「V-Rally 4」レビュー

V-Rally 4

冷えきるほどに、熱中する。リアルな悪路とマシンの鼓動を身体の芯で感じるラリーレースゲーム

ジャンル:
  • ラリーレース
発売元:
  • オーイズミ・アミュージオ
開発元:
  • KT Racing
プラットフォーム:
  • PS4
  • Nintendo Switch
価格:
7,800円(税別、パッケージ版)
 
7,800円(税込、ダウンロード版)
 
発売日:
2019年4月11日

 今回取り上げるプレイステーション 4/Nintendo Switch用ラリーレースゲーム「V-Rally 4」はKT Racingが開発、日本ではオーイズミ・アミュージオが販売するタイトル。「ラリー」の名の付くとおり、悪路を駆け、車体を滑らせ、シビアなハンドル捌きとペダルワークに熱中するラリーレースゲームだ。

 ときに、読者の皆様は「ラリーレースゲーム」をどのように楽しんでいるだろうか?タイムを突き詰める、難関を走破する、自身のドラテクを試す、などなど。普段は触れられないマシンの内部からの景色を楽しみたいとか、エンジンの、タイヤの、地面を踏みしめるサスペンションの鳴動を味わいたいというのもある。本作はそういった要素を心ゆくまで楽しめて、ラリーというレースの1分野における快感を甘受できるタイトルだと感じた。以降ではゲームの内容に触れつつ、その快感を”どう味わうか”と”どうしたら味わえるか”という2点とともに伝えていきたい。

【V-Rally 4 ゲーム紹介トレーラー】
時間の概念も存在し、それぞれでまったく違う表情を見せる

“老舗”シリーズとしての「V-Rally」。16年ぶりの最新作「V-Rally 4」とは?

 「V-Rally」シリーズは、PCやプレイステーション、ゲームボーイアドバンスなどで発売されてきた。前作にあたる「V-Rally 3」が国内で発売されたのは2003年で、本作は実に16年ぶりの新作となる。

 PS4とNintendo Switchで発売されるにあたり、グラフィックスはもちろん現代クオリティに。世界各地の実際のコースとオリジナルのアレンジコースを舞台に「ラリー」、「Vラリークロス」、「ヒルクライム」、「バギーレース」、「エクストリーム・カーナ」を楽しめる。天候や時間の概念も存在し、まったく違うコースの表情を楽しめるのだ。

 マシンもホンダやトヨタをはじめフォードにBMWなどの実在メーカーより50種を収録。当然マシンごとのスペック差があり、それに加えてギア比にスプリングの硬度、サスペンションの伸び縮み幅に制動力配分――と、路面に合わせてこだわれる。

プリセットも存在。これを元にカスタマイズしてもいい

PS4版とNintendo Switch版の違い

 まず、PS4版とNintendo Switch版のTVモードではどちらも1,080pで映像が出力される。が、Nintendo Switch版では本体液晶、つまりテーブルモードと携帯モードでは720pの解像度となる。ジャイロ機能は搭載されていない。

 また、両バージョンともにリーダーボードへのデータ送信が可能。これに加えPS4版では最大8名のオンラインマッチが楽しめる。

ダメージングという余計な、しかし最大のキー要素

 フレーム、油圧、サスペンション、車軸、電装系。本作ではそれらがクラッシュすることで部位に応じて細やかにぶっ壊れる。フレームならぶつけた箇所の見た目がベコンベコンにヘコんだりパーツが吹き飛び、車軸が曲がればハンドリングなしでは直進できなくなる、というように。とくにライトは片方または両方がつぶれるなど、細かい表現が光る。

 これが筆者が思う「V-Rally 4」最大の魅力で、忘れてはいけない基本的な要素だ。ブレーキが利かなくなったり、思うように曲がれなくなったり、加速すら難しくなっていく。よりよいタイムを勝ち取りたいのならクラッシュしないように気をつけることだ。

バンパーはブラブラ、ラジエーターなどの内部パーツにもダメージが及んでいる状態

コ・ドライバー(ナビゲーター)

 同乗者であり相棒、隣に座ったナビゲーター。レースにはこいつの存在がとても重要で、「ここはこれくらいの角度で曲がれ」だとか「左/右レーンを守れ」とか、「クラッシュが多い」といったアドバイスをくれる。

 そう、レースでは自分の目なんかよりコ・ドライバーの意見のほうがよっぽど重要とまで言いたい。たとえば雨や濃霧のなかでバンパーやコーナーの場所をしっかり示してくれ、安心したドライビングが可能となるのだ。

必要なカーブを事細かに教えてくれる

豊富なゲームモード。無限に遊べるランダマイズも

 本作にはすべてのレースモードをチーム経営と両立させていくキャンペーンモードに似た「Vラリーモード」に加え、サクッと遊べる「クイックマッチ」モードがある。コースにはそれぞれ天候と時間帯があり、「Vラリーモード」では各マッチで固定、「クイックマッチ」では数パターンより選択する。

シビアな経営がカギの「Vラリーモード」

 レースをこなして賞金を獲得し、技術を研究し、賞金とスポンサー料でチームメンバーの食い扶持を稼ぐモード。

 このモードではクラッシュした際の修理費もマシンの購入費も獲得した資金から支払うことになり、勝利しなければ赤字続きでカツカツの経営状況になってしまう。AIレベルを下げると賞金は少なくなるが初心者向けの戦いになるので、慣れない内はAIレベルを下げて戦うとよい。

 技術の研究はクルーの能力値により管理され、よりよいカスタマイズを可能にするリサーチと修理費を抑えてくれるメカニック、そしてマニュファクチャラーからのオファーをくれるエージェントの3種。当然腕利きのクルーを雇えば必要な給料が増え、これまた優れたドライビングテクニックをもって高い賞金を勝ち取らねばならない。

必要なカーブを事細かに教えてくれる

ラリーモード

 日本は山梨にはじまり、シベリア、マレーシア、ケニア、モニュメントバレー、セコイア国立公園を走るモード。

 このマップたちはどれも表情豊かで、路面で言えば泥に砂利、舗装路など様々に表情を変える。風景も周囲の花々に至るまで描き込まれていて、水面には反射した景色が映る。山梨にはシケインが多く、モニュメントバレーには踏み外せば転げ落ちる崖といったように各国の特徴もしっかりと取り入れられている。

【V-Rally 4 ラリーモード】

 またコースも多種多様で、プリセットされたコースの他にランダマイズが可能。その中には超ロングで上下に振り回されるうえ舗装路と未舗装路がまんべんなく混在した超難易度のものもあれば、短く1パターンの路面だけで簡潔に走れるものなど一期一会で千差万別となっている。

 一期一会で千差万別といったとおり、コースをランダムに設定し「次へ」を選択し続ければ大量のコースが出現する。ただしこのランダマイズは「マップに定められたコースの内どのカーブを走り、どの分岐で曲がるか」を設定するもので、荒野を完全かつ自由気ままに走り回れる、いわゆるオープンワールド仕様ではない。

ランダマイズするとコースもいろいろ

Vラリークロス

 8名のドライバーが争い、格闘し、最速を決する「まさにレース」なモード。富士スピードウェイではないが富士を望むコースに加え、中国、ルーマニア、イギリス、レーニア山のコースが用意されている。日本のコースでみられる富士山はしっかり宝永山も再現されており、桜とラベンダーの香る彩り豊かな風景が楽しい。

 ここでも路面の表情は複数あり、最適なカスタマイズと車種選択で望むのが基本。また「ジョーカーラップ」と呼ばれるアナザーパターンのコースを必ず1回通過しなければならない。

【V-Rally 4 Vラリークロスモード】

ヒルクライム

 いわゆる「峠」である。中国、ルーマニア、レーニア山を舞台に長短、昇降をカスタマイズして挑戦する難度の高いモードだ。

 ここで使用するマシンはどれもパワフルで、坂を駆け上がるのに十分すぎる加速力と最高速度を誇る。外観も空力抵抗を意識したものになっていて、エンジン音がハイトーンでクールだ。カーブを飛び出さないように細心の注意を払いつつ、高所の背景に目を奪われながら急カーブを攻めていこう。

【V-Rally 4 ヒルクライムモード】

バギー

 本作イチ荒々しい益荒男のようなマシンを操り、大蛇がのたくったようなこれまた荒々しいコースを走破する。エリアはシベリア、ケニア、ボリビア、モニュメントバレー。

 このモードではつい今述べたとおりコースが「荒々しく」、それでいて当然のごとく悪路である。さらに言えばマシンもパワフルなため、超高速でバンプを跳び上がり、急カーブを攻める快感を味わえる。ラリーをコンパクトに圧縮し、Vラリークロスの戦いを楽しむように。さらにコースが1度に複数パターン用意されていることもあり、最適なコース取りも求められる。

【V-Rally 4 バギーモード】

エクストリーム・カーナ

 すさまじいハンドリングを見せつけつつ走る、”クルマ版イライラ棒”。ケープタウンにニジェール、デトロイト、ネリス空軍基地がコースとなっている。

 ”クルマ版イライラ棒”とたとえた通り、コースが人工的で非常にタイト、かつコーンに触れてしまうと2秒のタイム加算が課せられる。ここではブレーキの利きやすいマシンが多く取り揃えられ、いかに速度を落とさず、コーンを落とさず、また観客に突っ込まず(突っ込むと10秒ペナルティが加算される)に切り抜ける必要がある。

【V-Rally 4 エクストリーム・カーナモード】

マシン選びは見た目?性能?

 本作には全モードを合計して50種のマシンが出演。フォードにルノー、ランチア、三菱にポルシェまで、年代も様々だ。パラメータも速度や加速力、ブレーキ性能などが細かく存在するため「見た目第1、性能は合わせる」とか「この性能が好きだから俺はこいつで行く」といったように、自分のプレイスタイルに合ったマシンを選びたい。

 また冒頭に述べたようにギア比、スプリング硬度、サスペンションの伸び縮み幅に制動力配分と細かいカスタマイズが存在する。ベストポジションはプレーヤーに、路面に、マシンによって変わってくるだろう。これもゲームのひとつの楽しみ方といえる。

走ってみて気づいた“楽しい走り”に必要なこと

 これからお話しするのはターマック(舗装路)や砂利道、雪道にかかわらず「V-Rally 4」で活用できるとタイムを縮められる、またはクラッシュを避けられると感じたテクニックである。愛車を気持ちよく走らせライバルを抜き去るためにも、参考になれば幸いだ。

アクセルから指(足)を離そう

 とくに曲がり角とバンプ(段差)で。曲がり角なら当然コースアウトするし、バンプでは車体が跳び上がってコントロールが利かなくなる。未舗装路では先にアクセルを離したうえでハンドリング、曲がりきってからアクセルを踏むことでスムーズな転回が可能だ。舗装路ではカーブの角度がきつくなるのに合わせてアクセルを早めに開放してやり、曲がりきる寸前でキュッとアクセルを入れるとうまく曲がれる印象。

ドリフトしよう

 なぜならかっこいいからだ。もとい、成功すればタイムが大きく縮まるからだ。舗装路ではハンドリングしつつ、未舗装路ではハンドリング直前にハンドブレーキを軽くかけて車体を横滑りさせ、タイミングよくアクセルを踏み込む。すると豆腐屋よろしくゴリゴリとタイヤが削れ、美しいまでのドリフトがキマるのだ。楽しい。

ハンドルは優しく扱おう

 乱暴に扱うとたちまちスピンしてしまう。本作はハンドル制御が敏感で、大きくハンドルを切れば確実に要望に応えてくれる反面未舗装路でスピンアウトしやすい。とくに雪道ではグリップのグの字すら迷子になるレベルでマシンとの熱いロデオを楽しめる。危険。

(ハンド)ブレーキを愛用しよう

 クラッシュを防ぐため、またそれによっていいタイムを出すためだ。ハンドブレーキは先ほど述べたとおりドリフトだったりインコースを攻める際に必須だし、ブレーキはコースアウトしないため、またうまいことカーブを乗り切るために必須だ。

 ここでレッドブルの公開している新井敏弘選手のペダルワークを観てみたい。雪の路面でハンドルを機敏に操りつつ、足ではアクセルとともにブレーキを頻繁に踏んでいる。ゲームではここまで過激な操作は求められない(と思いたい)が、好タイムを出すためにはアクセルだけでなくブレーキも必須のテクなのだろう。

□これがWRC基準! 奥深き「左足」テクの真実
https://www.redbull.com/jp-ja/arai-wrc-driving-technic

□ラリーマシンのブレーキング(こちらもブレーキの踏み方の参考になっている)
https://www.redbull.com/jp-ja/jari-matti-latvala-art-of-braking

小さな「成功体験」がカギ

 ラリーに限らずレースというのは競い合うもので、タイムで順位付けされ、ラップを測られ、残酷に数値を見せつけられる。

 こういうときにこそ遊び、楽しむのだ。ラリーで周りを見渡せば世界の絶景が、走り回れば地面を擦り上げるタイヤの心地よい振動が、心を震わせる力強いエンジンの駆動音が聞こえる。そして谷底に川に落ち、バンプに乗り上げる。

 「あえてタイムや順位を無視してしまう」というのもひとつの手だ。自由なドライビングを楽しんだり、逆に区間ごとの“自分の”タイムを突き詰めるべく、マシンやカスタマイズを楽しむ。そして、「この前より少しタイムが縮んだ」とか、「クラッシュせずに切り抜けられた」とか「このカーブがうまく曲がれた」と喜ぶのだ。喜べ。喜ばなければ損だ。ゲームが苦手でも気にするな、ちょっとの成長が無限の楽しみを生んでいくのだから。

 本稿で触れたペダルワークもドリフトも、すべてこの小さな喜びのために学んだ、いや「学んでしまった」ことだ。ヒトというのはちょっと褒められると舞い上がって、勝手に次のステップに上がっていくからだ。残念ながら筆者もオトナなので、自分を褒めるのは自分しかいないが。えらいぞ、今日はタイムが0.2秒縮まった。

 そんなわけで、本作はレースゲームが大好きな貴方はもちろん楽しめるだろうし、苦手だった貴方もちょっとした気づきと工夫でなんとかなるし、自由に楽しんでいいゲームだ。「Vラリーモード」では楽しいオーナー&レーサー経営を体験でき、「クイックマッチ」では文字通り自由にすべてのコースとマシンを楽しめる。「マルチプレイヤー」はそのままオンライン対戦だ。F1やFIAといったハイスピードな争いとはひと味違う、自然の脅威にまみれながらの戦いを楽しめる本作をぜひ楽しんでほしい。

厳しいゲームだからこそ、タイムが縮まった感動はひとしお
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