レビュー

「バーチャファイター5 R.E.V.O.」レビュー

戦いの場は、PCへ! 対戦バランスも一新され、革命の始まりを予感させるタイトル

【Virtua Fighter 5 R.E.V.O.】

1月28日 発売

価格:
スタンダードエディション 2,500円
30thアニバーサリー・エディション 6,980円

 セガは1月28日、Windows用対戦型格闘アクションゲーム「Virtua Fighter 5 R.E.V.O.」を発売した。

 本作は、およそ3年半ぶりとなる「バーチャファイター」シリーズ最新作。PS4・アーケードにてリリースされている「Virtua Fighter esports」(略称VFes)をベースに、対戦バランスの見直し、そしてロールバックネットコードに対応した。また、本作のリリース発表から間髪を入れず、「バーチャファイター」完全新作のプロジェクトが始動したことも発表された。シリーズファンからそちらの動向も期待されており、今最も新作が期待されている3D格闘ゲームシリーズと言えるだろう。

 本稿では、前作「Virtua Fighter esports」をプレイしていた筆者が、今作でどのように変化したのか、何を感じ取ったのかをお届けする。

【『Virtua Fighter 5 R.E.V.O.』プロモーション映像】

10年以上蓄積されたデータから作られた、対戦が白熱するバランス調整が実施!

 本作を語るうえで欠かせないのが、2021年にリリースされ、本作のベースとなった「VFes」である。「VFes」は、2010年に稼働開始したアーケードゲーム「Virtua Fighter5 Final Showdown」のグラフィック・演出を、「龍が如く」にて用いられているドラゴンエンジンによって強化した作品である。

 しかし、「VFes」」では、ゲームバランス関連の変化・調整は行なわれなかった。そのため、「VFes」はシンプルに言えば「グラフィックがキレイになった『Final Showdown』」という印象の作品だった。

 だが昨年末、「VFes」のVer2.0アップデートが急遽発表。その際に待望の対戦バランスの再調整が行なわれることがアナウンスされた。この調整内容は「R.E.V.O.」にも適応されている。調整内容はVer.2.0変更点リストに記載されているが、その調整内容は多岐にわたり、ほぼ新作では? と感じるほどである。

 なお、現行の「VFes」と「バーチャファイター5 R.E.V.O.」は、ゲームバランスは同一のものとなっているが、クロスプレイはできないので注意してほしい。

「VFes」時点で最強キャラと評価が高かった「バーチャ」シリーズの主人公・結城晶。その強さを支えていた技の1つが開胯(かいこ)である
立ちガードをしている相手に決めると、一定時間無防備になるフレームを得る。ここから14Fの技がヒットするため、コンボでまとまったダメージが取れていたが、本作では得られる有利フレームが減り、ガードを外したときのリターンは減少。しかし、開胯中に白虎双掌打が出せるようになったため、壁際でのリターンは増加している

 全体的な変更で影響が大きいものを挙げると……。

・立ちパンチの仕様変更
・キャラごとの体重を調整

の2点だろう。これらについて解説する。

 1つ目は、立ちパンチを特殊な入力なしに前に踏み込むものへの変更したことだ。かつての「バーチャ」では、方向キーを前に入れながら立ちパンチを入力すると、ニュートラルでパンチを入力した時より1フレーム発生が遅くなるかわりに、前に踏み込みつつ攻撃していた。これにより、空中コンボに立ちパンチを組み込む際に当てやすくしたり、立ち回りで速さを犠牲に当てやすさを重視することができた。これをニュートラルでのパンチでも同じ仕様にしたということだ。

 体験談だが、「バーチャ」初心者に空中コンボを教える際は、コンボのときだけ前述の踏み込み版を使いわけしないといけないことや、方向キーを入れっぱなしにしてからパンチボタンを押すという操作は初心者にとっては意外とハードルが高い要素であった。これが改善されたというのは、「バーチャ」の敷居を低くするという意図が感じられた。

 2つ目はキャラクターの体重調整である。「バーチャファイター」では、キャラクターの体力は全キャラクター共通となっているが、攻撃を喰らい、キャラクターが空中に浮く際の高さがキャラクターの体重によって異なる。体重別で空中コンボでヒットする技の種類やコンボ数が変化し、与えられるダメージ量が変わってくるため、2D格闘ゲームにおけるキャラクターごとの体力の違いに近い調整となっている。

 「VFes」の時点では、超重量級>重量級>中重量級>中量級>軽量級>最軽量級の6種類に分類されていたが、本作では中重量級を撤廃し、そこに該当していたキャラクターは中量級へ変更された。また、一部のキャラクターは逆に体重が増加され、被ダメージを抑える調整が行なわれた。

 「VFes」では、オフェンス性能が高く、それでいて体重が重めの中重量級のため、被ダメージが低かった晶・ジャッキーが猛威を奮っていた。それを抑えるため被ダメージを大きくする調整だろう。また逆に体重が軽すぎたキャラクターは体重を重くし、空中コンボで大ダメージを受けたり、長い距離を運ばれて容易にリングアウト負けを喫してしまう事を抑えるアッパー調整が行なわれたと考えられる。

 「VFes」時点で対戦バランスが良く、キャラクターの強さより人の強さが反映されやすい作品だったが、さらにキャラクターごとの格差は是正され、さらにどのキャラクターでも戦える作品へ進化したと言えるだろう。

今作では、オミットされた技が復活するというバランス調整とファンサービスを兼ねたアップデートが行なわれている。初代からパワフルな打撃と投げを誇るジェフリーは、「VFes」では使えなかった投げ技「スプラッシュマウンテン」が復活した。彼の代名詞が十数年ぶりに復活したので、ジェフリー使いには感涙モノだろう

 「VFes」との対戦バランスの違いを感じたのは、特に体重の変化である。ベースとなる「VFes」では体重がかなり重要視されていた。本作は空中で与えられるダメージが高いため、重いキャラクターは被弾したときのダメージを抑えられることは大きなメリットだ。

 その恩恵を受けていたのがかつて中重量級に該当し、「VFes」では最強キャラクターの座を争っていた晶・ジャッキーの2名だろう。高いオフェンス性能を持つ両者は体重も重いため、実質的な防御力が高かった。しかし、体重調整により与えられるダメージが増加したため、以前より相手していて苦にならなくなった。

 また、評価が低いキャラクターも強化を感じられた。例えば、飲酒を行なうことで攻撃力や使用できる技が増えて強化されていく酔拳使いシュンは、飲酒カウントが増えやすくなり、以前より短期決戦に強くなった。今までは長期戦にならないとなかなか真価を発揮できなかったが、今作ではかなり能動的に飲酒カウントを増やせるので対戦していて脅威と感じた。

 晶・ジャッキー・鷹嵐のような強キャラクターが持っている猛威を奮った技はやりすぎないように修正され、逆に弱かったキャラクターは攻撃的に戦えるような調整がされている傾向が感じられ、キャラ性能の差は「VFes」より改善されている。

ロールバック対応により国内外とのオンライン対戦が快適に!

 さて、前述のゲームバランス調整に関しては先日Ver2.0のアップデートを受けたPS4、アーケード版の「VFes」と同じものである。だが、本作オンリーワンの機能としてはこのロールバックネットコードの実装が挙げられる。

 ロールバックネットコードは、オンライン対戦時にどうやって通信するかというゲーム側の仕組みである。予め描画を先読みで描写することで描画の違和感を減らして快適にオンライン対戦を行なえる技術である。

 「バーチャファイター」シリーズは2D格闘ゲームほど大きなフレームのやり取りをすることは少ない。普段は1~5F程度の有利・不利を一瞬で判断する素早いゲーム展開が「バーチャ」のウリだ。また、大技をガードしても2D格闘ゲームの大技をガードしたときほどの反撃の猶予はない。

 そのため、スピーディーな操作、判断が要求される「バーチャ」シリーズでは、格闘ゲームの中でも際立って遅延問題は死活問題と言える。だが、本作ではロールバックネットコードの実装により、海外との対戦も充分視野に入るレベルとなった。

 国外との対戦は違和感が強く筆者は対戦することは避けていたのだが、本レビュー執筆のために行なったオンライン対戦では、中国プレイヤーとも格闘ゲームとして許容範囲のラグで対戦ができていた。これならば海外との交流があるVFプレイヤー同士であっても問題なく遊べるはずだ。

スクリーンショット下部に注目していただきたい。オンライン対戦中に現在のディレイ・ロールバック・ping値が表示されるようになっている。これは本作からの機能である

 なお、このロールバック機能にはどれぐらいの頻度でロールバックを行なうかという設定がゲームオプション内で変更できる。これの数値を変更することで自分に合った最適な環境を構築できるのだ。

 実際プレイしたところ、初期設定では国内のプレイヤーかつ回線相性が比較的良い場合でもロールバックが頻発し、かえってプレイしにくくなることがわかった。オプションで最適な数値を探っていきたい。

オプション画面の設定でロールバックの頻度を設定でき、描画表現を重視するのか、それとも操作性を重視するのか、その中間を選ぶのかのプリセット+自分で数値を任意に設定できるカスタムの4種類が選択できる。筆者の私見では、レスポンスを選択するのが最もオンライン対戦で違和感を感じにくい

 また、PCになったことで入力レスポンスが向上し、元々の操作感もよくなっていると感じた。特に、投げを回避した際の掴みモーションに反撃しやすくなっていると実感した。

 相手の投げをしゃがみで回避した際は、相手は掴みモーションが発生し若干の隙が生じる。ここに打撃技で確定反撃を入れることが上級プレイヤー同士の対戦では貴重なダメージ源となる。筆者がかつてプレイしていたPS4版「VFes」でこれを実行するのはオフラインの環境でもかなりシビアだったが、「R.E.V.O.」では高い精度でこの反撃を行なうことができる。これも舞台がPCへ変化したことの恩恵ではないだろうか。

PS4版「VFes」には存在しなかったグラフィック等の描画設定が本作では可能。これによりPCへの負荷を制限すれば、より快適な対戦環境を構築できる。掲載しているものは筆者が設定している描画設定を撮影したもの。このように設定すれば快適な対戦環境も作れるはずなので、各々ベストな設定を見つけてほしい

秘蔵設定資料集やサントラが付属する「30thアニバーサリー・エディション」も発売

 本作には、「バーチャファイター」シリーズの30周年を記念し、秘蔵設定資料集やアニバーサリーサウンドコレクションがセットになっている「Virtua Fighter 5 R.E.V.O. 30thアニバーサリー・エディション」も発売されている。同梱されているデータは以下の通りだ。

【30thアニバーサリーエディション セット内容】

・「Virtua Fighter 5 R.E.V.O.」本編
・VF30周年記念 水着コスチュームセット
・VF30周年 アニバーサリーサウンドコレクション
・VF30周年記念 秘蔵設定資料集
・DLC レジェンダリーパック&「龍が如く」シリーズコラボパック
・アニバーサリーエディション スペシャル称号
・VF30周年記念&VF5 R.E.V.O. 壁紙セット

 このようにバーチャプレイヤーにとっては垂涎もののラインナップとなっているので、「VF」30周年の思い出に浸るのもいかがだろうか?

【VF30周年記念 秘蔵設定資料集(一部)】
資料集の一部であるが、「バーチャファイター」初代をプレイしていればなんとなくイメージが浮かぶ初代モデルのプロトタイプと思われる。「バーチャファイター」シリーズ恒例のラスボス、デュラルにインパクトの強い仮の名を与えられているのは個人的に驚いた。また、外見も開発段階であるためか、製品版で見かけるデュラルと比べると若干体型が大柄に感じた

単純なPC版移植ではない。次へ向けての準備が感じられる作品

 「R.E.V.O.」は単なる「VFes」のPC版移植や30周年記念のアニバーサリー作品ではない。ゲームバランスの改善は単に「VFes」をガッツリ遊んでいたプレイヤーへのアンサーだけでなく、立ちパンチの仕様変更、体重の概念を単純化するという点は新規プレイヤーが「バーチャ」シリーズを遊ぶにあたって足かせになりがちな部分の改善と言えるだろう。

 同様に、オンライン対戦が主となっている現代の格闘ゲームにおいては切っても切れない関係となったロールバックネットコードも実装され、「バーチャファイター」最新作の試金石という側面も感じられた。

 昨年末からの新情報ラッシュから見られるように、現在の「バーチャファイター」は「攻めの姿勢」だ。かつて「バーチャファイター4」のバージョンアップ版タイトルは「バーチャファイター4 EVOLUTION」だった。そして本作は「R.E.V.O.」。この言葉から連想されるのはREVOLUTION(革命)だ。「New VIRTUA FIGHTER Project」も控えており、新たな革命が始まった今、この作品でバーチャの「進化」と「深化」を味わってみるのも乙なものではないだろうか?