「ルイージマンション3」レビュー
ルイージマンション3
映画ファン必見! あんなものまで吸っちゃう、ビビりすぎルイージと進む愉快なオバケホテル探索
- ジャンル:
- アクション
- 発売元:
- 任天堂
- 開発元:
- Next Level Games
- プラットフォーム:
- Nintendo Switch
- 価格:
- 5,980円(税込)
- 発売日:
- 2019年10月31日
2019年10月30日 00:00
「ルイージマンション3」はとにかく掃除機で吸いまくりのアクションゲームである。ゴミもカーテンも備品もお金もオバケも吸って吸って吸いまくる。
大きな家具や設備以外はほぼ全てくらいの勢いで吸えるし、何なら持ち上げてぶち壊せる物だってある。掃除機として最強すぎる新型「オバキューム」が本気を出せば、散らかってゴチャゴチャしていたゲストルームが、「改装中か!」というくらいにものの数十秒で綺麗さっぱり片付く。
普段の生活では掃除もそこそこの筆者だが、部屋のものがゴソッとまるごとなくなる、こんまりメソッドもびっくりの断捨離プレイが爽快すぎてクセになる。「部屋もスッキリ、気分もスッキリ」なんてニコニコしていると、なんと部屋には仕掛けも用意されている。
オバキュームの風力などを使って様々な仕掛けを動かすと、大量のお金や隠し部屋、さらには隠しアイテムの宝石が現われたりする。絵画、ドア、自販機、トイレ、蛇口などなど、仕込まれたギミックがいちいち巧妙で、探索心がビシバシ刺激されていく。
「この狭い部屋によく詰め込んだな」というくらいそれぞれ緻密に計算されていて、ゲームが後半になるにつれて探索が楽しくて仕方なくなってくる。“オバケホテル”という「何かありそう」と予感させるワクワクドキドキの冒険と、オバキュームアクションによる謎解きの組み合わせ。それが「ルイージマンション3」ならではの面白さだ。
まるでルイージ版「ダイ・ハード」! 弱気なまま敵をスポスポ追い詰める
肝心のルイージの話を忘れていた。今作にして3回目のオバケ退治となるルイージだが、とてもかわいらしいことにもうまったくオバケに慣れていない。
ほぼ常に体が震えているし、恐怖の表情は「やめてよぉ」と情けないくらいに訴えている。ただ、こんなビビりまくりのまま、オバケに関してはいつのまにかスポスポ吸い込んでいくのである。弱そうに見えてぜんぜん倒せない、いわばルイージ版「ダイ・ハード」状態だ。オバケとしては、まあ業を煮やすだろうなとは思う。
暗ーいホテルは、お化け屋敷としては初級クラス程度ではあるものの、あまりにルイージが怖がるのでこちらも怖くなってくるのが不思議である。物音がして「わぁっ!」と飛び上がるルイージを見て、同じように「わぁっ!」と声を上げている筆者がいた。本当、びっくりするからそんな怖がらないでよ……。
今作では、縦に長く伸びたホテルが舞台。謎のオーナー、パウダネス・コナーの招待によって豪華ホテルに導かれたマリオ一行だったが、一夜のうちに様子は激変。すべてはパウダネス・コナーの罠であり、オーナーの正体はオバケだったばかりか前2作のボスであるキングテレサまで呼び出され、マリオやピーチ姫が「絵」にされてしまう。運良く生き残ったルイージは、オバキュームを手に1人オバケ退治に立ち向かう。
ホテルは15階+地下2階の17層構造で、各フロアをクリアするたびに“エレベーターの階層ボタン”が手に入り、新たに行ける階が広がっていくという流れ。最初に穴だらけのエレベーターボタンを見たときには「えっ、こんなにあるの……!」と思わず及び腰になったが、その分やりごたえもある。
しかもフロアは、それぞれ城、映画撮影セット、砂漠、ディスコフロアなどテーマが異なり、趣味嗜好や攻略の流れまでもがガラッと変わる。ゲーム的にも見た目的にも、最後まで飽きさせない工夫に満ちている。この丁寧さは、さすが任天堂謹製といったところだ。
“ルイージ主演の怪獣映画”も! 見て楽しい歩いて楽しいフロアの数々
色々なフロアがある中で、筆者が特に度肝を抜かれたのは「スタジオフロア」のボス戦だ。もうまったく予想していなかったのだが、ここでは映画監督のオバケ「ジョーノーズ」に見出されたルイージが主演となり、撮影しながらボスオバケと戦うという奇妙な設定になっている。
戦闘の舞台は都会ビル群のミニチュアセットで、しかもボスの見た目は怪獣(ジョーノーズではない)。つまり、プレーヤーはいつの間にか“ルイージ主演の怪獣映画”をプレイすることになるのである。
怪獣は炎(プラズマ?)の弾を吐き出し、ルイージはオバキュームの吹き出しで対抗する。さながら熱光線の押し合いのようなエフェクトもかかるし、プレイ画面は撮影カメラ越しの見た目になっているし、怪獣映画としての演出にこだわる感じにもう笑いながらプレイしてしまった。
本作は基本的に出てきたオバケを退治するゲームであり、オバケはルイージを見ると攻撃してくるのだが、この「ジョーノーズ」に関しては撮影に専念してルイージと戦おうとしない。というよりも、映画しか見えていないのでルイージ自体にはまったく興味がない、といった感じ。数あるオバケの中でも、「映画を愛するオバケ」だけ特別扱いされているのはとても興味深かった。
こうしたこだわりは「スタジオフロア」だけではなくて、各フロアごとにそれぞれある。砂漠が広がる「デザートフロア」では地面の砂を吸うことができたり、「グリーンフロア」では植物に関連した有機的なギミックが詰まっている。小物のデザインやファッション、音楽、それらを活かした仕掛けに至るまで、見ているだけで色々なカルチャーを感じられてとても楽しい。
小物からギミックまで、開発者の“企み”が散りばめられたタイトル
そしてゲーム的には、1階ずつ、丹念に調べていけば道が開けるようになる一方で、隠しギミックは一見しただけでは見逃してしまうようなものばかり。つまり、クリアまでの謎解きはそこまでハードではないが、隠しアイテムをコンプリートしようとなると一筋縄ではいかないような設計だ。
一度戻って改めて丁寧に探索してみると、「あ、こんなところにこんな仕掛けがあったのか」と驚くことばかりで、しかもフェアなことにちゃんとヒントはある。書きすぎるとネタバレになるので多くは語らないが、細かいものから、解いてみると想像以上にダイナミックに展開するものまで、ひとつひとつアイデアに工夫がある。
普段は収集物コンプリートにあまりこだわらない筆者だが、本作に関しては「このフロアにはどんなアイデアを凝らしたの?」という興味によって最終的にすべての隠しアイテムを集めてしまった。それほど、筆者もお気に入りのギミックの数々が散りばめられている。
「ルイージマンション3」をプレイしていて思うのは、オバキュームの機能だけで戦闘も謎解きも完結するムダのなさ、そこにスライム体の分身である「グーイージ」の特性も加わることによる広がっているプレイの幅が、まあ良くできていることだ。ルイージとグーイージはできることが違うので、2Pプレイではコミュニケーションが必須になるという塩梅も面白い。
「任天堂製のゲームには丁寧さがある」などという褒め言葉はいまさら改めて言う必要もないだろう。ただ、「ルイージマンション3」に関しては内容の詰め込み加減と工夫の数々に、開発者たちが楽しんで作っている様子がありありと伝わってくるところが特徴的だ。
今回のプレイは発売前ということでオンラインのマルチプレイはできていないが、ソロとは違う楽しさが生まれてくることは想像に難くない。ルイージのオバケ退治はまだまだ続きそうだが、まずは想像力に富んだオバケホテルをぜひ堪能していただきたい。個人的には、今年のベストの1つに入るくらいに気に入った作品だ。