PSPゲームレビュー

PS3で人気を博したタイトルの続編が
大幅にボリュームアップしてPSPに登場

「戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校」

  • ジャンル:アクティブシミュレーションRPG
  • 発売元:株式会社セガ
  • 価格:6,090円(UMD版)
       5,400円(ダウンロード版)
  • プラットフォーム:PSP
  • 発売日:発売中(1月21日発売)
  • プレイ人数:1人(通信対戦プレイ2人、通信協力プレイ2~4人)
  • CEROレーティング:B(12才以上対象)


 1月21日に株式会社セガからPSP「戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校」(以下、本作)が発売された。本作はプレイステーション 3で発売され、アクションゲームの爽快感とシミュレーションゲームの戦略性を融合したゲームシステム“BLiTZ”と、水彩画のような独特のグラフィックス表現“CANVAS”で話題となった「戦場のヴァルキュリア」(以下、前作)の続編で、プラットフォームをPSPに変更しての登場となっている。

 PSPになったことで、背景がリアルタイムに動きまくることはなくなったものの、水彩画風の独特なグラフィックスは健在。さらにゲーム内容のほうでは、前作を大幅に超えるミッション数や、仲間となるキャラクターや戦車のカスタマイズ要素、個性あふれるクラスメイトたちなど、あらゆる面で大幅にボリュームアップ。やり込み要素満載のタイトルとなっている。

 今回のレビューでは、基本的なゲーム内容はもちろん、前作から変更された部分や新たに追加された通信プレイなどについても、本作の魅力を余すところなく紹介していこう。


■ 主人公たちが成長していく学園ドラマと戦場の厳しさが味わえるストーリー

左から主人公のアバン、ヒロインのコゼット、ダルクス人の秀才ゼリ。この3人を軸にクラスメイトたちを絡めながらストーリーは進んでいく

 ゲームの舞台は、前作から2年後の架空のヨーロッパ大陸の小国ガリア公国。本作の主人公であるアバン・ハーデンスは、ランシール王立士官学校に入学した兄のレオンが特殊任務中に戦死したと伝えられる。軍事機密のため詳しい死因を告げられなかったアバンは、特殊任務の内容について調べるため、ランシール王立士官学校への入学を決意する。何とか士官学校への入学試験を突破したアバンだが、ランシール王立士官学校に所属する学生は、ガリアの支配を目論むガッセナール家が率いる反乱軍から、南部ガリアを守る使命を帯びていた。こうして、アバンは仲間となるクラスメイト達と共に、反乱軍との戦いに巻き込まれていく……。

 このようなプロローグから、本作のストーリーは始まっていく。主人公であるアバン自身が、運動神経は抜群ながら勉強は苦手であるように、G組に所属するクラスメイトたちは、誰もが悩みや問題をかかえた落ちこぼれ揃い。そんな彼らと学園生活を通じて問題を克服していく学園ドラマと、反乱軍との戦闘を通じて描かれる戦場ドラマの2つが柱となったストーリーとなっている。また、本筋のストーリーとは関係ない部分ではコミカルなイベントも多数用意されており、キャラクターたちのさまざまな一面を知ることができるのも魅力の1つといえるだろう。


ストーリー進行上の重要なイベントでは、主人公たちだけではなくクラスメイトたちも登場して、イベントを盛り上げてくれる士官学校内でのライバルとなるA組の委員長のユリアナ。彼女をはじめ、ほかのクラスとも切磋琢磨しながら、アバンたちG組は成長していく反乱軍を率いるギルベルト・ガッセナール(中央)と、将軍であるギルベルト(写真左)とオドレイ(写真右)。反乱軍との戦闘では彼らと直接戦闘する機会も訪れる



■ クラスメイトたちとの学園生活が楽しめるアカデミーパート

アカデミーパートでは士官学校内のさまざまな施設が利用できるほか、クラスメイトの日常を描いたイベントなども多数用意されている

 ゲームは、主人公のアバンがランシール士官学校に入学した1月からスタート。その月に発生したキーミッションの中から、決められた数のミッションをクリアすることで、ストーリーミッションが発生。ストーリーミッションをクリアするとストーリーが進行して、次の月へと時間が進むという形でゲームは進行していく。各ミッションの合間には、仲良くなったクラスメイトたちを始めとした登場人物たちのイベントが発生し、キャラクターや世界観をよりよく知ることができる。

 ゲームは士官学校内で、イベントをみたりキャラクターを成長させるアカデミーパートと、実際にミッションを受けて、達成目標に向けて戦闘を行なうバトルパートの2つに大きく分かれている。ここからは、まずアカデミーパートの内容について紹介していこう。

 アカデミーパートでは、校内で起こるさまざまなイベントが見られるほか、校内の施設を訪れてキャラクターの訓練や、装備の開発をするなど、戦闘前の準備を行なうことができる。事前に準備しておくことで、バトルパートのミッションが遂行しやすくなるので、ミッション前には忘れずに準備をしておきたい。

 前作から大きく変わった点として、キャラクターたちの日常を描いたイベントが多数用意されていることだ。これらのイベントは、普通にゲームを進めているとミッションを終えた後に毎回新しいものが1つ発生するため、ミッションをクリアするごとに、登場するキャラクターたちや世界観を知ることができる。これらのイベントは、ストーリーの本線とは関係のないものが多いため、無視しても何の問題もないが、季節ごとにしか見られないイベントもあるので、発生したイベントはなるべく見ておこう。

 また、ミッションに一緒に出撃することで仲良くなれるクラスメイトたちには、それぞれに専用のイベントが用意されており、イベントを見ていくことでクラスメイト専用のミッションが発生する。クラスメイトたちはいずれも個性的すぎるほど個性的なキャラクターたちとなっており、落ちこぼれ扱いされるG組の中で何らかの悩みを持っている人達ばかり。クラスメイト専用のミッションをクリアすることで、その悩みが解消され、戦闘においてより頼れる存在になるので、お気に入りのキャラクターがいたら、なるべく彼らのイベントもこなしておきたいところだ。

 キャラクター専用のミッションは必ずしもプレイしなくてはいけないわけではなく、無視してストーリーを進めることもできるので、ストーリーの先が気になる人は、クリア後のお楽しみにとっておくのもいい。ストーリーをどんどん進めるのも、クラスメイト専用のミッションをして寄り道するのも、プレーヤーの自由となので、自分なりのペースで進めていくといいだろう。


たとえば、クラスメイトの1人であるロッテのイベントでは、彼女とともに校内に伝わる7不思議について取材することになる。しかし、取材を妨害する集団が現れて……ここから先は自分の目で確かめてみよう



■ バトルパートはエリア制になったことで展開がスピーディーに

バトルパートでは、まずコマンドモードで戦場全体を見ながら操作するユニットを決定する
ユニットを選択するとアクションモードに入り、3D画面の中を実際に操作しながら画面中央下にあるAPゲージがなくなるまで移動させることができる
アクションモード中、ユニットは1回だけターゲットモードに入って攻撃することができる。攻撃後はアクションモードに戻るため、APが残っていれば再度移動することが可能だ

 アカデミーパート内にある作戦準備室でミッションを開始するとバトルパートに入り、アバンや仲間のクラスメイトたちを操作しながら、ミッションの達成目標を目指して戦うことができる。戦闘は、コマンドモードで戦場全体を把握しながら、CP(コマンドポイント)を消費して操作するユニットを選択するとアクションモードへ移行、アクションモードでは3Dで表示された戦場の中で、選択したユニットを実際に操作しながら戦闘を進めていく。

 シリーズの特徴の1つであるゲームシステム“BLiTZ”は本作でも健在だ。“BLiTZ”では敵の迎撃範囲に入ってしまうと、自分のフェイズ中でも攻撃を受けてしまうため、敵の迎撃範囲を意識しながら行動することが求められる。この、敵が攻撃してくる中を進軍していくライブ感が、ほかのターン制のシミュレーションゲームとの大きな違いだ。迎撃を受けないように、迎撃範囲外から攻撃してジリジリと戦線を押し上げていくか、迎撃でダメージを受けにくい突撃兵や戦車などのユニットを突出させて挟みうちにするかはプレーヤー次第。部隊の指揮官である、プレーヤーの腕の見せどころとなる部分だ。

 ユニットは、偵察兵、突撃兵、対戦車兵、支援兵、技甲兵の5つの兵科と、戦車や装甲車などの車両の6種類。新しく追加された技甲兵は、巨大な盾を前面に構えることで、戦車のように敵からの迎撃をもろともしないで進軍することができるのが最大の特徴だ。ただし、戦車と違って正面以外から迎撃を受けると大ダメージを受けてしまう上、迎撃ができず移動時に消費されるAP(アクションポイント)が少ないといった弱点も持っている。そのため、車両と違って相手の注意を集めて別方向を向かせる囮としては使いにくい。しかし、正面からの迎撃に対しては強いため、敵が密集しているエリアを攻撃する際や、拠点を防衛するユニットとして頼れる存在といえる。


自分のフェイズ中でも、敵の迎撃範囲に入ると容赦ない攻撃を受けてしまう。APが切れる前に、相手の攻撃を受けにくい位置で行動終了するように心がけたい新兵種の技甲兵は、迎撃を受けても大きなダメージを受けずに全身できる。攻撃がレンチによる近接攻撃だけのため、接近するのに一苦労だが敵の迎撃がきつい場面では頼りになる存在だ

 前作との大きな違いとしては、1つの大きなマップではなく、いくつかのエリアに区切られ、拠点を介して別のエリアに移動する機会が格段に増えたことがあげられる。前作ではマップが広かったことがあり、APの多い偵察兵を運用することが多かったが、本作ではどの兵科も2回行動すればエリアの端から端まで移動できるため、どの兵科も使いでがあるように感じられた。また、自分の拠点内のユニットはCPを消費しないで強制退避できるようになったため、状況に合わせて最適な兵種を使いやすくなっている。エリアマップについては同じマップの使いまわしもあるため、前作のようにミッションごとに新たなマップが現われて新鮮な気持ちで攻略する楽しみは薄れたものの、敵ユニットや拠点、新たな進軍ルートを作り出せる車両装備によって、同じマップでもさまざまな攻略法があり、プレーヤーの頭を悩ませ続けることだろう。

ほかのエリアとリンクした拠点を占拠すると、リンク先の拠点からユニットを出撃させることが可能だ。複数のエリアがある場合は、まずリンクした拠点を占拠するように心がけたい拠点範囲内にいるユニットは、コマンドモードでいつでもCP0で後方待機させられる。防衛のために拠点に配置しておいたユニットも、必要がなくなったらCPを消費することなく前線に送り出せるわけだ

 さらに、AIの強化により、敵のフェイズにおいてこちらの迎撃範囲内にうかつに進入してこなくなったほか、拠点を留守にしていると優先的に占拠してくるなど、前作よりも歯応えのある戦闘が楽しめるようになった。筆者のように前作をやりこんだという人でも、簡単にはクリアできない難易度に仕上がっている。

 このように、本作にしかない楽しみも間違いなく存在するため、「PS3じゃなくなったのはどうなの?」と思っている前作のファンも、新しくなった“BLiTZ”を楽しんでもらえるはずだ。もちろん、本作が初めてという人も、自分のターンでも敵が迎撃してくるアクティブシミュレーションRPGというジャンルが生み出すリアルタイム性は、新鮮に映るに違いない。

油断していると、どこからともなく敵に拠点を占拠されてしまうことも。敵がいるエリアには防衛のためのユニットを忘れずに配置したいストーリーが進むと、人造ヴァルキュリアであるV2が多数押し寄せてくるミッションも。V2は圧倒的な攻撃力を持っているため、土のうなどで身を守りながら戦っていこう



■ 豊富な成長・カスタマイズ要素を活用して自分だけの小隊を作り出そう

購買部では、前作の主人公とヒロインであるウェルキンとアリシアから、オーダーを教わることもできる。コマンドモードで使用できるオーダーは、戦況を一変させることもできるので、忘れずに習得しておこう

 ミッションをクリアすると、兵科ごとのレベルアップや装備の開発に利用できる経験値や資金のほか、素材やほかの兵種に兵種変更する際に必要となる単位を取得できる。これらを使うことで、クラスメイトたちや車両を成長させたりカスタマイズすることができる。兵科のレベルアップや兵種の変更はアカデミーパートの兵科教練場、装備の開発や車両のカスタマイズは研究開発棟で行なえるので、ミッション終了後におとずれてみるといいだろう。

 本作からの変更点として、同じ兵科のキャラクターでも、それぞれ別の兵種に変更できるようになったことが挙げられる。たとえば、偵察兵からは、あらゆる能力が上昇した上級偵察兵と、APは大幅に落ちるものの最長の射程距離を誇る狙撃兵のどちらかに変更することができる。そのため、同じ兵科の兵種でも、違う役割を持たせる必要がある。上位の兵種に兵種変更するには、特定の単位が必要で、ミッション開始前に取得できる単位を確認できるため、変更したい兵種がある場合は、兵種変更に必要な単位が得られるミッションを受けるといい。また、同じミッションを何度でも受けられるため、どうしても取得したい単位がある場合は同じミッションを受け続けることも可能だ。

 また、ストーリーを進めていくと、さらに上位の兵種に変更することも可能だ。最上位の兵種は、能力的に強化されるのはもちろん、特別な武器を装備できたり、特別な能力を持っているものもあり、遊び方により大きな幅を持たせてくれるものが多い。ストーリー後半のミッションは難易度の高いものが多く、上位兵種がいると攻略が楽になりやすいので、どの兵種を目指すかを考えながらミッションやキャラクターを選んでいきたい。


兵科教練場では兵科ごとに経験値を消費することで、レベルアップできる。よく使う兵科を優先的にレベルアップさせていくといいだろう主人公のアバンはすべての兵科に適性があるため、唯一どの兵科にも変更可能だ。特定の兵科が足りないときなどに兵種変更させるといいだろう

必要な単位が貯まるまでは、上位の兵種に変更することはできない。兵種変更に必要な単位を覚えておこう各ミッションで得られる単位は、ミッション前のブリーフィングで確認できる。欲しい単位が得られるミッションを受けていこう

 戦車を含めた車両のカスタマイズも、本作で大きく進化した要素だ。戦車の種類が軽戦車・中戦車・重戦車の3種類に増え、消費するCPの量や、搭載できるパーツの積載量に差がつくようになっている。特に軽戦車は、種類によってはCP1で運用できるため、連続して運用しながら敵の陣形を崩すのに最適といえる。さらに、車両の種類として装甲車が追加された。装甲車は迎撃を受けるとわずかにダメージを受けてしまうものの、高い防御力と戦車にはない機動性を持っている。さらに、兵士ユニットを乗せて運ぶこともできるため、APの少ない兵種を最前線に運ぶといったことも可能だ。車両は、部隊内に1つしか配属できないため、戦場に合わせてどの車両を選択するかも嬉しい悩みの1つといえる。

 また、車両に装備するカスタマイズパーツも豊富に用意されている。積載量が関係する、砲塔、アーマー、ショルダー、バックパックのパーツを、戦場に合わせて切り替えることで、より車両を活躍させることが可能だ。パーツの中には、特定エリアのマイナス効果を打ち消すものや、はしごや橋を作ったり、道を塞ぐ岩石を壊すことで新たな進軍ルートを作り出せるものもあり、前作とは比べ物にならないほど本作の車両は運用の幅が広がっている。ただし、積載量の制限があるため、すべてを装備していると戦車自体の戦闘力が落ちてしまうことになりかねない。エリアの特徴や、部隊構成を考えながら車両に何を装備させるかを考えていきたい。

 さらに、積載量に関係なく効果は小さいものの、迷彩により命中率の低下などをもたらしてくれる塗装や、戦車の性能にプラスの要素をもたらしてくれるステッカーも多数用意されている。これらを組み合わせて、自分だけの戦車を作り出す楽しみも、前作よりさらにパワーアップした部分といえるだろう。


研究開発棟では資金を使って、歩兵の装備や戦車の車体・カスタマイズパーツなどを開発できる。兵器の開発は段階式になっており、1段階ずつ開発を進めていく必要がある敵軍にいる名前つきエースを倒すと、武器の設計図を手に入れることもある。エースは通常の兵士よりも手強い存在だが、設計図から作成できる武器は強力なものが多いため、なるべくエースを倒してからミッションをクリアするようにしたい

軽戦車はCP1で動かせるのが最大の魅力だが、積載量が小さいのが欠点。オプションパーツを積むと砲塔に機関砲しか積めなくなりがちだ中戦車は積載量が大きいが動かすにはCPを2消費してしまう。連続して行動しているとあっという間にCPがなくなってしまうので注意



■ 通信プレイでは対戦・協力プレイともに1人用とは一味違う楽しみを用意

ほとんどのミッションで通信協力プレイは可能だが、通信協力プレイでは、ストーリーの進行度によって参加できるミッションのグレードに制限がある。例えば、このグレード2のミッションは8月までストーリーを進めないと参加できない

 本作では、通信プレイにも対応している。通信プレイでは、1対1での対戦プレイはもちろん、最大4人までの協力プレイをすることも可能だ。

 通信協力プレイでは、4人までのプレーヤーが共通の目標を達成するために協力プレイすることになる。しかも協力プレイでは、1人用や通信対戦プレイとは違い、すべてのプレーヤーが同時に自分のユニットを動かすことが可能だ。同時に動かすことで、戦車に囮になってもらって迎撃を受けずに進軍したり、戦車を盾にしながら歩兵ユニットも同時に進軍するなど、1ユニットずつしか動かせない1人用プレイでは絶対に不可能な進軍方法ができるのが魅力だ。

 さらに協力プレイならではのシステムも用意されている。その1つが、ほかのプレーヤーと同時に一定時間内に出撃すると、動かしたユニットたちの長所が能力として得られるバディシステム。例えば、偵察兵と突撃兵を同時に動かすと、偵察兵は攻撃力が高くなり、突撃兵は移動能力が高くなるようになっている。また、ほかのプレーヤーが攻撃中に、近くで○ボタンを押すとターゲットモードに入らずに援護射撃をすることも可能だ。このようなシステムが用意されているので、1人ずつが勝手に動き回ることなく、同じエリアで一緒に行動することが多くなり、一緒に同じ戦場で戦っているという一体感を感じやすい。

 また、自分の余ったCPをほかのプレーヤーに渡すことができるほか、ほかのプレーヤーがしている行動を見ることができるライブカメラモードなど、CPを使い切ってしまった人が退屈にならないような工夫も用意されているなど、遊びやすく作られている印象を受けた。協力プレイでは配置できるユニットの数が9に増えるほか、CPも1人プレイ時よりも多いため、1人よりも格段にクリアしやすくなる。クラスメイトの専用ミッションを除くほとんどのミッションが協力プレイに対応しているため、なかなかクリアできない難しいミッションがあったら、友達に助けてもらうといいだろう。


通信協力プレイでは、敵の迎撃範囲に最初に入ったプレーヤーが迎撃を受け続ける。ほかのプレーヤーに囮になってもらうことで……安全に接近して、背面にある弱点の放熱板を簡単に攻撃できる。迎撃が必ず移動中のユニットに来る1人プレイではできない戦術だ

ほかのプレーヤーに自分が持っているCPを分けることもできる。自分のCPに余裕があるときは、待たせているプレーヤーに分けてあげるといいだろうライブカメラを利用すると、ほかのプレーヤーが操作しているユニットの動きを見ることができる。ほかのプレーヤーの動きを参考にしたいときに利用しよう

 通信対戦プレイでは、基本的に1人用プレイと変わらない対戦を楽しむことが可能だ。しかし、もちろん相手は人間なので、1人用プレイとは比べものにならないほどの知恵比べとなる。相手の視界を意識しながら思わぬところに伏兵を潜ませておき、ちゃっかり拠点を占拠したときなど、相手の裏をかくことに成功した際の爽快感は格別だ。

 対戦のルールも、「相手を全滅させろ」、「相手の本拠点を占拠せよ」といったものから、「中立拠点を3ターン占拠しつづけろ」というような対戦専用のルールも用意されており、さまざまな条件を楽しむことができる。互いの小隊の成長度に差があると一方的な試合になりがちなのが残念だが、ハンデをつけて被ダメージを調整することも可能だ。

 通信対戦プレイをしてみた感想としては、マップやルールにもよるが、正面からぶつかり合う総力戦になりやすいように感じられた。遠距離から攻撃できる狙撃兵は迎撃や反撃を受けないので強く感じられるものの、APが低いため相手のキャラクターを入院させたり、拠点の占拠をするには適さず決定打に欠ける。やはり、あらゆる兵科をまんべんなく使用する必要があるということだろう。

 苦楽をともにし、特徴を知り尽くしたクラスメイトの仲間たちを指揮して、対戦で勝利した際の嬉しさは格別なので、本作を持っていてまだ対戦プレイをしたことがない人は、ぜひ1度は対戦プレイにチャレンジしてほしい。

通信対戦プレイではどちらのプレーヤーが先攻になるかのほか、1ターンごとの持ち時間も設定できる。持ち時間を過ぎると問答無用でフェーズ終了となるので、持ち時間は対戦相手と相談して決めておこう相手が先攻の場合は、いきなり攻撃を受けることになるので、隊員の初期配置では突撃兵や技甲兵などを中心に配置しよう。また、画面左下にあるハンデをつけることで被ダメージを調整することもできる

相手のフェーズ中は、エリアは相手が操作しているエリアの画面になるものの、こちらの視界に入った敵の動きしか見ることができない。相手の伏兵を潜ませないために、自分のフェイズになったらまず偵察兵を動かすといいだろう相手の突撃兵に対して、技甲兵で攻撃!相手の苦手とする兵科で確実に攻撃することが勝利のカギとなる。G組のクラスメイト同士が対峙する姿は通信対戦ならではのものだ。残りの持ち時間に注意しながら、最適なユニットを迅速に動かして勝利をもぎとろう

 以前、開発スタッフにインタビューした際に、プラットフォームをPSPにした理由の1つに「通信プレイにチャレンジしたかったから」という話をうかがったが、通信プレイは対戦・協力ともに新しい楽しみを生み出すことに成功しているように感じられた。PS3のアドホック・パーティを利用することで、インターネット越しに通信プレイをすることもできるので、近くに友達がいないという人は、こちらで一緒にプレイする仲間を探してみてはいかがだろうか。


■ 豊富なボリュームと独自のゲーム性を進化させた大満足の1本

窮地に陥ったG組を救いだす、ヴァルキュリア人とおぼしき謎の少女エイリアスの登場シーン。全編フルボイスとはいかないものの、ストーリーの重要な部分ではムービーが再生されるなど、演出面も充実している

 駆け足で説明してきたが、本作の魅力をおわかりいただけただろうか。PS3からPSPへとプラットフォームが変更されたことで、二の足を踏んでいる前作のファンもまだまだいると思われるが、そのような不安は杞憂といえる。前作のゲームシステムの良かった点を受け継ぎながらも、通信プレイなどにもチャレンジして面白さを進化させている本作は、ナンバリングタイトルにふさわしい完成度を持っている。

 また、ゲームがあまり得意でない人向けに、最初からEASYとNORMALの難易度が用意されているほか、相手のフェイズを速く進められるオプションが用意されていたり、目的にあわせた部隊編成を登録できるグループ編成など、より遊びやすくするための機能も豊富に用意されている。見逃されがちだが、こういった機能が豊富に用意されていることからも、より遊びやすくしようという開発陣の想いが感じられた。

 1つだけ不満点があるとすれば、ある程度の法則性はあるものの、ミッションクリア後に得られる素材や単位がランダムな点だろうか。これにより、お気に入りのキャラクターを兵種変更させたい場合でも、なかなか欲しい単位が取得できずに、イライラさせられることがあった。ある程度のランダム性はあってもいいが、ミッション終了後に1つだけでもいいので、経験値を使うことでなかなか入手できない単位を取得できる、といった救済措置があってもよかったのではないか、というのが正直な気持ちだ。

 しかし、そんな不満は些細なこと。筆者はクラスメイトたちのイベントが気になるあまり、クラスメイトの専用ミッションをなるべくこなしながら50時間ほどプレイしたが、クリアはできておらず、やっとストーリー終盤にさしかかったあたり。これでも、必要のないキーミッションや購入ミッション、クラスメイト専用ミッションのいくつかはプレイしておらず、遊撃ミッションもまったく手つかずの状態と、まだまだ遊び尽くせていない印象だ。

 このように、本作ではクラスメイトたち全員との豊富なイベントはもちろん、200を超えるミッション数や、キャラクターの成長要素など、前作を大幅に上回るボリュームが用意されている。さらに、通信対戦・協力プレイでは1人用プレイとは違った楽しみ方ができるなど、面白さという点でも前作を上回る満足感が味わえるはずだ。前作のファンはもちろん、ターン制のシミュレーションゲームやキャラクターを成長させることが好きな人、やり込みがいがあるゲームを求めている人にも、ぜひ手にとって遊んでいただきたい。本作が持つさまざまな魅力とボリュームにきっと満足していただけるはずだ。


オプションでは、テキストの表示速度やサウンドの大きさのほか、戦闘中の敵フェイズの速度なども設定できる。早く自分の番が回ってきて欲しい人は、ファストやスキップに設定しておこうマップや目的に合わせた部隊を16個まで登録できるグループ編成。特定のミッションに向けたものを登録するもよし、ミッションで取得できる単位に合わせてグループを切り替えるなど、使い方はプレーヤー次第だ


(C)SEGA

(2010年2月5日)

[Reported by 菅原哲二 ]