2018年12月14日 18:00
「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」(以下、スマブラSP)が熱い! 弊誌では本作の発売直後、ソロモード「アドベンチャー」の「灯火の星」にフォーカスしたレポート記事をお届けしているが、その後もプレイし続けて、もうやればやるほど「永遠にできるぞこのゲーム……!」という実感が日に日に増している。
原稿を書いている今でさえ「『スマブラ』やらなきゃ」という気持ちでいっぱいであり、筆者の中の悪魔が「仕事をしている場合じゃないぞお前」と懸命にささやきかけてくるのだが、ここはぐっとこらえて「スマブラSP」のレビュー記事執筆に専念したい。
「灯火の星」もいいし、「勝ちあがり乱闘」も楽しいし、その経験がオンライン対戦で大いに発揮される! とにかく、「めちゃくちゃ面白いからみんなやろうぜ!」という結論だけは先に言っておきます!
あまりに多い“挑戦者”システムはどう楽しむべきか?
「本当に面白いよ!」という結論を先に述べた上で、一旦冷静になって本作のシステムを見つめ直してみたい。というのも、「スマブラ」シリーズではすっかりおなじみの、プレイすることでファイターが増えていく“挑戦者”システムが何より特徴的だと改めて思ったからだ。
挑戦者システムは、プレイを進めていると新たなファイターがプレーヤーに“挑戦”し、そのファイターを倒すことで使用できるようになるというもの。「スマブラSP」は12月時点で74名のファイターが登場(早期購入特典のパックンフラワーに加え、DLCファイターとして「ペルソナ5」よりジョーカーも追加予定。DLCファイターはさらに4名の追加が予定されている)するが、最初は8名しか使用できない。
つまり、挑戦者システムで増える幅は65名分もあるので、全員揃えるまでには相当手間がかかる。特に難しい出現条件はなく、プレイを進めていればコンスタントに次々と挑戦者がやってくるようなものにはなっているが、それでも65名という数字は実に「スマブラ」らしい豪華さだ。
そもそも“挑戦者”のようなシステムは、格闘ゲームなどで、数名の隠しキャラクターが登場する場合に使われる演出だと思う。ところが「スマブラSP」の場合は、プレイ開始時点で使用キャラクターの9割近くが未登場という、隠しキャラクターどころではない騒ぎ(しかも隠れていない)になっているのが非常に面白い。いわば、「スマブラSP」ならではのガラパゴス化現象だ。
それゆえに、初期段階では使いたいキャラクターがいない人も大勢いるだろうし、まずはそのキャラクターを出すために頑張る、という人もいるだろう。シリーズおなじみのシステムなので「それでこそ『スマブラ』」とポジティブに捉えられる人もいれば、なかなかファイターを揃えられなくてストレスを感じてしまう人もいるような評価の難しさがある印象だ。
筆者の場合は「ファイターを全員揃えるまでは修行段階の1つ」と考え、「灯火の星」から「勝ちあがり乱闘」、そして「オンライン対戦」など様々なコンテンツをじっくり、交互にプレイしたことで、楽しみながら総勢74名(12月時点)のファイターを揃えることができた。
中でも、「灯火の星」はプレイのモチベーションを保つ上で重要だった。「灯火の星」で取り返したファイターは、大乱闘側にも反映される仕組みになっているからだ。つまり「灯火の星」をプレイしていれば、ある程度は自動的に大乱闘側にもファイターが参戦してくれるのである。
「灯火の星」のよさは、難易度を自分で調整できるところにもある。装備するスピリットの数値を高くして効果的なスキルをつければ、ステージの難易度はぐっと下がる。場合によっては、“挑戦者”と戦うよりも簡単にファイターを獲得できることとなる。楽しくて、修行になって、ファイターも獲得できてと、「灯火の星」はいいことづくめのコンテンツだ。
それと「勝ちあがり乱闘」もよかった。こちらは各ファイター専用のステージを連戦していくモードで、順調に勝ち進めば10分程度でクリアできる。スピリットによるステータス補正がない分実践に近い感覚で楽しめるほか、各ファイターの使い心地をひと通り試す場としても最適だ。
「勝ちあがり乱闘」の場合は、クリアすると確実に“挑戦者”がやってきてくれるのがポイント。獲得したファイターの「勝ちあがり乱闘」をクリアすればさらに新ファイターが……とこちらも連続で楽しめる。「灯火の星」と「勝ちあがり乱闘」を上手く使いこなすことで、ファイターを集めつつプレイにいちはやく慣れることができると思う。
全員を揃えた時は、「これでやっと対戦を本格的に始められる!」と感慨深く思う一方で、ゲームクリアに似た達成感もどこかで感じていた。ずっと欲しかった家電製品を買って満足する顧客心理のように、「一旦プレイを止めてもいいかな」と一瞬思ってしまったのだ。
それでもプレイを止めることがなかったのは、やはり本作の主眼である対戦が楽しいから。「灯火の星」や「勝ちあがり乱闘」はいわゆるCPU戦だが、1対1から乱闘戦までありとあらゆる条件下での戦闘となるため、どのファイターで遊んでも飽きずに何度もプレイできるところが素晴らしい。マップが広大な「灯火の星」はまだボスまで到底たどり着けそうになく、「まだやることがいっぱいある」と思えたのも気持ち的には大きかったところだ。
ファイターを揃えるためにCPU戦をしこたまプレイすることになれば、操作感覚は否が応でも身につく。そうした「修行」の成果はオンライン対戦の勝率に確実につながってくる。各ファイターを使い込んでいく真の戦いが、いよいよ始まったわけだ!
どうもメインファインターは「キングクルール」になりそうです
そうして本格的に始めることになったオンライン対戦だが、これがまあ負ける。我が家の3歳の息子は簡単なすごろくに負けただけでも10分以上泣きじゃくっているのだが、彼に「スマブラSP」をやらせたらきっと発狂すると思うほど負ける!
それでも一生懸命にやり続けて、やっと1勝できたファイターが「キングクルール」だった。本作の場合は試合の度に「世界戦闘力」が上下し、同程度のスコアの人とマッチするようなシステムになっている。負け続けるということはそれなりに低いスコアでの対戦を意味するのだが、それでも4人対戦で勝利できた時は本当に嬉しかった。
「キングクルール」は重量級のファイターで動きはやや遅いが、王冠投げに大砲撃ちと飛び道具が充実し、下必殺はカウンターと攻撃手段が多いのが特徴。またでっぷりしたお腹はスーパーアーマー効果があり、敵の攻撃を受け止めつつ反撃できるため、動きの遅さをカバーできる。
加えて、プロペラで上昇する上必殺は移動距離が長くて復帰しやすい。王冠を投げ、大砲を撃ち、近づかれたらスーパーアーマー込みで反撃し、吹き飛ばされてもプロペラで粘り強く帰ってくる。実際にプレイしてみると立ち回りがものすごく姑息になるのだが、それもまたキングクルールらしくて気に入っている。
筆者としては、敵との距離さえ気をつければ、筆者のような対戦スキルのぬるいプレーヤーでも、うかつに手を出しにくいファイターになるのではと考えた。それが対戦ではばっちりハマり、激戦をしっかり生き抜いて勝利までこぎつけられたのが記念すべき第1勝だったわけだ。
他のファイターもいろいろ試したが、筆者のプレイスタイルとマッチするのは今のところキングクルールが筆頭だ。自分でも意外なファイターだったが、しばらくはキングクルールをメインとして戦っていくと思う。
本当の理想を言えば「リンク」や「マルス」で勇ましく勝利したり、「インクリング」でスタイリッシュに飛び回ったりすることなのだが……それには相応の練習が必要なようだ。
黄金のプレイサイクルで永遠に遊び続けられる!
本作は、ソロモードが驚くほど充実している。これまで紹介してきた「灯火の星」や「勝ちあがり乱闘」以外にも、「組み手」や「スピリッツボード」、コレクション要素の「クリアゲッター」など、やりこみ要素に関しては事欠かない。
面白いのは、1つのコンテンツをプレイすることで、そのことが他のコンテンツに影響するようになっていることだ。たとえば「灯火の星」は「大乱闘」用のファイターの獲得につながるし、「勝ちあがり乱闘」をクリアすればファイターの獲得に加えてスピリットや「灯火の星」用アイテムも入手できる。
「スピリッツボード」はスピリットとの対戦と獲得に特化したモードだし、特定条件クリアで特典がもらえる「クリアゲッター」では「灯火の星」用アイテムが数多く手に入る。そうして再び「灯火の星」に戻ってくれば、入手したスピリットとアイテムを駆使してさらに先のステージを有利に進められる。こうして各コンテンツをぐるぐる回っているだけであっという間にプレイ時間が積み重なっていく。
筆者は感覚的に「こうした時間は修行」と捉えていたが、「灯火の星」を中心としたプレイサイクルがよくできていることで、やらされている感じが一切ない。
さらにいいのはシビアな戦闘も組み込まれていることで、「灯火の星」ならCP10,000超えのステージは時に絶望を感じるほど難しいし、ステージが進むごとにホンキ度(難易度)が上がっていく「勝ちあがり乱闘」は自分の実力に合わせて負ける瞬間がやってくるようになっている(ミスするとホンキ度を下げてやり直しになる)。
つまりソロモードを遊んでいれば、プレーヤーの実力の少し先のレベルをCPUが引っ張ってくれるということ。ソロモードをずっとプレイするだけでも、プレーヤーの「スマブラ」戦闘力が確実に上がっていく作りと言えるだろう。
そうして本作のエンドコンテンツとして、オンライン対戦が待っているわけだ。世界中のプレーヤーが日々しのぎを削る中で「世界戦闘力」の高みを目指す。「スマブラSP」の最終目標は間違いなくここだが、その前段階には行き届いたソロモードがしっかりと下支えしている。
各ソロモードの修行スパイラルで実力を少しずつ高め、その成果を知りたかったらオンライン対戦ですぐに実力を確かめられる。実力が足りなかったらまたソロモードで練習と、冷静に考えてもこれはもう永遠に遊び続けられる! 黄金のプレイサイクルとでも呼びたくなるような、「スマブラSP」の優れた作りだ。ソロモードを十分すぎるほど充実させることで、自然に「さて今日も『スマブラ』やるか!」という気持ちにさせてくれるのだ。
ところで、本稿ではその場にいる人たちで遊べる「大乱闘」についてあまり述べることができていないのだが、それはまだ友人を集めてプレイできてないから。筆者の過去の記憶では、「スマブラ」といえば友人の家で集まって、なんやかんや言いながらワイワイ対戦しまくることが何より楽しかった。
大人数対応のトーナメントモードも入っているし、すっかり大人になった今でもそんなことが気軽にできたら理想的だなと思うのだが、様々な事情でそう上手くはいかないのが大人の悲しいところでもある。
それでも「スマブラSP」には、今の段階でもこれでもかというほど楽しませてもらっている。過去の記憶を振り返りつつ、「スマブラSP」ならではの黄金のプレイサイクルを今後も存分に味わっていきたい。
© 2018 Nintendo
Original Game: © Nintendo / HAL Laboratory, Inc.
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