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【EVO Japan 2020】これはキャラ愛の勝利だ! 「スマブラ」部門、3,000人の頂点はオリマー使いのShuton選手!

表彰式には桜井政博氏がサプライズ登壇! 優勝賞品は特製プロコンが贈られる

1月24日~26日開催

会場:幕張メッセ 国際展示場

 1月24日~26日にかけて開催された格闘ゲームの世界大会「EVO Japan 2020」。会場となった幕張メッセには、選手だけで世界中から6,000人以上が訪れたが、このうちの半数近くものプレーヤーは「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」部門の参加者だ。実際スマブラエリアは他のエリアに比べても段違いに盛り上がっており、スマブラの人気がどれほどのものか肌で体感させられた。

 筆者は普段「鉄拳」などの格闘ゲームを見ているが、「スマブラ」のeスポーツシーンが国内だけでここまでの盛り上がりがあるとは驚きだった。しかし、試合を見ているとその人気にも頷けてくる。新旧の名作ゲームキャラクターたちがそろい踏みしているだけでなく、それらを操作する選手たちも、それぞれ個性があるからだ。

 さらに驚くべきは、本大会に賞金が設けられていないことだ。eスポーツ大会といえば賞金総額などが注目されがちだが、賞金がなくても3,000人が集まるというのはそれだけゲームに固いファンベースができているということだ。集まった者は皆「日本一のスマブラプレーヤー」の称号を求めて参加した、熱意に溢れたプレーヤーたちなのだ。

 3,000人の参加者から日本一を決めるまで、3日間に渡った本大会。熾烈な戦いの数々を写真と共にレポートする。

【EVO Japan 2020 「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」部門】

キャラ愛に溢れたTOP8!日本最高峰のプレーヤーたちがそろい踏み!

 本大会のTOP8に勝ち残ったプレーヤーたちは、まさに国内スマブラシーンの最前線を走る選手たち揃い。実際彼らのほとんどが、大会の成績をもとに集計されるプレーヤーランキング「Smash Record」の上位に君臨するプレーヤーだ。当ランキング(2019下半期版)1位のGameWith所属Zackray選手はじめ、3位のKen選手、4位のSunSister所属Shuton選手、5位のTea選手、8位のTG所属Raito選手、9位のコメ選手など、国内TOP10に入るプレーヤーたちが安定した強さでここまで勝ち残っている印象だ。

TOP8の面々。左からShky選手、Raito選手、Ken選手、Zackray選手、ぱせりまん選手、Shuton選手、Tea選手、コメ選手

 また、TOP8の選手全員が異なるキャラクターをメインに据えているというのも好印象だ。eスポーツ競技ではいわゆる強キャラが選ばれやすく、大会上位ともなるとキャラ被りが頻発することも少なくないが、本大会「スマブラ」部門はその限りではない。それぞれの選手が思い思いのキャラクターを使っているため、使用キャラクターへの愛が感じられる。

 そんなTOP8でまず注目すべき試合は、ルーザーズ2回戦で勃発したRayRoadGaming所属ぱせりまん選手対Zackray選手のカードだ。Zackray選手は先述の通り、17歳という若さで国内プレーヤーランキング1位に君臨する、これからの日本のスマブラシーンを背負って立つ選手だ。対するぱせりまん選手は同ランキングでは72位と、100位以内には入りながらも、本大会のメンツの中では比較的低順位の選手だ。

Zackray選手
ぱせりまん選手

 試合が始まると、ぱせりまん選手はメインキャラのフォックス、Zackray選手はマリオを選択した。Zackray選手のマリオは、彼の数ある持ちキャラの中でも比較的起用頻度が低いキャラクターだが、フォックスのスピーディーな攻めにマリオのコンボ性能で対抗していこうとする戦術だったようだ。しかしこの戦術が上手くはまらず、第1試合はぱせりまん選手が2ストックを残して勝利する。

決まり手となった空中上攻撃

 1敗を受けてZackray選手はキャラクターをジョーカーに変更する。ジョーカーは、アルセーヌ召喚時には全キャラ中屈指の性能を誇るキャラクターで、Zackray選手はメインといっていいほどジョーカーを使い込んでいる。その練度はさすがのもので、第2試合はスピーディーな展開が続くも両者一歩も譲らず、お互い最終ストックまでもつれこむ。

お互い最終ストックに

 ルーザーズの試合、お互い負けたら敗退という緊張感の中、ぱせりまん選手の集中がピークに達する。Zackray選手の迂闊な小ジャンプ攻撃に対しダッシュ攻撃で刺し返し、着実にダメージをとっていく。そして最後には、ジョーカーの反逆ガードも匂う場面に、リスクを顧みず上スマッシュを叩き込み、ぱせりまん選手が2-0でZackray選手をストレートで下す。優勝候補のZackray選手が5位に終わる番狂わせに、会場は大いに沸いた。

決まり手の上スマッシュ
眼鏡が落ちるほど跳んで喜んだぱせりまん選手

 そんなぱせりまん選手も、続くコメ選手戦では思うような展開にできず敗北を期してしまう。コメ選手は全一シュルク使いとも言われるほどの強豪プレーヤーだが、彼が「スマブラWiiU」時代から使い続けるシュルクはモナドアーツという特殊なシステムを備えるキャラクターだ。シュルクはモナドアーツを駆使することによって、5つの状態を使い分けることができ、コメ選手は特にこのモナドアーツの使い方が卓越していた。

フォックス(左)シュルク(右)

 コメ選手は、試合序盤は「斬」状態でダメージを稼ぎ、中盤では「撃」によるふっとばしを狙い、終盤で「翔」による復帰阻止を行う、というように明確なゲームプランを持っているような印象だった。さらに防御側に回った時はすかさず「盾」状態に切り替え、攻守ともに安定した立ち回りを見せた。ぱせりまん選手も持ち前の差し合い能力で応じるも、コメ選手の巧みなモナドアーツ使いの前に翻弄され、惜しくも負けてしまう。

勝利の瞬間のコメ選手
健闘を称えあう両名

グランドファイナル!3,000人の頂点に立つのはどっちだ!?

 数々の激戦を勝ち抜き、グランドファイナルまで駒を進めたのはルーザーズからコメ選手とウィナーズからShuton選手の両名だった。両者の実力はおよそ同程度、どちらが勝ってもおかしくないカードだ。「いよいよ3,000人の頂点が決まる」観客たちのそんな思いから、会場は不思議な緊張感に包まれていた。

盛り上がる会場

 コメ選手は前述の通りだが、Shuton選手もコメ選手同様、1つのキャラクターを長年使い続けているプレーヤーだ。彼が「スマブラX」から使い続けているピクミン&オリマーは、それぞれ性能が違う5種類のピクミンを使い分けて戦うテクニカルなキャラクターで、そのコンボ火力の高さは全キャラ中随一とも言われている。オリマーは前バージョンでは最強キャラの一角にいたが、最新バージョンでは若干の弱体化を受けている。それでもオリマーを使い続けるのは、キャラ愛あってこそだろう。

Shuton選手(左)コメ選手(右)

 試合が始まると、コメ選手は前述のモナドアーツを駆使し、持ち前の攻めを展開する。オリマーとしては掴みからコンボへ行くのが理想的展開だが、シュルクの通常技はリーチが長く、中々そうはさせてくれない。

 掴みが通らないとわかると、徐々にShuton選手が戦い方を変えていった。コンボを狙うより、ピクミン投げによるスリップダメージを稼ぐ戦術へシフトチェンジしていく。すると、シュルクはまとわりついたピクミンを払うのに手頃な技を持っていないため、段々とShuton選手がダメージレースで優位に立てるようになっていく。最後にはがけ際の攻防を制し、第1試合はShuton選手に軍配が上がる。

空中下攻撃でShuton選手が先制

 続く第2試合、依然Shuton選手有利の展開が続き、Shuton選手は3ストック残した状態でコメ選手を最終ストックまで追い詰める。しかしここでコメ選手が意地を見せる。「撃」状態でまず最初のストックを奪うと、続く第2ストックも崖際の攻防を制して奪い、Shuton選手を最終ストックまで追い込む。この時点でコメ選手のダメージは120%近く、展開的には不利に見えたが、そんな状況はもろともせずにコメ選手がさらに強気の攻めを展開する。

コメ選手の逆3タテも見えるような展開に

 一つの被弾が命取りになる中、コメ選手がShuton選手の攻撃の穴をかいくぐるように攻めを通していき、ついにShuton選手のダメージも90%近くまで蓄積する。このままコメ選手が逆3タテを見せるかと思われたその時、コメ選手が勝ち急いだ一手に出てしまう。コメ選手は崖際にてエアスラッシュでの復帰阻止を試みるが、これが空振ってしまったのだ。第2試合はコメ選手の自滅でShuton選手が勝利する。

まさかのエアスラッシュ空振り
唖然とするShuton選手(手前)頭を抱えるコメ選手(奥)

 この負けが精神的に響いたか、続く第3試合もShuton選手が主導権を握った展開になる。徹底したピクミン投げによる攻めと、巧みな空中置き攻撃でダメージを稼いでいく。最後には溜め下スマッシュがヒットし、「EVO Japan 2020」スマブラ部門はShuton選手の優勝で幕を閉じた。優勝を決めた後すぐShuton選手は頭を抱えていた。念願の大舞台での優勝に、感極まるものがあったのだろう。

涙をぬぐうShuton選手

 表彰式には、なんと「スマブラSP」のディレクターであり、有限会社ソラ代表の桜井政博氏がサプライズで登壇した。TOP8の面々には桜井氏から直々にメダルと、任天堂グッズの詰め合わせが授与された。優勝したShuton選手には加えて優勝トロフィーと、Nintendo Switch用、金のスマブラロゴ入り特製プロコントローラーが授与された。

桜井氏登壇を聞いたプレーヤーたち
桜井氏からコントローラーを受け取るShuton選手

 大会の感想を尋ねられると桜井氏は「自分で言うのもなんですが、スマブラって本当に面白いですね。」とコメントし「今日TOP8で見れたのは11キャラくらい。スマブラにはまだ80以上のキャラがいるので、今後プレーヤーたちが新しいキャラを開拓してくれることを願っています」と続けた。

コメントを述べる桜井氏
桜井氏に抱き着くShuton選手

 最後にShuton選手に感想を尋ねると「自分は元々ピクミンが好きで、初登場時からオリマーを使っていました。最近ではオリマーが弱体化を受けたこともあって、勝てない時期が続いていました。なので、まさかこんな大舞台で優勝できるとは夢にも思っていませんでした。これはオリマーを信じ続けたからこその結果だと思います、最高にうれしいです。」とコメントしてくれた。

Shuton選手

 「EVO Japan 2020」スマブラ部門は、ハイレベルな戦いの連続だっただけでなく、スマブラというゲームの人気とコミュニティの温かさに触れることができるイベントだった。本大会を受けて「一度スマブラをやりこんでみようかな」と思った筆者のような人はたくさんいるはずだ。これからもコミュニティ一体となって、日本のスマブラシーンがより一層の盛り上がりを見せることに期待したい。

ファイナリストで記念撮影