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Game Developers Conference 2009現地レポート

「ストリートファイターIV」原点回帰
課せられた使命。それは「美化された思い出に答えること」

セッションの様子

3月23〜27日開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Center



小野義徳氏

 セッション「IV Style:Returning to the Roots of a Fighting Game Classic」では、この21世紀に復活した伝説的格闘ゲーム「ストリートファイター」(以下、SF)シリーズの最新作「ストリートファイターIV」についての誕生秘話が語られた。登壇したのは株式会社カプコン 開発統括本部 オンライン開発部長、小野義徳氏だ。

■ 原点回帰。「SFII」の興奮をもう1度

 まず語られたのは、どうして前作「SFIII -NEW GENERATION」(1997年)から約10年のブランクを開けて、いわば重い腰を上げて「IV」(2008年、アーケード版)のプロジェクトをスタートさせたのかということについて。

 これは小野氏の関わった新作タイトルの発表会の記者会見などを行なうたびに、記者やファンの方から「次のSFはいつ出るんですか」と繰り返し聞かれることがきっかけになったとしている。

 小野氏としては、「SF」シリーズは「III」でゲーム性やシリーズ構成の面で完結したと考えていたのだが、こうした声をきっかけに改めて調査をしてみると、小野氏が思っている以上にユーザーやファンが「SF」の復活を待ち望んでいることを知る。そこで、当初の「SF・シリーズ凍結」方針を転換し、21世紀版「SF」の開発をスタートさせることとなった。

「SF」復活を待ち望むファンの声が予想外に大きかったことで小野氏の心が動く!

 「SF」シリーズは、10年〜15年というブランクを開けての復活となるため「プレーヤーは何を望んでいるのか」に対する答えの導き出しには、そうとう頭を悩ませたという。紆余曲折の結果、小野氏は「原点回帰」(Origin)というキーワードに行き着く。

 新しくて誰も見たことのない超新作の「SF」ではなく、みんなが夢中になったあの頃の「SF」を、古くささを感じさせない方向性でなんとか復活させられないか。この考えが思い浮かんだ時、小野氏の中で21世紀版「SF」の姿がはっきりと見えたようだ。

「原点回帰」。これが復活版「SF」のコンセプト・キーワードとなった

 その「原点回帰」の方向性とは、プレイしたときに「あの頃」の興奮や面白さが蘇る、いわば「同窓会」(Reunion)のような感覚ということになる。

 この時点で、「原点回帰」が格闘ゲームとしての一大ブームを築き上げた「SFII」に定められ、また同窓会のような感覚というのは、「『SFII』をプレイしたときに体験したあの頃の思い出が呼び起こされるような感覚」というふうに具体的なイメージが決まっていく。

 「我々の思い出は、得てして美化されることが多い。しかし我々は、長きに渡って『SF』の復活を待ち望んでいたファンの期待に恩返しするためにも、その美化された思い出を裏切ることはできないと思った」(小野氏)

美化された思い出を裏切らないこと。それが復活版「SF」に課せられた使命

 そこで、美化された思い出を裏切らない洗練された表現として3Dグラフィックスを採用するも、キャラクターの見た目、振る舞いなどは、極力「SFII」のものを大事に継承することに努めたという。これは3Dグラフィックスを採用しながらも、衝突判定をあえて2D的に行なったという「SFIV」のゲーム性として反映された。

実際はこんな映像だったはずの当時のキャミー(イメージ) 思い出の美化により、こんな感じでファンには記憶されている。これを裏切らないことを目指した

 そして、原点回帰の復活作とはいえ新作ゲームであるため、新要素の追加を行なうことは避けられない。しかし、それをプレーヤーに必須なゲームシステムとして強要しないことに気を配ったとも小野氏は振り返る。

 そう、これは「SFIV」の新要素であるセービングアタック(洋名:フォーカスアタック)と呼ばれる、相手の攻撃を1度受けつつも反撃する「当て身攻撃」システムのことをいっている。「SFIV」では、このセービングアタックを使いこなすことでより戦略の幅が広がるが、これを使わず「SFII」のルール範疇内のゲーム性でも十分面白く遊べるように調整がなされているのだ。

あのプレイ感覚をもう1度!?

衝突判定は2D格闘的にわざと当時風に
3Dグラフィックスがなしえるスムーズなアクションをあえてキャンセルし、2Dスプライト時のようなコマ割りを採用

 小野氏は、「あの頃のプレイ感覚」を再現するための秘話的なエピソードとして興味深い話を2つほどしている。

 1つは、アクションの勝ち負けを決定づける衝突判定について。これを2D的に行なうのは前述した通りだが、3Dグラフィックスを2Dに投射して作り出す論理的な2D領域的で試したところ、違和感がでてしまったのだとか。理屈としては正解なはずなのだが、プレイ感覚がなにか違うと感じたため、まさしく2D格闘時代のような、おおざっぱな四角形領域で指定するようなメソッドを取ることとなった。

 2つ目は、キャラクターのアクションについてだ。せっかくの3Dグラフィックスによるスムーズな動きをあえてキャンセルし、2D時代の格闘ゲームのスプライトキャラクターの動きのような、アクションとアクションの間が少々飛んでいるようなアニメーションとなるようにも調整しているのだ

■ 優れたゲームは後世に伝えていきたい

 新要素のセービングアタックを使わなくても楽しめるようなゲーム性が実現されているが、シンプルで使いやすく、そして使うことでゲームプレイの幅が広がることを目指したものだと小野氏は言う。

新要素のセービングアタックは奥深いが、発動は簡単操作に設定

 「SF」シリーズは、対戦格闘ゲームというよりも対戦格闘ツールと呼ばれるようなチェスのような定番ゲームとされてきた。その系譜で「SFIV」は、「SFII」のゲーム性にこのセービングアタックシステムをプラスすることで、初心者からプロ級まで幅広く遊んでもらえるような対戦格闘ツールとしてのゲーム性の構築に成功した。

 カジュアルにプレイする初心者は「SFII」的にプレイすればいいし、このセービングアタックを使いこなしていけば、そのプレーヤーは「SFIV」の奥深いゲーム性の新境地を徐々に発見していくことになる。

 初心者とコアゲーマーがそれぞれの遊び方で遊べもするし、初心者は高見を目指してセービングアタックを使いこなしていけば上の世界が見えてくる。「SFII」全盛期を最後にゲームから離れた出戻りゲーマーの再引き込みから、コア格闘ゲーマーへのサービスまでを同時に実現できてしまった「SFIV」のデザインは見事である。

「SFIV」は21世紀の対戦格闘ツールの絶対的な地位を確立するか

 小野氏は、今回の「SFIV」のプロジェクトを経て感じたことがあるという。それは定番とされる優れたゲーム性を持つゲームを、その本質を継承しつつ、その時代に適合した形で後世に伝えていくということ。

 こうした名作を後世に伝えるということは演劇、映画などの娯楽芸術でもしばしば行なわれることだ。コンピューターゲームは新しい文化、あるいは若い芸術娯楽だと思われがちだが、すでに最初のテレビゲーム/コンピューターゲームが誕生して30数年以上が過ぎており、いまやそこそこの歴史がある。またコンピューターゲームは、その時代時代のソフトウェアのあり方をコンパクトに具現化したものであり、コンピューターサイエンス的な視点での時代の映し鏡ということができる。その歴史体系やスタイルの系譜には人智が凝縮されているといってもよく、その価値は大きい。

 ただ、コンピューターゲームは記録形態としては劣化しないデジタルメディアでありながら、ハードウェアの更新によって動作しなくなり、忘れ廃れてしまう危険性をはらんでいる。

 チェスや将棋のように、祖父と孫が同じコンピューターゲームをプレイして盛り上がれるような時代を築き上げて行くには、時代を超えて愛される名作ゲームを継承していくという意識が確かに必要かも知れない。リメイクとして伝えるべきか、ジャンルとして確立させて伝えていくべきなのかについては、さまざまな議論はあるだろうが。

コンピューターゲームは、後世に伝えていくべき娯楽芸術になりつつあるのかもしれない

「『SFII』そのまんまじゃないですかというイヤミは、むしろ褒め言葉に聞こえますよ」(小野氏)

 小野氏は講演の最後に「SFIV」のプロジェクトで感じたことを、こう結んでいる。「ゲーム開発プロジェクトがどんどん大型化していく昨今、これからのゲーム開発において最重要視していかなければならないことは、まずユーザーの要望に応えるゲームを開発すること。そしてその中でプレーヤーに何を感じ取ってもらいたいのか、どう遊んでもらいたいのか、ということをシンプルに明確化していくことではないか」と。

 映像体験の品質だけが重視されがちな今世代のゲーム開発に対し、プレイ体験こそを重視していくべきだという小野氏のメッセージは、コンピューターゲームそのもののあり方についての原点回帰を呼びかけているようにも思える。

ネットワーク対戦の新しいスタイルを実装したことも紹介。「SFIV」では、対戦ロビーで対戦希望者を待つのではなく、シングルプレイゲームを楽しんでいる時間を対戦待ち受け状態にできる。ゲームセンターにおける乱入のような雰囲気で対戦待ちができる



2009329日)

[Reported by トライゼット西川善司]



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ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

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