日本マイクロソフト、「秋葉原PCゲームフェスタ」で最新ブラウザ“IE9”を紹介
ブラウザゲームを視野に入れ大胆に高速化! デベロッパーによる開発事例も


5月5日開催

会場:ベルサール秋葉原



 4月29日から5月5日まで開催されている株式会社サードウェーブによるPCゲームの祭典「第3回 秋葉原PCゲームフェスタ Powered by Galleria」の最終日は、1Fイベントステージにて日本マイクロソフト株式会社が最新のWEBブラウザ「Internet Explorer 9(IE9)」をテーマとしたステージイベントが行なわれた。

 近年のPCゲームシーンではブラウザゲームの存在感が著しく増しており、最新のWEB標準規格であるHTML5を快適に動かすことなど、リッチなブラウザゲームを動かすためのブラウザ環境の発展にも期待がかかっている。マイクロソフトが満を持してリリースしたIE9は様々な点で、ブラウザゲームに適したプラットフォームになっているようだ。


5月5日は、日本マイクロソフトによる複数の講演が行なわれた


■ 大胆な進化でブラウザゲームの標準プラットフォームを目指すIE9

IE9のメリットを紹介する日本マクロソフト溝口宗太郎氏
JavaScriptが大幅に速度向上
効率化が消費電力の低下という利点も産み出す

 日本マイクロソフトによるステージイベントは、「最新ブラウザー Internet Explorer 9 と HTML5で実現するブラウザゲーム」、「GPUを使ったIE9ゲーム開発」そして、「Microsoft Fable III」と3つのパートで進行した。最初の講演でIE9の特徴について紹介したのは日本マイクロソフトの溝口宗太郎氏。

 溝口氏はさっそく、海外では3月14日、国内では4月26日に正式版がリリースされたばかりのIE9について解説。リリースから間もないながらも既に4,000万以上ダウンロードされており、既にブラウザシェアは10%となっていることなど、記録的なペースで普及が進んでいるという。

 溝口氏はそのIE9の特徴を「高速」、「洗練」、「信頼」、「相互運用性」の4つのキーワードに分けて紹介した。中でもゲームユーザーにとって重要なポイントは高速性だ。IE9では、コードネーム「Chakra」と呼ばれる新しいJavaScriptエンジンを搭載しており、そのパフォーマンスは前身のIE8に対して18倍も向上、ChromeやOperaといったライバルブラウザに匹敵する速度を実現している。

 またゲームに必要な映像表現に対してHTML5を大胆に使えるようになったという違いもある。IE9ではHTML5要素の描画にDirectX API使うことで、GPUアクセラレーションが効くようになった。これにより描画速度・効率が向上するほか、PCのマシン構成によってはCPU処理を優先させるなど動的で柔軟性のある仕組みを導入している。

 これで意外なところにメリットが出てきたというのが、消費電力の改善だ。IE9では、他の最新ブラウザと同じコンテンツを表示した際に最も消費電力が小さくなるブラウザとなったと溝口氏。これはブラウザゲームではごく一般的な環境であるWindows7搭載のノートPCなどで、より長くゲームを遊べるということだ。

 溝口氏はここで、ブラウザゲームに期待する思いを語った。ブラウザゲームは従来のパッケージゲームとは違い、インストールの必要がなく、環境を選ばず動作し、ソーシャルネットワークと連動するタイプであればアカウント作成など面倒な一手間も必要とせずに遊ぶことができる。いずれ、多くのゲームがブラウザ化していくのではないか。

 少し前までリッチインターネットアプリケーションのプラットフォームとしてAdobe Flashに対抗するSilverlightを推し進めてきたマイクロソフト。今回、IE9では最高のHTML5プラットフォームを目指したということで、大きな方針転換を図ったと言える。Windows 7というOSを開発しているOS企業の強みを生かした、Direct X APIとの強固なインテグレートは大きなアドバンテージ。ブラウザ上で動作するリッチコンテンツやゲームの可能性を広げていきそうだ。

4Gamer.net謹製のブラウザゲームベンチマークアプリを使ってIE9のパフォーマンスをアピール。高速なChromeに比べても4割増し程度のフレームレートが確保されていた

最後に、HTML5で実現された各種ブラウザゲームやアプリケーションが紹介された。いずれも従来のブラウザゲームとは異なり、リアルタイムに動作するもの。Adobe FLASHなどのプラグインを必要とせず、WEB標準だけでブラウザならでは、オンラインならではのリアルタイムゲームが実現できる


■ ブラウザでリッチな3Dゲームがガンガン遊べる未来がすぐそこに?

日本マイクロソフトの鵜木健永氏
ゲスト出演のZENIER NETWORKS佐野浩章氏は開発者の視点でIE9を紹介
半透明テクスチャを大量に加算合成した画面のデモ。IE9のフレームレートが高い

 続く「GPUを使ったIE9ゲーム開発」と題した講演で登場したのは日本マイクロソフトの鵜木健永氏。鵜木氏は「マイクロソフトのテクノロジーをご紹介します」として、長年の蓄積で培った強固なセキュリティや、IE9で実現したブラウザゲーム性能について簡単に紹介。

 その中で、最近マイクロソフトがじわじわと推し進めている「Xbox 360 Kinect」のWindows 7での展開にもチラリと触れられていたのがおもしろい。ユーザーによる独自解析・Windowsアプリ開発を非公式ながら公然と推奨しているマイクロソフトでは、Microsoft ResearchのサイトでKinect用SDKを準備中とのことだ。

 本講演のメインは、その鵜木氏に紹介されて登壇したブラウザゲーム開発者の佐野浩章氏。ZENIER NETWORKSというデベロッパーを代表する佐野氏は、これまで「プロ野球チームをつくろう ONLINE 2」や「J LEAGUE プロサッカークラブをつくろう! ONLINE」など様々なブラウザゲームを開発してきた。

 その佐野氏がいうには、現在のブラウザゲームに対する不満は「2Dの簡単な画面が多い」、「アクションが足りない」、「自動進行が多い」の3点。技術的な限界からあまりインタラクティブなコンテンツを提供できない現状には開発者側としても不満があるということのようで、これらを解決するHTML5に大いに期待しているようだ。

 そこで佐野氏が注目しているのが、IE9による、GPUを活用したゲーム開発。IE9ではブラウザ標準でHTML5とCSS3からGPU機能を使うことがでる。Active X、Web GL、FLASHといったプラグインも用いることができるが、HTML5のみでもかなり幅広い表現が可能であるようだ。

 続いて紹介されたデモでは、Adobe Flashが苦手としている半透明テクスチャの加算合成による画面演出のパフォーマンスが比較された。GPUに対応したIE9では60fpsが確保されているところ、ChromeやFirefoxでは20fps程度と大きな差が出ている。

 またHTML5を使ってゲームを作ることはそう難しくないといわんばかりに、ほぼ1日で作ったという3Dゲームのデモを披露。これはセガ「スペースハリアー」的な奥行き方向へのスクロールを擬似3Dで表現したものだが、IE9上でスイスイ動作していた。特に佐野市は、GPUの活用だけでなく「IE9のJavaScripstは本当によくなった」とスクリプトエンジンを高評価。このあたり開発者ならではの感想といえそう。

 その他にも、各パーツを自由に動かしてアニメーションさせることができる2Dアバター機能など、HTML5で実現できる各種の表現を紹介した佐野氏。高速で幅広い表現が可能な最新ブラウザは「より快適なインターネット生活を実現します!」とIE9をイチオシしていた。

3Dゲームやリッチなアバター機能など、HTML5が普及することでブラウザゲームが表現できることの幅が大きく広がっていく



【Microsoft Fable III】
日本マイクロソフトによる3つ目のセッションでは、5月20日に発売予定の「Fable III」Windows版が紹介された。この講演では日本マイクロソフトの角田麗氏とNVIDIAのスティーブン・ザン氏が登壇。ゲーム内容は既にリリースされているXbox 360版と同様だが、Windows版ならではの要素として「NVIDIA 3D Vision」による3D立体視への対応がアピールポイントとなっている。「三人称視点、主観視点、そして神の視点と、いろいろな視点で遊べるのがいい」とザン氏。最後にじゃんけん大会が行なわれ、勝利者に「NVIDIA 3D Vision」がプレゼントされていた




(2011年 5月 5日)

[Reported by 佐藤カフジ]