レビュー
「スプリット・フィクション」レビュー
協力プレイが作り出す絆。2人の主人公による物語と世界観が面白い
2025年3月5日 01:00
- 【スプリット・フィクション】
- 3月7日 発売予定
- 価格:6,900円
協力プレイに特化したゲームを送り出してきたスタジオであるHazelight Studios。2人の囚人が協力して脱獄を目指す「A Way Out」、2021年の「The Game Awards」でゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞した「It Takes Two」に続く最新作「スプリット・フィクション」がいよいよ2025年3月6日に発売される。
本作の特徴は、やはりHazelight Studiosのタイトルらしく“2人プレイが必須”という点だ。ただし「フレンドパス」機能によって必要なソフトは1本だけで、ゲームを所有しているプレーヤーがフレンドを無料プレイに招待できる。さらに「It Takes Two」では出来なかったPS5/Xbox Series X|S/PC間でのクロスプレイにも対応しており、プラットフォームの垣根を超えた協力プレイが可能になった。
SFとファンタジーを融合させた世界観、性格が真反対の2人の主人公、そして多彩なゲームプレイを通じて繰り広げられる協力プレイの数々。「スプリット・フィクション」は単に2人で協力するゲームではなく、主人公同士の絆が深まっていくにつれて、プレーヤー同士の信頼関係も深まっていく。本稿では「スプリット・フィクション」のレビューをお届け。2人で遊ぶからこそ味わえる楽しさを紹介しよう。
対照的な2人の作家が紡ぐ協力冒険譚
本作はミオとゾーイという性格や創作スタイルが真反対の2人の作家が主人公だ。ミオとゾーイは出版社に騙されてしまい、作家のアイデアを盗むために設計された機械に接続され、そこで2人は自分たちの物語の世界に閉じ込められてしまう。
ミオは都会で父親と育った女性。作家としての名声や認知よりも、金銭的報酬を求めている。好みのジャンルはSFで、ネオンに照らされたサイバーパンクな都市、未来的な兵器工場、さらには宇宙空間を舞台にした作品を書いている。内向的だが決断力があり、現実主義者、控えめという性格だ。
一方、ゾーイは田舎育ちの明るい少女で、家族に自分が“失敗者ではないことを証明したい”という願望を持ち、出版契約が全ての問題を解決すると期待している。好みのジャンルはファンタジーで、トロールに占領された町からの脱出、氷河期と戦う森、絶滅寸前の最後のドラゴンを守るといった物語を書いている。性格はカリスマ性があり共感力が高い、外向的な楽観主義者となっている。
このようにタイプが全く異なる2人が、1つの運命に縛られることになる。2人の最初の出会いはエレベーターなのだが、その時点では水と油といった関係性。ミオはゾーイに対して、けんもほろろという言葉が似合う冷徹な対応をする。最初はお互いに打ち解けないが、それぞれの物語の中で協力しながら進んでいく中で、徐々に信頼関係が生まれていく。
この信頼関係は本作を一緒にプレイするプレーヤー同士にも言えるかもしれない。最初はよくわからないままゲームが進んでいくが、相手側の画面を見ながらアドバイスをしたり、その進行状況を見ながら阿吽の呼吸で進み方を調整して、止まって待ったり、協力プレイをしたりする。ゲーム内のキャラクターの信頼関係が深められるのにあわせて、プレーヤー同士の信頼関係も構築されるのは面白い。
ミオとゾーイ、タイプが異なる2つの世界のビジュアル
そして、それぞれのキャラの物語によって、ステージが変わるところも面白い。先ほども紹介したとおりミオはSF作家、ゾーイはファンタジー作家だ。本作にはそれぞれの創作の世界が登場するので、ファンタジー作品らしい幻想的なステージと、SF作品らしい未来的なステージが登場する。
ミオのSF世界ではサイバーパンクな都市の世界で、2人がサイバー忍者として活躍するステージが登場。一方ゾーイのファンタジー世界であればトロールが歩き回る世界が広がったりする。SF世界の鮮やかなネオンと、ファンタジーののどかな世界のギャップはなんとも面白い。
「閃き」と「協力」が必要なステージ
それぞれの物語にあわせてミオとゾーイのビジュアルが変化するのに合わせて、キャラクターの能力も変化する。またストーリーを進めていくと、ところどころに「サイドストーリー」が挟まれ、それもまたそれぞれで世界観が違う。ゲームプレイにも緩急が付くし、ビジュアルも変わるのでプレーヤーを飽きさせない。
特に印象に残っているのは、2人がブタになってしまうサイドストーリーだ。片方は体がバネになり高いところに移動できるという能力、もう片方はオナラで空を飛ぶという能力を持っている。書き起こしてみると“クスッ”と笑ってしまうのだが、このユニークな世界観はゾーイが子供の頃に書いた物語がベースになっている。シリアスな展開が続くサイバー忍者の物語の途中に、このサイドストーリーが始まると、自分たちがブタであることに主人公たちは驚くし、プレーヤーとしても驚かされた。
だが決して見た目だけが面白いわけではなく、それぞれの能力を活かさなければ到達できない場所があり、そこにゲームを進行させるためのアイテムが配置されている。謎解きというには大げさだが、周囲をくまなくチェックすることに加え、ちょっとした閃きも必要だ。それぞれの画面を見ながら試行錯誤する協力プレイができ、それもまた楽しかった。
また、このサイドストーリーは展開も面白く、最後は自分たちがソーセージになり、ホットドッグになって食べられるところで物語が終わった。色んな意味で“それはアリなのか?”と思ったが、これがゲームプレイの良いアクセントになった。
一方のSF世界では、刀でオブジェクトを切ったり重力を操れる能力を持ったキャラクターと、ムチを使ってオブジェクトを掴んだり投げたりできるキャラクターに分かれてゲームを進めて行った。最初は「こんなところどうやって進むの?」となるステージも、実は刀を使って重力の向きを変える必要があったり、大きなガラスで塞がれているところは、ムチで近くにあるオブジェクトをガラスにぶつけて割って進んでいく。こういった能力の使い分け、2人の協力でゲームを進めていくのが本作の魅力だ。
クロスプレイ対応! フレンドとプレイしやすくなった「スプリット・フィクション」
前述したように「スプリット・フィクション」は2人プレイが必須。今回は妻と一緒にプレイしたのだが、テンポ良く変わっていくステージや、それぞれの能力の違いと役割分担、そして徐々に打ち解けていく2人の掛け合い。それらが上手く混ざり合って楽しい時間を過ごすことができた。
本作はローカルで画面を分割して2人遊ぶこともできるし、オンラインでも1人のプレーヤーがゲームを持っていれば、一緒にプレイするフレンドはゲームを持っていなくてもプレイできる「フレンドパス」という機能もあり、友達を誘ってプレイしやすいのもありがたい。
また「It Takes Two」ではクロスプレイ非対応だったため、PS5とXbox、SwitchとPCといった異なるプラットフォームだと一緒にプレイできなかったのだが、「スプリット・フィクション」ではクロスプレイに対応。今回はSteam版同士でマルチプレイを行ったのだが、PS5やXbox Series X|S、PCと異なるハードウェア間でも協力プレイが可能になったので「一緒に遊びたいけど持っているハードが違う」という障壁も取り払われている。
加えて、アクセシビリティオプションも充実しており、ボタン操作のカスタマイズやカメラ操作のアシスト機能、敵からのダメージ軽減などの設定も可能だ。これによって、ゲームが苦手なプレーヤーと一緒に遊ぶ時も好みに合わせた操作方法、難易度にカスタマイズすることが可能だ。
2人プレイに特化したタイトルを送り出してきたHazelight Studiosによる最新作「スプリット・フィクション」には、2人での協力プレイを前提にしているからこそ楽しめるゲーム体験があった。ぜひ、家族やフレンドを誘ってプレイしてみて欲しい。
(C) 2025 Hazelight Studios AB.
「スプリット・フィクション」(原題:Split Fiction)およびHazelightはHazelight Studios ABの商標です。EA OriginalsはElectronic Arts Inc.の商標です。