「アウターワールド」レビュー

アウターワールド

くせ者揃いの宇宙へ飛び込め! プレーヤーの選択が世界を変えるRPG

ジャンル:
  • RPG
発売元:
  • プライベートディビジョン
開発元:
  • Obsidian
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
  • Windows PC
価格:
7,480円(税込)
発売日:
2019年10月25日

 オープンワールドRPG「アウターワールド」が10月25日に発売される。本作の舞台は地球からはるか遠く離れた「ハルシオン」と呼ばれるコロニー。そんなコロニーに手荒く放り出された主人公が「ハルシオン」に絡む様々な思惑や陰謀に巻き込まれていく。

 本作は、非常にプレーヤー自身の選択に重きが置かれているゲームだ。出会う登場人物を説得し、騙し、罵り、脅し、ときに武力行使でねじ伏せてストーリーを進めていく。ストーリーを進める方法が1つではない。エンディングがマルチなこともあり、プレーヤーによって行き着く先も様々だ。

 中でも登場人物との会話は、群を抜いておもしろい。登場人物自体の個性の強さもさることながら、腹の探り合いなどもあり生身の人間を相手にしている感覚を受ける。登場人物との会話をどう乗り切っていくかが本作の楽しいところだ。

 今回は「アウターワールド」の細部まで触ることができた。クエストや武器の改造などにも触れながら選択の自由が生む本作の魅力を紹介したい。

【The Outer Worlds - 公式ローンチトレーラー】

多彩な登場人物がプレーヤーを翻弄する

 地球から移住先の「ハルシオン」のコロニーに向かう輸送船「ホープ」が遭難して70年。その「ホープ」のなかで冷凍睡眠の状態だった主人公が、フィニアスという謎の男性に助け出される。本作は、その主人公がフィニアスの指示で「ハルシオン」の中の惑星の1つ「テラ2」に降り立つところから物語が始まるシングルプレイRPGだ。

 「テラ2」では、スペーサーズチョイスという企業が事実上の運営を行なっている。しかし、その運営に不満を持つものも少ながらずいたり、そもそも組織に属すことなく略奪をするものもいる。プレーヤーは主人公となり、この管理の行きどといているとは言えないコロニーを探索していくことになる。

 とはいえ、70年近く眠っていた主人公は、そこまで大きな目的意識があるわけではない。強いて言えば、フィニアスに命じられた「ホープ」の残りの乗員を「ハルシオン」に無事降ろすことなのだろう。だた、印象として受けるのは主人公の人格はプレーヤーそのものであるということだ。基本的に会話はすべて選択肢が提示されるので、その中からプレーヤーが感じたものに近いものを選択することになる。

 「アウターワールド」最大の魅力といえば、多彩な登場人物達との会話だ。初めて降り立った地で、右も左もわからぬまま出会った人物たちの話を聞きながら、誰の話を信じるのか、誰の味方につくべきかいろいろと勘ぐりながら、ゲームを進めていく。

 特に本作は出会う人物1人1人が、本当に生きているような発言をしてくる。どことなく真意が垣間見えそうで見えない発言や表情が、プレーヤーの良心や猜疑心をくすぐってくる。どんな行動を選択するかどんどん迫られてくる。

 ちなみに町のおばさんに「私のかわいい坊やを探してくれ」と真剣な顔で頼まれて、てっきり10代の少年だろう探しにいったら、42歳のおっさんだった時は流石に面食らった。42歳は「坊や」ではない。

 ときに心臓がぎゅっとなるくらい怖い思いもすることもあるし、勘ぐりすぎた自分自身が恥ずかしくなるような結果を目の当たりにすることもある。ちなみに筆者は勘ぐりすぎた上、自身の器の小ささまで痛感させられて、衝撃のあまり本気で頭を抱えてしばらく動けなくなった。

あきんどなお姉さんや口の軽いお兄さんなど多彩な登場人物

 また、プレーヤーが選ぶ会話の選択肢の多さも特徴的だ。友好的なものから反感を買うもの、そもそも興味すら示さないもの。どれを選ぶもプレーヤー次第だが、攻撃的な選択ばかりしてしまうと反感を買い、ハルシオンで生きづらい環境を自ら作り出してしまう可能性もある。しかし、極めれば立派な悪役としての生き方ができるということだ。キャラクターはプレーヤーの選択次第で「ヒーロー」にも「悪役」にも「アウトロー」にもなることが可能だ。

優しい会話の選択肢からちょっと物騒な会話の選択肢まで幅広く選べる

 そして、登場人物との会話の選択肢を間違えてしまうと、登場人物側が会話を終了させようとしてくることもある。そうなると、ストーリーをすすめる上での必要な情報を聞き逃したりして、スムーズにストーリーが進められない。そうなると結局強引な手を使ってしまい、さらに反感を買うことにもなる。筆者は依頼されたクエストの情報を依頼主からうまく引き出すことができず、半ば強盗のように押し入ることになった。本来ならするはずだった交渉もできず、仕方なく端末を勝手にハッキングして弄り、強引にクエストを達成させた。その反面とある組織から狙われる事になってしまった。

 上記のように登場人物から受けるメインクエストやサブクエストは、必ず正攻法でクリアする必要はない。条件さえ達成すれば、いわゆる「力ずく」で強引にクリアすることも可能だ。ただ、強引に攻めるからには、それなりのリスクもしっかり伴う。他にも筆者は助言を見逃すというありえない失態を犯し、クエストを半ば強引にクリアしたが、かなりの回数コンティニューを繰り返した。多分ではあるが、その助言を見逃してなければスムーズにクエストをクリアできていたはずだった。なぜクエストの詳細を読み返さなかったのかとても悔やまれる出来事だ。

どんなクエストだったかしっかり確認できる

プレーヤーだけのオリジナル性が輝くスキルと装備

 プレーヤーはキャラクターのスキルを自由に選択することができる。攻撃スキルを伸ばしてもいいし、技術スキルや会話スキルを伸ばしてもいい。勿論まんべんなくスキルを伸ばしてもいい。レベルが上がるごとにスキルも上げることが可能なため、キャラクターのレベルが上っていくにつれて、キャラクターがより個性的で独自性も帯びてくる。

 筆者は序盤スキルをまんべんなく上げていた。しかし、途中から登場人物を論破することと他人の端末をハッキングして日記やメールを覗き見ることがが楽しくなり、技術と会話と潜伏を上げるスタイルに変えた。1度上げたスキルをリセットすることはできないが、プレイスタイルに合わせて途中から極振りしても良い。自身のプレイスタイルに合ったスキル構成を探してみてほしい。

 また、上記のスキルの他に「特殊技能」を習得することもできる。「特殊技能」はキャラクターのレベルが2上がるごとに1つ取得できる形となっている。しかし、キャラクターに一定条件下で付く「欠点」を受け入れると更にもう1つ「特殊技能」を取得できる。だだ、「欠点」を受け入れると。敵から受けるダメージ増加や攻撃や技術などのスキルが制約を受けることになるので注意が必要だ。

伸ばすスキルによってキャラクターの個性が立つ
特殊技術も種類が豊富
「欠点」がついてしまうと

 武器や装備を自分でカスタマイズすることもできる。改造パーツを取り付けることで武器や装備にオリジナル性が出てくる。改造パーツも「弾数が増えるもの」や「特殊効果がつくもの」など種類がたくさんあるので、敵に合わせてカスタマイズしたり、気に入った組み合わせがあればそれを貫き通すのも良い。

 武器や装備は修理も可能なので、気に入った武器や装備を定期的に直して使うこともできる。筆者は銃などの範囲攻撃武器に「プラズマ攻撃」をつけるのがお気に入りだ。ダメージも大きいこともあるが、今まで出会った的には効果が抜群だった。武器を変えても改造パーツは同じものをつけるようにして、しっかり修理しながら大切に使っている。

改造パーツをつけてカスタマイズ

 同行してくれるコンパニオンは装備品一式だけでなく同行したときに得られる特殊スキルも設定できる。ちなみになぜか筆者はコンパニオンと聞いて、同行するのは女性だけだと思い込んでいた。…もちろん男性もいる。コンパニオンは2人まで同行可能で基本的に自動で敵を攻撃してくれるが、プレーヤーが指示を出せばプレーヤーが攻撃している敵に対して援護射撃をしてくれるのでとても心強い。だた、コンパニオン同士にも相性があるのか時折プレーヤーの後ろで口喧嘩をしている事があった。コンパニオン自身も随分と個性が豊かだ。

装備品も一式揃えて、スキルも選べる

見ているだけなら美しいコロニー「ハルシオン」

 「ハルシオン」というコロニーを探索していて、気がついたのはその世界の美しさだ。「ハルシオン」はいわゆる太陽系のような恒星を中心とした惑星の集団で、その中のいくつかの惑星で人類が生活している。惑星ごとに生えている植物や生息している生物が違うので、降り立ったときの新鮮さとともに、どんな脅威があるのかドキドキしながら探索することになる。

 しかし、戦闘が終わった瞬間などにふと周りを見渡すととてもきれいな風景が目に飛び込んでくる。人の手が加わった状態でも加わっていない状態でもどこか幻想的な風景は、身の危険さえなければぼんやり眺めていてもいいくらいだ。そして筆者のオススメは惑星ごとに違う空だ。ぜひとも時間があるときに眺めてみてほしい。

 しかし、いくら美しいとはいえ硫黄の沼や崖など危険な場所や保護色に紛れて敵が隠れていることもあるので、特に道なき道を進む場合は細心の注意を払って移動する必要がある。

ハルシオンも太陽系によく似た惑星の集まり

プレーヤー自身も試される、それが「アウターワールド」

 プレイしていて特に筆者が好きな登場人物がいる。ゲーム序盤で出会うスペーサーチョイス側の「リード・トプソン」と脱走者側の「アデレード・マクデヴィット」の2人だ。互いにいがみ合っている関係の2人だが、ストーリーを進めていくうちにだんだんと2人に受ける印象が変わっていった。

 どちらが良い悪いは抜きにしても「大切なもの」を守りたい2人が、自分の信念を貫き通すために取っていた態度の真意に気づいたときに衝撃を受けた。人間味があるとはこういうことを言うのだろう。

 ちなみにこの2人を巡って1番最初の「究極の選択」を迫られるのだが、最初に選んだ選択で良かったのか気になって、再ロードして違う方の選択をしてみた。結果的に言えば最初に選んだ選択のほうがまだ円満に解決していた。再ロードしてした選択は双方が更に恨み合う形になってしまい、主人公も恨みを買う形となり後味の悪さを覚えた。

スペーサーチョイス側の「リード・トプソン」
脱走者側の「アデレード・マクデヴィット」

 本作はとにかく自由度が高く、ストーリーをどう進めていくかは、プレーヤー次第だ。極論を言ってしまえばすべてを肯定して進むことも、否定して進むことも可能な世界なのだ。前述したが選択次第で「ヒーロー」にも「悪役」にもなれてしまう。

 本作をプレイしていると、オープンワールドRPGでありながらどこかプレーヤー自身を試されている感覚を受けた。会話の選択肢1つ1つが「あなたはどんな人間ですか?」と問われている感じといえばいいのだろうか。今回筆者は、自分の性格に正直なプレイをしている。その結果「多少トラブルを起こしてしまった」のような感じに今の所なってしまっている。今後どうなっていくのかまだまだストーリーも序盤なのでわからないが「めんどくさがり」の性格が本作だとどのように反映されていくのが知りたくてこのまま続行している。

 選択の幅広さと自由さが織りなす「アウターワールド」の世界はとても怖い場所だが、それだけ魅力も多い。マルチエンディンなので、筆者自身、途方も無い選択の先にどんな結末が待っているのか、怖さ半分楽しみ半分だ。プレーヤーの方々もぜひこの世界を味わってほしい。