レビュー

【AC6】「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」レビュー

「火を点けろ、燃え残った全てに」歴戦傭兵だけじゃなく初心者にもオススメしたい最高のメカカスタマイズアクション

【ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON】

8月25日 発売

価格:
通常版8,690円(税込)
デラックス エディション9,680円(税込)
コレクターズエディション29,700円(税込)
プレミアムコレクターズエディション57,200円(税込)

 明日8月25日、我々傭兵が10年待った「アーマード・コア(以下:AC)」シリーズ最新作「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(以下:ACVI)」がフロム・ソフトウェアより発売される。

 正直なところ、本作の盛り上がりが異次元で驚いている。ライブハウスで数人しか聞いていない頃から追いかけていたインディーバンドがメジャーデビュー直後にオリコン1位をとり1年後には全国ツアーをしているのを観ている気分である。

 前提として、本稿では「AC」シリーズが初めての方に向けた内容となっている。というのも「ACVI」は、対応プラットフォームも、プレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam)と多岐にわたるため、シリーズが初めての人でも手を出しやすいからだ。

 それだけでなく、本作は充実したチュートリアルに加え「ELDEN RING」など同社が近年リリースしてきたアクションゲームのノウハウも盛り込まれているため、「ロボットゲーム」に対して苦手意識を持っている人にも純粋にアクションゲームとしてオススメできる。主軸がシングルプレイなのも初心者に勧めやすい。是非自分の思う素敵なAC(シリーズに共通して登場する人型機動兵器)をアセンブル(カスタマイズ)して楽しんでほしい。そのときキミは美しい。

 Twitterなどでは既に頭を「コーラル」に焼かれている人も見かけるので、シリーズファンは既に予約している人も多いだろう。是非本稿で明日のルビコン3降下に備えて予習していただきたい。

実際のゲームで撮影したもの。フォトモードによるものだが、映像が非常に美しい

 結論から述べるならば、本作は「ストーリーよし・アクションよし・自己表現の幅よし」の筆者的に近年稀に見る最高のゲームだった。筆者自身10年待った「リンクス(「アーマード・コア フォーアンサー」における傭兵を指す言葉)」なせいもあるかもしれないが、異星を舞台に危険な新物質を巡って争うという壮大なSFと、自分だけのロボットを快適に動かせる操作性や戦闘スピードの幅に加え、様々なニーズに応えられるバリエーション豊かなパーツが素晴らしい。

 是非ともシリーズ初プレイの方を沼に沈め、傭兵各位とは美味しいお酒を酌み交わしたくなるようなそんな作品だった。個人的に98点である。映像が美しく音に関しても素晴らしい出来なので、ゲーム中のUIを非表示にして映画を観ているように遊べれば100点だった。大変満足である。個人的な主観を抜きにしても90点台は堅いと思う。それだけ完成度の高いゲームだった。早速、鉄と硝煙にまみれ「コーラル」を取り巻く人々の意思で満たされた血なまぐさい惑星・ルビコン3からのレビューをお届けしていく。

【ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON 発売ロンチトレーラー【2023.8】】


コーラルをめぐるルビコニアンと星外企業、「惑星封鎖機構」による壮大なSFストーリー

 「ACVI」を紹介する上で外せないオススメポイントが世界観とストーリーだ。「ロボットのカスタマイズって難しそうだな」という方でも世界観から作品に興味を持つことで、次第にストーリーに興味を持ち、最後には「俺/私のACが一番!」と自信をもって言える立派な傭兵になれるだろう。自分だけのACでクールな世界観を縦横無尽に飛び回る感覚はなかなか味わえない。少なくとも荒廃した世界観が大好きな筆者はこの流れで「AC」シリーズが好きになった。

機体名:GAME Watchである。色しか合っていないものの、結構気に入っている

ゲーム本編開始までの概要

 本作の舞台は、惑星・ルビコン3。そこは「コーラル」と呼ばれる新物質が発見された星で、これによって新時代のエネルギー資源として人類に飛躍的発展をもたらすとして「グリッド」などの巨大建造物(メガストラクチャー)などが開発。植民されてきた歴史を持つ。しかし、「コーラル」は大災害「アイビスの火」を引き起こし周辺星系をも巻き込み焼失。致命的な汚染を残した大災害以降、ルビコン3を含む宙域は「惑星封鎖機構」による厳重な監視下におかれていた。

グリッドの様子
↑↓はフォトモードで同じ場所を撮影したもの
ここまでの世界観紹介が琴線に触れた方は、筆者と同じく弐瓶勉氏の作品が粋な仲間かもしれない。美味しいお酒が飲めそうである。「メガストラクチャー」という単語に反応した方は特に。

 本作の主人公である「強化人間C4-621(以下:621)」とそのビジネスパートナー「ハンドラー・ウォルター(以下:ウォルター)」がそんなルビコン3に降り立つのは、彼の地にて再び「コーラル」が発見されたため。2人が到着する頃には、既にルビコン3に再発見の報を聞きつけた星外企業(本作にはルビコンの現地企業も登場する)の2大グループ「ARQUEBUS(読み方:アーキバス。先進的なハイテク企業)」と「BALAM(読み方:ベイラム。数による力を持つ企業)」が進駐。大災害の後、か細くも命を繋いできたルビコニアンによる組織「ルビコン解放戦線(師父ドルマイヤンに率いられる組織)」と、惑星に存在する勢力全てと敵対している「惑星封鎖機構(最も高い技術を持ちAIによって管理されている組織)」が争いを始めていた。

マップに落ちているこういったログからも世界観が伺えるので見逃せない。こちらはログ集めのミッションに登場するもの。「ミールワーム」なるSF生物の食べ方が気になる

 時系列的には「コーラルによる大災害『アイビスの火』→ルビコン3封鎖→コーラル再発見→C4-621とウォルターが降下(ゲーム本編開始)」となる。ゲーム最序盤には惑星外から降下する様子が描かれており、軌道上に設置された強大な砲台やリングなど、建築物からも壮大なSF物語の始まりを感じられる。「ロボットはわからんがSFは好き」という人でも一度は観ていただきたい。上の「ロンチトレーラー」ではストーリーの雰囲気などを感じられる。

ストーリーのオススメポイント

 ストーリーの全容をあまり語らないことで有名なフロムだが、本作では合間合間のムービーやブリーフィングによって「今自分の周りで何が起こっているのか」が分かりやすい点もシリーズ初見の方にオススメしたいポイントだ。ストーリーに関しても、ナンバリングタイトルではあるが完全新規なので、事前の予習も不要でとっつきやすい。また、登場人物たちもしっかりと過去を感じられる性格や言動をしており、映画を観ている気分になれるので、彼ら彼女らの紡ぐストーリーに関しても完成度が非常に高い。ストーリーに違和感が無いのである。

 加えて、本作だけでなく「AC」シリーズでは登場人物の顔はおろか人間としての姿はほとんど描写されない(そういった意味では本作の621は異例だ。全身がナニカに包まれた姿が公開されている)。それでもミッション中の通信やブリーフィングの洗練されたセリフだけで大体の人となりの想像が付くぐらいには表現が豊かであり、そこもまた魅力だ。傭兵の数だけ、登場人物の姿があるのだから。

 物語を進めるうえで大切になる主人公の621は、強化手術のせいか感情が希薄なため、哀れみの感情から感情移入しやすい。一方で、そんな621に手を差し伸べたウォルターに自分を投影する人もいるかもしれない。しかし、最初にウォルターに感情移入したとしてもミッションを進めていくうちに621に感情移入し、ウォルターに自分の親のような感情を抱く人も出てくると思う。筆者は最初から621目線でストーリーを観ていたので、最初からウォルターに“パパみ”を感じていたが、ウォルター目線で改めて621の成長と選択を観るのもいい。依頼をこなすごとに、ウォルターのこちらを気遣うようなセリフに「いってきます/ただいま」と言いたくなるような安心感を覚えるのだ。

ウォルターは結構ミッション開始前や終了時にやさしい言葉をかけてくれる。見守ってくれている安心感が凄い。

 RPGが好きな方向けに感情移入という言葉を使ったが、必要以上の情報がないので、各傭兵が思い思いの設定を考えて楽しめるのがいい。自分が621になり、621が自分になっていくのだ。ルビコン3の戦場に立つのは自分自身だ。

 また、ブリーフィングでは、依頼してくる各企業や組織の雰囲気を感じられるのもいい。例えば本作で登場する「アーキバス」はどことなくエリートの背広組のような雰囲気なのに対して、「ベイラム」は昔ながらの軍隊のような雰囲気になっているし、「ルビコン解放戦線」にいたっては理想を追う純朴な学生のような雰囲気を感じられて、各組織に対するプレーヤー側の解像度が上がる。時には敵対し、時には助力する関係であるからこそ、気に入った勢力を見つけて肩入れするのも楽しみ方のひとつだと思う。ちなみに筆者のお気に入りは「ルビコン解放戦線」だ。思想が強いし、思い込みの激しそうな人もいて観ていて愉快な気持ちになる。

ベイラムの“昔ながらの軍隊”のような雰囲気も結構好みだ
こちらはラスティという「アーキバス」所属のACパイロットとその機体のティールヘイズ。何かと主人公と現場で会うことが多い

 さらに、受ける依頼に関しても、最初こそばら撒き依頼を受けていたのに、実力が認められてくると次第に名指しで依頼が来るようになるのも自分の実力が認められているように思えて小気味いいのだ。ブリーフィングで依頼内容を語る人間も前線に出てくることがあるので、「同じ戦場に立つ者」として親近感が沸きやすい。

【【ACVI】「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」序盤ブリーフィング紹介】

 この感情移入が大切なのは、自分の考えで受ける依頼を選択し、物語の結末を選択できる点にある。というのも、本作はマルチエンディングを採用しており、個性豊かな勢力や登場人物の意思と自分の選択を世界に反映できるからだ。

 我々は傭兵である。しかし、それ以前に感情が気迫とはいえひとりの人間なのだ。「戦闘力を提供する代わりにお金を受け取っている手前、依頼主の意にそぐわないことはできない」なんてことはない。

 ミッションを進めるうちに様々な選択をすることになるだろう。時には依頼内容に異を唱えたくなるような場面もあるかもしれない。しかし、大切なのは621、ひいては我々傭兵もひとりの人間であるということだ。いくら「感情が希薄」とはいえ、ウォルターらを通じて世界を知り、自分の考えを持っているのである。傭兵は自由だ。「好きなように生きて、好きなように死ぬ」というのが大切だということを忘れてはいけない。そして、結果は自分に帰ってくる。後悔のない選択をしてほしい。

 物語の始まりからしてほとんど滅びかけの世界と、そこで懸命に生きる人々、「自分達の利益の為には武力行使なんて当然」として我が物顔で戦火をふりまく企業、未だ思惑のはっきりしない他勢力など、本作では様々な人の意思が複雑に絡み合っている。そして彼らが最もよく用いるのが根源的で分かり易い暴力なのだ。「力は全てを解決する」そう感じずにはいられない。

力技で大陸間の物資を輸送するカタパルト。コーラルが舞うそらが非常に美しい


これまでのノウハウを感じられる完成度の高いアクション!

 ストーリーのオススメポイントを紹介してきたが、この項目では戦闘やミッション中の要素、初心者に優しい各種機能などについて述べていく。本作はシリーズ新規の方に優しく作られているのだ。大切なことなので何度でもいうが初心者に親切な設計のゲームとなっている。筆者の周囲でも本作が初の「AC」シリーズとなる人は多いのでこれは非常に助かる。オススメしやすい。

フロムの歴史を感じる完成度の高いアクション

 「ACVI」のアクションでは、同社が「AC」シリーズ新作を出すまでに培ってきたファンタジーアクションのノウハウが丁寧に自然に、この“鉄と硝煙の世界”に落とし込まれている。特に敵を自動で画面中央に捉え続ける「ターゲットアシスト」によって、ボス戦や対AC戦闘において非常に臨場感のある戦闘を楽しめるのが大きいように思う。普段の雑魚敵相手に無双するときは、画面に映った敵に向けて銃口を自動で向ける方式を、強敵と戦う時には「ターゲットアシスト」を使うことで、戦闘だけでなくカメラワークにもメリハリがつく。「ターゲットアシスト」を使うと「ソウル」シリーズのような緊張感を感じられた。ボスは結構強いので本当に手に汗握る。汗でコントローラーが壊れるかと思った。

 なお、「マニュアルエイム」という完全手動の照準方式も後述する「OSチューニング」にてアンロックできるが、こちらはかなり玄人向けな印象だった。「マニュアルエイム」は本当にTPSをプレイしている雰囲気になる。好みの問題だが、筆者個人的にまずは「ターゲットアシスト」で戦うことをオススメする。

「ターゲットアシスト」によって近接攻撃が当てやすいのもいい。パイルバンカーが綺麗に当たると脳汁が吹き出す
マップには敵だけでなく画像の様なダメージを受けるギミックもあるので注意したい

 さらに、「スタッガー」ゲージという体幹ゲージのようなものもあり、「衝撃値を貯めて体勢を崩したところに一気に攻撃を叩き込む」という戦闘の流れがあるのも「AC」シリーズが初めての方にはシンプルで分かりやすいのではないだろうか。筆者個人的にはこの「スタッガー」を削る戦闘スタイルはシンプルで分かりやすかった。当然だが、この「スタッガー」ゲージはプレーヤーの機体にもあるので、衝撃値の強そうな敵の攻撃は積極的によけようと思うようになる。そうすると、ミッションをこなしていくうちに自然と回避の操作が上達するので見栄えもいい。この見栄えは本作をプレイする上で非常に大切だ。ストーリーを進めていくと強者認定されるため、自分の中でその流れに説得力が生まれる。

 また、強力な攻撃が来るときには“ピピッ”と音が鳴り、方向もある程度絞って表示される。これも回避に役立つが、敵の武装によって音鳴ってから攻撃されるまで結構時間差があるので、経験で補っていくしかない。歴戦の傭兵の中には初手から勘で敵の攻撃を避けられるイレギュラー(ガンダムでいうところのニュータイプみたいにべらぼうに強い人)もいるかもしれない。

画面中央上部の赤い三日月型のマークが敵の攻撃を知らせるサイン

初心者に優しい各種プログラム

 初めての方に注目していただきたいのが「傭兵教育プログラム」だ。これは我々独立傭兵を支援するシステム「オールマインド」が提供しているプログラムだが、これらをクリアすることでチュートリアル形式で各種操作を学べる他、パーツがもらえる。お金がない序盤にパーツが無料でもらえるのは大きい。それも中々に優秀なパーツがもらえるのだ。やらない手はない。

 ミッション中に特定の敵を倒すとポイントがたまり、一定程度貯めることでパーツがもらえる「ログハント」やマップに隠されているパーツも是非集めてほしい。「傭兵教育プログラム」のものもそうだが、これらのパーツは見つけるまでショップで販売されないので、全部のパーツを集めたい人はストーリーのマップをくまなく探索した方がいい。

「傭兵教育プログラム」一覧。色々なアセンブルにも触れられるので、自分のスタイルを決めかねている時にはある程度の参考にもなる

 次に注目していただきたいのは「アリーナ」と「OSチューニング」である。「アリーナ」は、実際にゲーム本編に登場する下位ランカーから上位ランカーまで様々な相手とACの模擬戦ができる。設定上は再現データとの戦闘なのでセリフなどはないが、各機体・パイロットの紹介文からは彼らの性格などが伺えるのでバックストーリーを知れる貴重な資料となっている。最初の方は簡単に倒せるが、終盤の上位ランカーは中々に手ごわい。ACのテストにも使えるので便利な機能だ。お金ももらえるので筆者は後述する「ACテスト」よりももっぱらこちらをACのテストに使っていた。ランク29のインビンシブル・ラミーは何度撃破したか分からないほどである。

 「アリーナ」で見逃せないのが、クリアすると「OSTチップ」がもらえるということ。「OSTチップ」は機体の機能拡張や能力強化をする「OSチューニング」の際に必要なポイントで、これを消費することで、APが残り1になったときに自動で発動するバリア「ターミナルアーマー」や自機を中心に爆発を起こす「アサルトアーマー」などをアンロックできるようになる。最終的には全ての機能と能力強化を獲得できるだけのポイントをもらえるし、振り分けたポイントのリセットもできるので気軽に試してほしい。筆者のオススメは「アサルトアーマー」と「パルスアーマー」だ。リンクスとしてここは外せない。

【【ACVI】「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」アリーナFランク帯紹介】
【「アリーナ」Fランク帯の3人】
ランク29 インビンシブル・ラミー AC名:マッド・スタンプ
ランク28 インデックス・ダナム AC名:バーンピカクス
ランク27 G6(ガンズシックス)レッド AC名:ハーミット
【「OSチューニング」一覧】
機体機能拡張
コア(胴体パーツのこと)機能拡張
AP関連の能力拡張
与ダメージ等の能力拡張

雑魚相手に無双しボス相手に白熱した戦いを味わえるミッション!

 「ACVI」のミッションは丁寧に作り込まれたマップを、雑魚的を蹴散らしながら進んで探索できるのがいい。もちろんボスが用意されているマップもあり、そちらでは手ごたえのある戦闘が楽しめるのだが、雑魚敵を蹴散らして「俺TUEEEEE!」な気分を味わえるのも「AC」シリーズの醍醐味だと思う。

 雑魚敵といっても強さはマチマチで、現代の攻撃ヘリの様なサイズの本当に弾丸1発で倒せる敵もいれば、AC十歩手前のようなMT(一般的な敵が搭乗しているACよりかなり弱い人型の敵)や、惑星封鎖機構の繰り出してくるMTよりは若干強い印象のLCといった敵など様々な種類の敵が登場する。基本的に2秒とかからずに倒せる敵が多いので、“圧倒的な力”を見せつけて戦場を蹂躙できるのだ。現実の自分まで強くなった気分になれる。

 中にはACや四脚MT、人型の大型機体HCといった中ボスのような敵もいるので油断はできないが、基本的にボス相手以外なら無双できる。さすがに一気に囲まれたり、物量で責められた場合には厳しいものがあるが、こちらから仕掛けて一掃する分には比較的気持ちよく戦えた。

【【ACVI】「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」序盤ミッションダイジェスト】

 一方で、ボス戦ではかなり手ごわい敵が用意されている。今までのシリーズでは下手したら一撃で倒せるボスなどもいたが、今回はいずれも強力で、チャプターの最後やストーリーの節目となるミッションに配置されている。最初の内は何度も撃破されることになるだろう。筆者の場合も結構苦戦したボスがいたのでそのたびにアセンブルを見直し、再戦し、撃破され、見直し、撃破してきた。重要なのはひとつのアセンブルに拘らずに柔軟に装備を変更して、敵やミッションに合わせた装備を選ぶことだ。古参傭兵達が口を揃えて「『AC』は死にゲーじゃない」と言っているのはこういったアセンブルを見直して状況に合わせた機体で戦えるからである。「ソウル」シリーズで例えるならば、死ぬたびにステータスを振りなおして剣士や魔術師の間を反復横跳びするようなものなのだ。

 もちろん自分の愛機をひとつと定めてプレーヤースキルを磨いてクリアするのもいいと思うが、それは十分にゲームに慣れてからの方がいいだろう。しかし、愛機に拘る気持ちも痛いほど分かる。大切なのは塩梅なのだと思う。筆者の場合には「10回負けたらなりふり構わず殺意マシマシのアセンブルに変更する」と自分でルールを設けてプレイしている。

 それにしてもボス戦が非常に楽しかった。闘争心が刺激されたからか脳からコーラル(作中では麻薬的な描写がある)的な物質が分泌されているとしか思えないほどに興奮するのだ。「手足がはじけ飛び、腹から臓物がこぼれ、大半の血を失っても尚、歯を食いしばり貪欲に勝利を目指すような戦いができる」という点では「ソウル」シリーズに通じるものがあるかもしれない。別にスマートにかつ必要な無いのである。勝てばいいのだ。力で自分の意思を押し通すのだ。

 なお、本作には難易度選択がないので、難易度によるミッション内容の変化はない。一方で周回前提のゲームとなっていて、周回毎に新たなミッションが現われたり展開が変わったりするミッションもある。中にはミッション中に選択肢が出るものもあり、各傭兵の選択する結末が今から楽しみである。筆者がミッション中に思ったことは大抵できたので、色々と試してほしい。“騙して悪いが”な選択をこっち側から仕掛けることもできるかもしれない。

【【ACVI】「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」序盤ボス戦ダイジェスト】

対人ならではの白熱した戦いが楽しい! マルチプレイ

 「ACVI」はシングルプレイが主軸だと冒頭で述べたが、マルチプレイでも白熱した戦いができる。対戦形式は1vs1と3vs3が用意されており、筆者の場合は1vs1を試すことができた。1vs1は3マッチ2点先取で勝敗が決まる方式で、待機画面では機体のアセンブルや保存した機体データの読み込みができる。

 本作では「ネスト」と呼ばれる項目からマルチプレイ画面に入り、「ルーム作成」と「ルーム検索」によってマルチプレイができるようになっている。プレーヤーがルームを作成し、そこに他プレーヤーが参加する形式で、パスワードを掛けることもできれば掛けずに誰でも参加可能なようにもできる。参加する側は、「ルーム検索」で様々な条件を設定し検索することで他プレーヤーのルームに参加可能。参加人数上限や対戦形式、マップなど細かく検索条件を絞れるので、「思っていたマッチじゃない」ということは起こりにくそうだ。

 シリーズ初の方の中には「マルチプレイは古参傭兵やイレギュラーが跋扈する魔境なのではないか」と心配する方もいるかもしれないが、本作のマルチプレイにはランクやマッチングなどのシステムはないし、「ソウル」シリーズのように侵入してきたりすることもないので安心してほしい。加えて、初心者がシングルプレイを終えてマルチプレイに手を出す頃には、立派な傭兵に成長していることと思うので、心配ご無用なのだ。

 筆者は今回、シリーズ未経験の弊誌副編集長・安田と対戦したが、アセンブルによってはシリーズ経験者の筆者が未経験者に負けることもあったので、勝負で鍵を握るのは7割程度相性だと思う。筆者のスキルが低いだけとも思えるが、大切なのはプレーヤースキルよりも、アセンブルである。何度でもいうが、本作で大切なのはアセンブルなのだ。これが醍醐味であり、作品の根幹を成す要素となっている。

 マッチを始める前は「マルチプレイもアリーナと変わらないのでは?」と思っていたが、正直舐めていた。相手も作中でイレギュラーとなる存在なのだから強いのは当然だ。しかし、傭兵同士の戦いなのだ。どんな手を使ってでも自分が死ぬ前に相手を倒せばいいのだ。

 マルチプレイの戦闘は本当に白熱するし、体も気が付いたら熱がこもっていた。学生時代の受験期を思い出すぐらいには熱くなっていた。何かが燃えている感覚がしたのでダイエットにもいいかもしれない。

【【ACVI】「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」1vs1マルチプレイ】
マルチプレイ画面。シングルプレイとはまた異なるUIで戦える
ルーム作成時の設定画面
ルームの様子
参加人数は実際に戦う人よりも多く、観戦も可能とのこと
マッチは1vs1の場合は最長10分。3vs3の場合にはまた変わってくるかもしれない(レビュー用のモードでは選択できなかったので不明
マップ選択画面
砂漠から水上の施設に雪原の基地など多様なマップがあり、それぞれで戦い方も変わってきそうだった。個人的にはこちらの「ウォッチポイント・デルタ」が好みだ。真っ向からの勝負ができる
メンバーの交代方式も選択できる
また、定型文によるチャット機能もあり、アセンブルしたい時などに使えそうだ
機体データ選択画面
アセンブル画面。通常の時とは若干異なる背景になっていた


色んな人に刺さるデザインのパーツが盛沢山! アセンブルなどのカスタム要素

 ここまで何度も言及したが、本作で肝となるのはアセンブルだ。人によっては本作のアセンブル含めカスタマイズ要素にかなりの時間をかける人も出てくるのではないだろうか。というのも、アセンブルできるパーツ数はそれこそ膨大だし、その組み合わせの幅に関して言えば想像もつかないぐらい多いのだ。加えて、本作では機体表面の質感を新品から錆びた廃品にまで変更可能な「ウェザリング」や、各パーツ毎の材質を変更できる「マテリアル」によって、工場出荷時のピカピカから、廃棄寸前まで使い倒したボロボロの姿にまで変更できるのである。

【ウェザリング】
ここで気を付けたいのはデカールはウェザリングされないこと。自分で何とかするしかないがそれすらも楽しい。

 そこに輪をかけて時間を持っていきそうなのが、最大128枚32グループまで作れる「エンブレム」と、機体表面に最大20種類各パーツ40枚貼り付けられる「デカール」の存在だ。このエンブレムとデカールを使うことで、自分の思う理想のAC像を表現可能なだけでなく、好きな作品のロボットやMS、人造人間にバルキリーなどを再現できる。デカールなどはうまく枚数を重ねたりすることで掠れた「エンブレム」の表現もできるので、筆者はかなり時間を持っていかれた。これこそが求めていた「AC」であり、想像を超えた表現の幅に脱帽するばかりである。「これがカスタマイズだ!」と言わんばかりのフロムの信念を感じた。

【エンブレム・デカール】
既存のエンブレムも使える
自前のエンブレムも
塗装では色だけでなく、カラーセットのプリセットも自分で作って保存しておける
迷彩もあるのでリアルなミリタリーテイストもできる

 さらに、これまでの「AC」シリーズでも多様な種類のパーツが出てきていたが、今回はその上をいくと思う。中でも筆者の目を引いたのは「アーマード・コア4」系列のネクストACのような素早そうなパーツから、「アーマード・コアV」系列の純然たる暴力装置といった雰囲気のパーツ、果てはそれ以前の「AC」シリーズのようにバランスの良いシンプルにクールなパーツなど実に多様なデザインが用意されている。フロムのファンにはお馴染みとなっている「月光」こと「MOONLIGHT」もあったし、「AC」シリーズファンには馴染み深い「KARAWSAWA」らしきEN武器も名前こそ異なるものの確認できた。

右手に持っているのが本作の「KARAWSAWA」枠らしき武器

 なにより驚愕したのは、「ウルトラマン」の敵にいてもおかしくないような有機的デザインもあったこと。その機体だけ突然異次元からきたかのような見た目のしているので度肝を抜かれた。しかし、納得できる出自があるので、世界観からはずれているということはない。他にも、頭が興奮でおかしくなるぐらいカッコいいパーツもあるので、隙間時間を見つけてはついついアセンブルしてしまう。

色を若干意識して寄せただけで“登場しそう”な雰囲気に

 本作には機体データやエンブレムの共有機能があるので、是非皆さん自慢の愛機を見たい。フォトモードも実装されているので、どんどんSNSに投稿してほしい。傭兵全員で「AC」を盛り上げていきたい。

【【ACVI】「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」アセンブル紹介】


念願叶った「AC」シリーズ最新作「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」発売は明日8月25日!

 冒頭でも述べたが、我々傭兵が10年待った新作がようやく発売となる。ここまで長々と紹介してきた中で、少しでも惹かれるものがあったシリーズ未経験者の方には是非遊んでほしい。シリーズ経験者の傭兵の方々の中に迷っている方がいるのなら、ひとまず買うだけ買って、時間を観てプレイしてほしい。どのナンバリングでハマったかは人によるだろうが、買って損はない。むしろ、「『AC』の新作が手元にある」という事実だけでプラスだし、ゲーム自体も叫びたくなるぐらい出来がいいのでプラスしかない。

 皆様とルビコン3でお会いできるのを楽しみにしています。燃えカスに火を付けて回りましょう。それでは、また戦場で。「火を点けろ、燃え残った全てに」