「ボーダーランズGOTY」リマスター版レビュー

「ボーダーランズ ゲーム・オブ・ザ・イヤー エディション」リマスター版

撃ちまくってお宝ゲット! ハクスラのゲーム性とイカしたキャラと世界! 魅惑の「ボダラン」ワールドに今こそ飛び込め!

ジャンル:
  • FPSRPG
発売元:
  • 2K
開発元:
  • Gearbox Software
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
  • Windows PC
価格:
3,780円(税別)
発売日:
2019年4月4日

 「ボーダーランズ」というゲームシリーズをプレイしたことはあるだろうか? 岩と砂ばかりの不毛の惑星パンドラ。ここに眠るお宝を巡って争うイカした奴らの物語だ。その宝を得るために、プレーヤーは撃って、撃って、撃ちまくって、そしてさらなる強力な武器を得て、さらに撃つ。銃撃と冒険、その先にあるお宝を目指してひたすら前に突き進む、それが「ボーダーランズ」ゲームシリーズを貫くルールである。

 その“クライマックス”が先日提示された「ボーダーランズ3」だ、より進化したシステム、ド派手なキャラクター、さらにぶっ飛んだ世界観と、PVからもその力の入りようがわかる。そして、開発元のGearbox Softwareと2Kが9月の発売に向け現在力を込めて練り上げている「ボーダーランズ3」の前に、これまでのシリーズをプレイして、より楽しく「ボーダーランズ3」にのめり込むために登場したのが、4月4日に電撃的に発売された「『ボーダーランズ』 ゲーム・オブ・ザ・イヤー エディション リマスター版(以下、「ボーダーランズGOTY」)」というわけだ。

【「ボーダーランズ3」公式発表トレーラー】

 「ボーダーランズGOTY」は、シリーズの最初の作品である、2009年発売の「ボーダーランズ」のリマスターである。しかし、本作は、決して「3のための前座」などではない。「ハクスラFPS」という、本シリーズならではの楽しさ、そして惑星パンドラという、イカれたそして激しくも楽しい世界の“入門書”として、唯一無二の楽しさを持っているのだ。シリーズに触れたことのない人は、まず本作を皮切りに、「ボーダーランズ」の世界に飛び込んで欲しい。

 筆者にとっても久しぶりの「ボーダーランズ」だった。アイテムハントの楽しさ、ストーリーとキャラクターのイカれっぷり、そしてギリギリを力でねじ伏せる興奮と、血がたぎり、力を込めてコントローラを握ってプレイするその楽しさを思い出した。この機会に、ぜひ惑星パンドラに突撃して欲しい!

【「ボーダーランズ」ゲーム・オブ・ザ・イヤー・エディション 公式トレーラー】

FPSRPGでハクスラ! ユニークなゲーム性とブッ飛んだ世界観の競演!!

 「ボーダーランズ」シリーズは“FPSRPG”というユニークなジャンルの作品だ。例えるなら“「The Elder Scrolls」や、「Fallout」シリーズをさらにFPSに寄せた感じ”だろうか? 広大な世界を移動し、クエストを進めながら、とにかく撃って撃って撃ちまくって敵を倒し、経験値を得てキャラクターを育てていく。

 そして本作の大きな“幹”となるのがアイテムハントである。より強力な武器を求め、敵を倒し、物語を進めていくのである。ストーリーや世界観、キャラクターも大いに魅力だが、本作の根底にあるのはアイテムハントだ。そういう意味ではかなり「Diablo」シリーズに近い。育て上げたキャラクターと強力なアイテムで敵をバッタバッタとなぎ倒す楽しさ、そこが「ボーダーランズGOTY」のプレーヤーが目指す場所である。

撃って撃って撃ちまくる! 「ボーダーランズ」は敵を蜂の巣にして突き進む爽快感が魅力のFPSRPGだ

 「ボーダーランズGOTY」の舞台である人類の植民惑星・パンドラは、植民地としてはあまりに貧しい。惑星の表面は岩と砂だらけで、しかも恐ろしい現住生物がうようよしている。そしてこの地に降り立った人々の多くは略奪者になり、問答無用で襲いかかってくる。……まともな人々は見捨ててしまったパンドラだが、ここには“伝説”がある。異星人の遺跡「Vault」が眠っているというのだ。Vaultを手にすれば巨万の富が得られる。

 プレーヤーはVaultハンターとしてこの地に降り立つ。すると突然プレーヤーの視界に何者かのメッセージが浮かび上がる。美しい少女の姿をしたメッセンジャーはプレーヤーをVaultに導くという。少女の声はプレーヤーにしか聞こえないようだ。これはひょっとしたらチャンスかも! プレーヤーは少女の声に導かれ、惑星パンドラで戦いを繰り広げていく。

不毛の惑星パンドラに降り立つ危険な奴ら、そして謎の少女の幻影。宇宙人の遺産「Vault」をめざして冒険が始まる!

 プレーヤーキャラクターは「ソルジャー」、「ハンター」、「バーサーカー」、「セイレーン」から選択する。それぞれ得意な武器と特殊能力を持っている。「ボーダーランズGOTY」は基本はソロでプレイできるが、オンラインでは最大4人、オフラインでも画面分割で2人でのプレイができる。本作は数十時間どっぷりと楽しむことができる作品である。筆者はソロ中心でじっくりと進めたが、仲の良い友達と毎夜毎夜一緒に遊ぶということも楽しいだろう。オンラインでは、他のプレーヤーを受け付けてるセッションに参加することもできる。

 今回筆者はバーサーカーでプレイした。スキルを使うことで視界が赤く染まり、パンチで敵を攻撃する。特に「バーサーカーMOD」を装備できるようになってからはパンチに属性攻撃が加わり、敵の体力を削りまくる非常に強力で爽快な攻撃が楽しめた。自分がゴリラにでもなったような感じで、思わず「行くぜー!」なんて自分で言ってしまう。バーサーク中破体力も急速回復するので敵の攻撃をものともせずに突っ込み、ガツンガツンパンチを当てて敵を攻撃するのがとても楽しかった。

 もちろん他のキャラクターも楽しい。ソルジャーは「タレット」が設置でき援護が受けられる。FPSRPGである本作において最もスタンダードと言えるキャラクターだ。ハンターは強力なスナイパーライフルを得意とする。本作はスナイパーライフルが活躍する場面が多く、これをメインで戦うというのはかなり有利だ。セイレーンは華奢な外見に似合わず接近戦で真価を発揮する。癖があるがカッコ良さも別格。1度クリアしてから他のキャラでもう1回、というのもアリな楽しみ方だろう。

バーサーカーはスキルを発動すると視界が赤く染まり近接攻撃オンリーになる。コレが思わず笑ってしまうほど強い上、治癒力もすごい。しかもキャラクターは奇声を上げつつ大笑いという、ものすごいテンションが楽しい
「ボーダーランズ」の人気の元がこの「セカンドウィンド」というシステム。倒されても命が尽きる前に敵を1人でも倒せば復活できるのだ。ピンチからの逆転は強い爽快感がある
広大なパンドラを移動するビークル要素もある。操作は独特だが、巨大モンスターや、敵ビークルと戦うシーンも

 繰り返すが「ボーダーランズ」シリーズは“FPSRPG”である。接近戦が得意なバーサーカーでもスナイパーライフルで敵を狙撃し、近づいてきたらアサルトライフル、そして接近戦でショットガンを使う。レンジに合わせて武器を使いこなしたり、物陰に隠れてシールドの回復を持ったりと、プレイ感覚はFPSそのものだ。ここに、スキルをどう強化していくか、特性をどう足していくか、さらに武器の属性などで、RPGとしての楽しさが加わってくるのである。

 日本語版「ボーダーランズGOTY」ならではの楽しさに触れておこう。それが“日本語吹き替え音声”だ。2009年に発売された「ボーダーランズ」のローカライズは日本語字幕のみだった。2012年に発売された「ボーダーランズ2」で、声優を起用した日本語吹き替え音声を収録。そのぶっ飛んだ世界観とキャラクター性を、吹き替え声優達の熱演が増幅することで、ゲーム性に加え、キャラクター性でファンの幅を大きく広げたのだ。

スナイパーライフルはかなり有効な攻略武器だ。まずこれで敵を減らし、その後突撃というのが戦略の基本だ
バーサーカーのスキルは耐久力を上げ、ミサイルランチャーを強化するものが多い。もちろんバーサーカースキルの強化もしていきたいところだ

 「ボーダーランズGOTY」は発売にあたり、「ボーダーランズ2」、そして続編の「ボーダーランズ プリシークエル」と同じように日本語吹き替え音声を収録している。声優達のノリノリの演技が、ゲームの楽しさを増幅してくれているのだ。ぶっちゃけてしまえば、「ボーダーランズGOTY」は最初期の作品だけあって、ちょっとキャラクター性は薄く、ストーリーは淡泊だ。セリフも繰り返しが多い。しかし、誠実そうな声色の中にずる賢さが感じられる“武器屋のオヤジ”や、“車のメカニック”の「出発の準備はできたか?」という軽い感じのセリフだがこちらに気合いを入れさせる響きがある。セリフ回しと抑揚にキャラクター達の世界観が感じられるのだ。

 そしてバーサーカーである。バーサーク中は「ゲハハ」とずっと笑ってるし、「ヒーッ」と引き連れた声を上げたり「血を流せい!」と叫んだりする狂いっぷりが良い。クリティカルを出したときの「さすが俺様だぜ」といったセリフも好きだ。敵となるレイダーの小物らしい演技も打ち倒す倒し差を増幅させてくれる。筆者は吹き替え大好き派なので、大げさにとって欲しくはないが、やはり「ボーダーランズGOTY」の丁寧なローカライズはとてもうれしいポイントだ。

本作はぶっちゃけてしまうとキャラクター性は薄めだが、日本語吹き替えの味のある声優陣が本作の世界観に華を添えている

アイテムハントが最高に楽しい! 最高、最強の武器はどこにある?

 「ボーダーランズ」シリーズの大きな楽しさがアイテムハントだ。「Diablo」に代表されるアイテムハントの楽しさは、プレーヤーを夢中にさせる魅力がある。本作の場合は低レベル帯ですらアイテムを取捨選択する悩みがある。

 「ボーダーランズ」シリーズに登場する武器には“メーカー”が設定されていて、メーカーによっては拡張マガジンで装弾数が違ったり、属性が加わっていたりする。まず、ハンドガン、リボルバー、サブマシンガン、ショットガン、アサルトライフル、スナイパーライフルという武器のカテゴリーに加え、基本ダメージ、リロード速度、精度に違いがある。

威力、装弾数、発射レート、属性……武器には様々なパラメーターがある。経験を積むことで自分の理想の武器も見えてくる

 これに装弾数や属性が加わってくる。属性も効果が強いものから弱いものまである。「強力だけど2発ごとにリロードがあって使いにくい」、「単純なダメージは少し低いけど追加の酸のダメージがすげー強いからこっちを使い続けよう」などなど、手に入った武器と新武器を比べ、取捨選択していくのだ。もちろんレベル帯で武器の強さは変わる。お気に入りの属性付き最強レア武器が、レベルが上のノーマル武器にあっさり抜かれるという瞬間もある。

 入手武器はランダムな上に、プレーヤーによってプレイスタイルが違うため、「結構長く使ったアサルトライフル」、「強かったけどあっという間に捨てたショットガン」などなど、プレーヤーごとに全く異なる“ストーリー”が編まれていくのもアイテムハントの楽しさだ。ちなみに筆者は全くハンドガンを使わず、ショットガンとアサルトライフルメイン、スナイパーライフルも活用している。バーサーカーはロケットランチャーと親和性の高いスキルがあるのだが……もう少し練習して使いこなしたいところだ。

 銃器だけでなく、シールドやグレネードも性能差、特性がある。ほとんどが売ってしまうアイテムになるが、ゲーム内でアイテムを入手できる「自動販売機」では時にセール品で高性能装備が売られることがある。セール品は時間制限があり、あとちょっとだけ資金が足りないときはとても悔しい。「ボーダーランズ」シリーズはこのアイテムハントが楽しい。そしてこの楽しさはストーリーをクリアしてもまだまだ続いていくのである。

アイテムボックスをあけたり、強力な敵を倒すと様々なレア武器が出てくる。アイテムハントの楽しい瞬間だ。
酸の属性を持つ武器は装甲で固めた敵に有効。当たると追加ダメージをもたらす
新しい武器を使うか売るか、悩むところが楽しい
タイムセール! 良い武器をゲットできるチャンス

マルチプレイにDLC! どこまでも深く楽しめるボリューム

 「ボーダーランズGOTY」は発売されたばかりの今が旬のタイトルである。世界中のプレーヤーがプレイしていて、彼らとマルチプレイをすることも可能だ。本作はソロで進めるゲームだが、特にボス戦は厳しい。耐久力の高い敵から逃げ回りながらチマチマ攻撃を当てるという展開になりがちだ。

 そんなときこそマルチプレイだ。マルチプレイでは敵が強くなる一方で、特性を活かした連携が楽しめる。オンラインロビーに参加することで現在「ボーダーランズGOTY」をプレイし、参加を受け付けているユーザー達を見ることができる。自分が参加者を募っても良いし、他のプレーヤーのセッションに参加してもいい。今回は筆者は自分よりちょっとレベルが低いプレーヤーのプレイに参加してみた。

ロビーに入るとプレイを受け付けているセッションを見ることができる
初心者に超レアアイテムをばらまいて去って行くようなプレーヤーもいた

 進んでいるプレーヤーの後ろをついっていって敵と戦う。ガンガン前に進む人もいれば、こちらが来るのを待ってくれる人もいる。ずっとボイスチャット用の回線で音楽を流している人もいた。ラグがある場合もあったが、他のプレーヤーと一緒に戦うのはやはり楽しい。

 一方で、やはり知らない人と遊ぶのはペースがうまくつかめないところもある。どんどん前に進む人が多くその人を一生懸命追いかけることが多く、落ち着いてプレイできないことも多かった。「ボーダーランズGOTY」は、MOのタイトルのようにダンジョンやミッションで、プレイが一区切りするのではなく、1つのクエストをクリアしてもそのままシームレスにゲームが進むので、句切りが難しい。気軽に参加して数十分遊んでキャラクターを育て、またソロに戻る、というのが良いサイクルかなと感じた。もちろん友達と数時間がっつり遊び込むのも楽しそうだ。

2人のプレーヤーセッションに参加し、ボスに挑んでみた。助け合う協力プレイができたが、かなり早足で一生懸命ついて行く感じだった

 そして「ボーダーランズGOTY」のさらなるセールスポイントがDLCだ。本作はこれまで発売された「ボーダーランズ」の4つのDLC「The Zombie Island of Dr. Ned」、「Mad Moxxi's Underdome Riot」、「The Secret Armory of General Knoxx」、「Claptrap's New Robot Revolution」がプレイ可能だ。このうち、「The Zombie Island of Dr. Ned」、「Mad Moxxi's Underdome Riot」はプレーヤーの強さに合わせて敵の強さが変わる。

 「The Secret Armory of General Knoxx」はレベルキャップを引き上げてくれるさらなるやり込みが楽しめる。そして「Claptrap's New Robot Revolution」はオンボロ毒舌ロボットクラップトラップにフィチャーしたDLCである。このボリュームはかなりのものだ。どっぷりと「ボーダーランズ」の世界に浸れるだろう。

DLCにはテレポートステーションからアクセスできる
DLCには導入ムービーが用意されている

 「もうひたすら、ずっと終わりのないゲームをしたい」、「いつまでもアイテムハントしたい」という、ゲームを求めている人に、「ボーダーランズGOTY」はオススメである。フレンドと買って2人で、あるいは4人でひたすら遊ぶというのもアリだと思うのだ。一方、やはり本作はリマスターなだけあって、最新タイトルと比べると演出やキャラクター性で地味だ。本作で「ボーダーランズ」の世界が気に入った人は、ぜひ「ボーダーランズ2」もプレイして、そして9月に発売される「ボーダーランズ3」に備えて欲しい。

 海外製のRPGが好きな人にとって、「ボーダーランズ」シリーズに触れていないのは、やはりちょっと寂しいと思う。2Kは「ボーダーランズ3」の発売に向け、2019年を「ボダランイヤー」と定め、これからもドンドン盛り上げていく。この波に乗るために、まず「ボーダーランズGOTY」で、この世界へ踏み出して欲しい。