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【EVO Japan 2020】新進気鋭の若手がビッグトーナメントの頂点に! 「ストV アーケードエディション」大会レポート
sako、そしてマゴを超え「ストV」界に新たなヒーローが誕生した
2020年1月27日 10:00
- 1月24日~26日開催
- 会場:幕張メッセ
1月24日から3日に渡って開催された「EVO Japan 2020」。6つのメインタイトルはどの大会も最高潮の盛り上がりを見せていた。中でも、特に熱かったのは、格闘ゲームの花形タイトルである「ストリートファイターV アーケードエディション(以下、ストV)」だ。
「ストV」の大会の魅力と言えば、20年以上格ゲーシーンの最先端を走ってきた、ウメハラ選手を筆頭に、ときど、板橋ザンギエフなど、カリスマ的な人気を誇るトッププレーヤーたちの存在が大きい。他を寄せ付けない圧倒的な強さで、今なお最前線で活躍し続けている。
昔から見ていた選手が今も注目を浴びているというのは、格ゲーファンとしては嬉しいことではあるのだが、悪く言えば、長い事大きな変化が起こっていないのだ。ここ近年の大会を追っていると、トップ8に残るのは安定とも言える“見知った顔ばかり”という状態。同じ選手ばかりが上位というのは、やはり見てる側の新鮮さは薄れてしまう。
今回もやはり“いつもの感じ”なのだろうと、正直思っていたのだが、「EVO Japan 2020」では良い意味で予想を裏切る展開となり、ここ最近味わっていない面白さの「ストV」大会となった。その様子を本稿でお伝えしよう。
これまでの大会にはない、新しい風が吹き荒れる
初日の予選は、どのタイトルも出場選手とギャラリーとで対戦会場はごった返しているのだが、その中でも「ストV」はかなりの人口密度。少々強引に人の波をかき分けないと、試合の様子はおろか、対戦が行なわれているのかすら確認できない有様だった。後で知ったのだが、「ストV」は「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」に次ぐ参加人数の多さで、1,471名もの選手がエントリーしていたのだとか。会場の混み具合も納得な数字である。
トーナメントは他のタイトル同様、2ラウンド2セット先取制のダブルエリネーション形式。2ライフ制のルールで、試合に負けると「ウィナーズブラケット」から「ルーザーズブラケット」に移り、さらにもう1度試合に負けてしまうと敗退となる。
予選が進んでいくと敗退者も続々と決まり、徐々に混雑も緩和されて観戦し易くなってくる。それでもやはり、トッププレーヤーが対戦している台は、一目見ようとギャラリーの数が尋常ではなかった。
トッププレーヤーにとって初日の予選は軽いウォーミングアップといったところだろうか、1ライフも落とすことなく2日目に進出していった。結果自体は順当ではあったが、今までにない新しい出来事も起きていた。
シーズン2で追加されてからは常に豪鬼を使い続けていたときど選手は、今回の大会ではなんとユリアンを使用。そして、ユリアン使いのネモ選手は、配信されたばかりのギルに持ちキャラを変更。ももち選手もポイズンを使っていくなど、全体的にいつもの空気とは違っており、とても新鮮だった。
しかし、長年使っていたキャラを新しいキャラに変更しても、危なげなく勝ち抜いてしまうのだから凄まじい実力だ。
流れが大きく動いたのは大会2日目。初日を無敗で勝ち進んできたエースたちが続々と敗退していき、驚きの連続であった。
ファイナルステージに進出したのは、板橋ザンギエフ選手、マゴ選手、sako選手、Machabo選手、INFILTRATION選手、NuckleDu選手。そして新進気鋭の若手プロゲーマー・トラボ選手とNauman選手の8名。大会の終盤まで若手の選手が勝ち上がってくるというのはそれほど多くあることではないので、面白くなりそうだと期待が高まった。
戦いはさらに激化! グランドファイナルへの切符を掴むのは果たして……
ついに「ストV」の頂点が決まる、3日目最終日のファイナルステージ。ここからはセットカウントが変更され、2ラウンド3セット先取制の戦いとなる。
試合はウィナーズから始まり、初戦はメナトを使うsako選手とさくら使いのNauman選手のカード。いきなり目が離せない対決だ。
経験の違いを見せつけるが如く、2セットを先に取ったのはsako選手。やはり若手の選手には厳しい相手だったかと思われたが、追い詰められてからの底力を見せ、sako選手から怒涛の3セットを奪ってみせた。この試合をきっかけに、会場中がNauman選手を見る目が変わったのを感じた。
今回、ベテラン勢で目が離せないのがキャミィ使いのマゴ選手だ。実力はトップクラスであるものの、メンタル面の弱さから勢いが崩れてしまう場面がこれまで多く見られてきた。今回、最大の弱点であったメンタル面を鍛え、この大会ではプレッシャーに押されることなく、無敗でファイナルステージまで勝ち上がってきたのだ。
その勢いはまさに止まること知らず。韓国最強のINFILTRATION選手を相手にしても動揺など微塵も感じさせず、3セットストレート勝利を収める。
激しい戦いの末、ファイナルステージでも続々と敗退者が決まっていく。そんな中、辛くもsako選手を破ったNauman選手に次なる試練が立ちはだかる。完全なる2D神となったマゴ選手が次の相手となった。この1戦を勝ち抜けば、ウィナーズブラケットからライフを残してグランドファイナルに進出できるという大事な局面だ。
勢いだけを見たらマゴ選手に分があるように思えたが、Nauman選手にもsako選手に逆3タテで勝利した勢いがついていた。この大会では敵なしの様に思えたマゴ選手を、なんとストレートで3セットを取っていった。戦いを制し、ウィナーズからグランドファイナルへ駒を進めたのはNauman選手。
ルーザーズから決勝進出を懸けた戦いが幕を切る。対戦カードはNauman選手に敗れたsako選手対マゴ選手。勝った方がもう1度、決勝でNauman選手と戦うことができるのだ。試合前には肩をブンブンと回し、“Naumanを倒して、優勝するのは自分だ”という気迫をマゴ選手から感じた。
前の敗北を引きずらない見事な立ち回りでマゴ選手が勝ち星を上げ、決戦の地へと歩みを進めた。
最強の座を懸けた決戦! Nauman対マゴ
リベンジマッチに持ち込み、再び相見えるNauman選手とマゴ選手。大きな声で「よろしくお願いします!」と、先輩であるマゴ選手に頭を下げ、決勝戦が開幕。Nauman選手はさくら、マゴ選手はかりんを使用。
1ラウンド目は一進一退の攻防で、互いにコンボを決めて体力は互角の展開。さくらを壁まで押し込んで有利な状況を作るマゴ選手だったが、さくらのVトリガーからのコンボをもらい、一気に端へ押し戻される。壁から逃がさず、1ラウンドを取っていくのはNauman選手。
悪い流れを断ち切りたいマゴ選手。1ラウンド目で温存していたEXゲージをガンガン吐いて、強力なコンボでNauman選手を追い込む。Nauman選手の残り体力3割のところ、マゴ選手はほぼノーダメージ。圧倒的な体力リードを奪うが、ガードを固めるマゴ選手に投げを連発で通すNauman選手。投げで揺さぶり、ガードが甘くなったところを、クリティカルアーツの最大火力コンボでまさかの逆転勝利。1セットを先に取ったのはNauman選手。
続く2セット目も、Nauman選手の勢いは止まらず、早々に1ラウンドをマゴ選手から奪う。このまま2セット目を取れば優勝は目の前、是が非でも勝ちたいNauman選手だったが、そこにマゴ選手がストップをかける。
互いに残り一撃の体力になりながらも、2ラウンド目を制したのはマゴ選手。この1ラウンド勝利でスイッチが入ったか、マゴ選手の快進撃が始まる。
3ラウンド目でもNauman選手から1本取り、セットカウントは1-1に。そこから調子を掴み、2セット、3セットと勝ちを重ね、Nauman選手のライフを奪って試合リセットの状態まで持ち込むことに成功した。
Nauman選手も余裕が無くなり、ここから3セット勝った者が優勝となる。
先ほどの連敗で闘志に火が付いたか、逆境を力にマゴ選手から2セットを奪い、優勝が手の届く距離まで近づくNauman選手。
セットカウントは2-0の極限状態。 3セット目の1ラウンド、互いに慎重な立ち回りで牽制技を振って様子を探り合う。先に打って出たのはNauman選手。上からの奇襲を狙うが、対空攻撃で的確に落としていくマゴ選手。
守りを固めながらも、一瞬の隙も見のがさない動きで、的確に高火力のコンボを叩き込み、1ラウンド目を制したのはマゴ選手。
2ラウンド目は先ほどとは打って変わり、積極的に攻めていくのはマゴ選手のかりん。攻撃がうまい具合に通り、Nauman選手の体力残り2割。それに対してマゴ選手の体力は7割。普通ならば覆すのは極めて困難な体力差だが、それをやってのけてしまうのがNauman選手の強さ。
Vトリガーで技を強化し、怒涛の攻めで体力差をみるみる縮めていく。ダウンからの起き上がりに無敵性能のある、かりんのEX烈殲破で勝負を仕掛けるも、しっかりガードし勝負を決めていくNauman選手。
ここでNauman選手の優勝にリーチが掛かり、運命のファイナルラウンド。もはや負けるビジョンなど見えていないのか、アドレナリン全開の攻め込みで、僅か開幕8秒でマゴ選手をスタン状態に追い込む。
守りを捨てて、攻めに全振りの立ち回りかと思えば、マゴ選手が繰り出すEX烈殲破には的確にガードを固めている。まさに完封といっても過言ではなく、ほぼパーフェクトで勝負が決した。かつて経験したことのないであろう大舞台での勝負強さ、とんでもない若手選手である。
優勝したNauman選手には優勝プレートと賞金100万円が送られ、最後にNauman選手は「応援してくれて本当にありがとうございます! これからも頑張ります!」と感謝の言葉と、これからの意気込みを見せた。
試合内容もさることながら、初の大舞台で若手選手が堂々の優勝を果たすというドラマティックな展開が起こり、とても見所のある大会であった。
惜しくも敗れてしまったマゴ選手も、優勝まで僅かに手が届かず、涙を飲んだ去年の「CAPCOM Pro Tour 2019アジアプレミア」の状況と重なる結果となってしまった。しかし、そんな結果でも、新たなヒーローの誕生に笑顔で称えるマゴ選手の姿には、見ている側も熱いものが込み上げてくる。
今回の「ストV」大会は、筆者の予想を遥かに超える内容で、「EVO Japan 2020」のラストを飾るにふさわしい大会であった。今後のeスポーツのさらなる盛り上がりと、Nauman選手の活躍に期待が高まるところだ。