「Sea Salt」レビュー
Sea Salt
奥義“群がり殺し”で人を狩る! 死臭漂う魔物を指揮する群れアクションストラテジー
- ジャンル:
- アクションストラテジー
- 発売元:
- DMM GAMES
- 開発元:
- YCJY Games AB
- プラットフォーム:
- Windows PC
- Nintendo Switch
- 価格:
- 1,980円(税込)
- 発売日:
- 2019年10月10日
2019年10月10日 12:00
恐怖は海からやってくる。不気味に、無限に、大量に……。古の神ダゴンの力に大きく頼りながら、生贄を拒否した人間に容赦はいらない。ただ血を欲する魔物の群勢が、背信者を蹂躙するのみである……。
今回紹介する「Sea Salt」は、ダゴンの使いとなって魔物(ミニオン)を指揮し、愚かな人間を抹殺していく2Dベースのアクションストラテジーゲームだ。魔物の一体一体そのものは大して強くはないが、これらが群れとなることで絶大な力を得る。
大量の魔物が迫ってきたとき、人間たちは怯え、叫び、逃げまどう。ドット絵で表現される、陰惨で、血みどろで、暗澹たる世界。素晴らしくダークな雰囲気を含め、その魅力をお伝えしていきたい。
魔物を召喚して組み合わせる。“群れ”のコンボで人間を殲滅
本作のポイントは、「いかに魔物を操るか」だ。プレーヤーの操作はとてもシンプルで、シンボルの移動と攻撃指示だけ。呼び出した魔物たちはシンボルを追うように移動し、攻撃指示で近くのターゲットに自動攻撃する。
たとえば、ゲーム開始直後に操ることとなる「スウォーム」はカサカサと動き回る虫の大群である。攻撃力も体力も低いが、スピードの速さに特徴がある。移動する敵に追いつき、うまく取り囲むことができれば、並の人間ならなんなく倒すことができるだろう。
また「ワーム」という魔物もいる。スウォームに比べると足は遅いが、体から漏れ出る酸が非常に強い。這いずったあとの液体は人間を足止めするほか、酸で攻撃することで敵の行動が遅くなる。まずスウォームで追いついて取り囲み、続いて追いついたワームの酸でとどめを刺す。体力が高い敵の場合、スウォームだけだと反撃に合う可能性があるが、ワームの攻撃力と組み合わせることで殲滅速度が加速する。
魔物の組み合わせでどのようなコンボを作り、どのような戦略で人間を血祭りにあげるのか。自分なりの攻略手段を考えるのが「Sea Salt」ならではの魅力だ。
しかし、先述したとおり魔物は個体としては弱い。スウォームなどは、村人のクワの一撃であっさり死滅する。しかも人間はショットガンや火炎放射器など、こちらが範囲攻撃に弱いことを承知で嫌らしい対抗手段を講じてくる。こちらの主体は群れなのでスウォームの1匹2匹くらいなら犠牲もやむなしといったところだが、群れの数=戦力なのでその大半をガツンと持っていかれたりするとかなりキツい。数が減って劣勢になり、最後の1体が死ぬとゲームオーバー。そのエリアかステージの最初からやり直すこととなる。
戦闘中に魔物を増やす手段もある。1つはエリアに設置された祭壇からの召喚。使徒「アグラ デ ペスカ」(使徒については後述)を使用しているなら、各祭壇から1種類、手持ちの魔物を召喚できる。もう1つはゴールドの蓄積。特定の人間を倒したりオブジェクトを破壊するとゴールドを落とすのだが、これが一定値溜まることで祭壇と同じ効果を発動できる。どちらも重要な戦力補強要素であり、クリアには欠かせないポイントだ。
抹殺抹殺! サディスティックな気持ちが湧き上がる“蹂躙感”
人間どもを抹殺し、祭壇とゴールドで群れのコンボを増強し、より武装した人間に立ち向かう。これが「Sea Salt」の基本となるが、群れの組み立てがじつに奥深くできている。
上ではスウォームとワームを紹介したが、ほかにも攻撃力は低いが硬い体と火への耐性を持つ「蟹」、遠距離に光の弾を放つ「カルト信者」、倒した敵を魔物「スペクター」として蘇らせる「リッチ」、ひたすら敵に突進する肉塊「フレッシュ」などなど、身の毛もよだつ化け物たちが満載となっている。
魔物によって、それぞれスピードも攻撃方法も攻撃力も違う。素早い方が敵への攻撃に対応しやすいが、遅いスピードを承知で攻撃力を重視してもいい。その判断はプレーヤーによってまったく変わってくるだろう。
また魔物たちには、「恐怖」という特徴的なステータスもある。つまり、近づいたときにいかに人間がパニクってくれるかの値だ。人間たちが恐怖に陥るとき、人間は攻撃を忘れてひたすら逃げ回ってくれる。反撃のない人間ほど殺しやすいものはなく、追いついてただ取り囲めばことが済む。反撃を受けづらくする「恐怖」も鑑みると、どの魔物を召喚するかの決断がじつに悩ましい。
ちなみに筆者が気に入っているのは、「カルト信者」と「ワーム」を群れの中に組み込むコンボ。「カルト信者」は遠距離攻撃ができる代わりに、恐怖値は低く非常に打たれ弱いので近づかれたらほぼ終わり。しかし遠距離攻撃を当てると敵を多少足止めできるので、そこにワームを送り込むことで割と安全圏からダメージを出せる。操作をミスして、火炎瓶などの範囲攻撃をまともに食らうと群れとしてはほぼ一発死なのが難点だが、少数精鋭スタイルでも意外と生き延びて、祭壇までたどり着けたりする。
攻撃を巧みに避けながら、人間の防衛戦を徐々に侵略し、最終的にはすべてを飲み込んで壊滅させる。プレーヤーの指揮と群れのコンボが噛み合ったときは、「人間ども苦しみたまえ……」と筆者の中のサディスティックな気持ちがとてもくすぐられる。
魔物が思ったとおりに付いてきてくれなかったり、移動の遅れで攻撃に巻き込まれるなど操作にクセがあるからこそ、上手くいったときは笑みがこぼれてしまう。魔物の種類はゲームを進めると増えていくので、ぜひいろいろな組み合わせを試していただきたい。
リスク&リターンで戦略に幅を生む「使徒」システム
また、ゲームが慣れてきたあたりで派生する「使徒」の要素もアクセントになっている。「使徒」は、ゲーム開始時に決める、いわば群れの指揮官といったところ。それぞれで群れ全体の能力が変化するのが特徴だ。
初めから使える使徒は「アグラ デ ペスカ」で、彼の能力は初期の魔物としてスウォームが25匹いること。さらにスウォームが強化され、ワームは「死ぬと爆発する」という効果が付加される。
「アグラ デ ペスカ」は本作の基本となる使徒で、序盤に多く使うこととなるスウォームとワームにステータス補正が入るので使いやすい。また召喚時には入手済みのすべての魔物を選択できるので、バランスにも優れている。安定したプレイを求める際は、まずは「アグラ デ ペスカ」がいいだろう。
他の使徒は、ゴールドを多く集めたり、「カルト信者」や「リッチ」で敵を一定数倒したり、条件を満たすことでアンロックされるという仕組み。たとえばゴールドを集めて開放される「イワン・ドロヴィッチ」では、召喚できる魔物が1回につき3種類(ランダム)になる代わりに、敵を広範囲に攻撃できるなどの効果がある「チートカード」がここに加わるようになる。
あるいは「聖人トリートン」は、「カルト信者」に特化した使徒となる。ゲームのエリアには普段は使用できない祭壇がたまにあるのだが、「聖人トリートン」を使用していれば、この祭壇で「カルト信者」4体を生贄に捧げられる。代わりに高い攻撃力を持つ近接戦闘型の魔物や、追従型のレーザーを放つ魔物など、超強力な魔物が召喚される。祭壇の場所まで4体のカルト信者を生かしておかないと意味がないなど、いろいろリスキーだがロマンもあるという面白い使徒だ。
使徒はそれぞれ特徴的で、メリットとデメリットがはっきりしているのがいい。魔物に加えて、どの使徒が自分のプレイスタイルに合うか探ってみるのも楽しいだろう。
本作を楽しむコツは、個人的には「約束を違えた人間たちを絶対に許さない」というダゴンの揺るがない決意を胸にプレイすることだと思う。ボスを倒したときの四肢を引き裂く演出はドット絵とはいえかなりグロテスクだが、それくらいダゴンは怒っているのである。自分から約束を破っておいて反撃に出るとはなんと盗っ人猛々しいのか!
そもそも今回の事件は、“ダゴン教”として地位を築いた大司教が自ら生贄になることを拒否したことに端を発している。ならばダゴンは、全力で大司教の命をもらいにいくのみ。村がまるごと潰れようが何しようが、ルールはダゴンが決める。容赦も慈悲もなく、邪魔するものはすべてを叩き潰していくのみ。そんなドロドロとした気持ちでプレイすると、本作のダークファンタジーの世界に入り込めるので非常にオススメである。