カプコンを代表する一大シリーズである「バイオハザード」が、ホラーガンシューティングとなってWiiに登場。「バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ」の続編に当たる今作は、「バイオハザード2」や「バイオハザード4」の主人公であるレオンにスポットを当てた内容で、非常に美しい映像で描かれた3つのエピソードを体験できる。
「バイオハザード」と言えば、巧みな恐怖演出と練り込まれた物語が大きな魅力。本作はサバイバルホラーからホラーガンシューティングに変化したことで、こうした演出面がさらに引き立てられている。ゲームプレイはカメラの動きが固定された、いわゆる「レールシューティング」と呼ばれるスタイルで進行。プレーヤーなりの歩調で行動することはできないが、そのぶんゲーム展開は非常にスリリング。静的なシーンから動的なシーンへの緩急、閉塞感と解放感の起伏、連続する危機といった場面がよりドラマチックに描かれている。
また、多くのチャプターにはちょっとしたルート分岐も存在し、武器をカスタマイズして強化する楽しみもある。そのため、繰り返し遊ぶスタイルにも向いている。基本的なゲーム内容を銃撃に絞ったことで、ゲーム世界への没入感がより高くなっていると感じた。では早速、本作がどんなゲームなのかを詳しく見ていきたい。
ホラーガンシューティングとして生まれ変わった本作には、3つのエピソードを収録。「バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ」からシステムも進化し、より遊びやすくなっていることもポイントだ |
■ 3つのエピソードで、過去と現在の“闇”が描かれる
本作のシナリオは大きく3つに分かれ、メインエピソードとなる“Operation Javier”を進めながら、レオン・S・ケネディのふたつの回想エピソードを交えつつ進行する。回想エピソードでは、「バイオハザード2」と「バイオハザード CODE:Veronica」の物語をまるまる体験できるのが大きな特徴。ガンシューティングという性格上、キーアイテムを使った謎解きは一部を除いてすべて省かれているが、物語の大筋はほぼ完全な形で再現されている。アレンジが施されたシーンも多く、原作よりもはるかに美しい映像でこれらの2作品を楽しめるのも本作の醍醐味と言える。ここでは、3つのエピソードを紹介していこう。
【Operation Javier(オペレーション・ハヴィエ)】
「バイオハザード CODE:Veronica」と「バイオハザード4」の間となる2002年を舞台に、レオン・S・ケネディとジャック・クラウザーがチームを組んで作戦行動をともにする。元アンブレラの研究者が、ハヴィエ・ヒダルゴという男と接触したという情報を得た2人は、ハヴィエを捜すために南米の小国に足を踏み入れることになる。そこで彼らが遭遇する“闇”とは!?
アンブレラが事実上の崩壊を迎えた2002年に、新たな疑惑が浮上する。このエピソードではレオンとクラウザーのどちらかを選択可能で、レオンはマグナム、クラウザーはボウガンの扱いが得意。物語の途中に、レオンの回想シーンとしてほかのふたつのエピソードが挟まれる形でストーリーが進んでいく |
【Memory of a Lost City(滅びし街の記憶)】
1998年にラクーンシティで起きた「バイオハザード2」の事件に沿って描かれるエピソード。新米警官のレオンと、クリス・レッドフィールドの妹クレア・レッドフィールドの2人が主人公。彼らが助け合いながら、ゾンビが溢れ返る死の街と化したラクーンシティからの脱出を目指す。
プレーヤーはクレアとレオン。クレアはボウガン、レオンはショットガンが得意武器。「バイオハザード2」に登場したさまざまなシーンやB.O.W.(生物兵器)が、見違えるような高品質なグラフィックで描かれている。“Operation Javier”から、どのような形でこのエピソードにつながるのかにも注目だ |
【Game of Oblivion(忘却のゲーム)】
“Memory of a Lost City”から3ヵ月後。このエピソードはクレアの記憶をたどり、ロックフォート島で遭遇した恐怖に焦点を当てている。すなわち、「バイオハザード CODE:Veronica」に準拠した内容となっている。島の監獄に捕えられ、そこから脱出したクレアとスティーブ・バーンサイドが合流したところから始まる。
このエピソードでは、レオンからクレアが主人公を引き継ぐ形になる。クレアはグレネードランチャー、スティーブはサブマシンガンの扱いに長けている。独裁者アルフレッドが統治する絶海の孤島にも、忌わしい闇が潜んでいる |
■ 絆を育み、ドラマ性を高めるツーマンセルシステム
本作では、2人のキャラクターがチームを組んで戦う「ツーマンセルシステム」を採用。1人プレイの場合、各エピソードで選択しなかったキャラクターがパートナーとして行動する。ただし、1人プレイ時のパートナーはダメージを受けることこそ少ないものの、あまり積極的に攻撃してくれない印象があった。パートナーが敵に狙われることもあるので、しっかりフォローしながら進めよう。そのほか、プレーヤー同士による2人同時プレイも可能となっている。
操作系は、Wiiリモコンを武器に見立てて照準合わせや射撃を行ない、リモコンを振ることでリロードできる。ヌンチャクを使う場合は、主にコントロールスティックの上下左右に割り当てた武器の切り替えに用いる。アイテムメニューへのショートカットもあるので、ストレスなくゲームに没入できる。
相棒は敵との距離によって武器を使い分ける。ゾンビにつかまれてしまうこともあるので、その動向にはこまめに注目しておこう | 照準が敵に合うと白い部分が赤く変化し、弱点に合うと全体が赤くなる。Aボタンを押したままでWiiリモコンを振るとナイフも使える。ナイフ攻撃は、視界に張り付くような虫のクリーチャーに有効だ |
なお、それぞれのエピソードはチャプター形式で進行するが、各チャプターにはいくつものチェックポイントが設けられている。チェックポイントを通過すればオートセーブされるため、ゲームオーバーになってもリスタート地点が大きく戻されることはない。
キャラクターが使用できる武器は、ハンドガン、ショットガン、マグナムなどシリーズ作品でおなじみのもの。このうち、ハンドガンのみ弾数が無制限となっている。チャプターの道中には武器の弾薬、グリーンハーブ、救急スプレー、金塊などのアイテムが落ちていることがある。アイテムは照準を合わせてAボタンを押すだけで取得可能だ。破壊できるオブジェクトの中から、金貨やエンブレムなどのアイテムが出現することもある。
チェックポイントまで到達できれば、ゲームを終えてもそこから続きをプレイできる | ハーブはグリーンハーブのみで、体力を50%回復。救急スプレーは体力がゼロになると自動発動して満タンまで回復する |
■ ガンシューティングならではの魅力を強調
冒頭でも述べたとおり、本作の大きな魅力として筆者に映ったのは、ゲーム世界への深い没入感だ。チームを組んだ2人のキャラクターは未曾有の恐怖を前にして、ときには真摯に、ときには強がりのジョークを交えて会話をしながら、真相へ向かって探索を続けていく。プリレンダリングのムービーが挟まれるシーンもあるが、それ以外の場面はすべてシームレスに進行する。
フォトリアルなゲームには「映画的」という例えがよく使われるが、本作では演出面に加えて、ゲーム内容がシンプルであることが没入感に結びついていると強く感じる。頭を使うシーンや刹那的な反応が求められるシーンはあるものの、難解な仕掛けが解けずに行き詰ったり、迷路のようなマップで迷う心配はない。プレーヤーの意識は“撃つ”という1点に集中できるため、思考が途切れず物語に入っていける。こうした演出とゲーム性の相乗効果で、まるで自分が映画の登場人物になったような感覚を得られるのだ。
とはいえ、敵との戦闘ではさまざまな戦略性が求められる。ヘッドショットを狙う、決まった条件で開く弱点を狙い撃つ、敵の飛び道具を撃ち落とす、特定のタイミングで特定の場所を撃って攻撃を中断させる……敵の種類と攻略アプローチは非常に豊富である。“Operation Javier”には、従来の作品ではいなかった新種のB.O.Wも多数登場し、プレーヤーを大いに苦しめる。
さらにチャプターの最後に待ち受けるボスクラスの敵になると、一見理不尽に思える攻撃を仕掛けてくることが少なくない。しかし、攻略の糸口は必ずあり、学習することで確実に楽になっていくはずだ。こうした、トライ&エラーによる学習効果は、シリーズのナンバリング作品、ひいてはカプコン作品全般に共通する部分である。チャプターが進むにつれて、ジャンルは変われどやはりカプコンのゲームなのだということを実感させられる。
■ 遊びやすさを追求しながら、やり込み要素も多彩
決まった場所を精密に狙い撃つというゲーム性は、本来はシビアなものである。そのため、ガンシューティングはクリアできる人とクリアできない人がハッキリ分かれてしまう恐れがある。そこで本作では、「可変難易度システム」というリアルタイムの難易度調整機能を搭載。端的にいえば、完璧なプレイならば難易度が上がり、ダメージを受け過ぎれば難易度が下がるという具合だ。加えて難易度イージーを選択すれば、簡単操作で照準が敵に自動的に合う「オートロック」が働くので非常に便利。なお、シリーズ作品にはリトライを繰り返すことで難易度が若干下がる仕組みがあったが、本作ではこの難易度緩和についても、ほかの作品よりも大きく感じられた。
また、クリア済みのチャプターであれば、メインメニューから自由にセレクトして遊べる。どうしてもクリアできない難所に突き当たったときは、自分の得意なチャプターを繰り返しプレイして、弾薬を補充したり武器を改造して再挑戦するといい。
武器の改造は道中で拾えるお金を使い、チャプタークリア後のメニュー画面で行なう。改造費はかなり値が張り、すべての武器を最強まで鍛えるとなれば莫大な金額が必要になる。まずは弾数∞のハンドガンなどに絞り、ひとつの武器を集中的に鍛えることを勧めたい。
武器の改造は複数の項目に分かれ、1段階高めるのにもそれなりの金額が必要。後半になれば入手できる金額は増えていくが、どれかひとつでも最強まで改造するのは大変だ |
武器改造のほかにも、やり込み要素は豊富に用意されている。例えば、ゲーム中で拾える文書や、好成績を収めることで入手できる特殊なアイテムが存在。さらに、破壊可能なツボや箱などにアンブレラのエンブレムが隠されていることがあり、収集意欲をそそる。Wi-Fiコネクションでネットに接続すれば、スコアランキングに参加することも可能だ。初心者が遊びやすいだけでなく、コアプレーヤーも存分にやり込める土壌が用意されている。
チャプタークリア後に入手したアイテムが表示される。メニューの「ARCHIVES」から閲覧可能だ | アンブレラのエンブレムは、決まったオブジェクトを破壊すると出現。どんどん探してみよう |
■ Wiiで網羅できるレオンの物語
筆者は「バイオハザード」のナンバリング作品は、「バイオハザード0」を除いてすべてプレイしているが、本作は「バイオハザード2」と「バイオハザード CODE:Veronica」の追体験しているような心境で遊ばせてもらった。いずれも10年以上前の作品だが、“脳内で美化された思い出”を超える勢いの美しい映像で、見慣れたシーンが展開するのはちょっとした感慨と感動があった。シリーズの往年のファンには、「バイオハザード」の追憶を呼び覚ますソフトとしてもオススメしたい。
もちろんそうでない人も独立したホラーガンシューティングとしても楽しめるし、本作をプレイすれば「バイオハザード2」と「バイオハザード CODE:Veronica」のシナリオも把握できる。しかるのちに「バイオハザード4 Wii edition」につないでもらえれば、レオンを中心とした物語をすべてわかるはずだ。
Wii黎明期には、Wiiのコントローラーである意味を強調しすぎるあまり、操作系の奇抜さだけが突き抜けた作品も見受けられた。昨今ではこうしたゲームはほぼなくなっているが、その意味でも本作は非常に洗練されており、Wiiコントローラである意義がある、「Wiiだからこそできた」作品となっている。
最後にごく個人的な要望をひとつだけ。筆者がこれまでに遊んだガンシューティングは、ゲームセンターで稼働していた作品がほとんどを占める。そのため、リロードする際についつい画面外に向けて銃を撃ってしまったことが最初は何度もあった。もし次回作があるならば、この“画面外撃ち”のリロードシステムもぜひ採用してほしいところだ。
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□「バイオハザード ダークサイド・クロニクルズ」のページ
http://www.capcom.co.jp/bio_dc/
(2010年 2月 3日)