★DSゲームレビュー★
世界観、映像表現、ゲーム性、遊びやすさ 全てにこだわりを感じる新作アクションRPG 「Solatorobo それからCODAへ」 |
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10月28日、株式会社バンダイナムコゲームスから「Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ」が発売された。本作は、「構想10年、制作3年」という長期間をかけて開発されたアクションRPGだ。
開発は「テイルコンチェルト」、「NARUTO-ナルト- ナルティメット」シリーズ、「.hack」シリーズで知られる株式会社サイバーコネクトツーが担当している。
コレクターズエディションには、ゲームソフトに加え、1,000点を超えるという世界観設定がまとめられた設定資料、ゲーム内で使用された音源だけでなく、サントラCDでしか聴くことのできない音楽が収録されたオリジナルサウンドトラック、特製スリーブケースが同梱されている。ファンにはたまらない内容だ。
それでは早速、本作の魅力を紹介していこう。
■ 1,000点以上もの膨大な世界観設定資料から生み出される壮大な物語
ある重要ファイルを入手してほしいと依頼されたレッドは、それが保管されている貨物船・ヒンデンブルグに潜入する。 首尾よく目的のものを手に入れたうえに、船内にあったメダリオンをみやげがわりに持ち去ろうとするレッド。だがその瞬間、レッドは目を疑わんばかりの光景を目にする。天を突くような巨像が突如として現われ、彼の乗るヒンデンブルグに激突したのだ。船はみるみる炎上し、墜落は時間の問題であった。 火の粉を振り払いながら脱出を試みるレッドは、崩壊が進む船内で倒れているネコヒトを発見する。この出会いが、のちに世界を揺るがす壮大な戦いの幕開けであった。 |
本作では、イヌヒト、ネコヒトという種族が、現在は絶滅したと言われているオオカミ族から伝えられたロボの技術を利用して、世界各地に点在する浮遊島で生活している。この世界では、警察組織は存在するものの、人数が足りないため、ハンターギルドが治安や問題の解決を担っている。
主人公レッド・サハランは、ハンターギルドに所属しないフリーのハンターとして、様々な依頼をこなす日々を送っていた。ある日、依頼を受けて潜入した貨物船で謎のメダリオンとネコヒトのエル・メリゼを発見する。このメダリオンとエル・メリゼとの出会いにより、とんでもない事件に巻き込まれていく。
1,000点以上もの世界観設定資料が用意された本作。登場人物だけでなく、通貨や宗教など、人々の生活までもが事細かく設定されている。これらの設定はゲーム中で描かれる以上に用意されているため、全てを楽しみたい人には、フルカラーで100ページを超える大ボリュームの世界観設定資料が同梱されたコレクターズエディションがオススメだ。
主人公たちが生活する飛行艇アスモデウス、呪術文化など、細部に渡るまで設定がある。これほどの設定があるからこそ魅力溢れる世界が構築できたのだろう |
「パースマップ」(パースや奥行きのある状態のテクスチャをマッピングする手法)などを駆使することで実現した独特の映像表現にも注目したい。DSで3Dのゲームとなると、据え置き機のような多数のポリゴンでの絵作りは難しいが、高い映像表現技術にも定評のあるサイバーコネクトツーだけあって、見事に美しい世界を表現している。この点は画面を見てもらうとよくわかるだろう。
手前、奥がスクロールし、立体感のある街並みが描かれている。世界観を活かす映像表現にも注目だ |
■ 次に何をするべきか、どこへ行くべきかが明らかで、迷うことなく進められる
「クエスト屋でクエストを受け、その依頼を達成する」というのが本作の基本の流れとなる。至る所に細かい配慮がなされた親切設計になっており、シンプルでわかりやすく、ゲーム進行で迷うことはまずない。では、どのように親切でわかりやすいのか具体的に紹介していきたい。
主人公たちの生活する飛行艇アスモデウスで「目的地に移動」を選択すると、島や船などの目的地が表示され、決定すれば一瞬で目的地へ移動してくれる。この目的地選択では、NEXT(シナリオ進行を進めるための目的地)、NEW QUEST(新たなクエストが発生した場所)の情報に加え、オンカーソルした目的地の情報として、発生しているクエストの数や得られるクエストポイントの情報も表示される。物語を進めたければNEXTを選べばいいし、サブストーリーが楽しめるクエストを受けたければNEW QUESTなどを選択すればいいわけだ。
飛行艇アスモデウスから目的地へ移動する。次の目的地や新たなクエストが発生した場所が一目瞭然だ。なお、船内の居住区ではアルバムの閲覧やBGM鑑賞が可能 |
目的地となる島には町があり、人々が生活している。町は広いが、ロボに乗っている状態でのBボタン2回押しによるダッシュは移動距離が長く、スピードも速いため、快適に移動できる。
町のクエスト屋に訪れると、クエスト名、得られるクエストポイントなどが一覧で表示される。クエストには受けるために必要なハンターランクが設定されており、条件を満たしていなければ受けることはできない。クエストポイントとは、ハンターランクを上げるために必要なポイントで、10ポイントためるごとに1ランクアップする。ハンターランクを上げることで新たなクエストが受けられるようになるわけだ。ストーリーを進めたければ、クエスト名の左側に☆が付いているクエストを選択する。もし、クエスト受注に必要なハンターランクが足りなければ、クエストポイントが獲得できる他のクエストを達成し、ハンターランクを上げればいい。
クエストを受けると、上画面のマップで、現在地から目的地までの道程がわかるように画面がスクロールし、依頼主など目的地となる場所には「!」マークまでもが表示される。下画面でも話しかけるべき依頼主に「!」マークが付いているので、迷うことなく目的地にたどり着き、クエストを始めることができる。1度受けたクエストは破棄できないが、成否を問わず、クエストを1度進めれば、別のクエストを受けることができるので安心だ。なお、クエストを複数同時に受けることはできない。
クエスト屋でクエストを受けると、目的地が「!」マークで示される。後はマップを見ながら目的地にたどり着き、クエストを始めるだけだ。このように、どこへ行って何をするのかが明らかで、迷うことのない親切な作りになっている |
■ 簡単、爽快! ロボとヒトのダブルアクション!
主人公レッドの愛機ダハーカ。一般的なロボよりも小さく、火気を搭載していないが、パワフルな両腕を持っている |
ここではゲームの肝となるロボとヒトとのダブルアクションについて紹介したい。基本的に主人公レッドは愛機である「ダハーカ」に乗って行動するのだが、状況に応じてダハーカを降りて、単身で行動する。ロボとヒトの2つを切り替えての操作となると「難しいのでは?」と思うかもしれないが、どちらも簡単で、すぐに操作に慣れるだろう。
ダハーカは一般的なロボより小さいが、器用でパワフルな両腕が特徴。重火器などを搭載していないため、両腕を使って「掴む」、「投げる」の2つのアクションで敵と戦う。敵弾や小さな敵はAボタンでキャッチし、再度Aボタンを押せば投げることができる。中~大型の敵機相手の場合は、Aボタンですぐ掴むことはできない。敵の側でAボタンを押すとリフトゲージが表示され、Aボタンを連打することでリフトゲージが上昇し、ゲージMAXとなると敵を掴めるようになっている。掴んでしまえばこっちのもの。Aボタンで投げ飛ばしてやろう。投げた敵が、他の敵に当たれば、その敵にもダメージを与えることができる。
投げた後、敵にコンボリングが表示されていれば、続けて掴んでコンボを繰り出せる。コンボは空中でも可能で、最大3回まで行なえ、通常のコンボよりも大ダメージを与えられる。例えば、敵を掴む(Aボタン連打)→ジャンプ(Bボタン)→ジャンプ中に投げる(Aボタン)→ジャンプ(Bボタン)→空中で敵を掴む(Aボタン)→ジャンプ中に投げる(Aボタン)などとコンボを繋げるのだ。このように複雑なコマンド入力なしで、爽快にコンボが決められる。
掴むまでのリフトゲージ表示中は敵も動けるため、攻撃されてしまうことがある。攻撃されてしまうと掴むアクションが中断されてしまうため、敵の行動パターンの見極めが重要となる。背後からだとリフトゲージが上昇しやすいので、相手の攻撃の隙に背後から掴むと成功しやすい。また、特定条件を満たさないと掴めない敵もいるので、通常通り近づいてAボタンを押しても掴めない敵が出てきたら、相手が投げてくるものを掴んで投げ返すなど、頭を切り替えて戦おう。
また、Bボタン2回連続入力のダッシュは、スピーディーな移動を実現してくれるだけでなく、攻撃手段としても活躍する。ダッシュで敵にぶつかれば、ダメージは与えられないものの、一瞬のけぞらせたり、武器を落とさせたりできる。ほかにもダンジョンなどでは、コンテナでスイッチを押したり、足場にしたりと簡単なパズル的な要素もあり、これらも戦闘と同様のアクション操作で行なう。
近づいてAボタンを連打し、敵を掴む。リフトゲージがMAXになれば掴み成功だ | コンボリングが表示されたらコンボのチャンス。コンボを決めて、大ダメージを与えてやろう | ステージやクエストによっては掴んで投げる以外の攻撃手段が使えることも |
Yボタンを押せばロボから降りて、ヒトの状態でアクションが行なえる。ダハーカは水場を渡ることはできないし、狭い道を通ることができないため、このような状況ではロボから降りて行動することになる。レッドはスタンガンを所持しており、敵の動きを一定時間止められるが、ダメージを与える手段はない。会敵したら、スタンガンやジャンプなどを駆使して敵をやり過ごすことになる。ちなみに街中やロボでの戦闘中など、いつでもロボから降りることができる。
ダハーカは水場を渡ることができないが、レッドは泳ぐことができるため、水場ではダハーカから降りて、先に進む。ロボに乗っていなくても、ジャンプや移動などは通常通りできるが、レッドの持つスタンガンでは敵の動きを一時的に封じることしかできない。敵がいたら、足止めするなり、回避するなりしてやり過ごし、ロボに乗って敵を倒そう |
掴んで投げる通常のロボアクション以外にも、釣りができるアングラーモードや空を飛ぶフライヤーモードなどがある。アングラーモードは戦艦をヤドにした超巨大ヤドカリを釣るというなんとも豪快なモード。戦艦を釣るとポイントが得られ、ポイントは後述のPクリステルやパーツと交換できる。フライヤーモードは通常の操作とは異なるもので、その名の通り、大空を飛びまわれるモード。空を飛ぶ気持ち良さが味わえる。エアロボグランプリという、飛行レースも存在する。
戦艦を釣るアングラーモード。モリを打ち込み、オーバーヒートしないように引き寄せて、豪快に釣り上げる! 釣り上げた内容に応じてポイントが得られ、ポイントはパーツと交換できる |
■ ダハーカを強化してくれるカスタムとレベルアップ
アクション=難しそうというイメージを持つ人がいるかもしれないが、本作は誰でもプレイできるように調整されているので安心してほしい。難易度はそれほど高くないし、カスタムやレベルアップで強化することもできる。もし、難しいと感じたら、クエストをこなしてお金を稼いでカスタムパーツを購入したり、レベルアップすればいいわけだ。
カスタムは、様々なパーツをセットすることでダハーカをパワーアップするシステム。パーツには、「こうげき」、「ぼうぎょ」、「ちから」、「はやさ」、「ふっかつ」の5カテゴリがある。こうげきとぼうぎょは与ダメージや被ダメージに、ちからはリフトゲージのたまりやすさに、はやさは移動スピードに影響する。ふっかつはライフがなくなった場合にセットしたパーツを身代わりに回復するものだ。これらのパーツは町などにあるショップで購入できる。
それぞれのパーツには+5などの性能とパーツの形状が設定されている。パーツをセットできるスロットは限られているため、どうセットするかが鍵となる。形状は簡単なものから複雑なものまであり、基本的に構成するブロック数の多いものほど高い効果を得られる。ただし、同じブロック数でも効果の高いものが存在する。パーツを手に入れたら、すぐに性能をチェックしてもらいたい。限られたスロットで高い効果が得られるように考えてセットするのが面白い。
空きスロットにパーツをセットすることでダハーカの性能を強化できるカスタム。パーツは回転させることが可能なので、スロットの状況に合わせて、隙間なくパーツをセットしたい |
スロットは限られているといったが、街やダンジョンなどで拾うことのできるPクリステルを消費することで拡張できる。拡張する場所により、必要ポイントは異なる。所持しているパーツを考えて、最も高い性能が発揮できるように拡張していくわけだ。
町やダンジョンなどで得られるPクリステル。Pクリステルを消費することで空きスロットを増やすことが可能。空きスロットが増えれば、セットできるパーツが増えるため、ダハーカをより強化できる |
何かに特化させるか、バランスを取るかはプレーヤーの自由だが、本作にはステージ中で拾える肉以外に、戦闘中に回復する手段が存在しないため、防御面に不安のある人なら、ぼうぎょやふっかつのパーツをセットしておくといいだろう。ただし、難易度はそれほど高くないため、アクションが得意な人なら、こうげきとぼうぎょのパーツを軸にするのがオススメだ。筆者が特に重要と感じたのは、リフトゲージがたまりやすくなるちから。掴まなくてはダメージを与えられないので、こうげきよりもちからを重視したセットアップが使いやすかった。
ゲームを進めていくと、カスタムでタイプチェンジが可能になる。タイプチェンジはダハーカのベース機体性能や技を変化させるもので、はやさがアップするが防御がダウンするもの、ちからがアップし、通常とは異なる技が使えるものなどが存在する。技の変化は面白く、タイプが変わると、バトルの印象ががらっと変化し、同じバトルでも新鮮な気持ちで楽しめる。
カスタム以外にレベルアップの要素もある。レベルアップには敵を倒すことで得られる経験値が必要で、レベルアップするとカスタムでは上昇させられない体力の最大値が上昇する。なお、レベルアップは、ちからやこうげきなど、体力以外のパラメーターには影響しない。
■ キャラクターにスポットを当てたサイドストーリーが楽しめるクエストダウンロードと通信対戦エアロボグランプリ
ニンテンドーWi-Fiコネクションによるクエストダウンロード、DSワイヤレスプレイでの通信対戦も搭載されている。
ニンテンドーWi-Fiコネクションによるクエストダウンロードは、アクションもあるが、ほとんどがキャラクターとドラマ性を重視したものになっているそうだ。価格は無料を予定しており、詳細は近日中に公開予定とのこと。どのキャラクターにスポットを当てた、どんなクエストが配信されるのか楽しみだ。
クエストダウンロードはニンテンドーWi-Fiコネクションを利用して行なう。事前にWi-Fi設定を済ませておけば、スムーズにダウンロードできる |
本編中でもプレイすることになる飛行レース。DSワイヤレスプレイでは、エアロボグランプリとして、最大4人での対戦が可能で、順位に応じて賞金が得られる。また、このレースで使用できる機体は特定のクエストで増やすことができる。
特徴的なのが、アイテムの日(レース中にとったアイテムが多いほどボーナスアップ)やゾロ目の日(各ラップ、総合タイムでゾロ目部分が多いほどボーナス)など、日毎にボーナスが設定されている点だ。このボーナス条件を達成すれば、獲得賞金を増やすことができる。
最大4人での対戦が可能なエアロボグランプリ。順位や日毎のボーナスに応じて賞金が得られる。操縦技術やコースの把握もさることながら、ステージに配置されたアイテムをいかに使うかも重要 |
■ 最後に
構想10年、制作3年という長い年月をかけて生み出された本作。重厚かつ壮大な物語、多彩なゲーム性が凝縮して詰め込まれている。2部構成で描かれる物語やサイドストーリー、長く楽しめるよう用意されたクエストダウンロードなど、ボリュームも十分だ。世界観をより知りたければ、まず公式ホームページにアクセスしてもらうのがいいだろう。キャラクター情報などに加え、ギネス記録に挑戦中の100タイプのTVCMも閲覧することができる。100タイプのCMは単なるバリエーション違いではなく、それぞれが全く違い、見ていて飽きない。
プレイしてみると遊びやすさへのこだわりがよくわかる。親切なインフォメーションだけでなく、インターフェイスもシンプルでわかりやすい。「親切=うっとうしい説明が延々と続くのでは?」と危惧する人もいるだろうが、その点についても安心だ。説明を聞かないという選択肢が用意されているし、説明自体が短い文章で簡潔にまとめられている。
筆者は頻繁に行なわれる町の人との会話がどういう仕様になっているのかを気にするタイプなのだが、本作ではAボタンで早送り&ページめくり、会話途中であってもBボタンで会話が中断できるという仕様になっている(Aボタンは十字ボタン下でも代用可)。これはとても使いやすいと感じた。例えば、Aボタンでしか会話が進められない仕様だと、連打しすぎた場合には再び会話が始まってしまい、最後まで見なければならなくなる。だが、本作の仕様ならいつでもBボタンで瞬時に会話を終えられるし、十字ボタン下で会話を進めれば再度話すことは100%ない。これら遊びやすさへの配慮がゲーム全般を通して感じられるのだ。小さな問題と感じるかもしれないが、このような小さな積み重ねが本当の遊びやすさを作るのではないだろうか。
遊びやすさは折り紙付き。獣人とロボの世界観を気に入った方はもちろんのこと、アクションがあまり得意でない方にもオススメできる逸品だ。
(C)2010 NBGI
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□ サイバーコネクトツーのホームページ
http://www.cc2.co.jp/
□ 「Solatorobo それからCODAへ」のページ
http://www.solarobo.channel.or.jp/
(2010年10月29日)