため、背景を描画してからプレーヤーキャラクターを描画すると、背景を描画した部分が毎回重複描画されてフィルレートの無駄使いになる。ここまでで紹介したように、プレイキャラクター向けのシェーダー群は重めで、レンダリングコストが高いため、こうした上書き描画を避けるために、先に描く必要があるのだ。

 次に体力ゲージやウルトラコンボゲージなどの各種ゲージ類の描画が行なわれる。ここには特別な処理系が介入するのだが、これについては後編で詳しく解説することにしよう。

カラーテクスチャ(左)、法線マップ(縮緬皺フィルタ適用後)(右)

 そして最後に、波動拳などの飛び道具や、土煙などの特殊エフェクトの描画を行なう。エフェクト群を最後に描くのは、エフェクトのほとんどが半透明オブジェクトとなるためだ。

 HDR(High Dynamic Range)レンダリングについては、32ビット整数バッファを用いた疑似的なアプローチを採用する。実装形態としては「Half-Life2」(Valve)が採用していた、MRT(Multi Render Target)を用いた手法で、サブバッファに高輝度部分だけを出力し、これをボカして合成する手法だ。ボカしに際しては、抽出した高輝度部分バッファの内容を、解像度を下げて再び拡大することを数段階行なって合成する“川瀬式”縮小バッファ手法を利用している。

ファイナルショット(左)、MRT1のカラーバッファ。メインのレンダリング結果(中央)、MRT1のαチャネル。キャラクターだけを前面に描画するためのマスクとして利用されるほか、輪郭線付加にも利用(後編で解説)(右)
MRT2のカラーバッファ。高輝度部分が出力される。後段のパスで低解像度化されたボカされ、グレア/ブルーム効果としてメインのレンダリング結果に合成される(左)、MRT2のαチャネル。ポストプロセス用途の深度値として利用(右)

 モーションブラーエフェクトは、各キャラクターの身体部位の速度ベクトルをベロシティバッファに書き込んで、これを後段で参照してレンダリング結果をボカすアプローチを採用する。この手法についての細かな解説は本連載「ロストプラネット」編を参照して欲しい。

 ゲームプレイ中のモーションブラーにおいては、技の軌跡がわかりやすいように、キャラクターの部位の引き伸ばし処理を採用している。引き伸ばした部位の速度ベクトルをベロシティバッファに書き込んでからの処理は前出の標準のモーションブラー処理と共通だ。ただし、こちらのブラーはかなり薄めに合成される。これはプレイ中の視認性への配慮と、描かれるモーションの滑らかさとのバランスを取ったためだが、破綻の見えにくさにも一役買っている。

 なお、負荷低減の観点と、やや強調気味のブラー効果を出すために、ベロシティバッファとブラー生成の際にサンプルするレンダリング結果は低解像度のものを用いている。こちらもいわゆる縮小バッファ技法が採用されていると言うことだ。

モーションブラー(引き伸ばし効果なし)(左)、モーションブラー(引き伸ばし効果あり)。ゲームプレイ中は、ワザの軌跡が知覚しやすいように部位の引き伸ばしを盛り込んでブラーを強調している(中央、右)

亀井氏:引き伸ばし処理のための縮退ポリゴンは仕込んでいません。影生成用に使用している専用の低ポリゴンモデルを使って、なるべく破綻が見えにくいようにしています。こうした引き伸ばし処理は、複雑な形状の多ポリゴンモデルだと引き伸ばしたときに破綻しやすいのですが、ある程度シンプルな形状だと単純な引き延ばしでもそれなりの見た目になります。なお、家庭用機に移植する段階でモデルの最適化等を行なったため、アーケード版とではブラーの出方に若干の違いがあります。

 こうしてみてくると、基本的には、今世代のゲームグラフィックスで求められる主要な要素を全て詰め込んだ形になっていることがわかる。




■ 強いこだわりを持って作り込まれたフェイシャル表現

 意外に見逃されがちだが、実は「ストIV」シリーズはフェイシャル表現(顔面表現)に凝った作りとなっている。「ストIV」シリーズは、アクションアドベンチャーでもなければRPGでもないはずなのだが、ウルトラコンボ発動シーンやイベントシーンはもちろんのこと、普段の戦闘中でも、プレーヤーキャラクター達がとても豊かな表情を見せてくれる。生きた人間のようというよりは、ややオーバーアクション気味の劇画チックな躍動感溢れるフェイシャルアニメーションが行なわれており、「ストIV」シリーズの世界観と実にマッチしている。

【フェイシャルデモ】

亀井氏:「ストIV」の開発が始まった当時、スクウェア・エニックスさんの「キングダムハーツII」や「ファイナルファンタジーXII」を見たんですが、両タイトルともフェイシャルアニメーションにとても凝っていて、負けてられないと思いまして(笑)、がんばってしまいました。ただ、自然でリアルな者を目指すというよりは、インパクトを重視して顔面モデルへリグ配置を行なっていきました。

塚本高史氏(Dimps 執行役員 開発本部 第一開発部 部長)

塚本高史氏(Dimps 執行役員 開発本部 第一開発部 部長):「ストII」シリーズ自体も、ダメージを喰らったときに目が飛び出る表現があったりとかなりド派手な漫画チック、アニメチックな表情のドット絵で構成されていたので、「ストIV」シリーズでも、かなり弾けた表情に作り込んでいますね。女性キャラは美人度が下がるのでやや控えめにしていますが(笑)。

 顔面内に仕込むボーン数は基本的に全キャラ共通で54本だが、各キャラクターの顔面形状、顔面サイズに最適化した上でリグ設定を行なっている。

 喜怒哀楽をはじめとし、様々なリアクションを表現した表情アニメーションは手付けで作り込まれており、それらにはそれぞれIDが振られている。例えばリュウのウルトラコンボ「滅・昇龍拳」は、喰らった側の顔面は痛そうな表情と共に顎がひしゃげる顔面モーションが発生するが、この「痛そうな表情+顎ひしゃげ」の喰らいモーションのIDがn番だとすると、全キャラにおいて、この喰らいモーションがn番で登録されていると言うことだ。

 フェイシャル再生は5フレームごとのシーケンスで切られており、プログラム側は適宜、各アクションごとに設定されたフェイシャルモーションをID呼び出しの形で再生する。


【フェイシャルデモその2】

「ストIV」シリーズにおけるフェイシャルアニメーション。実際に利用されているフェイシャルのデモ映像

左上が標準状態。チュンリーは控えめに、ルーファスは大げさに。キャラクターイメージに見合うように顔面アニメーション表現がデザインされている

亀井氏:ただし、イベントシーンなどにおける各キャラクターの会話のクチパクや会話中の表情変化は、ID管理ではなく、各キャラクターごとに手付けでシーンごとに個別に設定されています。

竹歳氏:眼球については「死んだ目」にならないように、リアルタイムに瞳(黒目)のところにハイライトが出るような工夫を盛り込んでいます。ただし、常に瞳の中央ではなく、視点方向との位置関係によってリアルタイムに動きます。

 恐らくプレイしているプレーヤー自身は表情を見ている暇はないと思うので、是非とも対戦を鑑賞する際にでも動き回るキャラクターの表情や目の動きに意識を集中して見てみてほしい。技を出すとき、技を食らったときなど、局面局面に応じて、かなり多彩な表情表現を行なっているのがわかるはずだ。

【眼球シェーダー】
眼球シェーダーの擬似コード(左)、眼球にはリアルタイムにプロシージャル生成された煌めきが付加され、生きた目の表現を行なっている(右)



■ 「ストIV」シリーズのエフェクト

 「ストIV」シリーズは、格闘ゲームというジャンルのゲームであるため、背景キャラクターを除けば動き回るメインキャラクターは2体だけで少ない。だからこそ、メインのキャラクターのスペックが平均的な今世代ゲームグラフィックスよりも贅沢なわけだが、贅沢なのはキャラクターだけではない。「ストIV」シリーズは、エフェクト表現もかなりリッチな作りになっている。

 例えば、リュウの「波動拳」に関して言えば、総ポリゴン数は1,394ポリゴン(764頂点)もあり、さらにいえば、ケン、豪鬼、剛拳の波動拳は個別デザインで製作されている。

リュウの波動拳。ゲーム中とは違うアングルのショット
FumeFXは3ds MaxやMaya向けのプラグインソフトになる。流体物理シミュレーションを適用しながらエフェクト設計が行なえる

綾野氏:各キャラクターで気の練り方が違うんですよ(笑)。だから大きさから炎や煙の出方まで違っています。

塚本氏:そもそもアーティスト達が波動拳のマテリアルを設計する際には「波動拳は一体何で出来ているんだ?」と、かなり熱い議論が起こりました(笑)

 波動拳の外郭の“気”の流れのようなものと波動拳本体は半球状の3Dモデルの実体があり、波動拳本体の外周を舞う炎のようなものはパーティクルから成り立っている。このパーティクルアニメーションに用いられるテクスチャ素材は、流体物理シミュレーションベースのエフェクトが製作できるFumeFXを用いて作成されたものだ。


【パーティクルアニメーション】
完成ショット(左)、キャラのみ(右)
波動拳・ポリゴンオブジェクト部分(左)、波動拳・パーティクル部分(右)

 また、波動拳などの飛び道具には点光源がセットされており、周囲にリアルタイムライティング効果をもたらす。これもプレイに集中していると見逃してしまいそうな作り込みだ。

竹歳氏:仕様上、各プレーヤーキャラクターが影響を受ける光源数は4つまでに制限されています。2つはステージ関連の光源で、残り2つがそうしたエフェクト関連の光源です。例えばあるキャラクターの近くに3つ以上の光源が設定された発光体エフェクトがあった場合は、その中の2つの光源でしかプレーヤーキャラクターをライティングしません。ただし、複数の光源付きエフェクトの位置が近い場合などは、光源を合成するなどして、この仕様制限内で見た目に不自然さが起こらないような工夫も盛り込んでいます。

【光源処理】
波動拳には光源が仕込まれている。左がこの効果をオフにしたもの。右がこの効果をオンにしたもの。製品版では右の状態だ
ソフトパーティクル処理によりパーティクルの交差線を消している

 エフェクト群の描画はちゃんとデプスに配慮した形で行なわれ、その際にはソフトパーティクル処理に配慮する。ソフトパーティクル処理とはパーティクルと交差するオブジェクトや背景が合ったときに、パーティクルを淡く(透明度を上げて)描画することで、パーティクルと他オブジェクトとの不自然な交差線アーティファクトを回避するテクニックのことだ。

 なお、エフェクト群の描画自体は、最終表示用のフレームバッファよりも解像度の低い縮小バッファに対して行なわれ、これが最終表示用のフレームバッファの解像度に拡大されて合成される。




■ 「ストIV」シリーズにおける影生成

 「ストIV」シリーズの影生成に関しては少々独特な作りになっている。まず、2体の主要キャラクターのセルフシャドウ生成には「デプスシャドウ」(Depth Shadow)技法が利用されている。

 デプスシャドウ技法は、今世代の3Dゲームグラフィックスにおける主流とも言えるリアルタイム影生成技法で、まず光源から見たシーンの深度情報(奥行き情報)をテクスチャにレンダリングすることから始められる。これは、その光源から遮蔽されている箇所の分布図に相当し、これを特に「シャドウマップ」と呼ぶ。最終的なシーンのレンダリング時には、各ピクセル描画時に、そのピクセルがその光源から遮蔽されているかどうかを、生成したシャドウマップを参照しながら判定していき、遮蔽されていると判断されたときには影としてそのピクセルを描画する。

 なお、「ストIV」シリーズでユニークなのは、デプスシャドウ技法による影生成をセルフシャドウ生成専用としており、地面に投射される影については、別技法で生成している点だ。

 地面に生成される影については、光源から見たオブジェクトのシルエットをテクスチャにレンダリングし、これを投射テクスチャマッピングを用いて貼り付ける「投射影」(Projection Shadow)技法を採用している。この投射影技法は、飛行場ステージの動く飛行機のような動的な背景オブジェクトの影生成にも利用されている。

【影生成】
影・全オフ(左)、投射影のみオン(中央)、影・全オン(投射影+デプスシャドウによるセルフシャドウ)(右)

 こうした2WAYの影実装にしたのは、パフォーマンスとクオリティのバランスに配慮したためだ。

 デプスシャドウ技法で、大局的に高品位な影を出そうとすると、シャドウマップ解像度を高く取らなければならず、その分生成負荷が高くなる。そこで、デプスシャドウ技法は、主要キャラクター2体のための高品位なセルフシャドウ生成専用に限定したのだ。

 原始的な手法ゆえに負荷が軽い投射影技法だが、この技法はその実、単なる投射テクスチャマッピングなので、1回の投射影技法による影生成では、その投射先は1つに限られてしまう。「ストIV」シリーズの場合でいえば、投射影技法による影の描画先は「地面」ということになる。

 しかし、引き合いに出した飛行場の飛行機の翼の影のように、地面だけでなく主要キャラクター2体に覆い被さるような状況では、その投射先を地面とキャラクター2体に設定しなければならない。こうした処理は投射影では自前で手動実装しなければならないのだ。

 そこで、開発チームは、投射影による影生成を4段階のレイヤー構造にする工夫を実践した。具体的には、そのシーンの投射影の元ネタとなるオブジェクトのシルエットをαRGBの各チャンネルにレイヤーに分けて生成するようにしたのだ。

 αチャネルには必ず地面に落ちるシルエットを出力し、Rはキャラクターオブジェクトの影を除いたシルエットを出力。Gにはキャラクターより高い位置にあるオブジェクトのシルエット、Bにはさらにそれよりも高いオブジェクトのシルエットを出力する。

【影生成】
飛行場のシーン。飛行機の翼は投射影によるもの。この翼の影を地面とメインキャラクター達に投射するために特別なレイヤー処理系が盛り込まれた(左)、このシーンにおいてRGBに分けて出力されたレイヤーシルエット(中央)、αチャネルには地面に投射される影が出力される。飛行機の機体、背景、メインキャラクターなと全てのシルエットがここに出力される(右)

 実際の投射影の描画時には地面にはαチャネル内に出力されたシルエットを影として描画し、それ以外のRGBに出力されたシルエットは、シーン内に存在するオブジェクトの大体の高さに応じて投射先を選別して描画する(≒投射テクスチャマッピングを行なう)。前出の飛行場の飛行機の例で行けば、この仕組みのおかげで、飛行機の翼のシルエットは地面と主要キャラクター2体に投射されることとなるのだ。

 なお、デプスシャドウ技法のシャドウマップ生成および、投射影用のシルエット生成にはLight-Space Perspective Shadow Maps(LSPSM)が利用されている。LSPSMについては本連載の「Xbox 360用ゲームライクテクニカルデモ『妖精の棲む森』の秘密」編で解説しているので、詳細についてはそちらを参照して欲しい。

 さらにいえば、「ストIV」シリーズの影にはソフトシャドウ処理が適用される。デプスシャドウ技法ベースのセルフシャドウの方には4点近傍比率フィルタリング(PCF:Percentage Closer Filtering)が適用され、投射影技法の影にはシルエットテクスチャに対して、2×2の4点に対して重み付けをしてぼかす9コーンフィルタサンプリング技法が用いられている。

竹歳氏:実は煙エフェクトにも影投射によりキャラクターや背景の影を受けています。物理的に正しくはありませんが、波動拳を撃った時に出る土煙にも投射されています。

 後編では、ゲームデザインやゲーム性に配慮して設計された独特なグラフィックス要素の話題をお届けする。

【セルフシャドウ】
セルフシャドウはデプスシャドウ生成用に使用(左)、製品版ではこれを4xPCFによりボカしてソフトシャドウ化している(右)
製品版ビジュアル(ただし、カメラアングルは変更)(左)、セルフシャドウ生成用のシャドウマップ(右)
投射影による影については9コーンフィルタサンプリング技法によってボカしてソフトシャドウ化している

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(2011年 11月 30日)

[Reported by トライゼット西川善司]