レビュー
PC「GetsuFumaDen: Undying Moon」早期アクセス版レビュー
「月風魔伝」から34年、月氏一族の戦いを新たなビジュアルで描くローグライクアクション
2021年5月14日 10:00
- 【GetsuFumaDen: Undying Moon】
- ジャンル:ローグヴァニア2Dアクション
- 発売元:KONAMI
- 開発元:KONAMI・ぐるぐる
- プラットフォーム:PC(Steam)/Nintendo Switch
- 価格:2,728円(税込)
- 発売日:5月14日(PC早期アクセス版)/2022年(PC通常版、Nintendo Switch版)
KONAMIはNitendo Switch/PC(Steam)用ローグヴァニア2Dアクション「GetsuFumaDen: Undying Moon(ゲツフウマデン:アンダイング ムーン)」において、PC版の早期アクセスを5月14日に開始する(PC版通常版およびNintendo Switch版は2022年配信予定)。
本作は1987年にファミリーコンピュータにて発売されたアクションゲーム「月風魔伝」を、サイドビューのローグライクアクションとして現代に蘇らせたタイトルで、月氏(げつし)一族の初代風魔が龍骨鬼を滅ぼしたその後の物語を描いたものだ。
「ローグヴァニア2Dアクション」とジャンル付けされた本作は、浮世絵を連想させる和風のグラフィックスのもと、主人公の月風魔が様々な武器を使いこなし、プレイするたびに形の変わるステージを攻略していくアクションゲームで、やり込むほどに腕前が上がる手応えを感じられるタイトルとなっている。今回はSteamにて配信されるPC版早期アクセス版をプレイしてのレビューをお届けしていく。
「月風魔伝」から34年、遊ぶたびにステージの形が変わるアクションゲームとして復活
本作のオリジナルタイトルにあたる1987年にファミコンでリリースされた「月風魔伝」は、迷路のようになった2Dマップを行き来し、その道中にあるサイドビューや3Dダンジョンのステージで敵を倒して自らを強化。お金を集めて先へと進んでいく、RPG的な要素も含んだアクションゲームであった。前年にKONAMIから発売された「悪魔城ドラキュラ」とは対照的な純和風な世界観と独自のゲームシステム、そして当時のKONAMIのファミコンタイトルを象徴するような良質のサウンドが心に残っているファンは多いはず。筆者も特にサウンドが好きだったタイトルで、2Dマップの「行け!月風魔」は今も口ずさめるほどお気に入りの楽曲である。なおSteamの早期アクセス版には、エムツーが開発したファミコン版「月風魔伝」が特典として付属される予定となっている。
オールドゲームファンにも知名度のあるタイトルながら、これまで一度も続編やリメイク版が作られることがなかったのだが、発売から34年が経過し、ついに同じタイトルを冠した新作がリリースとなったのである。
初代風魔が龍骨鬼を滅して以降、地獄を監視し続ける月氏一族の第27代目当主の風魔が、地獄に起こった異変と消息不明の兄の行方を調査するために旅立つというストーリーのもとに展開していく本作。ファミコン版からはその世界観とアクションゲームというジャンルを継承しつつも、その手触りは現代のゲームファンにも楽しめる内容へと進化を遂げている。
まず目を引くのは、そのグラフィックスだ。筆で描いたような輪郭と濃淡のある色使いは浮世絵のそれであり、エフェクトなどもその様式に則っている。止め画だと浮世絵のように見える画面が動くのは不思議な感覚で好奇心を刺激される。ステージごとにその雰囲気も異なる演出により、先に進むモチベーションを高めてくれる。
ゲーム中のグラフィックスは止め画だと2Dのように見えるが、プレイをしてみると3Dだということがわかり、ボス出現時の演出も滑らかだ。また月風魔や敵キャラクターも3Dなので、体の向きを変えたときなどは左右反転ではなく、ちゃんと正面と背面が切り替わり、倒した武器によってやられパターンが変わるのも見ていて面白い。こうした表現を用いつつ、操作レスポンスは2Dアクションの感覚でクイックに動くのもアクションゲームとして正しい設計だと感じられた。
何度も挑んで攻略のコツを掴んでいくハードなアクションが展開
メインのゲーム画面はサイドビューのアクションで、主人公の月風魔はメインウェポンの「主武器」とサブウェポンの「副装備」を駆使して敵と戦い、複雑に入り組んだステージを探索しながら進んでいく。ステージ上にはいくつかの白い鳥居があり、そこにたどり着くことでこれまで通過した白鳥居を「瞬間転移」で行き来することが可能だ。
装備は一部を除いて現地調達であり、宝箱や敵から出たものを入手していくこととなる。先に進むほど強いものが出てきて、ときには新しい武器が出てくることもあり、より強いものや使い勝手のいいものに更新していくのが基本となるだろう。
ステージの最深部にはボスステージへと続く鳥居があり、巨大なボスとの戦いとなる。最初のボスとなるのが、PVなどにも登場していた前作のボスである「龍骨鬼」というのがなかなかセンセーショナルなわけだが、どのボスも一般的な敵より耐久力が圧倒的に高く、攻撃方法も多彩だ。どれも必ず効果的な倒し方があり、何度も挑むことでそれを理解していくスタイルとなる。
ボスを倒せばクリアとなり次のステージへと進めるわけだが、道中で倒れてしまえば、最初のステージからやり直しとなってしまうのは、この手のアクションの常。ボスと同様、繰り返し挑んで武器の扱い方や敵の対処法などを身に付け、少しずつ進めることで敵にやられてしまう機会が減り、先へ進められるというバランスとなっている。
こうした一連の流れは、ローグライク2Dアクションとして評価の高い2017年の「Dead Cells」の影響が見られ、同作をプレイ済みの筆者も理解しやすかったのだが、当然ながらゲームシステムやプレイフィールは本作独自のものであり、同じ感覚でプレイすると痛い目に遭うだろう。
本作の敵は日本の民話などに登場する妖怪達で、鬼や髑髏、輪入道など、一目でそれだとわかる敵が現われるのがなかなか楽しい。また三目首や餓鬼などの「月風魔伝」でおなじみの敵の姿も見られる。これらは決して数は多くないものの、それぞれが非常に個性的な手段で月風魔の行く手を阻んでくるので、しっかりとした対処方法を見極めないと大きなダメージを被ってしまう。序盤の道中の月風魔の体力の回復手段は、手持ちの「回復薬」(初期段階では2個を所有)を使う以外になく、回復薬自体も入手手段が限られるため、無駄なダメージを被ることはその先を苦難な道中にしてしまう。
例えば最初のステージ「辺獄の忌地」に登場する鬼は金棒での一撃が強力で、食らえば月風魔の体力の1/4を削られてしまう。金棒は戻すときに判定が出ることもあり、正面から戦えばいきなりやられてしまうこともあるのだ。鬼の金棒のモーションは大きいので、回避で背後に回って攻撃するか、副装備の飛び道具で遠距離から倒すのが確実なわけだが、馬鹿正直に正面から対峙した筆者の月風魔は、何度か苦渋を味わうこととなった。この経験により、ステージで遭遇する新たな敵との遭遇はなかなかの緊張感を伴い、それが本作の面白さにも繋がっている。
プレーヤーキャラクターの月風魔も、装備する武器によって戦い方がガラッと変わる性質があり、好みの立ち回りが可能だ。メインとなる主武器はゲーム開始時点で6カテゴリーが存在していて、通常攻撃の他にその武器ならではの「固有アクション」が備えられている。例えば「刀」なら特定の敵の攻撃をいなして自動的に反撃をし、「傘」なら前方に開いて敵の攻撃の一部を防ぐことができるといった具合だ。前述の鬼の攻撃も、刀でいなしての反撃するのも攻略法の一つである。
一方副装備は主武器とは性質が異なり、弓や銃、爆弾などの飛び道具が中心で、主武器では届かない場所への攻撃や、非常に大きなダメージを与えるなど、高い効果を持っているが、一度に使用回数と再使用できるまでの時間が決まっている。月風魔は主武器と副装備それぞれを2種ずつ装備ができ、これらをステージで入手しながら進んでいくのである。
道中の月風魔のパワーアップシステムで面白いのが「吸魂」だ。これは宝箱や敵などから出てくる「魂」を取ることで画面下の「吸魂カウンター」が増加し、吸魂をすることで「主武器強化」、「副装備強化」、「生命力増強」、「回復薬+1」の4種類の強化を行なえるというもの。どれも効果が高く、重ねて強化することも可能だが、魂は一度に4つまでしか保持できず、5個目を取ると1個入手した状態に戻ってしまうというのがポイントだ。4つの魂を必要とする「回復薬+1」は、強化ではなく回復薬の追加となるが、持てる数が決まっているので、どのタイミングでどの効果を選ぶかは、戦況によって考える必要があるだろう。ちなみに筆者はこの仕組みを、同じKONAMIのシューティングゲーム「グラディウス」のカプセルによるパワーアップをオマージュしたものだと勝手に思い込んでいるのだが、どうなのだろうか?
やり込むことで自分の腕が上がっていくことを実感できるゲームバランスが魅力
ゲームを始めた頃は、デフォルトの最低難易度の設定でもかなり難しいと感じたのだが、コツを掴んでいくと少しずつ先へと進むことができるようになり、自分の腕が上がっていくことを実感できるのが心地いい。志半ばにして倒れてしまっても、その道中で発見した素材を使って新たな装備をアンロックしたり、プレーヤーの能力を強化したりすることもできるので、繰り返しのプレイも無駄になることはなく、今後もさらにやり込んでみようと思っている。
34年前に発売された「月風魔伝」を知っていても知らなくても、本作の独特なグラフィックス表現とハードなアクションはぜひ体験してみていただきたいもの。発売後に新キャラクターの追加もアナウンスされているので、それも含めて、新たな「月風魔伝」の世界を味わってみてほしい。
©Konami Digital Entertainment