レビュー

「Nintendo World Championships ファミコン世界大会」レビュー

ミニゲームになったファミコン13タイトルで世界に挑む! ファミリーコンピュータコントローラーとの相性もチェック

【Nintendo World Championships ファミコン世界大会】

7月18日発売

価格:
パッケージ版 3,828円
ダウンロード版 3,800円
Special Edition 9,878円

 任天堂は、Nintendo Switch用タイムアタックゲーム「Nintendo World Championships ファミコン世界大会」を7月18日に発売した。

 本作は、今から34年前の1990年に北米地域で開催された任天堂公式のゲーム大会「Nintendo World Championships(ニンテンドー ワールド チャンピオンシップス)」をモチーフとしたタイムアタックゲーム。ファミリーコンピュータやNintendo Entertainment System(NES/北米版ファミコン)の任天堂タイトル13作品のゲーム内のシーンをタイムアタックができるミニゲームとして構築し、150種類超に及ぶ「競技」として収録。現代の環境やプレイスタイルに合わせて、オンラインランキングや対戦プレイにも対応し、1本のソフトとして完成した。

ファミコンを代表する13タイトルのゲーム内の一部分を切り取った「競技」で世界中のプレイヤーの記録に挑む

 2023年7月より実施されていたファミリーコンピュータ発売40周年企画のオーラスを飾るタイトルで、資料的な価値も高いタイトルとなっている。本稿ではそのレビューをお届けしていく。なお本作は一部画面にプレイヤー名が表示されるので、その部分に加工を施していることをご了承いただきたい。

【Nintendo World Championships ファミコン世界大会 紹介映像】

任天堂13タイトルのシンプルなゲームを収録。「Nintendo World Championships」がモチーフ

 ゲームのタイトルロゴにもなっている「Nintendo World Championships」は1990年に北米で開催された任天堂公式のゲーム大会だ。本作の初公開映像では当時の大会の映像が使用され、大人になった参加者本人達が出演している。

ゲーム開始時に流れるプロローグ。本作を遊ぶほとんどの人は参加した経験がないのではなかろうか
【Nintendo World Championships ファミコン世界大会 初公開映像】

 同大会は日本国内では開催されておらず、報道される機会も少なかったため、あまりピンとこない人もいたかもしれない。

 当時の大会は「スーパーマリオブラザーズ」と他社の2タイトルを使ったそうだが、本作は任天堂が発売したタイトルに限られている。収録されているのは以下の13タイトルだ。

タイトル発売日発売時のメディア(国内)競技数
スーパーマリオブラザーズ1985年9月13日ロムカートリッジ14
ゼルダの伝説1986年2月21日ディスクシステム15
メトロイド1986年8月6日ディスクシステム12
ドンキーコング1983年7月15日ロムカートリッジ8
光神話 パルテナの鏡1986年12月19日ディスクシステム9
スーパーマリオUSA1992年9月14日ロムカートリッジ12
エキサイトバイク1984年11月30日ロムカートリッジ6
アイスクライマー1985年1月30日ロムカートリッジ6
バルーンファイト1985年1月22日ディスクシステム7
スーパーマリオブラザーズ31988年10月23日ロムカートリッジ24
リンクの冒険1987年1月14日ディスクシステム15
スーパーマリオブラザーズ21986年6月3日ディスクシステム8
星のカービィ 夢の泉の物語1993年3月23日ロムカートリッジ20

 ゲームは最初にオンライン向けのプロフィールを設定するのだが、これがなかなか面白いことになっている。プロフィールのアイコンはタイトルごとのキャラクターなどのドット絵から選ぶことができ、キャッチフレーズや好きなゲームなどを設定して自己アピールできるのだ。好きなゲームに関してはファミコンとNESで公式発売されたタイトルを全網羅するなど、そのデータ量に驚かされるはず。選んだ内容はオンラインプレイ時にプロフィールとして共有されることも頭に入れておきたい。

プロフィールアイコンはタイトルのキャラクターやアイテムなどが採用されている。選べないものはゲームプレイで入手できる「コイン」でアンロックする仕組み
キャッチフレーズには趣味嗜好や世代を感じられるものが多い。正直に選びたいところ
当時好きだったゲームは、1,000本以上の中から選べる

 ゲームモードの「タイムアタック」は純粋に自己記録に挑むモードで、最初に各タイトル1競技をプレイすることができ、それらの成績によって得られる「コイン」を使って他の競技をアンロックしていくスタイルだ。コインは前述のプロフィールアイコンの入手にも使用するのでどんどん遊んで入手していきたい。

ゲーム開始時は13タイトルの1競技をプレイできる。最も簡単で最も多くのプレイヤーが挑む競技なので発売後の記録争いは熾烈となるはず
記録が出なくてもクリアすればコインは少しずつ手に入る。短い競技を連続でプレイして記録狙いのついでにコインを稼ぐ手もあるだろう

 任天堂は過去にも「メイド イン ワリオ」シリーズや「ファミコンリミックス」などでファミコンゲームの一部を切り取ってミニゲーム化したタイトルをリリースしていて、それらはどれも面白かったので、本作も期待どおり面白いものだった。競技として収録されたゲームは短いながらもツボを突いたつくりで、見た目はもちろんプレイフィールも当時のままだ。遊んでみれば「ああ、ここか!」と思い出すこともあるだろう。

 ゲーム開始時にはクリアまでのお手本が動画で表示され、プレイ画面には操作ボタンも表示されているので、遊んだ経験がなくても問題なく楽しめるが、元のゲームをやり込んでいることで身に付いたテクニックは本作でも通用するのが嬉しい。

「メイド イン ワリオ」のように瞬時に判断してプレイするものではないので、わかっていてもお手本はしっかり見てからプレイしよう。+ボタンで早送りもできる

 プレイ中のゲーム画面はデフォルト設定の場合、左右に2分割されていて、下にはタイムが大きく表示されている。実際にプレイする画面は左側で、右側には過去の自己ベスト記録のリプレイが表示される仕組み。リプレイ画面はタイムとシンクロしているので、目に入るとなんとなくつられてしまう恐れもあるが、単独の画面でプレイするオプション設定を用意しているのもゲームデザインとしてぬかりがない。

デフォルト設定時のプレイ画面。右側が自己ベストのリプレイ画面でクリア時のタイムが出る演出やボタンを押したログまで再生される
リプレイ画面を表示しない設定。1画面に集中してプレイしたいときはこちらを設定しよう

 各競技には「NORMAL」、「HARD」、「MASTER」、「LEGEND」と内容に準じた4段階の難易度が設定されている。難易度が高いほどプレイ時間がかかるものと考えていいと思う。中でも最も難しい「LEGEND」の競技は特定のステージをクリアするなど長丁場になるものもある。クリアのためのマップ把握や操作のコツなども必要となるため、この難易度の競技には動画とは別に専用の攻略記事が用意されている。当時目にしたゲーム雑誌や攻略本、ひいてはディスクシステムに付属した説明書のような構成が実にグッとくる。

難易度は競技選択時のアイコンを見ればわかる仕組み。難しいほどアンロックするためのコインの数がたくさん必要となる
競技によっては操作キャラクターが変わることも。この「スーパーマリオブラザーズ2」の「パタパタ早踏み競争」は操作キャラがルイージとなる
Sランクを取れると本当に嬉しい。世界に挑むにはこのSランクを軽々出せるぐらいの腕が必要となるだろう
「LEGEND」競技の一つ、「光神話 パルテナの鏡」の「冥府の砦クリア競争」。ボスの「ツインベロス」を倒すまでがタイムアタックなので、体力の温存も重要になる
「冥府の砦クリア競争」の攻略記事は挑戦直前のお手本画面から見られる。お手本映像だけではわからないポイントも押さえているので目を通しておきたい

 タイムアタック挑戦中にミスをしたり、クリア条件から外れたりしたときは瞬時に画面が巻き戻るのでどの競技も必ずクリアできる親切設計だが、このときは大きなタイムロスになる。例えば「スーパーマリオブラザーズ」なら、敵にぶつかったり穴に落ちたりしたとき、「メトロイド」ならダメージを受ける穴に落ちたときなど、巻き戻される条件はゲームによって異なっている。LボタンととRボタンを押せば瞬時に最初からやり直すことができるテンポの速さも評価したいポイントだ。

ミスをしたときなどはすぐさま直前まで巻き戻し。昔のビデオテープを思わせる画面にノイズが走る演出が懐かしい
ゲームは決められた範囲外には進めない。開始直後の場合は巻き戻しではなく再スタートになることもあり、この場合は巻き戻しよりロスが大きい
ダメだと思ったらLボタンとRボタンの同時押しで瞬時に再スタートできる

 ゲームクリア後のタイムによってランクが提示されれ、Aランク以上を取れればバッジがもらえる。このバッジ、ゲームごとに違うドット絵を使ったデザインが実にキュートで実物が欲しくなることうけあい。本作の「Special Edition」にはこれを模した5種類のピンバッジが付属するので購入を検討していただきたいところ。これをコンプリートするのも本作のやり込み的な目標の一つとなるだろう。

Aランク以上の成績を出すとでバッジがもらえる。手に入れたバッジはコレクション画面で確認できる

世界の記録に挑む! 「世界ランキング大会」と「サバイバル大会」などオンライン専用モードを収録

 記録を競うからにはオンラインも重要な要素である。世界の手練れの記録に挑むプレイモード「世界ランキング大会」と「サバイバル大会」はオンライン専用のモードで、プレイには「Nintendo Switch Online」への加入が必要だ。本稿では掲載の都合により、発売日初日にオンライン参戦をした体験レポートをここに掲載している。

オンライン機能は「使う!」に設定しておく必要がある

 「世界ランキング大会」は週ごとに変わる5種類の競技をプレイしてランキングに挑む大会モードだ。開催期間中に達成した自己ベストを送信してその結果を競うのだ。このモードでは「世界ランキング」と「生まれ年ランキング」がそれぞれ発表されることとなっている。各競技はタイムアタックと同様、何度でも挑戦できるが、その結果は大会終了までわからないのもポイントで、それまではドキドキしながら発表を待つこととなるだろう。発売当日のSNSを見ると、この段階でかなりの記録を出している人もいて、少なくともSを取るレベルではないとランキング上位に入ることは難しそうな印象だった。

ゲーム起動時に開催中の世界ランキング大会の競技とスケジュールが告知される
画面にはこれまでの参加回数が表示。大会終了後の結果も見られる(この段階は大会開催中なのでまだ見られない)。

 発売日の7月18日から7月22日17時59分までの競技は「スーパーキノコ早取り競争」、「オクタロック全倒し競争」、「WORLD1-1最速クリア競争」、「足場早登り競争」、「カギのドア早開け競争」の5種目だ。プレイ中の画面には参加プレイヤー数がリアルタイムに表示されている。

「スーパーキノコ早取り競争(「スーパーマリオブラザーズ」/難易度:NORMAL)」。最初のクリボーをいかに回避してスーパーキノコを出し、どこで取るかがポイント
「オクタロック全倒し競争(「ゼルダの伝説」/難易度:NORMAL)」。ハートが満タン時に出るビームを上手く使いたい
「WORLD1-1最速クリア競争(「スーパーマリオブラザーズ」/難易度:HARD)」。土管に入るショートカットはできないルールで、途中の障害物に引っかからないよう進もう
「足場早登り競争(「メトロイド」)/難易度:HARD」。敵の位置を把握するのが重要。ジャンプ時はサムスが回転しないようにするとロスが少ない
「カギのドア早開け競争(「スーパーマリオUSA」/難易度:MASTER)」。移動時に慣性の大きいルイージでのプレイ。最初に遭遇する敵「ドドリゲス」の空飛ぶじゅうたんの乗り方と、カギを取ると追いかけてくる「カメーン」からいかに逃げるかが勝負
自己ベストが更新されると記録が送信される。参加してプレイをするだけでもコインがもらえるので、積極的に参加しよう

 もう一つの「サバイバル大会」は、毎週3種目がお題として提示される、プレイヤーの残した記録であるゴースト7人との勝ち抜き戦だ。「一般部門」と「エリート部門」の難易度の異なる2部門いずれかを選んで挑戦し、1試合ごとに半数(8人→4人→2人)が脱落していくその名の通りサバイバルな大会となる。

各部門に参加したプレイヤーがランダムでマッチングされる
全員の準備が整ったら同時にゲームスタート。なおこれらのオンラインモードではプレイ中に歓声や拍手の効果音が流れ、大会の雰囲気を味わえる
記録の順位に応じて半分のプレイヤーが残り、半分が脱落する。残念ながら脱落するとその後のプレイは見られないようだ
最後は1対1の対戦に。ここまで残るとかなり緊張感がある
なんとか優勝することができた。全種目1位になって優勝すれば完全勝利だ

 実際にプレイをして勝ち上がってみると、その緊張感は半端ではなく、この手の大会に慣れていない筆者は決勝の「足場早登り競争」のプレイ時には脚がガクガク震えていた。本稿向けに事前にプレイした経験による一日の長があったのと、「メトロイド」は今も通して遊ぶほど好きなタイトルなので何とか最後の競技に勝利し、一般部門で優勝することができた。参加プレイヤーがゲームプレイに慣れていない早い時期ほど優勝やランキングで上位入賞ができるのではないだろうか。

サバイバル大会時も設定で自分の画面を大きく表示することができる

 最後に本作をより当時の気分で楽しむことができる「ファミリーコンピュータコントローラー」も紹介したい。これは2018年9月に「Nintendo Switch Online」のサービスが開始された際、マイニンテンドーストアで同サービス加入者限定で販売されたオリジナルのファミコンとまったく同じサイズのSwitch用ワイヤレスコントローラーだ。本作の特別セット「Nintendo World Championships ファミコン世界大会 Special Edition」にも付属する、本作の公式コントローラーとも言えるアイテムで、7月18日より一般店頭でも販売されることとなった。

「ファミリーコンピュータコントローラー」パッケージ。価格は6,578円。これは発売当時に筆者が個人的に購入したものだ
Switch本体と比較するとこのぐらいの大きさになる。Joy-Conよりは一回り大きい
充電や認識時はJoy-Conと同様に本体左右に取り付ければOK。なお有機ELモデル[HEG-001]は本製品を取り付けたままでは付属のドックに入らないので要注意
上端の本体に取り付けるためのレールにはLボタンとRボタンがあり、競技をやり直すときはこれを同時押しする。ちなみにIIコントローラーに備わったマイクも同じ機能を備えていて、ファミコンの裏技にも使用できる

 触った感触はファミコン本体に常備されたコントローラーとほとんど同じで、バッテリー内蔵でワイヤレスになった分、持ちやすく取り回しもよくなっている。重要なのはボタン配置で、「メトロイド」や「リンクの冒険」などSELECTボタンやSTARTボタンを使う競技はより当時に近い手触りでプレイできるのが大きい。

このコントローラーの使用時は、画面のボタン表記も「SELECT」と「START」になる
例えば「メトロイド」の主人公サムスの武装をミサイルに切り替えるときはSELECTボタンを押すのだ。慣れているゲームだとこれがしっくりくる

 ファミコンの発売から40年の歳月が経過し、令和のこの時代にファミコンタイトルで腕前をオンラインで競うゲームが発売されるとは思いもしなかった。任天堂によるファミコン40周年企画によって当時のゲームへの興味を深めた方も多いと思われ、そんな方々にはぜひ記録に挑戦してもらいたいもの。もちろん筆者と同様にリアルタイムでやり込んだベテランプレイヤーも腕試しの気分で楽しんでいただきたい。

 競技となるゲームもしっかり作り込んであって、当時のテクニックやバグ技など(バグ技の一部は行うと禁止行為とみなされ巻き戻し対象となる)なども再現していて、ゲームをやり込んでいた人にも納得できるクオリティを誇っている。

 一つ大きなポイントは、本作に収録されたタイトルは一部を除きNES版を使用しているということ。ゲーム内のメッセージは英語で、サウンドもNES準拠となっている。特にディスクシステムのタイトルはサウンドが素晴らしかったので、その内容で競技ができないのはいささか寂しかったが、収録された13タイトルの国内版は全て「Nintendo Switch Onlineファミリーコンピュータ」で配信されているのでそちらで楽しんでいただければと思う。

こちらは「Nintendo Switch Onlineファミリーコンピュータ」のゲーム選択画面。7月18日現在、77タイトルが配信中。その中には本作収録の13タイトルも含まれている

 世界中の新旧ファミコンファンが世代を超えて集い記録に挑戦する。それぞれを遊んだ経験のあるプレイヤーもこのような形で改めてゲームに触れたり、他のプレイヤーのプレイを見たりすることで新しい発見もあるだろう。世界のプレイヤーがたたき出す記録に自分の記録が及ばなかったとしても、そのプレイを見られるだけでも大きな価値となるはずだ。また将来的に本作を使用したリアルイベントが開催されることにも期待がかかる。来たるときに備えて競技を極めておけば、令和の世界大会への出場も夢ではないかもしれない!?