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「Hi-Fi RUSH」リズムとアクション融合のカギは“大変&めんどくさいから逃げないこと!”【CEDEC2023】

妥協なしで開発できた秘訣とは?

【CEDEC2023】

8月23日〜25日 開催

 Tango Gameworksが手掛けた同スタジオの新ジャンルとなるXbox Series X|S/PC用リズム3Dアクションゲーム「Hi-Fi RUSH」についての講演「『Hi-Fi RUSH』:チャイでもわかる『リズムアクション』ができるまで」がCEDEC2023にて実施された。

 「Hi-Fi RUSH」は、これまでに「サイコブレイク」シリーズや「Ghostwire: Tokyo」などを開発してきたスタジオ・Tango Gameworksによって1月26日に突然発売されたゲーム。ロックスター気取りのチャイを主人公に、リズムゲームと3Dアクションの組み合わせによって、音楽に合わせて爽快に戦えるゲーム性から話題となった。

□「Hi-Fi RUSH」

 今回実施された講演は、同作ディレクターのジョン・ジョハナス氏と、リードゲームデザイナーの山田政明氏によって、同作の最大の特徴となるリズムアクションのゲームデザインについて明かされたもの。従来のアクションゲームとリズムゲームを融合させる際に気を付けたポイントや、開発時に幅広いユーザーに遊んでもらうために「どのようなアプローチからゲームに向き合ったのか」などが紹介された。

アクションの持つ自由性とリズムゲームは相性が悪い?

 今回、中でも特徴的だった内容が同作最大の特徴でもある「リズムゲームと3Dアクションの融合」という要素について。山田氏によれば、アクションゲームは「好きなタイミングで動く」ジャンルであり、対してリズムゲームは「決められた流れに合わせる」というジャンルであり、この両者のいい部分を融合させるのに苦心したという。

 ここで気を付けたのが、「プレーヤーが自らリズムを選択するように仕向ける」ということ。これまで「ベヨネッタ」や「VANQUISH」などの“スタイリッシュアクション”を手掛けてきた山田氏によって、リズムを意識した作りのアクションゲーム「Hi-Fi RUSH」が開発されたのだが、山田氏によれば同作は「制作難易度が高く、作業量が多い」とのことだった。山田氏は講演で「めんどくさい」とぶっちゃけて語っていた。

作るのがめんどくさいゲームはやりきればいいものになる

 リズムを前提としたアクションには多数の“めんどくさい”がある。講演で例としてでたのはキャラクターの移動について。リズムを前提としたうえで出てきた問題点が行動のタイミングだったという。そこで、考案されたのが攻撃の予兆を攻撃タイミングの1拍前に出すというもの。例として出された「SAMURAI」の場合には3連切りの前に予兆の振りかぶりを行ない、攻撃のタイミングで剣がヒカリ、音が鳴ることで「ここで攻撃がくるぞ」とわかりやすくされている。

 また、ただ拍を意識しただけではどこか「曲にノっていない印象がある」というのも問題点として挙がり、これの解決にはサウンドチームと協力した結果“小節”を意識することで解決していた。さらに、ただ小節を意識しただけでは、小節の頭に行動できなかった場合残りの時間が空いてしまうという問題が浮上。奇数拍と偶数拍の法則で動かすことで、これも解決している。ここで明らかとなったのが、リズム(拍)だけでなく、楽曲も意識する必要があるということだった。

 一連の山田氏に言わせれば“めんどくさい”同作の開発だが、利点もあったという。というのも、他のアクションゲームにもある「コンボ」や「パリィ」といった要素がリズムによって分かり易くなったからだ。

「成功」は普通より気持ちよく、「失敗」はあまりネガティブにならないように

 同作開発の際にディレクターのジョハナス氏が気を付けていたのは、「『成功』は普通より気持ちよく、『失敗』はあまりネガティブにならないように」ということ。これによって同作は、プレーヤーのゲームへのモチベーションを消さないようデザインされている。

 では「『成功』は普通より気持ちよく」とはどういったことなのか。それは、リズムにあった動きや攻撃をした際に「Hey!」と掛け声を出したり、コントローラーが振動したり、UIやスコアが増加したりすることで、プレーヤーが成功を感じやすくしている点にある。

 一方で、この制作方針には落とし穴もあり、「成功」は感じやすくとも、「失敗」を感じにくくしたことで、プレーヤーに伝わりにくい問題が出た。そこで解決策として実装されたのが、「リズムで遊ぶパート」によってプレーヤーに分かり易く結果を魅せることだった。成功すればエフェクトなどが目に見えて変化し、失敗の際には何も起こらないようにしているのだ。

“めんどくさい”開発を乗り越えたら開発の意図がユーザーに伝わった

 ここまで紹介してきた難易度の高い開発を乗り越えリリースしてからは、「リズム遊びのニュアンスが入ったアクションゲーム」という根幹の部分や、「幅広いユーザーに遊んでほしい」という思いが、開発陣も驚くほどにユーザーに伝わったという。

 このことについてジョハナス氏らは、開発初期に「リズムアクション」という根幹を決めて、それを実現するべく妥協しないで開発したことが決め手だと述べた。最後には「『大変』、『面倒くさい』などの障害があったとしても、しっかりとしたビジョンを持ち、妥協せずに取り組めばうまくいく」として講演は締められた。

 余談だが、質疑応答では「サンウドチーム以外の音楽に詳しくないメンバーにどのようにリズムなどを伝えたのか」という質問に対して「身振り手振りで分かるまで何度でも説明した」と回答しており、開発現場の様子が伺えた。