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Unityは比類なきゲームエンジンを目指す! 「Unite 2015 Tokyo」基調講演レポート

ワンクリックでVR対応など新機能情報も盛りだくさん

4月13日開催

基調講演の様子

 4月13日、ゲームエンジンUnityを利用するコンテンツ開発者のための公式カンファレンス「Unite 2015 Tokyo」が東京・お台場にて開幕した。2日間にかけて開催される本イベントではUnityに関する開発情報が40コマにのぼる各種セッションで披露、共有されていく。

 その開幕にあたり実施された基調講演では、Unity Technologieの設立者のDavid Helgason氏、Oculus VR設立者のPalmer Luckey氏、Camouflage設立者のRyan Payton氏が次々に登壇し、エンジン、ハードウェア、そしてコンテンツについての最新状況を紹介。GDC 2015で公開開始されたばかりの最新版Unity 5を巡る最新のゲーム開発トレンドを幅広く共有する機会となった。

Unity 5パワーの実例「Republique: Remastered」のプロジェクトファイルが公開!

Unity 5を紹介したDavid Helgason氏
Newニンテンドー3DSに対応

 基調講演では、まずDavid Helgason氏が登壇。3月3日に公開が開始されたUnity 5の紹介から話をスタートさせた。Helgason氏はその中で、Unity 5は物理ベースレンダリングによる強力なグラフィックス機能、64bit化を果たした柔軟で強力なエディター機能、業界最高のマルチプラットフォームサポート、そして新たなクラウドサービスと連動することによるコラボレーションツールとしての側面、そのすべてがひとつになることで比類の無いゲームエンジンに仕上がったと語った。

 またHelgason氏は、Unity TechnologiesでR&Dにかつてないほどの投資を行なっていることも報告。300人規模のエンジニアチームが研究開発に従事しているだけでなく、ゲーム業界大手デベロッパーとの協業も積極的に行なうことで、Unityをさらに強力なものとしていく姿勢だ。その一例として今回発表されたのが、任天堂とのパートナーシップで実現したNewニンテンドー3DSへの対応である。

【Unity 5 - The Blacksmith デモ】
Unity 5の能力と生産性を示す技術デモ。3人のスタッフがおよそ半年で製作

グラフィックス機能、エディタ機能ともに大幅強化されたUnity 5は、その全機能が無料版でも利用できる
Unity 5の重要機能と位置づけられるWebGLへの対応
ゲームコードを限りなくネイティブコードに近以下たちに変換することで劇的なパフォーマンス向上を実現

 続いてHelgason氏はUnity 5で導入された目玉機能を順次紹介。そのほとんどはGDC 2015の発表会で明らかにされた内容(関連記事)をなぞるものなので本稿では割愛するが、その中で“特に大きなもの”とHelgason氏が位置づけたのがWebGLへの対応だ。

 すべてのブラウザが対応するWeb標準の3D APIであるWebGLなら、PCからモバイルまで幅広い実行端末を対象にUnity 5のゲームを配信できるが、その際に問題となるのはJavascriptコードで動作することによる実行速度の遅さだ。Unity 5ではこれを解決するため新たなコード変換の仕組み「IL2CPP」を導入。その詳細は昨年のUniteで紹介(関連記事)されたとおりで、C#で書かれたゲームコードを多段変換することで限りなくネイティブコードに近い形で実行するための仕組みだ。これにより、例として挙げられたiPhone 6では最大10倍のパフォーマンス向上を果たすという。

 またHelgason氏は、Unity 5のパワーを最大限に活用した最初のタイトルとして「Republique: Remastered」を紹介。「Republique」は日本のゲーム業界でキャリアをスタートさせたゲームクリエイターRyan Payton氏が設立したインディースタジオCamouflageによる作品で、2013年にモバイル向けAAAタイトルとしてiOS版が初登場してのち、2014年にはAndroid版も展開。現在までに3エピソードを公開しており、その品質の高さから大成功を収めているストーリーベースのステルスアドベンチャーゲームだ。

【Republique Remastered: Official Launch Trailer】
Unity 5完全対応タイトル1号となった「Republique」のPC版トレイラー
Camouflage設立者Ryan Payton氏。流暢な日本語で講演した
初めてのUnity 5タイトルとなった「Republique: Remastered」。Steamで買える

 登壇したPayton氏は、2月に発売された本作のPC版「Republique: Remastered」について、“Unity 5の特徴をすべて使った最初のゲームになった”と報告。開発スタートは2014年の夏頃。PC版を出すにあたり、PCゲーマーを満足させうる品質を実現するために当時テクニカルデモの段階にあったUnity 5の採用を決定したという。

 Unity Technologiesとの密なコラボレーションを通じてほぼ完全に作りなおされたPC版では、物理ベースライティングによる高品質な陰影、Refrection Probeによるリアルな映り込みといった映像上の強化点のほか、開発においてはCloud BuildやUnity Analyticsといった新しいクラウドベースの開発サービスも全面活用。昨年の夏に開発をスタートし、12月には完成したというから開発のスピード感も非常に高い。

 “近年のモバイルゲームのようにいかに課金させるかということではなく、記憶に残るような高品質なゲームを作ることが重要“と語る名作志向のRayan氏は、素晴らしくユニークなゲームを出すためにUnity 5のツールを最大限に活用して欲しいと来場者にメッセージ。そのためにはUnity 5を使いこなすことが必要だとし、応援の意味を込めてこの日、「Republique: Remastered」のプロジェクトファイルをUnity3d.comで無料公開したことを発表した。

こちらはUnity 4で作られたモバイル版
Unity 5で作られたPC版。物理ベースライティングの効果は非常に大きい
プロジェクトファイルのデモを行なうUnity Technologies Japanの大前弘樹氏
プロジェクトファイルに実際のゲームが入っている
ユニティちゃんを組み込んだ軽量版でライティング機能を実験
多機能ミキサーによる最新オーディオ機能の自演も行なわれた

VRはマネタイズのステージへ。Unity 5.1では1クリックでOculus対応が完了する!

Oculus VR設立者のPalmer Luckey氏、昨年に続いての登壇
累計で20万ユニットが出荷されたというこれまでの開発キット
大前氏はVR統合機能のデモを披露
“VR対応”のチェックを入れるだけで作業が完了

 続いて登壇したのが、昨年のUniteから引き続きの登場となったOculus VR設立者のPalmer Luckey氏だ。「日本に戻ってこれて嬉しい」と語ったLuckey氏は、2014年はVRにとって非常に素晴らしい年だったと振り返る。Oculus Riftの開発版(DK1、DK2)はこれまでに累計20万個が出荷され、公式のアプリケーションデータベースであるOculus Shareでは200万人のユニークダウンロードユーザーが集まるなど、かつてない盛り上がりとなっている現状を報告しつつ、「これまでのVRは開発者や技術マニアの道具だったが、いまや消費者向けバージョンはすぐそこまで来ている」と語った。

 それは単にハードウェアが完成することだけでなく、コンテンツクリエイターがマネタイゼーションできる“市場”が立ち上がるということだ。それはSamsung Gear VR向けの公式マーケット「Oculus VR Store」を皮切りに始まっており、そしてPC向けのものももうすぐ始まるとLuckey氏。

 消費者バージョンに向けてAPI・ドライバレベルの改良も引き続き行なわれており、GPU/CPU並列性の向上や、Late Latchingの強化などにより20ms以下のレーテンシーを実現したほか、Gear VRとOculus Riftでのライブプレビューを可能にするなど、スムーズに複数プラットフォームをターゲットとしたVRアプリケーションを作れる状況が整ってきているとも言う。

 それらの機能が実際に統合されるのが、現在βテスト中の最新版Unity 5.1だ。この版ではUnity 5の目玉機能のひとつであるVR機能のインテグレーションが実際に導入されることになっており、その実際のところをUnity Technologies Japanの大前弘樹氏が実演。上述の「The Blacksmith demo」をワンクリックでVR対応させる様子が披露された。従来のようにOculus用の特殊カメラを配置するといった特殊操作は全く必要ない。VR対応のチェックボックスをONにするだけで作業が完了という、強力すぎるソリューションとなっている。

 引き続いてLuckey氏は、VR市場が本当に立ち上がるためにはコンテンツのパワーが必要だと語る。Googleをはじめ、SCEやValve、Microsoftといった複数の大企業が消費者向けVRの実現を約束しているいま、デベロッパーは今まさにコンテンツの開発に集中しはじめる必要があるとした。

 Oculus Riftそのものについては、まだ消費者版を見せることはできないものの、“すごく近い(very soon)”とのコメントを残したLuckey氏。Unite 2015 Tokyoの会場内で最新プロトタイプのCrescent Bayのデモを用意するなど露出には積極的で、消費者向けVR市場の成立に向けて日本のVR開発者に対する期待を感じさせる基調講演となった。

「The Blacksmith demo」はVR対応を意識しないで作られた普通のアプリケーションだが、1クリックでOculus Rift対応になる

Unity Ads
講演ではマネタイズの手段についても触れられた。Unity Adsはゲームプレイ融合型の広告ソリューションで、3人の開発者が数ヶ月で作った「Crossy Road」にて3億5千万円にのぼる収益を上げる成功を収めている。国内ではサイバーエージェントと協業しており、グリーの広告システムにも対応するという

(佐藤カフジ)