「ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島」レビュー

ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島

前作以上に“「ドラゴンクエスト」らしさ”あふれる超快作!

ジャンル:
  • ブロックメイクRPG
発売元:
  • スクウェア・エニックス
開発元:
  • コーエーテクモゲームス
プラットフォーム:
  • PS4
  • Nintendo Switch
価格:
7,800円(税別)
発売日:
2018年12月20日

 ブロックで表現された広大なフィールドで創造と破壊を繰り返し、ストーリーを進めていくブロックメイクRPG「ドラゴンクエストビルダーズ」シリーズ。前作は初代「ドラゴンクエスト」がモチーフだったが、今回は「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」がモチーフだ。世界観だけでなく、ありとあらゆるところがファンの期待を上回わり……とまくしたてたいところだが、まずは導入部から少しずつ触れていこう。

 なお、本レビューはPS4版の開発バージョンを使用しており、記事中のボタン表記はそれに準じている点をあらかじめご了承願いたい。

丁寧でユーモラスなチュートリアル ~まものたちがめっちゃカワイイ!~

 まずは主人公キャラクターの性別、「かみ」「はだ」「め」のカラーリング、命名からスタート。カメラや音量などの設定もここで決定するが、後々オプションから変更可能。ハーゴン&シドーの姿とともに、本作が「ドラゴンクエストII」世界観のもとにあることが簡単に説明されたあと、ハーゴン教団の生き残りのまものたちが操る船からスタート。主人公はメルキドでさらわれたかけだしビルダーで、まものにからかわれながら船底で目覚める。

 ここから実質的なチュートリアルが始まるが、これがまぁ親切丁寧に作りこまれていて終始ニヤニヤさせられる。会話や扉などのアクション、ジャンプ、攻撃、アイテム、作業台の使い方などが「これぞ『ドラゴンクエスト』シリーズ!」といった丁寧かつ楽しく覚えられるようになっている。目前のオブジェクトをいちいち壊さずその場でヒョイと抱えて動かせる改良点は、前作をやりこんだ人ほど「おおっ!」となるはずだ。

 まものたちとの会話は「これ! これを待っていたんだよ!」と叫びたくなるほど“らしさ”に満ち溢れており、おおきづちに代表される前作の感動が脳裏によみがえる。とある一瞬の演出などは、感動のあまり涙腺が決壊しそうになったが……ネタバレというか野暮の極みにつき具体的には触れないでおく。ゲーム内には、当然ながら開発者が必要と考えたものしか入らない。KPIなどには絶対あらわれない、今やレッドデータブック並に希少な地金が垣間見えるのが「ドラゴンクエストビルダーズ」シリーズの凄いところだ。

主人公の性別、部位のカラー、名前を決定。カメラなどの環境設定は後々オプションでいつでも変更できる。ちなみに作中の主人公は、まものやNPCたちいわく「ゆるい」、「怒られてる最中も笑ってる」ように見えるという。前作の主人公と同じ言われよう……
船底で目覚める主人公
まずはチュートリアル。丁寧な作りが素晴らしい
船長以下まものたちがいちいち面白くてかわいい
船での会話はすべて要チェック。本当にしっかり作られている
R1ボタン長押し移動でダッシュ。年配の方ほどピン! とくるフォーム
こういうお遊び要素は省かれがちだがちゃんと入ってるのがいい
新登場グローブ。まさに「かゆいところに手が届く」超便利機能だ

 色々あってまものたちの船は難破し、主人公はとある島の浜辺に打ち上げられる。ここは“はじまりの 無人島”こと「からっぽ島」。人の声がするほうにいくと、空を眺める少年「シドー」と遭遇。同じ船に乗っていた記憶はないのだが……。「面白いものを見せてやる」というシドーについていくと、その先には主人公同様に打ち上げられた人やまもの(スライム)の哀れな姿が! 全滅かと思われたなか、唯一「ルル」と名乗る少女が息を吹き返す。

 ここからのチュートリアルはビルダー実践編。部屋、たき火と料理、ベッドとミッションをクリアした後、まものとの戦闘イベントもここで基本を学ぶことになる。前作プレイした人は、武器が壊れない快適さ、そして何よりも「レベル」という概念の登場に驚かされると同時に、新たなワクワクが止まらなくなるはずだ。

 ひと眠りした後、突如出現したあやしいおおきづち「しろじい」に誘われ神殿の修復を終えると、いよいよ本格的なゲームスタート。なんとしろじい、ビルダーを象徴する道具「おおきづち」にくわえて「からっぽ島」を丸々プレゼントしてくれるという。

 いにしえのビルダーがその夢を詰め込もうとした島も、いまはすべてが失われた状態。島を開拓すべく、主人公とシドーは船で他島と行き来し、素材や仲間を集めてくることになる。

主人公以外にも生存者が! 色々な意味でタフだ
たき火に食材を入れると料理が作れる。完成まで時間がかかるがたき火を5~6個ほど並べておけば火にくべている間に最初に入れた食材が焼きあがるのでオススメ
シドー専用の武器が作れる。ちなみに主人公が装備できる武器は先々他の一部NPCに渡すことも可能だ
中型を含めたまものの一団とバトル。弱いまものから素早く処理していくといい
今回はレベルが存在するが、進行上のキャップにすぐ到達しがちなのでパワーレベリングの必要性は薄い
突如出現した謎のおおきづち「しろじい」
しろじいについていくと神殿に到着。修復に成功するとしろじいはハンマーと「からっぽ島」をまるごとプレゼントしてくれるという。繁栄のために他の島に船で渡り仲間と資源を集めてくることに!

島で待ち受ける感動 ~住人とまものたち、ステキな出会いの積み重ね~

 最初に船で渡る「モンゾーラ島」に住む人々は、ハーゴン教団の教えをいまだに信じていた。主人公とシドーは、島内を探索しつつキーとなるキャラクターたちと出会い、少しずつストーリーを進めていく。

 いわゆるクラフト系作品の多くは、出先で資源を持ち帰りホーム強化やエディットパターンを増やすのが目的だったりするが、本作は住人やまものたちとの関わり合い、そこから生じる展開の積み重ねこそ魅惑の真骨頂ではないかと筆者は思っている。ときに王道、ときに奇抜。ちょいちょいユーモラスで、たまにひねくれていて、それでいてどこかじわっと心を揺さぶる「ドラゴンクエスト」らしい機微。まものの襲撃から住人たちと協力して拠点を守るバトルイベントのタイミングや頻度も、前作に引き続き見事というほかない。

 「からっぽ島」を反映させるべく「モンゾーラ島」にやってきた主人公とシドー。しろじいとルルは主人公とシドーの帰り、さらにはやってくるであろう新たな仲間たちを待ち焦がれている。でも……しろじいとルルには悪いのだが、ぶっちゃけ出先での冒険生活があまりにも楽しすぎて「からっぽ島」の存在が脳裏から消えていることがある。

 クリアして次にいくという意味で「そこまでやらなくてもいいよね?」というくらい拠点を整備したり、飾りつけを徹底したり、畑のレイアウトに凝ったり、〇×を□△したり……ビルドのバリエーションも増えていくし、なにより拠点で生活を共にする住人たちがビルドとビルダーに対してどんどん前向きになっていく過程がたまらない。少女だろうがオッサンだろうがまものだろうが、誰だってきっと心底愛おしくなる。

“めぐみの島”のはずが、枯れた樹木や腐った土などが目に付く。まものに襲われていた少女チャコの大農園(拠点)を手助けすることに
ここから先は前作ユーザーにはおなじみ、新規ユーザーは船上で覚えた作業台が大活躍。かかしを立てると最大6×6の畑になり、住人Cたちが耕した土に種を植えると作物が育つ
設計図に記されたとおりブロックを配置。要所はこうしたサポートが入るためクラフト系が苦手でも大丈夫
野菜の収穫は武器を使用。サクサク刈りとれるのがとても気持ちいい
拠点のビルドレベルを上げると、主人公に触発され住人たちの行動がより積極的になるほか、新たな住人やレシピが増えていく
当面の主目的はコレ。全般にいえることだが本シリーズは展開が丁寧でわかりやすい
拠点の開発と島内の探索を続けることで少しずつ住人が増えていく
俯瞰マップから拠点や各ポイントにワープ(ファストトラベル)できる。めっちゃ便利!
敵の拠点襲撃は一定時間の経過とイベントがあり、前者は小規模だが後者は少々手強い。とはいえ、どちらも住人たちと力を合わせれば大丈夫!
フィールドには通常より強いまものが配置されているところもある
住人の要望をビルドでかなえる。ビルダーハートを大量にゲットするチャンスだ
島内にはさまざまなまものと冒険要素が散りばめられている
ボス戦は前作に比べると全年齢向けというか少しやさしめという印象

「からっぽ島」の発展も仲間の力が不可欠

 発売前から「今すぐにでも『からっぽ島』を自由に作り変えたい!」欲求に駆られている人も少なくなさそうだが、それは「モンゾーラ島」の問題が解決してからの話。要素のアンロックという意味で、凝り性あるいはこだわり派の本格的なクラフト着手はゲームクリア後ということになるだろう。

 「からっぽ島」の発展は「ご自由にどうぞ」といきなり放り出されるのではなく、「『ドラゴンクエスト』シリーズが好きだから遊んでみたいけど、クラフト系は苦手」という人でもつまづかないよう、「かいたくレシピ」と呼ばれる目標設定のもと手順などが実践形式で提示されていく。

 クラフト系が得意なコアユーザーは「わかったから好きにやらせてくれよ!」ともどかしさを覚えるかもしれないが、こうした幅広いユーザー層を踏まえた“親切丁寧”こそ「ドラゴンクエスト」シリーズの良さでもあるよなあと再認識させられる。

 一般的なクラフト系で要求されることを「からっぽ島」に集約させた点は、地味ながら大きな進化だ。前作は章立ての各拠点がそうした存在だったが、当然章が進むと刷新というか「次の拠点」に移行してしまうし、なによりオンライン用ホームは別モードとして存在していた。クラフト系に不慣れな人はもちろん、やりこみ派にとってもホームはひとつのほうがわかりやすく、クラフトのしがいも増すはずだ。

 帰島直後は実質第2のチュートリアルみたいなものだが、何をどうしたほうがベターなのか。楽しんでもらえるのか。プレイしていると、そうした開発側の“練り込み”が幾重にも感じられ、止め時がみつからない状態になる。ごくごく一部を表現するなら……かつて“おおみみず”に対してここまで感情移入できたことはない。「2」の仲間たちは、ストーリー中はもちろん「からっぽ島」でも最高だ。

“いにしえのビルダーの意志”として主人公が「かいたくレシピ」をひらめく。最初から自由きままにやりたい人もいそうだが、迷わず誰でもすぐ慣れていけるという点ではこのほうが「ドラゴンクエスト」らしい

前作ユーザーはいわずもがな、クラフト系が苦手でも「ドラゴンクエスト」ファンなら遊ばないのはもったいない!

 まだ隅々までプレイしたわけではないが、武器耐久力と敵接触ダメージの廃止、ダッシュ、ファストトラベル、FPS視点の追加などなど、前作ファンから挙がっていた要望はおおむね叶えられている印象。ビルド関連はバリエーションから加工まで大幅にパワーアップしており、特に高さ制限の緩和はうれしい限り。へっぽこな筆者はいわゆる豆腐建築が関の山だが、前作でならした凄腕ビルダーならサグラダ・ファミリア級の芸術表現も可能だろう。

 行動を共にするシドーについては「余計なことをされないか」といった杞憂もなくはなかったが、敵との戦いから素材集めまで、すべてが「やりすぎない」絶妙なサポート具合に感心することしきり。戦闘ではスペックこそ主人公を上回るが「シドーが勝手に片づけちゃう」なんてことはなく、主体はあくまでもプレーヤーの操作にある。ストーリーを進めるにつれ深まっていく信頼感も、バディの王道といった感じでつい頬が緩んでしまう。

 東京ゲームショウのステージなどで触れられているとおり、今回は“仲間”が大きなテーマのひとつ。仲間といっても一般的なゲームでは何から何までプレーヤーが設定またはコントロールするのが常だが、本作は違う。人数分のテーブルと食器と椅子を設置しても朝食で席につくために行列を作る様子は御愛嬌だが、畑を作れば耕して水をまき、お風呂やトイレを設置すればきちんと利用する一部始終は、ときに抱きしめたくなるほど健気。「AI時代に何を」といわれそうだが、ゲーム内の表現のツボはそういった次元で優劣がつくものではない。

 前作を上回る展開とボリュームゆえか、ひねくれたプレイをするとフラグ管理の都合的なメッセージに出くわすケースもなくはないが、全体としては「よくぞここまで!」といいたくなる仕上がり。前作で筆者が感動に打ち震えたテキストはより機知に富み、従来が「1byteの節約に命をかけていた8bit期の再現」なら、今回は「表現を優先しはじめた16bit期」といった感がある。

 これはあくまでも筆者の私見と強調しておくが「ビルダーズ」は近年発売されたどの「ドラゴンクエスト」シリーズ作品よりも“らしさ”にあふれており、それは「2」でさらに強くなったように感じられる。長い歴史を誇るシリーズゆえ色々な作風があるのは当然で、クラフト系の本作も実際そのように展開されてきたラインのひとつ。極端にいえば“らしさ”が希薄でも怒られない立ち位置だが、本シリーズは最初から頭抜けていた。

 そもそも“らしさ”なんて漠然としたものだが、それを全体から細部まで包み込むように表現し続ける「ドラゴンクエストビルダーズ」開発チームのセンスと力量は目を見張るものがあり、2作続けて、しかもさらなるクオリティとボリュームアップで迫ってこられたらもはや感謝しかない。

 念のため触れておくと、世界観のモチーフ「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」をまったく知らない人でも隅々まで楽しめるよう配慮されている。“らしさ”にあふれ、それでいて新規にも優しい……あまりほめ過ぎるのもいやらしいか。少々先になってしまうが、ビルドの幅を広げてくれるDLCも楽しみ。年末年始どころか当面本作だけで充実したゲームライフが過ごせそうだ。

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