「ディアブロ III エターナルコレクション」レビュー
ディアブロ III エターナルコレクション
どこでも遊べて、いつでも止められる! 名作がお手軽ハック&スラッシュに進化
- ジャンル:
- アクションRPG
- 発売元:
- Blizzard Entertainment
- 開発元:
- Blizzard Entertainment
- プラットフォーム:
- Nintendo Switch
- 価格:
- 6,980円(税別)
- 発売日:
- 2018年12月27日
2018年12月27日 00:00
Nintendo Switch用アクションRPG「ディアブロ III エターナルコレクション」が、2018年12月27日に発売される。本作は「ディアブロ III」の本体と、拡張パック「リーパー オブ ソウルズ」および「ライズ オブ ザ ネクロマンサー」を同梱したもので、先に発売されているPC版やプレイステーション 4版と同様の内容に、Nintendo Switch版独自の機能を加えたものとなる。
本作は洋ゲーファンにはあまりにも有名な「Diablo」シリーズの最新作であるが、PC版(英語)が発売されたのは2012年5月15日。それから2つの拡張パックが発売されているとはいえ、6年半以上も経ってからの新プラットフォーム展開となる。
となると当然、「今更やらなくても?」という気持ちが沸いてくる。特に6年半前にPC版をプレイした経験がある人にとっては、もはや興味の外にあることは容易に想像できる。
しかし、筆者はその気持ちを2つの理由でもって否定したい。1つは、「ディアブロ III」というゲームが6年半で大きく変貌し、極めて質の高いゲームに仕上がっていること。もう1つは、Switch版ならではのメリットの大きさだ。「ディアブロ III」というゲームを6年半前に知ったつもりになっている方に、本稿で再評価していただこうと思う。
失敗を重ね、ついに何度でも遊べる面白さを得た「ディアブロ III」
筆者はPC版の「ディアブロ III」を今でも時々プレイしている。しかし、6年半前に発売された時点では、それほど熱中しなかった。過去のシリーズは下手をすると数千時間プレイしたかもしれないが、「ディアブロ III」はせいぜい数十時間でいったん見切りをつけた。
はっきり言おう。初期の「ディアブロ III」は駄作だった。しかし今の「ディアブロ III」は紛れもない名作になった。過去の2作品と比べても遜色ないか、それ以上だと感じている。いったい何が本作を駄作にして、なぜ名作になったのか。
・「オークションハウス」の罪
駄作だった理由は、「オークションハウス」の存在だった。本作では発売前から、公式にRMTができる場所として「リアルマネー・オークションハウス(RMAH)」を導入することを明らかにしていた。ゲーム内で見つけたアイテムを、公式なオークションシステムを介して、他のプレーヤーに有料で販売できるというものだ。
当時はオンラインゲームにおけるRMTが問題視されており、それに対する解として「公式にRMTできる場所を用意する」ということで、大いに話題になった。それこそゲーム内容以上にRMAHが語られるほどに。筆者も「レアアイテムが出たらお金になるというのは夢がある」と、深く考えることなくポジティブな気持ちで受け止めていた。
いざ発売されてゲームが始まると、RMAHは提供が遅れ、まだ公開されていなかった。実際のところ、それはさしたる問題にはならなかった。しかし致命的だったのは、もう1つのオークションハウス。ゲーム内の通貨であるゴールドを使ってトレードする、「ゴールド・オークションハウス(GAH)」の存在である。
ゲーム内で見つけたアイテムを、ゲーム内通貨でやり取りする……という話だけ聞くと、RMAHよりもよほど健全で、何ら問題がないように感じる。しかし本作との相性が最悪だった。
当時の筆者はそれなりに忙しくしており、ゲームも時間がある時に遊ぶ程度だった。しかし世界には寝食を忘れてゲームも没頭する人もいる。「ディアブロ III」ではRMAHを意識してか、猛烈に急いでプレイする人が多くいた。そういう人たちが、必要でないアイテムをGAHに流し始めた。
彼らにとってはクズのようなアイテムでも、筆者のようにのんびりプレイしている人にとっては、当分手に入らない上級アイテムだ。それらがGAHに大量に出され、一気に値崩れして、筆者でも買える程度の金額に落ちてきた。その結果、筆者はいくらプレイしても手に入れられないようなレアアイテムを、GAHで手に入れるようになった。
本作の面白さは、敵を倒してアイテムを拾い、徐々にキャラクターを育てていくところにある。レアアイテムが時々出てきて、その性能に一喜一憂するのが醍醐味だ。にも関わらず、最初からタダ同然の値段ですごい装備が手に入り、いくらレベルが上がってもその状況が変わらない。
このたった1つだけの問題で、ハック&スラッシュの面白さが完全に崩壊してしまった。一部の先行するプレーヤーはもしかしたら楽しんでいたのかもしれないが、残念ながら筆者はそれを感じ取ることすらできなかった。
その後、GAHとRMAHは、両方とも発売から2年足らずで閉鎖されてしまう。筆者は最初の数週間プレイした後、本作からほぼ完全に離れてしまった。
・「シーズン制」の功
筆者が再び本作をプレイしたのは、オークションハウスが消滅してからさらに数か月後のこと。「シーズン制」という新たな仕組みが導入されてからだ。
シーズンとは、数か月間という限られた期間の中で、キャラクターを新たに作成して最初からプレイするというもの。通常モード(ノンシーズンと呼ぶ)で作成したキャラクターや装備は、シーズンには一切持ち込めない。シーズンのキャラクターは同じシーズンのキャラクターとしかパーティプレイができない。
システム的には、限られた期間内にどれだけレベルを上げられるかを競うというランキング要素もあるのだが、筆者はそこまでプレイできないので関係ない。重要なのは、「最初からプレイすることを強制させられる」という点だ。こう書くとネガティブに聞こえるだろうし、筆者も最初は何の意味があるのかわからなかった。
だが、やってみるとすぐにわかる。本作はゲーム序盤から、装備がある程度整うまでが最も面白い。やりこんでいって装備が整ってくると、その先は同じ装備でもちょっとステータスがいいものを探すとか、ものすごくレアなアイテムが出るまで淡々と狩り続けるとかいうゲームプレイになる。装備の更新頻度が減って、ハック&スラッシュとしての楽しさはどうしても落ちていく。
ノンシーズンでも新キャラクターを作ればいいと思われそうだが、その場合はやはり育ったキャラクターの装備やお金などの各種リソースを流用できてしまう。無理やりにでもまっさらな状態から始めた方が、ゲームとしては楽しめるのだ。
シーズンのキャラクターは期間が終わると、ノンシーズンのキャラクターへと自動で移行する。次のシーズンでは、再び新たにシーズンのキャラクターを作ることになる。新しいシーズンが始まるたび、また楽しいスタートを切ることができるのだ。これは過去のシリーズ作品にはなかった楽しみ方で、本作の面白さを尽きることなく回し続けてくれる。
またシーズンでは、ノンシーズンに先行して実装されるアイテムがあったりもする。ノンシーズンをメインに1つのキャラクターを極めたいという人にとっても、シーズンで手に入る新しいアイテムは気になる存在。数か月待たねばノンシーズンには来ないとなれば、黙って見ておくわけにはいかない。
このシーズン制のおかげで、筆者は少なくとも数か月に1度、新たなキャラクターを作ってきた。今までにしっかりと遊んでいないクラスのキャラクターを作り、レベル70とそれなりの装備を整えるのを目標に、少しずつプレイするのが楽しみだ。今は全クラスをそこそこ遊んでしまったが、アップデートで新たなアイテムが増えたり装備品の性能が変更されたりして、しばらくやっていないクラスを選ぶとまた新鮮な気持ちで遊べる。
1人のキャラクターを極めたいために、シーズン制をやらないという人も確かにいる。好みの違いとしか言えないが、飽きっぽい筆者にはシーズンごとに遊ぶスタイルがマッチしていて、いつ遊んでも飽きないゲームに仕上がっている。
・長年のアップデートによる成長
発売から6年半経った中で、本作は幾度となくアップデートがなされてきた。シーズンの導入も大きなトピックだが、アイテムの追加や変更も注目に値する。
本作のアイテムには、様々なグレードがある。能力が付与されないノーマルアイテム、能力が少数付いたマジックアイテム、より能力が多いレアアイテム。それに特殊な独自性能を持つものがあるレジェンダリアイテムと、複数の部位に装備すると独自性能を発揮するセットアイテムがある。
発売当時はアイテムドロップ率もさほど高くはなかったのだが、今はレア程度は序盤からボロボロ落ちる。レジェンダリも格別珍しいと感じるほどではなくなった。ここは単純にゲームプレイとして楽しくなっている。
序盤からのプレイの目標としては、レベルを最大の70にし、特定のセットアイテムを集めることとなる。セットアイテムはクラス専用のものがあり、特定のスキルを極端に性能強化する。しかもその倍率が10,000%を超えたりしており、その他の装備との組み合わせで、攻撃力が文字通り桁違いになってくる。序盤は1桁や2桁のダメージで戦っていたものが、セット装備が整うと億単位のダメージが出るという超インフレ具合には笑うしかない。
そうなると、戦う敵もより強力なものが欲しくなるが、これに対する解は2つ用意されている。1つは難易度設定。アップデートで上級の難易度設定が徐々に増えていき、現在は17段階用意されている。高難度の設定ほどアイテムが出やすいなどのメリットもあるので、より強い装備を求めてどんどん難易度を上げていく。
もう1つは「リフト」というコンテンツ。ゲーム内の街からアクセスできる特殊なダンジョンで、中にいる敵を倒すことでゲージが貯まり、満タンになると現われるボスを倒すと報酬が得られるという、わかりやすい内容だ。リフトには2種類あり、ネファレム・リフトはレベル1から利用できる。
注目はもう1つの、グレーター・リフト。やることはネファレム・リフトと基本的には同じなのだが、ゲームの難易度設定とは別枠のダンジョンレベルを設定できる。また制限時間があり、時間内にクリアできると、より高いレベルのダンジョンに挑めるようになる。グレーター・リフトのレベルをどんどん上げていくと、本来の17段階ある難易度設定の最高難度よりも、さらに強力な敵が出てくる。
それらの難しいダンジョンを攻略するにふさわしいアイテムも追加されている。レジェンダリやセットのアイテムには、付与される能力値が通常より高いものになるエンシェント、さらに付与される能力値が最大値に固定されるプライマル・エンシェントが存在する。最終的には、欲しい装備に、欲しい能力値が付与された、プライマル・エンシェントを目指す……ということになる。さすがにプライマル・エンシェントは滅多に出ないので、相当なやり込み要素になる。
ほかにも、特定のクエストを攻略することで報酬が得られるアドベンチャーモードや、レベルが最大の70になった後も経験値を得て成長できるパラゴンなど、アップデートや拡張パックで増えた要素は数多い。発売当初の内容とは全く違うゲームになったと言っても過言ではないほどで、特にちょっとした時間でプレイできるコンテンツがとても充実している。昔の本作を知っている方は、当時の内容は忘れて、今の本作を改めて評価して欲しい。
いつでもどこでも好きなだけ遊べるNintendo Switch版の良さ
さて、ここからは新作であるNintendo Switch版(以下、Switch版)についての話をしていきたい。ゲーム内容はPS4版の移植という形であり、基本的なゲーム内容はPC版等と共通だが、改めて作品概要を述べておく。
プレーヤーは7種類のクラスから1つを選んでキャラクターを作成し、様々なモンスターを倒して経験値を稼ぎながら、敵から得られる装備品でキャラクターを強化していく。俯瞰視点のシンプルなアクション性に、多数の敵をなぎ倒すように進んでいく爽快感と、常に希少なアイテムが落ちる可能性があるという期待感が相まって、止め時が見つからなくなるほど熱中してしまうゲームになっている。
今回発売されるSwitch版では、ゲーム内容こそ移植ではあるものの、Switchならではの要素がとても大きな意味を持っている。PC版と比べて何が違うのか、順に語っていきたい。
・持ち運べる手軽さ
最大の魅力は、「Diablo」シリーズにおいて初となる、携帯可能なハードでの展開になったこと。好きな場所に持ち込んでテレビやモニターのない場所でも遊べるのは今回が初めてだ(特殊なインターフェイスを持つノートPCを除けば)。またスリープにも対応しており、プレイ途中であっても自由に中断できる。
さらっと書いてしまったが、これは本作にとって極めて大きな出来事だと思う。PC版では遊び始めるまでに、PCの電源を入れてゲームを起動し、キャラクターを選んでスタートする……という手順が必要になる。しかしSwitch版なら、ゲームを起動中にスリープしておけば、次にプレイする時はスリープから復帰したらすぐゲームが始まる。スリープする場所は、街中はもちろん、ボスに殴られている最中であっても構わない。
現在の本作は、リフトやアドベンチャーモードなどのコンテンツにより、5分、10分程度の短時間でも遊べるものが増えている。ちょっとした空き時間でも遊びたくなるゲームなのだから、起動時間は極力短い方がいい。Switchをさっと取り出し、5分で終わるリフトを1周だけやるという気軽な遊びが可能だ。しかも、もし中断する羽目になっても、いつでもどこでもスリープが効く。
また携帯可能なハードになったことで、友達同士が集まって遊ぶことも可能になった。日本では「ポケットモンスター」や「モンスターハンター」のおかげで、携帯ゲーム機を持ち寄って遊ぶというスタイルが一般化している。本作もそれらと同じような楽しみ方が可能になった。オンラインで遊ぶのももちろん楽しいが、すぐ近くにいる人と喋りながらプレイする方がはるかに面白い。
さらに本作はJoy-Con1個だけでも操作できる。メニュー操作などで、アナログスティックを押し込みながらボタンを押すといった組みあわせの操作が求められるのは少々煩雑ではあるが、アクション性の面では何ら問題なくゲームを堪能できている。マウスとキーボードの操作が当たり前と思っていた筆者にとっては、こんな小さなJoy-Conで本作を普通にお遊べてしまうこと自体が衝撃的だ。
・オンラインでもオフラインでもプレイ可能
「持ち運べる」と書いた時点でお気づきとは思うが、PC版ではゲームプレイにオンライン接続が必須だったのに対し、Switch版では不要となった。完全にスタンドアローンな環境でもプレイできるし、オンラインに接続して他のプレーヤーと遊ぶこともできる。さらにSwitchのスクリーンでも何ら問題なく遊べるし、テレビに接続して大画面でプレイしても構わない。場所を選ばず、いつも最適な環境で遊べる。
またNintendo Switch Onlineを活用することで、別の本体で同じデータを使って遊ぶことも可能となっている。例えば、自分のSwitch本体を家から持ち出せなくても、友達の家で自分のキャラクターをオンライン経由で呼び出して、友達と一緒に遊ぶことが可能だ。具体的な手順は下記のようになる。
1. Nintendo Switch Onlineへ加入し、 「セーブデータお預かり」(クラウドバックアップ機能)を使う
2. 自分のユーザーAをニンテンドーアカウントと連携し、セーブデータをクラウドバックアップ機能で同期する
3. 別のSwitch本体で新たなユーザーBを作り、手順2で使ったニンテンドーアカウントと連携する
この操作により、ユーザーBで自分のセーブデータが使用できる。またユーザーBもクラウドバックアップ機能と連携しているので、プレイしたデータは自宅のSwitchでも引き続き利用できる。何らかの理由で複数のSwitchを使い分ける場合に、便利に活用できるだろう。仕組みについては、任天堂のホームページに記載されている。
・洋ゲーなのに(日本人から見ても)わかりやすい
これはSwitch版に限ったことではないが、本作はいわゆる洋ゲーでありながらも、日本人にも親和性の高い作品だと思う。洋ゲーと言うと、FPS中心のシステムで操作感は日本の作品とは違い、ストーリー展開も日本人の考え方とはズレていて、キャラクターもやたら筋骨隆々だったりして、どうにも肌に合わないという人がいる。これは究極的に文化の違いであり、その感覚を否定しても仕方ない。
本作の世界観はダークファンタジーで、作中で語られるストーリーは結構ハードな内容も多い。ゾンビを倒すと血しぶきと肉片が飛び散るような描写も洋ゲー的で、日本人には苦手な人も多いだろう。かく言う筆者もスプラッターは苦手だ。
そこは日本人に高く評価されるとは思わないが、それ以上にゲームの面白さが評価されるに違いない。俯瞰視点でキャラクターを操作し、複数のスキルを駆使して敵をなぎ倒していくというゲーム内容は、日本人ならファミコンの時代から慣れ親しんだスタイルと言える。少なくとも、アクションゲームの経験がある人ならゲームプレイで苦労はしないはずだ。
CEROレーティングがD(17歳以上対象)なので、中高生におすすめしにくくはある(とはいえCEROレーティングは18歳以上のみ対象とするCERO Z以外には強制力はない。「モンスターハンター」シリーズも15歳以上対象のCERO Cだが、明らかに小中学生も遊んでいる)のだが、ゲームとしては非常にとっつきやすい。筆者の心情としては、友達同士で遊ぶタイトルとして挙げたものと並ぶほど流行ってくれてもいいと思う。
いまNintendo Switchで登場する意味のある作品
本作におけるSwitch版の価値は、とにかく「ディアブロIII」がお手軽になったという点に尽きる。場所を問わず、短時間でも遊べるというのは、「Diablo」シリーズを圧倒的に遊びやすくしてくれている。本作を遊んだことがない人や、PC版で初期しか遊ばなかったという人には、ぜひSwitch版で遊んで欲しい。
映像的には、PC版の最高画質と比べるとさすがに見劣りするものの、プレイに違和感を覚えるというほどでもない。フルHDの画面に出力しても、画質が不十分と思うことはなく、PC版と同じ感覚で遊べている。Switch本体のスクリーンで遊べるというメリットに比べれば、画質など些細なことに過ぎないとさえ思える。
忙しい人がパッと出して遊ぶのもいいし、熱中して遊びたい人が友達と持ち寄って遊ぶのもいい。どちらのスタイルにおいても最適なSwitchらしい作品になったと言える。もっとも、いつでも止められるとはいえ、止め時が見つかるようなゲームではないのだが。