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【特別企画】深淵を覗き込め! カードゲーム「クトゥルフの呼び声フラックス」
実際にゲームをプレイ。立ち上る「クトゥルフ」ならではの匂い
(2014/1/21 00:00)
実際にゲームをプレイ。立ち上る「クトゥルフ」ならではの匂い
今回はホビージャパンの北島氏と佐藤氏の3人で数回プレイしてみた。筆者は「フラックス」自体も未体験だったので、最初はまず「フラックス」から覚えることになったが、ゲーム中にルールがどんどん変わっていくという「フラックス」が持つゲーム性に驚かされた。
スタート時は手札は3枚、山札から1枚ドローして、1枚カードを使うというルールでの開始なのだが、佐藤氏がルールカードを場に出し、いきなり「2枚ドロー、2枚プレイ」にして、続く北島氏が「手札は1枚だけ」に設定した。自分の番が回ってくる前に、ゲームの基本ルールが全く変わってしまったのだ。その後もルールカードによってころころルールは変わっていった。
ルールカードで特に面白かったのは、「未知の恐怖」というカード。自分が怖いと思ったものを告白するともう1回カードをドローしプレイできるようになる。この恐怖をテーマにしたカードは「クトゥルフの呼び声フラックス」で追加された要素である。しかもこの「恐怖を告白する」というアクションは、アクションカード「夢泥棒」の「他の人の怖いものを言い当てると手札を奪える」というカードに有効に利用されてしまう。他人の恐怖を利用するというところがダークだ。
アイテムカードは「クトゥルフの呼び声」テイストに溢れたものとなっている。「ネクロノミコン」はクリーパーを他のプレーヤーに押しつけられるし、神さえも排除できるという「旧神の印」はアクションカードの効果を自分には及ぼさなくさせる防御力を発揮する。「クトゥルフの呼び声」では人間は恐怖の存在に全く太刀打ちできないことが多いがクリーパーの効果を打ち消してしまう「知識は力なり」というルールカードがあったり邪神も含めて扱いは多少ライトになっているところも面白い。
プレイしていて楽しいのは、「クトゥルフの呼び声」の知識が活かされるところだろう。特にゴールカード・アンゴールカードでラヴクラフトの小説を読んだ知識が活かされる。邪神ヨグ=ソトースの忌まわしき落とし子が世界に恐怖をもたらす「ダンウィッチの怪」を元にしたアンゴールカードはヨグ=ソトースと災厄のカードが出そろったときに発動し、世界を破滅させてしまう。猫好きだったラヴクラフトが書いた「ウルタールの猫」をモデルとしたゴールカードは「猫」と「夢の国」のアイテムカードを持っていれば勝利となる。つい小説談義に花が咲く。ゲームのやりとりと共に、こういう脱線も楽しい。
「クトゥルフが登場しました」、「狂気に捕らわれてしまった、これ何とかしないとゴールできないぞ」、「その旧神の印はこちらにいただきますよ」……。言葉だけ聞いてるととんでもない、凄惨でダークな風景がテーブル上に出現する。世界観を楽しむもよし、シビアに勝利を目指すのもよし。しかし1つだけ間違いないのは、このゲームをプレイした誰もが「クトゥルフの呼び声」に興味を持つということだろう。
一方、ゲームそのもので少し難しく感じたのは、ルールカードが重なりすぎてしまう場合が多かったところだ。ルールカードは内容がかぶらない限りどんどん追加される。この効果はなくなる、アイテムを持っているプレーヤーはもう1枚プレイできる、4枚のカードを引ける、2枚のカードをプレイする……ルールが重なりすぎると複雑で、ここはもう少し整理できないかなと思った。アクションカードにはルールをリセットさせるものもあり、重なりすぎたルールを整理させる方法も多くあるようで、プレイを重ねるとまた感想は違ってきそうだ。
1回目は試行錯誤を繰り返しプレイし、2回目はもう少し慣れてプレイできた。2回目は、筆者はかなりアイテムを場に置くことができ、さらに相手のアイテムを奪える「運命のいたずら」というカードで虎視眈々と他のプレーヤーがゴールする瞬間に妨害するのを狙ってたのだが、その前に北島氏がすでに場に置いているアイテムに合わせたゴールを提示して勝利した。「運命のいたずら」は出たアイテムを奪えるカードのため今回の北島氏の勝ち方は防げなかったのだ。ランダムに変わっていく中、きちんとゲームがストーリーを作り出しているのも楽しかった。
「クトゥルフの呼び声フラックス」はやはり雰囲気が楽しい。「死体蘇生者ハーバードウェスト」、「宇宙からの色」、「狂気山脈」、「ダンウィッチの怪」、「深きものども」……アイテム、ルール、アンゴール、様々なカードから立ち上る濃厚な「クトゥルフの呼び声」シリーズの“匂い”がたまらない。原作を読んだ記憶が蘇る。やはりかつて「クトゥルフの呼び声」シリーズで語り合った友達とプレイしたいと強く思った。再びラヴクラフトの小説が読みたくなってしまった。
(C)2012 Looney Labs