PCゲーミングデバイスレビュー

G-Tune×東プレのコラボレーションが実現!
高い“戦闘力”を誇るゲーミングキーボード

「Realforce 108B-MP」



 ハイエンドキーボードのユーザーなら知らぬ者はいない、東プレの「Realforce」シリーズ。高速打鍵に適した低荷重キーと信頼性の高いスイッチ機構により、多くのプロフェッショナルやゲーマーに愛されてきたキーボードシリーズに、ゲームユーザー向けの新たなバリエーションが登場した。それが今回紹介する「Realforce 108B-MP」、またの名を「G-Tune Masterpiece Keyboard」だ。

 本製品はマウスコンピューターが展開するゲーミングPCブランド「G-Tune」の名を冠するとおり、マウスコンピューターと東プレのコラボレーションによって実現したキーボードだ。「Realforce」シリーズをベースに、高速打鍵に適したキー特性やデザインにいくつかの工夫を加え、非常に戦闘力の高いゲーミングキーボードに仕上がっている。お値段もしっかり「Realforce」グレードだが、本稿ではその魅力をたっぷり紹介していきたい。



■ 「Realforce」をベースに、全キー荷重45g、キートップカスタマイズパーツを搭載

標準的な日本語108キーレイアウトを採用
赤い底板がキーの隙間からうっすらと見えるオリジナルデザイン
底面。チルトスタンド機構とケーブル経路変更のための溝がある
PCへの接続端子はPS/2のみ

 本製品「Realforce 108B-MP」は、マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」より販売されているミドル~ハイエンドクラスのゲーミングPCにバンドル可能なオプションとして販売されているほか、単品購入も可能だ。価格は24,990円と、1万円を超えるハイエンドキーボードの中でも特に高価なクラスに位置している。ゲーミングキーボードの中では最高値にあたるだろう。

 

 外観はシンプルな108日本語キーボードレイアウトになっており、同キー配列の東プレ「Realfoce」シリーズと何ら変わらない形状をしている。本体色はブラックのみが提供されており、本製品ならではのポイントとすれば、キー底面に赤色の底板を配置して、各キーの隙間から刺激的な赤が見え隠れするところ。また、キーボード右上に位置するLED表示部に、本来の「Realforce」にはない赤色LEDを採用しており、独特の雰囲気をたたえている。

 「Realforce」の名を冠するということで、当然キースイッチには東プレの独自技術である「無接点静電容量方式」が採用されている。この方式は、スイッチが押下される際、キー側の接点と回路が直接触れることなくスイッチがONになるというもので、独特の滑らかなキータッチと、1キーあたり約3,000万回の打鍵に耐える長寿命を実現している。キーのストローク長は4mmで、およそ半分の2mmほど押下した時点でスイッチが反応するようになっている。

 基本的なスペックは「Realfoce」シリーズをそのまま受け継いでいる本製品だが、ゲーミングキーボードとしての固有の特性もいくつかある。最も重要な点は、一般的な「Realfoce」が各キー30g~55gの変化荷重仕様をとりタッチタイピングに適した仕様になっていることに対し、本製品では全キーの荷重が45gに統一されていることだ。全キーを統一荷重とすることで、ゲーム中平等に使われることの多い「WSAD」や「EDSF」などのキータッチが、より平らなものになるわけだ。

 もうひとつゲーミング用途として特筆すべきは、本製品がPC接続端子としてPS/2端子のみを実装している点だ。現在の一般的なキーボードはUSB端子を標準実装しているが、USBは信号の仕様上、最大6キー程度の同時押ししか認識しないという弱点がある。PS/2端子ならばその制限がなく、本製品では「全キー同時押し」を実現している。

 PS/2端子のみをサポートしたことで、PS/2端子をもたないPCでの利用は事実上不可能となっている。さらにパッケージ内にはPS/2→USB変換端子すら付いていない。これは仕様的にかなりの英断というべきか、膨大な数のノートPCを数に入れないという点で驚くべき決断だが、対象とするユーザー層としてコアなPCゲーマーを想定していることを考えれば、ある意味で的を射た仕様といえるかもしれない。ほとんどのデスクトップPCにはきちんとPS/2端子が実装されているからだ。

 このほか本製品には、独自のカスタマイズパーツとして、6つのキーの赤いキートップと、4つのキーストッパー、交換用の工具が付属している。キートップはW、S、A、D、左Shift、左Ctrlで、元々付いているキートップを工具で引っこ抜いて差し替えることが可能。また4つのキーストッパーは、キー交換と同じ要領でスイッチ部分に挿し込むことで使うもので、例えばWindowsキーなど、ゲーム中の誤操作を避けたいキーを押せなくするという目的があるものだ。


側面。タッチタイピング時の疲労を軽減するステップスカルプチャー構造で、各列のキーに小さな段差がある
カスタマイズパーツとして赤色キートップ、キーストッパー、工具が付属する。

キーの交換はこのように。工具を挿し込んでキートップをぐっと引きぬく。あとはオプションのキートップを挿し込むか、キーストッパーを間に挟むだけ



■ キータッチはまさに「Realfoce」。素早い操作が可能で、長時間のプレイでも疲れにくい

キーストロークは4mm。その半ばあたりでスイッチが反応する
LEDは赤色を採用し、他の「Realforce」シリーズにはない雰囲気
ゲーム中の誤操作がきになるWinsowsキーは、キーストッパーで無効にすることも可能

 筆者はプライベートでも「Realfoce」シリーズの熱心なユーザーで、自宅にある全てのデスクトップPCにはもう何年も「Realforce」のテンキーレスタイプが接続されている。出先でノートPCにつないで使うための予備もある。数えてみたら4台もあった。それだけに「Realforce」を元にした本製品について、筆者が感じる良さというのは、常日頃感じていることの延長といえる部分が多い。

 

 まずはその打鍵感の良さだ。キートップに指を置き軽く力をいれると、「サクッ」という軽い感触とともに、すとん、とキーが落ちる。上品な感触で、軽い力で操作でき、指への負担が少ない。安い製品ではありがちなキートップのグラつきもあまり感じられず、ソリッドな打鍵感を与えてくれる。元々はプロのタイピストやライティングを生業とするヘビーユーザーのために作られたキーボードであるため、キーボードとしての基本がしっかりしているのだ。

 その上で本製品では全キー45gの統一荷重を採用している。この点はオリジナルの「Realfoce」に比べて、さらにゲーム中の疲労を軽減する効果を感じた。

 オリジナルの「Realfoce」は、人差し指で操作する中央近くのキーが35g、小指で操作する両端近くのキーが55g、その中間が45gというふうに荷重が分けられている。つまり、「WSAD」あるいは「EDSF」をFPSの平行移動操作に当てている場合、各指に必要な操作の力加減が異なってくる。このため長時間FPSをプレイしていると、なんだか薬指のあたりが先に疲れてくるという経験が度々あった。

 それに対し、本製品では全キーが45gに統一されていることで、全ての指をフラットな力加減で操作することができる。このため、より自然な感触でゲーム内の動きを操ることができ、特定の指に多くの負担がかかるようなこともなくなるわけだ。真剣に特定のゲームに取り組み、長時間キーボードの同じ部分を押し続けるというコアなユーザーには、違いがわかる特性と言えるだろう。

 逆にいうとこの特性は、1日に何時間もゲームの練習を続けるようなことがない一般的なPCゲームユーザーにとっては、違いを感じるのは難しい点と言えるかもしれない。したがって本製品は、あくまでコアゲーマー向けのカスタマイズが施された製品ということができるし、本製品を販売するマウスコンピューターでも実際にそう位置づけられているように思う。

 その違いがわかるレベルのユーザーにとっては、本製品のもつ「Realforce」ゆずりの堅牢性もありがたいポイントとなるはずだ。高級キーボードの例にもれず「Realforce」は非常に長寿命で、筆者が使用している同シリーズのキーボードは毎日数千字のタイピングを行ないつつ、もう5年以上変わらぬパフォーマンスで使用できている。十分な経験則から言っても、少々水やコーヒーをこぼしたくらいで回路が壊れることもない。同一のデバイスを長く使い込むことで経験値を高めることが重要なコアゲーマーには必須の特性を、元々備えた製品なのだ。



■ 違いのわかるユーザー向けの製品。利点のひとつひとつは他の「Realforce」シリーズでも得られるが……

荷重45g、全キー同時押し可能、独自デザインといった特性をどう見積もるかが選択のポイントになりそうだ

 本製品を選ぶかどうかを決める上で、最大の問題となるのはやはりその価格だろう。最高の環境のためにいくらでも投資できるという方には何も言わずに本製品をオススメできるが、そうでない方には悩ましい選択となる。というのは、本製品の美点である打鍵感の良さ、荷重の低さ、あるいはPS/2端子採用といった特性は、それぞれ「Realforce」シリーズの別モデルでも得られるものだからだ。

 

 例えば全キー荷重45gというフラットな荷重特性は、シリーズ製品のひとつ「Realforce 108UH SA0100」でも同じ仕様が取られており、実売価格は本製品よりも8,000円ほど安い16,000円台。ただし、端子はUSBとなっている。もしPS/2端子モデルが欲しければ、「Realfoce 106」を始め、型番に「U」を含まないシリーズ製品がそれに該当し、価格はだいたい15,000円台から販売されている。

 ゲームの雰囲気に合わせて黒いモデルがお好みなら、「Realforce」シリーズには多数のブラックモデルが存在する。筆者の場合はマウス操作スペース確保のためテンキーレスモデルが好みなので、シリーズの87キーモデル、あるいは91キーモデルを好んで使用している。

 というわけで「Realfoce」シリーズは非常にバリエーションが豊富なだけに、基本の打鍵感を重視するだけであれば多数の選択肢があるわけだ。その中で本製品ならではと言えるポイントは、ゲーミングモデルとして必要な特性をすべて同時に備えているということ。この点において、全く同じ仕様を備える非ゲーミングモデルの「Realforce」は存在しない。

 キーボードとして、あるいはゲーミングデバイスとして非のつけられない出来の製品であるだけに、選択のポイントは、あなたがそれを本当に必要としているのか、ということになるだろう。まずは日々のゲームプレイ時に、高速操作が可能で疲れにくい最高のキーボードがあったらどうか、ということを想像してみて欲しい。



(2010年11月1日)

[Reported by 佐藤カフジ ]