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売上の半数は中国! 100万本売れた「NEEDY GIRL OVERDOSE」販売のための施策が公開【CEDEC2023】

中国で売れると判断したきっかけはウィッシュリストにあり

【CEDEC2023:インディーゲームが100万本売れるまで :『NEEDY GIRL OVERDOSE』の販売データから】

8月25日17時~17時25分 配信

リュウズオフィス代表取締役の小沼竜太氏

 100万本というインディーゲームにおいては異例の販売本数を記録したアドベンチャー「NEEDY GIRL OVERDOSE(ニーディー ガール オーバードーズ)」。本作の売上をここまで伸ばすために行なったプロモーション施策に関する講演が「CEDEC2023」にてリュウズオフィス代表取締役の小沼竜太氏より紹介された。

6月に100万本突破が発表されたが7月下旬時点で120万本にまで販売本数が増加

 まず初めに本講演の中心となる「NEEDY GIRL OVERDOSE」について説明する。本作はワイソーシリアスが2022年1月に発売したアドベンチャー作品。配信者のインターネットアイドル「あめちゃん(超てんちゃん)」との生活が描かれ、30日以内にフォロワーの100万人獲得が目的になる。あめちゃんにはストレスやヤミ度といったステータスが存在するため、これらをコントロールしつつエンディングを目指す。

 ゲーム内では疑似デスクトップを用いた演出や、キャラクターをバイナリアートで描くなど、インディーゲームらしい様々な表現が盛り込まれている。PC版で発売された後、Switch版がリリースされ、パッケージ版の販売や、コミカライズ化やフィギュア化、企画展に至るまで、様々な展開を見せる作品となった。今年の6月には販売本数が100万本の大台を突破するなど、異例の売り上げを記録する作品へと成長した。

【NEEDY GIRL OVERDOSE リリースPV】

 リュウズオフィスは、販売本数の最大化を目的に本作のパブリッシングサポートを担当した。日本だけでなく中国や北米、欧米のマーケティングプラットフォーマーとなるSteamや任天堂との窓口、セール戦略の設計などを手掛けてきた。

 本作は日本のインディーゲーム業界では非常に話題になった作品であるが、販売本数を割合で見ると半数以上が中国が占める結果になったという。販売本数も公開しており、およそ120万本のうち61万本が中国、続いて日本が13万本、アメリカが11万本というデータになっている。

 リュズオフィスとしては日本のインターネット文化を取り入れていることから、日本での販売を見込んでいたという。しかしながら中国での売上が圧倒的なものとなった。この結果について“偶然”このような形になったのではなく、Steamにおけるウィッシュリストを活用することで販売本数を最大化できたのではないかと小沼氏はここから説明していった。

 Steamにはストアページが公開されるとユーザーがそのタイトルをウィッシュリストに入れることができる。ウィッシュリストは言い換えると“ほしいものリスト”のような機能で、正式に発売が開始されたタイミングやセール開始時に登録しているユーザーに向けて通知が届く。

 「NEEDY GIRL OVERDOSE」のウィッシュリスト登録数は、発売前日まで日本が1位で、続く2位が中国となっていた。しかしながら発売翌日には中国のウィッシュリスト登録数が日本の登録数を上回り、発売1カ月後には日本の2倍以上となる14万件の登録数に成長した。このようなデータが現われたため、中国向けに様々なプロモーションを実施。中国向けに生放送を行なったほか、中国語版の主題歌の歌詞も公開した。それにより中国大手の動画配信プラットフォームbilibiliでは関連動画が累計6,000万回以上を記録する結果となった。

発売前まで日本のウィッシュリスト登録数がトップだったが
発売1カ月後には中国のグラフが急上昇
動画関連の施策も大きな結果を生み出した
講演ではウィッシュリストと販売本数を棒グラフで示したデータも公開された。こちらを見ると同じタイミングで販売数およびウィッシュリストへの登録数が伸びていることがわかる

 また、本作の売上をより伸ばすために行なわれた施策としてセールについても紹介された。本作は発売後、サマーセールやウィンターセールといったSteamの大型セールに参加してきたが、それ以外に実施した“独自のセール”で大幅な売上を記録している。

全5回の生配信を実施

 各種言語に対応したタイミングもあるが、この際にはYouTubeを使った生配信を実施してきたという。この配信はゲームに登場する超てんちゃんが実際のVTuberのようにコメントを読み上げたり、告知をしたりとゲームをすでに遊んだ人・まだ遊んでいない人も楽しめる内容が展開される。

 また、本作のタイトル情報を始めて公開したインディーゲームの配信番組「NDIE Live Expo」への出展、PVの公開などのプロモーションを行なうことで、独自セールの販売本数増加に繋がっているようだ。

【【50万本きねん!】超てんちゃんがしゃべるよ】
筆者もこれら生配信を何度か見たことがあるが、超てんちゃんらしい棘のあるセリフなど、毎回内容が凝っている。コメントの盛り上がりも相当なものだった

 さいごに、小沼氏はインディーゲームの販売において海外市場は重要だが、どの地域で反応があるかはわからない。そのため、プロモーションにおいて重要な方針転換が大切だと話した。本作は結果的に中国での売上が大きくなったが、韓国でも大きな反応があったため、韓国語に対応するなどウィッシュリストを活用してユーザーの反応を見る必要があるという。

 加えて、Steamにて開催される大型セールで販売本数を伸ばすことは重要だが、独自に行なうセールも重要で、それに合わせてプロモーションを送ってみることでより大きな結果が得られるのではないかと語った。

 講演ではタイトルの情報を初公開するタイミングでSteamのページを必ずオープンし、ウィッシュリストに登録してもらうことなど、インディーゲームをより多くの人の手に取ってもらうための多彩なノウハウが明かされた。インディーゲームとして異例な売上を記録した「NEEDY GIRL OVERDOSE」のプロモーションの裏には様々な分析や施策があったことが伺える内容になっていた。