2017年10月25日 12:00
ベセスダ・ソフトワークスは10月19日、サバイバルホラー「サイコブレイク2」を発売した。三上真司氏率いるTango Gameworks開発の「サイコブレイク」の正統続編であり、STEMと呼ばれる機械が作り出す仮想の精神世界が舞台となっている。
弊誌では発売前のインプレッションもお届けしているが、本稿では製品版を通して約20時間(ゲーム内計測。実時間約25時間)プレイしてのレビューとなる。これまでのインプレでお届けできなかった要素なども含め、ゲームの総合的なプレイレビューをお届けしていこう。
セバスチャンの固い信念が、しっかりとしたストーリーを描き出す
本作の主人公は前作の主人公でもあったセバスチャン・カステヤノス。ビーコン精神病院での事件後に刑事を辞職した彼は、人間を接続して理想の仮想世界を作り出す機械「STEM」に死んだはずの娘リリーが取り込まれたことを知らされ、自らSTEMの世界へと入り込んでいく。
「サイコブレイク2」のジャンルや演出はホラーながら、その根本にある設定はSF、しかもサイバーパンク的でもある。舞台となる「ユニオン」は、セバスチャンの娘リリーをコアに、STEMに接続された多くの人間の精神から構築された街であり、セバスチャンもまた、脳をSTEMに接続することでユニオンへと足を踏み入れるのだ。彼の肉体は現実世界にあるが、意識はユニオンにあって、そこは現実世界と変わらずに活動が可能だ。彼が死んでしまったときに現実世界で何が起きているかの描写はないが、結果は容易に想像できるだろう。
STEMに接続された人々の理想の街となるはずだったユニオンだが、コアであるリリーが行方不明となって不具合が生じ、その世界は崩壊しかかっている。住人の多くは人間としての精神や体を失った「ロスト」へと変貌し、さらに接続者の中にサイコパスの殺人鬼が紛れ込んでいたことで、彼の「作品」である恐ろしいクリーチャーなども現れる危険な世界だ。
しかしそんな場所にあえて足を踏み入れるセバスチャンの信念は固く、筆者がプレイしたゲーム後半までは、そのストーリー展開にぶれは見られなかった。前作の不条理とも言える展開もホラーゲームとしては優秀だっが、それを踏まえての一本芯の通ったストーリーを据えた続編も、方向性としては十分ありだと思った。
サイコパスの写真家ステファノが描く、恐怖の世界
この世界に飛び込んだセバスチャンが最初に目にするのは、メビウスの隊員が頭を撃ち抜かれて死んでいく様子を繰り返している異様な光景だ。周囲には不気味な写真が無数に貼られ、その先には吊られた死体や腕が無数にある女がドレスを着て宙に浮いているオブジェが配置されている。前作の見るだけで不快にさせるグロテスクな世界とは一味違う、どちらかといえば精神的な恐怖を感じさせる演出でプレーヤーを「サイコブレイク2」の世界へと引き込んでいく。
これらはこのSTEMの世界に紛れ込んだサイコパスの写真家ステファノ・ヴァレンティーニの「作品」であり、彼の歪んだ美意識が作り出した産物なのだ。彼の「作品」は、崩壊していく街ユニオンにも浸食し、その後の世界にも少しずつ影響を与えていく。セバスチャンに襲いかかるクリーチャー「ガーディアン」や「オブスキュラ」も彼の手よるものであり、やがて世界自体が彼の作品へと変貌していく様子は、本作の見どころの1つといっていいかもしれない。
じっくり探索をするか、ストーリーを優先して進めるかは、プレーヤーの自由
筆者は先のインプレにて、複数のミッションが存在するチャプター3までプレイしているのだが、そのときは時間の関係で全てのミッションには挑めなかった。この手のゲームの初回プレイは、隅々まで探索してから次に進みたいという筆者の性格ゆえ、若干心残りのあるインプレとなったわけだが、今回のレビューではこのチャプターを「全てのミッションの遂行」、「発見できた敵は全て倒す」、「可能な限りのアイテム回収」といった目標のもとにじっくり進めることができた。
本作の売りの1つである、広いマップで複数のミッションを進めていくゲームシステムをこのチャプター3(マップでは「住宅街」)から体験できるわけだが、比較的早いチャプターにも関わらずかなりボリュームがあり、前述の目標をあらかた終わらせるまでに4時間(ゲーム中計測)近くも費やしてしまった。
もちろんこれは、マップを自在に歩き回れるぐらいまで探索をした結果であり、インプレ時のように任意のタイミングでストーリーに関連するミッションに挑んで先に進むという選択肢もあるので、プレイスタイルに合わせた楽しみ方もできるだろう。なおこのユニオン各地のマップは、「脊髄」と呼ばれる通路と繋がっていて、ここを通ればいつでも行き来が可能となっている。
こうしたマップの探索に重宝するのが、「拠点」の存在である。セーブやセバスチャンの強化などが行える場所で、各マップの要所に配置されていることも、今回のプレイで判明した。一定時間ごとという制限はあるものの、ライフを全回復できるのも大きなポイントで、探索の合間に立ち寄ることで、手持ちの回復薬を大幅に節約することができるはずだ。何より、ここを使ったときに描かれるセバスチャンのコーヒーブレイクほど、本作の中で安らぐシーンはないだろう。
チャプター3のような探索可能なマップはこの後いくつか登場するが、実はここほどボリュームがあるわけではない。中盤からのストーリーの盛り上がりに対してじっくり探索するような広いマップが出てくるのは、演出としては逆効果であり、その分シチュエーションを増やすことで、以降はホラーゲームとしての盛り上がりを煽っている。本作らしい不快かつ不条理なシチュエーションに巻き込まれていくセバスチャンの様子は、物語後半で体験できるはずだ。
迫り来る無数のクリーチャーをどう対処していくか!?
舞台となるユニオンには、前述のロストをはじめとする、数多くのクリーチャー達がうごめいている。長身でセバスチャンを発見すると不快な声を上げ、周囲のロストに知らせる「ラメント」、ドレス姿の女で耐久力が高い「ヒステリック」、頭部が複数あり犬のように這って歩く「スポーン」、気付かれると接近して大爆発する「グラットン」、全身が炎に包まれスニークキルが困難な「ディサイプル」など、その特徴や攻撃方法も様々だ。中にはライフがいくらあっても、捕まれば即殺されてまうような存在もいるので、実際に戦ってそれを確かめてみてほしい。
彼らの多くはセバスチャンの気配を感じると周囲を探し回り、見つけると襲いかかってくるという行動が基本で、画面上に表示される「気配アイコン」がその様子を表す演出は前作と同様だ。その追跡は執拗だが、今回はマップにある程度の広さがあるため、スタミナさえあれば振り切って逃げることも難しくなくなった。
また静かに移動する「屈み移動」のスピードアップや、曲がり角に面した敵を一撃で倒す「カバースニークキル」などの「スニーク」系の力を身に付けておくことで、障害物を利用した攻防も容易となるのだ。もちろん銃やウォーデンクロスボウといった武器を使いこなす攻防も有効だが、スニークを絡めて敵を倒すと弾薬を一切消費しないことがとにかく大きい。筆者の場合、後半のチャプターまでのキル数262のうち、145をスニークキルで倒していた。
そして彼らを倒すことで入手できる「グリーンジェル」は、本作でもセバスチャンのアップグレードに使用する。筆者が重点的に強化していた「スニーク」の他にも、「体力」、「身体能力」、「回復力」、「戦闘能力」の計5系統のアップグレードがあり、どれを強化していくかは自由だ。当然、敵を倒した数と入手できるグリーンジェルの量は比例するので、プレイに時間をかけたほうがゲームは有利に進められる。そのあたりもプレーヤーの選択にゆだねられている。
ホラーとしての世界観を継承しつつ、遊びやすさを重視したゲームデザインを高評価
前作と比較すると、不条理が演出する得体の知れない恐怖感や、過度なゴア表現は薄れているものの、ゲームの楽しみ方にある程度の選択肢ができたことで、ゲームとしての完成度は大きく上がっている。筆者が現在進めているところは恐らくクライマックスかと思われるのだが、全編ダレることなく、純粋に楽しみながら進めることができたのが好印象だった。
ちなみに今回はデフォルトで3段階ある難易度のうち、中間の「SURVIVAL」でゲームプレイを進めていた。本作ではその上の「NIGHTMARE」が、前作における「SURVIVAL」と同等の難易度と説明があり、ゲーム自体は全体的に易しめになったということだろう(それでも統計で見ると、50回近く死亡しているのだが)。前作のヒリヒリとした隙の少ない難易度も個人的に嫌いではなかったが、世界観を上手く引き継ぎつつ、対象プレーヤーの間口を広げ、遊びやすく仕上げたゲームデザインは高く評価したい。
この後は前作同様にDLCのリリースにも期待したいところだが、それまで筆者は、ゲームクリア後に出現するという新たなモードと難易度で、もう一度ユニオンに足を踏み入れてみようと思っている。
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