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ミニコンサートも実施された「新生FFXIV」祖堅正慶氏のサウンドステージ

ボツになった「リヴァイアサン討滅戦」女性ボーカル版BGMは次回サントラに収録決定

【ニコニコ超会議3】

4月26日、27日開催予定

会場:幕張メッセ

入場料:一般入場券1,500円(前売)、2,000円(当日)

 ニコニコ超会議3において終日に渡って「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」ステージイベント「聞いて、感じて、参加して FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア 超F.A.T.E. IN TOKYO」(タイトル長過ぎ)を繰り広げたスクウェア・エニックスブース。初日のトリを飾ったのは、「新生FFXIV」サウンドディレクターの祖堅正慶氏のステージイベント「サウンドディレクターがBGMを分解してみた」だった。昨年に続いての登場となった祖堅氏は、持ち前のサービス精神とニーソックス好き(?)を発揮して来場者を大いに愉しませてくれた。さっそく紹介したい。

「新生FFXIV」サウンドディレクターの祖堅正慶氏(右)と、コミュニティチームの望月一善氏。この2人が絡むと毎回ろくな展開にはならない(褒め言葉)
非常に真面目なスライドだが、祖堅氏の手はララフェル(♀)のニーソックスに
うっかり見えてしまった祖堅氏のデスクトップはバレンタイン仕様のミコッテ(♀)
望月氏の大事な解説を無視してミコッテ(♀)をローアングルから見つめる祖堅氏
祖堅氏の制作環境

 イベントの司会進行役を務めたのは、“もっちー”ことコミュニティチームの望月一善氏。このふたりのイベントは、毎回ぐだぐだ気味のコントになる。今回も、望月氏の無茶ぶりに対して、祖堅氏がどんどん答えるという形で進められ、プレゼン資料にはニーソックス姿の女性キャラが描かれ、その都度、祖堅氏が指を指し、望月氏がそれに突っ込みを入れるというお約束を積み重ねながら進められていった。

 ステージイベントで進められた内容そのものは、「新生FFXIV」のサウンドの作り方を、音ひとつひとつの作り方から丁寧に解説していくというもので、非常に興味深かった。メインの素材として使われたのは、「パッチ2.2」で実装されたリヴァイアサン討滅戦で使われているリヴァイアサンのBGMだ。実装されたばかりということで、先日発売となったサウンドトラックにもまだ収録されておらず、祖堅氏がこの曲について語るのも今回が初めてだ。

 リヴァイアサンのBGMは、前半と後半で曲調が異なり、前半は太鼓を主旋律としたものに決まったものの、後半はどういう曲にするか決まらず難航していたところ、あるとき「FFXIV」宣伝担当の“アニー先輩”とタバコ部屋で雑談してる際に肩を叩かれたときに、“全部の音が鳴った(閃いた)”という。祖堅氏によれば、半分ぐらいはそうして“降りてきた”結果生まれた曲だという。

 BGM前半については主旋律として使われている和太鼓での音の作り方が解説された。望月氏がこの太鼓は実際に祖堅さんが鳴らしてるのかと質問すると、「なわけないだろ。時代は進化してて、太鼓の音をぶち込んで鳴らしてる」とノリ突っ込みで返し、さっそく自らのPCを立ち上げて、実際の制作環境を見せながら実際にどのように和太鼓による音作りが行なわれているかが解説された。

 リヴァイアサンBGMの曲調は祖堅氏が言うところの“和風ロック”となっているが、和風のキー音源となった和太鼓を採用した理由は、意外にも1980年代に活躍した路上パフォーマンス集団「一世風靡」、そして水の中からリヴァイアサンが出たときに「これはドラゴンだ」と感じ、そこから「ドラゴンボール」へと想像が膨らみ、それらからインスパイアされていったようだ。

 では残る“ロック”はどこから来たのかというと、これまた意外にもイベント統括/メインシナリオライターの前廣和豊氏の指示書だったことが明らかにされた。望月氏はその指示書の原本を会場で持ってきて、指示が書かれているページを披露した。

 指示書には、曲のイメージが具体的に記述されており、前半は軍隊をイメージ、勇ましい作戦の展開を物語る。オケベース。映画「トブルク戦線」のテーマ曲などとあり、後半はリヴァイアサンをイメージ、タイタンと同様にバトルフィールドの周囲からの「落下死」があるため、気持ちをソワソワさせる感じに、ギターベース、長めのリフから入る、メタリカ「Master of Puppets」などと、コンテンツのギミックも含めて具体的な指示が入っている。

 祖堅氏はこの指示書通りに曲を手がけたもののどうしても合わず、先述した和太鼓を取り入れることによってようやく曲が完成したという。

【前廣和豊氏の指示書】

 続いて紹介されたリヴァイアサン討滅戦後半は、ドラムあり、ギターあり、そして声楽ありの蛮神戦のクライマックスにふさわしい非常にリッチな曲だ。ふたりは曲をそれぞれのパートに分解し、1つずつ実際に鳴らしながら確認していった。

 祖堅氏は望月氏に対して「鳴らすだけ」と豪語したドラムは、実際にはドラムの周囲に配置された数十ものマイクの位置や高さを細かく調整しながら音作りを行なっているプロセスが披露され、望月氏がぜんぜん言ってることと違うと突っ込むと、祖堅氏は「意外とやっているな(笑)。サウンドは地味、でもペチペチやって自分の音に近づけるのは楽しい」と感想を述べた。

 ギターパートは会場に持ち込んだ自らのギターで生演奏を披露。リヴァイアサンのギターパートを鳴らしたかと思えば、次はタイタンの曲を弾くなど相変わらずサービス精神旺盛だった。

【祖堅氏の実演】

【サウンドチームのスタジオ】
一番右の写真は声優さんの控え室だというが、祖堅氏は仮眠室としても使っているという

膨大なデータ群から、望月氏の要望に応えた

 ちなみにリヴァイアサン後半のBGMは、タイタン戦と同じように男性ボーカルが挿入されるが、制作秘話がこれでもかとばかりに公開された。

 まず、最初に完成した段階では、ボーカルは実は“女性”だったという。しかし、BGM完成後、吉田Pと前廣氏に披露したところ「格好いいけど何か違う」と〆切の3日前に言われ、その女性ボーカルに曲のキーなどを合わせていたにも関わらず全部やり直しになり、〆切に間に合わせるためにやむなく祖堅氏自身が声をあてたという。これについては祖堅氏は「俺はジャイアンじゃない」と憤懣やるかたない様子で語り、不満をあらわにした。

 ここで望月氏は当然のように、祖堅氏のボイスの生音の再生を要求。祖堅氏がデータを探し出し再生すると、リヴァイアサンという言葉を連呼している祖堅氏の声が再生され、会場は笑いに包まれた。祖堅氏も「あまりのへぼさにがっくりきた」と語り、その一方で、仕掛けた望月氏は、祖堅氏の歌の下手さを指摘するのを忘れ「調整で何とかなるもんなんですね」と驚きをあらわにし、これを受けて祖堅氏は「科学の力ですよ。ソフトウェアがそこまで進化したからね」と真面目に答えていたのがおもしろかった。

 望月氏はさらに悪ノリし、「このままの勢いで、もとの女性ボーカルバージョンも聞かせてくれませんか?」と提案。祖堅氏は「いいの?」と言いつつ、来場者から再生を期待して大きな拍手がわき上がると「そうだね、これ誰も聞いたことないもんね」とまんざらでもない様子でデータを漁り始めた。

 データを漁りながら祖堅氏は、リヴァイアサンはなんと31回もリテイクを繰り返したことを明かし、その結果、保存しているデータが膨大な量に上っているようだ。しばらく探した後、ついにボツになった女性ボーカルバージョンが初公開された。

 披露された女性ボーカル曲は、“リヴァイアサン”がバックコーラス的に連呼されるボイスが女性になっているのかと思いきや、まったくそうではなく、さびも含め主旋律をほとんど丸ごと女性が歌っているという高音の伸びが印象的な純粋な声楽曲になっていた。望月さんは開始数秒で「これいい、いいじゃないですか、あとでデータくださいよ(笑)」と絶賛。確かに曲そのものは良いが、曲調がひたすら明るいし、リヴァイアサンや、蛮神との死闘というイメージとはずいぶんかけ離れているように感じられた。これを吉田氏らがダメ出しをしたのは分かる気がする。

 祖堅氏は曲を途中で止めてから、「コメントで『こっちはちゃんと収録したな』って止めてよ、さみしくなるよ(笑)」と照れ気味で語りながら、「これ良いでしょう? 音楽単体で聞いたら、やっぱり女性ボーカルの方がいいの。だってそれはキーも合わせてるしさ、完成度高いのよ」と未練たっぷりに語ると、望月氏が「わかった。……売ろう(笑)」と語ると、会場がドッと沸いた。祖堅氏は「それは姑息だろう」と照れながらも、思い付いたように「わかったこうしよう。もしも、次のサントラが出ることがあったら、入れとこうか、それでいい?」と問いかけると、来場者は大きな拍手で答えた。今回聞き逃してしまった方はサントラに請うご期待である。

【祖堅氏のミニコンサート】
フィナーレはニコ生恒例(?)の罠アンケートを経てミニコンサートへ。祖堅氏は「アートマが出ますように」と時事ネタを絡めつつ、ウルダハとF.A.T.E.の2曲を弾いた

【登壇者勢揃い】
登壇者勢揃いのはずが、“ひろし?”の愛称で人気急上昇中のアシスタントディレクター髙井浩氏も登壇し、明日の登壇を告知。Wひろしの実現に喜んだ皆川裕史氏は本日でお役御免となるようだ。明日はひろゆき氏との対談も予定されており、新発表が期待されるところだ

(中村聖司)