2018年10月10日 12:00
2018年9月6日にプレイステーション 4/PC(Steam)で発売された「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS」。オリジナルである「ANUBIS ZONE OF ENDERS」は2003年の発売であるため、実に15年の歳月を経ての新生となる。当時「ANUBIS」を遊んだプレーヤーはまず確実に大人になり、その間に様々なロボゲーを遊んできたと思う。
だがしかし、「ANUBIS」は15年経ったいまでも現代タイトルに劣らず十二分に楽しめる作品だと「M∀RS」が確信させてくれた。根幹となるゲームシステムは一切変わらず、見た目や音響の刷新、それに加えてVRの対応。筆者の場合メインであるストーリーパートのプレイ時間は10時間に満たないが、軽く映画を観る気持ちで遊べるしVRを使用したり、ムービーだけを観ていても面白い。ゲーム中に獲得できるEXファイルで開放できるEXミッションもすべて遊ぼうとするといくらでも楽しめる。ゲームをサクッと遊びたい、またはじっくり腰を据えて挑みたい、どちらの要求にも応えられると思う。
本作の変更/追加要素
では、具体的にオリジナルの「ANUBIS」と比して何が違うのか。それは以下の通り。
・テクスチャが4Kに対応、ディテールを追加
・VR完全対応。コックピットからの視点でプレイ可能に
・PC版ではDolby Atmosに対応
・ボタン割り当てに「PRO」を追加
・難易度「VERY EASY」の追加
・チュートリアルの充実
・ミニマップの搭載
・「ZORADIUS」に「ARRANGED」タイプを追加
・「MODEL VIEWER」、「HANGAR」、「CINEMATIC THEATER」を収録
――ということだが、ひととおり遊んでみて個人的に嬉しかったのは「CINEMATIC THEATER」と「MODEL VIEWER」、「PRO」アサインとディテール追加だった。もちろんどの要素もハチャメチャに嬉しいので、それぞれの要素を軽く解説していこう。
刷新されたテクスチャ
視覚的に1番の変更点がこれだ。ジェフティをはじめあらゆるテクスチャが4K解像度に変更され、オリジナルでは描かれなかった装甲のパーティングラインが追加されたり、コーションマークが描き込まれたりしている。ムービーを観ているとその変容ぶりをはっきりと確認でき、画面にも締まりが出ている印象。またポストエフェクト処理が加えられており、「ANUBIS」独特のビジュアル表現である「ZOEシェーダー」に磨きがかかっている。
VR対応、内部から味わう空間戦闘
文字通りディンゴとなって、ジェフティのコックピットから外を眺め敵と戦える。ジェフティの体勢がコックピット右側に表示されていたり、コックピット内部を細かく作り込んでいたりと凝った表現がされている。見ようとすればシートや背面、足を置くスペースのディテールも見渡せる。
PC版でDolby Atmosに対応
PC版でのみ、360度全周囲から音を浴びられる「Dolby Atmos」に対応。こちらがいかなるものかは実際に体験した記事(ジェフティはここにいる。Dolby Atmosで味わう「ANUBIS M∀RS」未確認浮遊快感)を執筆しているので、そちらも確認頂きたい。たとえばバフラム艦隊戦の前のムービーで真上を過ぎていく艦の推進音とか、モスキートが周りで飛び回る音とか、投げ飛ばしたオブジェクトが空を切る音が立体的に聞こえる。空に浮き飛び回るジェフティの鮮やかな空間戦闘を表現するにはぴったりのシステムだ。
「PRO」アサインの追加
サブウェポンの選択を、L1ボタンを押してゲームを停止するオリジナルそのままの「CLASSIC」とは違い方向キーでサブウェポンを切り替え○ボタンをグラブに固定する。
これで何が可能になるかというと、かっこいいジェフティがさらに格好良く動くようになる。ただそれだけ? だがそれがいい。敵を壁に投げつけ、ガントレットで追撃し、ゼロシフトで突進してバースト攻撃をぶち込むとか、ホーミングレーザーに追いつく前にゼロシフトで敵に肉薄、接近攻撃中にレーザーを直撃させるというプレイも可能。ゼロシフト大好き。動画にして見せびらかすもよし、自分だけでひっそりフヒヒと笑い楽しむもよし。シームレスに切り替えられるサブウェポンを使いこなし、さらなるハイスピードロボットアクションを楽しめる。
難易度「VERY EASY」
これのなにがいいかというと、ちょっとばかしアクションゲームが苦手でも無双するジェフティを見られる。敷居が低くなるのだ。ゲームオーバーにならないというだけで、プレーヤーにとっては嬉しい。
ちなみに、これでもストーリー中に開放可能なすべてのトロフィーを獲得できる。
チュートリアルが充実
ゲーム中の要所要所で、ゲームの雰囲気を壊さない程度に必要な操作などが表示される。加えてチュートリアルでは「PRO」アサインに対応したチュートリアルも(しかもボイスつき!)。なかなかに豪華なので、すでに何周もゲームを遊んだ熟練者も必聴である。
ミニマップの搭載
孫の手くらい痒いところに手が届く改修である。とても嬉しい。具体的にはEXファイルを見つけやすくなるのと、ロイドの要塞に突入するとき正解のエレベータを確認しやすい。地味にみえてとても便利な改修なのだ。
「ZORADIUS」新操作「ARRANGED」
ある地点でEXファイルを取得することでプレイ可能になる「ZORADIUS」で、パワーアップシステムとボタン配置が調整された操作モードを追加。パワーアップアイテムを取得すると画面下部のアイコンが点灯し、続けてアイテムを取得すると次のパワーアップが点灯する。点灯した箇所でパワーアップボタンを押すと指定されたパワーアップが発動するようになっている。
MODEL VIEWER
ファンアーティストやスクラッチモデラーに嬉しい新要素。実際この機能ひとつで3,000円くらいの資料1冊分は軽く収録されている。
モデルはもちろんリファインされたもので、ゲームに登場するすべてのメカを見回し、ライティングを変え、アクションさせて鑑賞可能だ。
オリジナルのファンでも買って損なし
このように、「ANUBIS M∀RS」はただのリマスターに留まらず嬉しい機能を多く収録。とくにVRデバイスを使用したコックピット視点やDolby Atmos、MODEL VIEWERはそれだけでゲーム1本や資料集1冊が完成しそうなほど新感覚で、また嬉しい機能だ。もちろん映像表現のリファインというだけでも十分に遊び応えがあり、技術の進歩によって本来の姿、ディンゴ的に言えば「お色直し」後くらいの威力。
そんなわけで、あの頃ADAと空を駆けたランナーには15年ぶり、「HD EDITION」の体験者であれば6年ぶりに再会するその魅力に惚れ直す。私は惚れ直した。そして「ANUBIS」の魅力を知人から語られ、しかし遊ぶ機会に恵まれず歯がゆい思いをしていたあなたにもおすすめしたい。現代機で蘇った今だからこそ、本作を遊んでその快感に震えてほしいのだ。
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