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「FFXIV FANFEST 2019」開発者パネルにジャイアントビーバーで覇権を狙うアイテム班リーダー林氏が登場
中国に先行実装される孔雀装備やマウント、エデン装備開発中の初公開画像も多数紹介!
2019年8月13日 10:18
スクウェア・エニックスは、8月10日に「ファイナルファンタジーXIV(FFXIV)」の大規模オフラインイベント「FINAL FANTASY FESTIVAL 2019 上海(以下、FANFEST 2019)」を上海新国際博覧中心(Shanghai New International Expo Center)で開催した。
イベント自体のレポートはこちらを参照して欲しい。このレポートでは、昼のステージイベントで行われた開発者パネルを取り上げたい。アイテム班リーダーの林洋介氏をゲストに迎えて装備やマウント、ミニオンの開発裏話が披露され、ここが世界初公開となる資料も複数登場した。
開発の例として取り上げられたのは、現在多くの人が手に入れるために必死に練習を繰り返している「希望の園エデン」の報酬であるエデン装備。タンクのエデン装備の開発工程や、よく吉田氏が「大変だ」と口にする種族対応がいったいどういった処理なのかについても、その一端を知ることができる。また、歴代のレイド装備がどういうモチーフや意図で制作されていたのかも披露されており、装備デザインをするうえでの思想なども垣間見ることができる。
また、オオナマズ神輿や、ミニオン同盟が推す次の覇権ミニオン、ジャイアントビーバーについても吉田氏のコメントともに、開発裏話や開発者である林氏の思いを紹介したい。
装備デザインは拡張ごとにまとめて計画
林氏はキャラクターの装備やアイテムを担当するアイテム班のリーダーであり、ミニオンを愛するスタッフが独自に結成している秘密組織ミニオン同盟のメンバーでもある。今回は「漆黒のヴィランズ」で追加された8人レイドの報酬装備、通称エデン装備を例に装備が作られるまでの工程を開設した。
装備のデザインは拡張パッケージの発売が決まった段階で、その拡張内で使用する2年分の装備全体の計画を立てる。モチーフとなるイメージを膨らませた複数のデザインが作られ、最終的には吉田氏が決定する。例えば、「大迷宮バハムート:邂逅編」のハイアラガン装備は古代アラグ帝国の文化と技術で作られたものという設定。惑星ダラガブの中に封じ込められていたバハムートの拘束具をモチーフに武器や防具がデザインされ、フィールドのデザインにもフィードバックされている。
同様に、「機工城アレキサンダー:天動編」の装備は、このレイドストーリーの核心を握るオブジェクトでもあるアレキサンダーのコアから着想を得たデザインとなっている。
「次元の狭間オメガ」は過去の「FF」シリーズが登場することから、過去作の最終装備だった源氏装備とダイヤ装備を「デルタ編」と「シグマ編」でそれぞれ実装した。最後の「アルファ編」では「FFXIV 」オリジナルのデザインが作られているが、これには未来のシリーズ開発者が自分たちがしたように、「FFXIV」の装備を使ってくれたら、という想いが込められているそうだ。
エデン装備は、2018年8月に中国で決定した
エデン装備のコンセプトが固まったのは2018年8月20日。折しも中国滞在中のことだった。「希望の園エデン」には「FFVIII」のガーディアンフォース「エデン」が登場するため、初回となる今回の報酬はそのエデンをモチーフにしたデザインでいこうということになった。
そのコンセプトのもと作られたタンク装備のラフデザインが今回初めて公開された。マントを付けたものやコートタイプなどいくつかある中から、吉田氏が選んだのは、エデン・プライムを思わせる白いフルプレートタイプ。このラフを元にアートチームが3Dモデル作成の設計図となる詳細なデザイン画を起こしていく。
ヒューラン男性のモデルから各種族へ手作業で対応
モデリングはローモデルという少ないポリゴン数のものが最初に作成され、このモデルを使ってモーションや着せ替えの設定をする。MMORPGは表示できるポリゴン数に厳しい制限があるが、ハイポリゴンで作ったモデルをテクスチャとして焼き付けることで実際のポリゴン数よりもリッチな画像を作ることができる。こうして完成したモデルに色と質感を加えれば装備が完成する。
実はこの時点で完成するのはヒューラン男性用のみで、ここから種族や性別への対応を行なう。今回、もし種族対応をせずにそのまま着せるとどうなるかという画像が、ララフェルとルガディンで紹介された。それを見れば一目瞭然だが、どちらの種族でも装備の各パーツのバランスがおかしい。特にルガディンでは肩当てが大きくなりすぎており、顔が肩当てに埋まりそうになっている。これを1つずつ人の手で微調整して、今度こそ装備の見た目が完成する。
SEやパラメータ調整とモデル完成後にも多数の作業
だが、これでアイテム班の仕事が終わるわけではない。例えば装備が出す音をサウンド班と共に作るのもアイテム班の仕事だ。「旧FFXIV」時代には、チームに横の連携がなかったために、サウンドチームは何に使うかわからないまま、片っ端から音を付けていたそうだ。そのため、街中のNPCのちょっとしたモーションにも音が入っており、そのために使われるファイルの数だけでもなんと数十万ファイルにもなっていた。現在は発注するゲームデザイナーやアート、サウンドの各リーダーらが週に1度提案会議というミーティングをしているそうだ。
こうして完成した3Dモデルを使って、実際にゲーム内で使うためのデータ作成を行なう。データはエクセルで作られており、1つのアイテムには約70個のパラメータが存在している。1回のパッチで約300~400のアイテムを作るのだが、そのデータ作成は林氏が1人でやっているのだそうだ。
データと共に、装備品のスクリーンショットを使ってアイコンを作る。あとはこのアイコンと装備品、データがぴったり合うよう設定する。最後にアイテムの名前を付けて、それを各言語に翻訳。でき上がったアイテムを宝箱に入れたり、ショップに設定したりして晴れてバージョンアップを迎えることとなる。
ちなみに、宝箱からアイテムが出る確率も林氏が設定しているのだそうだ。そのため、アップデート後には、「確率が間違っているんじゃないの?」とか「同じアイテムばっかりでるんだけど」とったクレームがスタッフからも寄せられるのだそうだ。スタッフといえど、お目当ての装備を手に入れるのは簡単ではないようだ。
孔雀をモチーフにした装備とマウントを中国向けに製作中
林氏からは中国のファンに向けた新アイテムの発表もあった。「中国では孔雀が特別な鳥ということで、孔雀をモチーフにした装備が欲しいと言われていた」という林氏。前々から作っていたという、孔雀の羽根をあしらったエスニックな装備のイラストを発表した。
吉田氏も「8パターンくらいの中からFFの世界観に合っていて、シルエットも綺麗でかっこよくなるだろうと選びました」とコメント。発表されると会場からはひときわ大きな歓声が上がり、喜んでもらって嬉しいと答えていた。また、同時に孔雀のマウントも発表された。こちらは人が載れる巨大な孔雀。「孔雀装備を作っている時に、孔雀に乗れたらいいかなということでマウントも作ることにしました」と林氏。どちらもグローバルサーバーへの実装は未定だが、これまでと同じならいずれオプションアイテムとして登場しそうだ。
オオナマズ神輿は最初2匹のナマズオで担いでいた
マウントについては、今回会場にも飾られていた「オオナマズ神輿」誕生の秘密が語られた。オオナマズ神輿は、ナマズオの蛮族デイリーでもらえるトークンと交換できる神輿型のマウント。
8匹のナマズオが神輿を担いで練り歩き、さらに空も飛ぶ。背後にいる一匹は疲れているのか白目になっており、空を飛ぶ時にも今にも落ちそうになりながらつかまっているなど、ナマズオそれぞれに個性があり、とても力の入ったマウントだ。蛮族クエストのストーリーにも絡んでくるので、もしまだ未プレイならぜひプレイしていただきたい。
このマウントは、最初は椅子の付いた神輿の前後に2匹のナマズオがいるだけというシンプルなデザインだったそうだ。たしかに東方の輿の形と言えなくもないが、祭りの神輿というには寂しいということで櫓が作られた。すると今度は2匹で持つには重そうなので、ナマズオを増やそうということになった。増やしたナマズオのモーションをそれぞれに変えたりとさらに手の込んだことをしているうちに現在の形になったそうだ。
もう1つの話題は「FFXV」とのコラボイベントで報酬としてゴールドソーサーの景品に追加されたレガリア。こちらは、「FFXIV」では初の4人用マウント。交換には20万MGPが必要だった。だがレガリアは「FFXV」の精巧なモデルに近づけるためかなり苦労したそうで、当初林氏は200万MGPでもいいのではないかと考えていたが、「苦労して作ったからといって取りにくくしちゃダメ」と全員から大反対をくらい、イベント期間中に貯まる現実的な数字の20万に落ち着いた。
「ちょっとがんばったら手にいれられるようにしないと、逆に作った意味がなくなりますから。林は「FFXI」をやっていたので、なんでも難しくしようとするんですよ。だから話し合うことが大事」と吉田氏。
また、マウントとして実装するかもしれないと、以前に語っていた傘については、先月ようやく実装できそうな目途がたったそうで、今後日本でも具体的な発表がありそうだ。
ジャイアントビーバーは「漆黒のヴィランズ」覇権ミニオンになれるか?
最後の話題は、林氏も所属しているミニオン同盟が製作しているミニオンについて。ミニオン同盟では、パッチごとに10体程度を作っている。そのうち半分は使用目的が決まっているが、もう半分は「こんなものを入れたら可愛いんじゃないか」という想いで作られている。ちなみに中国の4周年記念ミニオン人気投票で1位だった豆柴は、リードアニメーターの市田真也氏が犬好きで、発案したそうだ。
ミニオンは「新生エオルゼア」で入れた後好評だったため、「蒼天のイシュガルド」では人気者ミニオンを作りたいと狙って「ゲイラキャット」が生み出された。アバラシア雲海にいる翼を装備した猫型モンスターを可愛くミニオンにしたもので、確かに可愛いのだが、強力なライバルである「パイッサ・ブラット」の前に敗れ去った。
捲土重来を目指した「紅蓮のリベレーター」では、笠をかぶったカワウソのミニオン「ウソウソ」が投入された。ウソウソといえばスイの里のイソベがクエストに絡んできたりと、確かに推している感じが伝わってくるし、可愛くもある。だが、ここでもまた強力すぎるライバル、ナマズオの牙城を崩すことはできなかった。
そして三度目の挑戦となる「漆黒のヴィランズ」では、「ジャイアントビーバー」が次世代の覇者として登場した。これまでの反省から、ストーリーが必要だということで、なんとこのミニオンの人気を出すためだけに、複数のクエストが実装されている。このクエストの影響で、可愛いとは別の方向でプレーヤーに強烈な印象を与えており、ファーストインプレッションはまずまずといったところか。
ちなみにこのジャイアントビーバーの元ネタは「FFII」。モーグリの元ネタと言われている存在だそうで、ポテンシャルはあるのかもしれない。だが吉田氏は「率直に言って無理だと思うよ」とそっけない。今後ジャイアントビーバーが覇権を握ることができるか気になるところだ。
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