スクウェア・エニックス、「グループ戦略説明会」を開催
英Eidosを完全子会社化
和田社長「グループの骨格ができあがった」
「グループの骨格ができてホッとしている」と語った和田洋一代表取締役社長 |
IR系の発表会と言うことで和田社長と松田洋祐取締役が参加 |
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスは22日、報道、アナリスト関係者に向けた「グループ戦略説明会」を実施した。出席したのは和田洋一代表取締役社長と松田洋祐取締役。今回発表されたのは英Eidosのグループ化についてで、スクウェア・エニックスは英Eidosの全株式の買い付け手続きが完了し、22日をもって同社の完全子会社となった。
スクウェア・エニックスは2月12日に、英Eidosの全株式の買い付けに関する発表を行ない、英国法に基づくスキーム・オブ・アレンジメントの方法が認められ、4月22日にSQEX LTD.による英Eidosの全株式の買い付けが行なわれ、英Eidosは完全子会社となった。これにより配下のスタジオであるCrystal Dynamics、IO Interactiveなどもスクウェア・エニックスの傘下となる。買付価格は1株あたり32ペンスで、発行済み全株式の価値は日本円にして約121億円。
1990年にEidos Interactiveとして産声を上げ、正式には英Eidos(Eidos plc)が1995年11月に設立。「Tomb Raider」のシリーズ1作目が約800万本の大ヒットを記録し、一気に頭角を現わした。このほかにも映画にもなった「Hitman」や「Kane & Lynch」などヒットタイトルを有している。
和田氏は英Eidosの完全子会社化について、社長就任以来、ことある毎に口にしているエンターテインメントビジネスに関する経営理念に沿ったものであることを強調。コンテンツに対してユーザーが接することのできる端末、メディアを豊富に持つことでどこからでもコンテンツに対してアクセスを可能にし、1つのコンテンツに対して多様な展開を持つように設計。さらに顧客のコミュニティを育成することで収益化を図るということだが、その顧客接点の多様化の一環としてグローバル化も必要で、今回の英Eidosの子会社化はこれに当たる。
和田氏は英Eidosについて開口一番「非常に厳しい」と財務状況や株価のグラフを示し、この数年の経営環境の悪化について説明。一時費用として制作中のコンテンツの廃棄などのムダがあったことを指摘。しかしただ厳しいだけでなく「リストラなど着実に整理が進んでいる」と好転しつつある材料も示しながら、「良いゲームを作っているが、販売の規模が中途半端で無理な営業をやっていたのが良くなかった」と問題点を指摘。今後スクウェア・エニックスの傘下に入り同社の営業拠点と協力し合うことでスケールメリットを発揮し、販売を強化できるとしている。
英Eidosのグループ内での位置付けはタイトーと同様で、スクウェア・エニックス・ホールディングスのもと、スクウェア・エニックス、タイトー、英Eidosと並列で列ぶこととなる。このグループ態勢に対して和田氏は「グループとしての骨格が確立する。あらゆるところに問題があるが克服していける態勢となった。今後、どう肉付けしていくかが課題」とグループ体制が和田氏の考えに近づいていることに対して「ホッとしている」と表現した。
和田氏は英Eidosについて「実は、海外メーカーで自社IPを持っているメーカーは非常に少ない。英Eidosはしっかりした自社IPを持っている」とし、ゲームはもとより映画も大ヒットを記録し世界的な知名度は抜群の「Tomb Raider」シリーズはもちろん、「200万本級に育ってくる」と和田氏も期待している「Kane & Lynch」シリーズ、そして「再生させようと考えている」という「Deus EX」も評価してみせた。
Eidosは全体的にアクションやアクションアドベンチャーを得意とし、RPGを得意とするスクウェア・エニックスと技術を共有する点などでも意義があるとしている。傘下のスタジオについても言及し、「優秀なクリエイターが集まっている地域にスタジオをもてたことが大きい」とし、「日本人が出向いてスタジオを作るのと、地元の人たちが作ったスタジオでは根の深さが違う」と海外ならではのゲーム制作のノウハウの蓄積に期待しているようだ。各スタジオのヘッドとはすでに話をしていると言い、手応えを感じているという。
さらに、スクウェア・エニックスの1つのコンテンツを多方面に展開する手法を英Eidosにも応用すると言い、たとえば「Tomb Raider」を例に挙げ「これまではコンテンツを発表したらそのまま。ライセンス事業も行なっていたようだが、映画を監修したらそれで終わり。そこから新たなコンテンツを生み出すといったことはしていない。今後は派生コンテンツを作っていきたい」と説明した。
ちなみに質疑応答では「『Tomb Raider』のコンテンツとしてのパワーが落ちているのでは?」といった質問が出た。「Tomb Raider」は当初CORE Designが開発したが、シリーズ作品を続ける中で開発に失敗しブランドイメージが失墜した時期があった。現在ではCrystal Dynamicsが制作を引き継ぎ、ブランドイメージの復活に向けシリーズ作品の開発を続けている。和田氏も「Tomb Raider」について「ブランドイメージは痛んでいる。私も不安で(スタジオのヘッドに)質問した」と懸念材料の1つとして気にしているようだった。ただ「(ブランドの回復に向けて)着手しており、その説明を聞いて安心した」と手応えは感じているようだった。
今期については「現状、日本で発売することを前提として作っているわけではないので、ローカライズなどもあってどれくらい発売できるかはわからない」としながらも、「出していく」と前向きな姿勢を示した和田氏。全てのラインナップが示されたわけではないが、いくつかは日本でもリリースされそうだ。□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□ニュースリリース(PDF形式)
http://www.square-enix.com/jpn/pdf/news/20090422_01.pdf
□「グループ戦略説明会」配付資料(PDF形式)
http://www.square-enix.com/jpn/pdf/news/20090422_02.pdf
(2009年 4月 22日)