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カプコン、「ウルトラストリートファイターIV」発売記念
杉山プロデューサー&綾野ディレクターにスペシャルインタビュー!
新キャラから新システムまでとことん語る
「GAME Watch」専用の称号コードもプレゼント
(2014/8/7 00:00)
- 8月7日 発売
- 価格:
- ディスク版 3,990円(税別)
- コレクターズパッケージ 4,990円(PS3のみ・税別)
- ダウンロードフル版 3,694円(PS3のみ・税別)
- アップグレード版 1,389円(税別)
- CEROレーティング:B(12歳以上対象)
カプコンは、プレイステーション 3/Xbox 360用対戦格闘「ウルトラストリートファイターIV」を8月7日に発売した。価格はディスク版が3,990円(税別)、コレクターズパッケージ版が4,990円(PS3のみ・税別)、ダウンロードフル版が3,694円(PS3のみ・税別)、アップグレード版が1,389円(税別)。CEROレーティングはB(12歳以上対象)。今回は、発売を記念して杉山晃一プロデューサーと綾野智章ディレクターによるスペシャルインタビューをお届けする。
実は、「GAME Watch」専用の称号コードをカプコンさんに提供いただきました! ズバリ、「最期まで立ち続ける漢」。倒れなきゃ負けじゃねーんだよ! ってことで!!。ぜひダウンロードして楽しんでいただきたい!!
ユーザーの要望をふまえた全面刷新
――まずは、「ウルトラストリートファイターIV」で両氏が実現したかったことをおうかがいしたいと思います。
綾野氏:「スーパーストリートファイターIV Ver.2012」から2年経ちました。2011年から2012年にアップデートした際に実現できなかった大きなことや、ユーザーさんの要望をできるだけ入れ込みたかったんですよ。今回実現したかったことは、まさに「ユーザーさんからの要望に、いかに応えるか」そのものなんです。
――要望は色々あって難しかったと思うのですが、それをどう反映させていったんでしょうか?
綾野氏:まずは「キャラクターを増やして欲しい」というのがありました。それは「わかりました」と。完全新規キャラクターとして「ディカープリ」を追加させていただき計5人、全44キャラクターでどうでしょう? と。あとはバトルバランスのアップーデート。それだけだと2011年から2012年のアップデート時とあまりかわらないので、バトルバランスの大きなリセットというか“刷新”を考えたとき「新しいバトルシステムを入れないといけないだろう」というところで、新しいバトルシステムを代表的なところで3つ入れています。
コンシューマ版ならではでいうと、トレーニングモードとオンライン対戦の充実。トレーニングモードはユーザーさん同士でオンライントレーニングができるようになりました。あとは「ヴァンパイア リザレクション」、「ストリートファイター×鉄拳」、「マーヴルvsカプコン」などカプコンの過去作品にあった“いいトレーニング要素”を全部トレーニングモードに入れました。「同じカプコンなのに、なんであのゲームの“いいトレーニング要素”がないの?」というのが「ウルトラストリートファイターIV」のトレーニングモードでは一切ないものに仕上がっています。みなさんの声をもとに、集大成として出せるかということに着目して作りました。
――先ほどバトルバランスの刷新とありましたが、その際に気をつけたことはありますか?
杉山氏:「2012」バージョンがいい評価をいただいていたんですけど「新キャラクターを増やして新システムを入れる必要がある」と思ったとき、まず「キャラクター間のバランスをひらたくしよう」というコンセプトが最初にあったんです。ただ、バトルシステム導入の恩恵を受けるキャラがいたりいなかったりというのがあるので、2012バージョンからバランスもキャラクターも戦術も変わるということに対して、どう調整していくかが気をつけたポイントというか、我々にとっての大きなチャレンジでした。
――そうした調整は諸刃の剣、的なところはありますよね。
綾野氏:そうですね。それでもやっぱり「バトルバランスを刷新したい!」というのがありました。「スーパーストリートファイターIV Ver.2012」はそれで一区切りおき、「ウルトラストリートファイターIV」は新しいバトルシステムとバランスを皆で作り上げて欲しかった。「レッドセービングアタック」、「ディレイスタンディング」、「ウルトラコンボダブル」は、この機会だからこそできるチャレンジですよね。
――これまでを引きずるのではなく、「ウルトラストリートファイターIV」でイチから皆頑張って欲しいということですね。
綾野氏:アーケードの話になりますが、当初「BP(バトルポイント)」を引き継ぐほうがよかろうと思ったんですね。というのも、「ストリートファイターIV」から「スーパーストリートファイターIV」に移行する際「引き継いだほうがよかった」というユーザーさんの意見があったんです。その際にはBPをリセットしたんですけど、今回は引き継ごうかなと思っていた。ところが、ロケテストのアンケートを見ると「キャラクターランクも大きく変わるし、BPをリセットして欲しい」という意見が7~8割。「ああ、そうなのか」と思い方針を変えてリセット。同様にコンシューマ版もゼロからスタートという流れです。
――そのほうがいい気もしますよね。
綾野氏:う~ん、まぁどっちもどっちだと思うんですよ。今までキャラクターを育て研究してきて、特にゲームセンターだったらそのBPが100円と連動しているわけで。「リセットされちゃうのかよ!」という意見が多いと思ったんですけど、意外と「リセットしたほうがいい」というユーザーさんが多かった。どっちかをとらないといけない、難しい選択肢のひとつなんですけど……「多くの方が望まれているようなので、リセットさせください」ということで、しました。
新システム「ウルトラコンボダブル」、「レッドセービングアタック」、「ディレイスタンディング」
――新システムの導入理由についておうかがいします。
綾野氏:「ウルトラコンボダブル」は、当初、ウルコンIIIかなと思っていたんです。でも「IとIIの使い道がない」とか「このキャラはIだろう」、「いやIIだろう」というのがあって、そこにIIIを追加しても「じゃぁこのキャラはIIIですね」となるだけかな? と思ったんですね。
ユーザーさんが求めているのはそうじゃなくて、IとIIの使い道もそうですけど、IとIIを同時に使いたいという要望も同時にあった。であれば、IとIIの使い道を活かしつつ、どちらも使える「ウルトラコンボダブル」をセレクトのなかに入れて、新しい戦術を深めていって欲しいというのがありました。
杉山氏:最初のウルトラコンボは“一撃必殺”みたいなイメージで導入されていたんですけど、2012バージョンに至り「ただのコンボパーツ」のようなイメージもあったかな?って。そこで、ウルトラコンボの使い勝手を、戦術に盛り込めるような駆け引き要素として使って欲しいというのが発端です。
これも恩恵を受ける受けないというのがあるんですけど、たとえば投げキャラであれば「空中、地上、どちらも対応できちゃうよ!」というプレッシャーが既に牽制になっているとか、人によってはダメージを求めてIかIIどちらか、とか。同じ投げキャラ使いでも、その人の性格やスタンスにより選択が変わるのも面白いな、というところでウルトラコンボダブルになった経緯があります。
――実際のユーザーさんの使われ方としてはいかがですか?
綾野氏:ぼくらの想定どおりというか、プレーヤーによってウルトラコンボダブルを選ぶ人もいれば、攻撃力が欲しいのでIかIIという方もおられます。ウルトラコンボセレクトの幅を広げるという意味では、我々の意図どおり動いてよかったなと思います。
――よしあしは別として、想定外だったことはありますか?
綾野氏:ウルトラコンボダブルはハマってますね。ちゃんとユーザーさんが使ってくださっている。
杉山氏:いい感じだと思います。
――「レッドセービングアタック」はいかがでしょう?
杉山氏:「レッドセービングアタック」は、元々“噂”なんだよね? 多段セービング(笑)。
綾野氏:2009年あたりにさかのぼりますけど、「アーケードエディション」のロケテスト時に……本当は実装されてないんですけど「多段セービングみたいなものがある!」、「あった!」、「俺も見た!」という都市伝説が流れて「うわ、めちゃ熱いじゃん!」とか皆いってたんですよ。本当はないのに(笑)。
それを「ウルトラストリートファイターIV」開発中にふと思い出して「あれだけ都市伝説的にワッとユーザーさんが盛り上がったんだったら、これ入れてもいいかな?」と。ユーザーさんも、実は求めていたんじゃないかと「多段技をセービングできる機能」を入れてみました……が、これが難しい調整の連発。「コストをどうする?」とか。開発前に陥ったのは、レッドセービングゲー化。あのときはコストが1で……。
杉山氏:あのときは(技を)発動しないとゲージが減らなかったんじゃないかな? 振り得みたいな感じ。
綾野氏:色々なバージョンがあったんですけど、とにかく当てたら“絶対に膝崩れ落ち(ダウン)”になる。「とりあえず、すべての必殺技をやめて(ゲージ用途を)レッドセービングにふっとけ!」みたいな感じになったんですよ。で、ウルトラコンボ(のゲージ)がたまっていたらダメージでかいし、っていう。「これはいかんな」ということで、試行錯誤。ロケテストを繰り返し、コストやコマンドを決めて……レッドセービングは、なかなか難産でした。
ただ、レッドセービングアタックの「多段技をセービングできます」というのは、セービングの性質上“コア”ではなく、EX化したときにどうなるか? というのが醍醐味だと思うんですよ。3ゲージ必要ですが、EXレッドセービングは膝崩れを強制的に引き起こすことができる。EXゲージが3だったときの新しい選択肢を提示できた。これもロケテストのおかげですね。ユーザーのみなさんに考えて作ってもらったものです。
杉山氏:セービング自体、防御よりも攻撃的に使うほうが効果的というか。最大コンボを狙うときは必須ですし。EXレッドセービングアタックも、最初は「リベンジゲージを使おうか」など色々な話があったんですけど「それだとウルトラコンボダブルとバッティングしちゃう」など、ロケテストを経て結局は3ゲージを使うことに落ち着いたんです。大会などで最大コンボで使われるようになったのを見て「皆で作り上げて研究した成果が発揮されているな」と、ちょっとうれしく思いました。
綾野氏:ちょっと想定外だなと思ったところは若干あります。EXレッドセービングアタックを生(単発で出す)で使う場面って、あんまりないんだな? というのは、ちょっとありました。
杉山氏:受けるためには、あまり使わないかも。
綾野氏:あと、ボタンを4つ同時押ししながらバックダッシュする“セビグラ”というテクニックがあるんですけど、レッドセービングアタックを発表したとき、その重要性に一躍着目されたんですね。プロゲーマーとか上手い人たちは、EXコンボゲージをふたつ消費してでも“最大の防御”として持っておきたい! というくらいセビグラが脚光を浴びたのは、物凄く意外でしたね。ピカッと光ってバックダッシュするから、セビグラを使ったな!っていうのはすぐわかるんですよ。ボクの知らないところで皆セビグラを一杯仕込んでいたんだなって(笑)。
――戦いの流れは……。
綾野氏:いや、変わりはしないんですけど、防御としてレッドセービングを使った“セビグラとしての目印になった”というのは、非常にわかりやすく、ちょっとした発見だなと思いました。“仕込みゲー”とは呼ばれていますが「仕込みました」という答えあわせにもなっている。
――難しいところもあると思いますが、仕込みに集中されすぎても、というのもありませんか?
綾野氏:2012バージョンまでは、セビグラし放題だったんですね。防御面では、攻撃をくらわない、グラップもできない、ガードもされちゃう、バックステップで逃げちゃう、という状況が頻発していましたが、今回はレッドセービングアタックがあることで、そこまで頻発はできなくなった。ゲージ2つを消費してでも防御するか、EX必殺技で抜けるのかなど、ユーザーさんは色々考えて“攻撃的な選択”ができるようになったんじゃないかなと思っています。どうしても逃げたいときは2ゲージ消費、でもゲージ満タンで2回しか使えないリスクがありますよ、という。
――「ディレイスタンディング」はいかがでしょう?
綾野氏:クイックスタンディングというのもあるんですけど、いずれもダウンから起き上がるタイミングをずらす。一見地味ですが、実は1番インパクトが大きいだろうと開発側は思っていましたし、実際そうなりました。
杉山氏:スクリーンショットで見栄えはしないよね。寝てるだけだもん(一同笑)。
綾野氏:PVでも何がなんだか。「11フレーム遅れるぞ!」って、並べてみないとわからない(笑)。
――起き上がるタイミングの変化は、本当に重要ですよね。
綾野氏:これまでガードが非常に困難な連携や連続技があるんですけど、それをクイックやディレイを織り交ぜることで、ほぼそうした状況がなくなったと思います。ただ、起き攻め(相手の起き上がりを攻める)キャラがしんどいかな? と。特に「いぶき」はしんどいかなと思ったんですけど、意外に……ディレイスタンディング時は“テクニカル”表示が出るんですが、出てから攻撃の選択肢を取ることができるみたいなんです。ボクはできないんですけど(笑)。
杉山氏:苦無の仕込みから押すタイミングまで、テクニカルを見てちゃんと反応している。上手い人たちはそれができています。フォルテがちょっとしんどそうな感じ? 苦無みたいに時間差でキー入力ができない。起き攻めメインだった人たちは1点読みになっちゃうので、最初は凄く批判があったんです。
――起き攻めで勝っていた人も大勢いたでしょうからね。これからどうすればいいんだ!って。
杉山氏:今まで手に覚えさせたものが使えない。それでも詐欺飛び(迎撃されにくい起き上がり攻撃テクニック)できちゃう人はしますし、当たった技でディレイスタンディングの是非もわかってくると、ユーザーさん自身で調整できてくる。そのあたりは想像の上をいっているな、という感じです。
――ディレイスタンディングに対応できるキャラクターは、いまのところ「いぶき」だけでしょうか?
杉山氏:唯一でもないかな?
綾野氏:いぶきが確立されてきているんじゃないかな、というのはあります。フォルテはたぶん愛で乗り越えて……(笑)。ぼくはフォルテ、嫌いじゃないですからね。大好きです!(笑)。ちゃんとアーケードでフォルテカードも作ってますからね!。
――お使いになられる立場として、いかがですか?
綾野氏:フォルテ自体が難しいので……なかなか。もうちょっと頑張って使わなきゃいけないなぁとは思っているんですが。大パンループも全然できない。めっちゃ難しくなって「緩和すればいいじゃん」とは思ったんですが(笑)。
杉山氏:ディレイスタンディングは今「11フレーム」ですが「もうちょっと長くしたほうが面白いんじゃないか?」というユーザーさんの意見があがってきています。結構研究が進んでいるみたいですね。
――変更の余地がある?
杉山氏:先日「Evolution(北米最大級の対戦格闘ゲーム大会)」が終わったところですし、もうちょっと様子を見てみようかな? という感じです。
綾野氏:コンシューマー版の国内発売は今日ですし、これからが始まり。「スーパーストリートファイターIV」と同じくらい時間が経てば、同じくらいの“神ゲー”と呼ばれるものになってくるんじゃないかと思っています。