ニュース

無料でフル機能が使える!最新ゲームエンジン「Unity 5」

かつてない高品質&高パフォーマンスを実現する重要フィーチャーを解説

3月2日~6日開催



会場:San Francisco Moscone Convention Center

プレスカンファレンスにて「Unity 5」の配信開始を宣言したUnity TechnologiesのCEO、John Riccitiello氏
無料版で全機能が利用できるように!

 Unity TechnologiesはGDC2015の開幕に合わせ、最新ゲームエンジン「Unity 5」の配信を開始した。速報記事でお知らせしたとおり、「Unity 5」はエンジン・エディター機能の様々な面で大きな進化を果たしているほか、新たに用意された無料版「Unity 5 Personal Edition」では以前では有料版でしかアクセスできなかった機能も含め、エンジンのフル機能にアクセスできるようになっていることも重要な特徴だ。

 本稿では3月3日に開催されたUnity Technologiesによるプレスカンファレンスの模様を交えつつ、「Unity 5」がもたらす重要な新機能をピックアップしてご紹介しよう。特に無料版の機能が大幅に強化されたことで、高品質ゲーム開発の垣根があり得ないほどに下がることになる。この点、個人開発者の皆さんには特に注目して欲しい。

【Unity 5 - Highlight Reel GDC 2015】

驚くほど強力。無料版「Personal Edition」で提供されるフル機能

グラフィックス機能の強化ぶりは目を見張るものがある
無料版でもこのレベルの映像が出せるようになった

 前バージョン以前の「Unity Free」から名称を改められた無料版「Unity 5 Personal Edition」は、「Unity 5」のエンジン機能をフルに使えるものになっており、驚くほど強力なゲーム開発ソリューションと化している。

 大きなところでは、「Unity Free」では使えなかったオクルージョン・カリング機能、各種のポストエフェクト機能などが使用できるようになり、よりリッチな映像、より大規模で高パフォーマンスなゲームを制作できるようになった。

 また「Unity Free」以前ではボリュームライティングやシャドウマッピング、アンビエントオクルージョンといったゲームの見栄えに直結する陰影付けの機能が利用できなかったが、「Personal Edition」では「Unity 5」自体の重要な強化点である物理ベースのシェーディング、リアルタイムの帯域照明技術“Enlighten”もフルで使え、有料版「Professional Edition」と同品質のグラフィックスを作り出せる。

 これにより、「Unity Free」では映像品質やパフォーマンスの観点から製品レベルのゲームを制作することが難しかったようなケースが、今回の「Personal Edition」で完全に解消される。無料版でプロトタイピングをし、形が見えてきたら有料版で製品版の製品に移るという制作シナリオを考えていた多くの開発者にとって、最後まで無料版で済ませられることが増えるということであり、初期投資の是非に悩む個人レベルの開発者にとっては特に大きな変革といえる。

【Unity 5 - The Blacksmith Demo】

 無数の進化点を持つ「Unity 5」だが、以前の「Unity Free」版に比べてゲーム開発の自由度を広げてくれる、特に大きな要素を以下にまとめてみよう。

物理ベースのマテリアルにより柔軟な質感表現が可能

・物理ベースシェーディング

 「Unity 5」で導入された物理ベースシェーディングにより、エンジン標準機能のみで非常にフォトリアルなグラフィックスを作り出せる。これに使われているシェーダーは、いわゆる“Universal Shader(万能シェーダー)”となっていて、描画される質感をマテリアル側のデータ調整だけで極めて幅広く、柔軟に調整可能だ。シェーダープログラムの知識がない多くのUnityユーザーにとって、映像表現の融通が遥かに大きく広がるということになる。

リアルな質感、反射光、透過光の表現も
リアルタイム処理なので時間経過の表現も自動的に実現

・リアルタイム大局照明技術Enlighten

 グラフィックス面で物理ベースシェーディングに加えて目玉となっているのがEnlightenだ。これは光源からの直接光の影響に加え、物体の表面で反射されて別の部分を照らす間接光の影響を、リアルタイムに描画する技術。何も考えなくてもリアルな“照り返し”の表現が可能であるうえ、光源の移動による照度の変化も自動的に処理。以前の「Unity Free」では絶対に不可能だったレベルの説得力あるライティングを容易に作り出すことができる。

大局照明機能でフェイク系テクニックを使うことなく照り返しの表現ができる。説得力のある陰影が簡単に実現

・64bitエディター

 エディターが完全64bit化されたことで、4GBを越えるメモリ領域をリニアに使えるようになった。これにより、8GBのメインメモリを持つ次世代ゲーム機やゲーミングPCの性能をフルに活用したゲームを制作できるようになる。

上の動画で紹介した「The Blacksmith」デモの編集風景。各種アセットをドラッグ&ドロップで簡単に配置していた
カンファレンスに駆けつけたOculus VRの設立者、Palmer Luckey氏

・ビルトインOculus Riftサポート

 前バージョンではPro版のみプラグイン形式で提供されていたOculus Rift対応APIが、「Unity 5」では標準機能としてエンジンに統合される。「Unity Free」では特殊な方法を取らないとOculus Riftを使えない問題がVRアプリ制作のハードルを高くしていたが、その問題が解決。「Personal Edition」で思うさまOculus Rift対応のVRアプリを開発できる。

・クラウドビルド

 「Unity Cloud Build」は、「Unity 5」に合わせてデビューした画期的なクラウドサービスである。これはAndroid/iOS/Web Player向けのプロジェクトをクラウド上のリポジトリで管理し、ビルド(ソースファイルから実行イメージを作るプロセス)をクラウド上で実行した上、登録ユーザー(開発者自身や登録されたテストユーザー)に最新版を自動的に配布するというシステムだ。「Personal Edition」でも1GBまでのリポジトリ、60分おきのビルドに対応しており、モバイルアプリの開発・テストサイクルを大きく支援してくれる。

クラウド上でプロジェクトをビルドし配信できることで、開発のイテレーションプロセスを効率化。数カ月のβテスト中に15万以上のビルドが作られたという
Unityといえばこの人、設立者のDavid Helgason氏。「Unity 5」でゲーム開発の民主化をさらに推し進めていくことを宣言した

 この「Personal Edition」が利用できるのは直前会計年度の総収益もしくは総予算が10万ドル以下(約1,200万円)の個人、もしくは小規模デベロッパー限定となる。これからゲーム開発を始めようというスタートアップ開発者にとっては、同じく無料化が発表された「Unreal Engine 4」に匹敵するノーコストの選択肢だ。

 ただし、無数の役立つアセットやコンポーネントを購入・プラグインできるAsset Storeの存在や、オンラインコミュニティで共有されている開発情報の質と量を踏まえると、今のところは「Unity 5」に分がありそうだ。ゲーム開発を志す皆さんはぜひいちど、「Unity 5 Personal Edition」を触ってみて欲しい。以前のバージョン「Unity Free」で、機能制限ゆえの不自由に苦労した向きならますます要チェックである。

【オーディオ機能も進化】
新たにマルチトラックのオーディオツールを搭載し、シーン内の属性と連動させることで音の遮蔽や回り込みによる音質・音量の変化を再現できる。VRコンテンツでも非常に重要な意味をもつ機能になるだろう

(佐藤カフジ)