ニュース

eスポーツで大阪を盛り上げる! 「大阪eスポーツ研究会」発足

eスポーツの“見える化”、ナイトカルチャー化を推進

2019年5月31日発足

会場:大阪商工会議所

 スポーツタカハシと地域計画建築研究所は5月31日、「大阪eスポーツ研究会」を発足し、記念イベント「eスポーツリテラシーセミナー」を大阪商工会議所にて開催した。

 大阪eスポーツ研究会は、産官学と街が連携し、「eスポーツを通じた街の活性化」を目的とした研究組織。イベントでは日本eスポーツ連合(JeSU)副会長の浜村弘一氏による基調講演を皮切りに、梅原大吾選手らプロゲーマーによるエキシビションマッチ、浜村氏やウメハラ選手を交えてのパネルディスカッションなどが行なわれた。

左から、地域計画建築研究所 代表取締役社長の森脇宏氏、スポーツタカハシ 代表取締役社長の高橋勝彦氏、⽴命館⼤学教授の鐘ヶ江秀彦⽒

 開幕イベントとして行なわれたのは、JeSU副会長の浜村弘一氏による基調講演「eスポーツとは~日本のeスポーツの現状と今後の展望~」。

日本eスポーツ連合(JeSU)副会長 浜村弘一氏

 浜村氏は冒頭、「eスポーツを知らない方がいると思うので、基礎的なお話をしたい」と前置き。eスポーツを知らない参加企業の関係者に向け、eスポーツの市場規模が世界的に増加し、新興の産業ながら成長が著しい事を強調した。また、今回のセミナーではビジネスとしての話も重要となるため、今年2月に福岡で行われた格闘ゲームのイベント「EVO Japan」では海外からの来場者が多かった事を明かし、外国人からの需要が高い事をアピールした。

 しかし、その一方で日本の市場規模がまだ小さい事にも触れ、日本でeスポーツが伸びなかった理由として風営法、景表法といった“法の規制”の問題があり、それらを解決するためにeスポーツ連合(JeSU)やプロライセンス制度を設立したとコメント。プロライセンス大会は様々な観点から違法性のない賞金付き大会であり、「消費者庁からは何の問題もないと言われている」と、大会の透明性を改めて強調した。

 また、eスポーツが若い世代で盛り上がっている点について、浜村氏は「野球やサッカーはテレビで大きくなったが、今の若い人たちはテレビを観ずにインターネット上の動画を視聴し、その一つがeスポーツだった。eスポーツは、テレビを観なくなった若い世代が作り上げたスポーツである」との見解を示した。最後は大阪から参加した来場者に対して「大阪はベンチャーの質が高い地域。ぜひeスポーツをご支援いただき、大きな産業にしていただきたいと思う」とコメントして講演を締めくくった。

 続いて、プロゲーマーの梅原大吾選手、どぐら選手、小路KOG選手の3人が登壇。プロの凄さを分かりやすく体感するため、解説を交えながら格闘ゲーム「ストリートファイターV アーケードエディション」を使用したエキシビションマッチが行われた。

CygamesやRedbull、Twitchなど、多数の企業からスポンサードを受ける梅原大吾選手
大阪を拠点に活動するプロチーム、CYCLOPS athlete gamingに所属するどぐら選手
京都初のプロチーム、京都スサノオに所属する小路KOG選手

 ウメハラ選手の対戦相手には、同じく1990年代から活動しているレジェンドである中野貴博氏(株式会社スサノオ社長)が登壇。「勝てるとは思っていないが、勝つつもりで頑張る」(中野氏)、「格闘ゲームが一番盛り上がっていた時代の人だから油断できない」(ウメハラ選手)と、それぞれ意気込みを語った。試合内容は終始ウメハラ選手が攻め続ける展開となり、中野氏に付け入る隙を与える間もなくあっという間にウメハラ選手の勝利となった。

26年前、「ストリートファイターII ターボ」で日本一となった中野貴博氏
ウメハラ選手はガイル、中野氏はサガットを選択
ガイルの必殺技が決まる瞬間
試合が終わり握手を交わす両氏

 続いてウメハラ選手の対戦相手に選ばれたのは、同じ現役のトッププロであるどぐら選手。実況解説は小路KOG選手が担当し、2ラウンド2本先取ルールでの勝負となった。

 1セット目、最初のラウンドはウメハラ選手が怒涛の攻めを展開。どぐら選手の使用キャラであるベガを気絶状態まで持っていき、一気にラウンドを奪う形となった。2ラウンド目は逆にどぐら選手がウメハラ選手を追い詰める形となったが、ウメハラ選手が驚異の粘りと反撃をみせて勝利。ウメハラ選手の逆転劇に、会場からは驚嘆の声が上がった。

 しかし、どぐら選手もトッププロとしての意地を見せつけ、スコアは1-1のイーブンに。一進一退の攻防が続く中、会場からは「あぁ!」といった悲鳴のような声もあがり、KOG選手からは「見ている方も熱くなれるのがeスポーツです!」という名実況が飛び出した。試合はフルセットフルラウンドまでもつれ込んだが、最後はウメハラ選手が勝利し、現役のレジェンドとして威厳を見せつける形となった。

ウメハラ選手は引き続きガイル、どぐら選手は最近使いだしたベガを選択
序盤はウメハラ選手がどぐら選手を圧倒する展開に
どぐら選手も、1ダメージも食らわずに相手を倒す「パーフェクトKO」で勝利し、強さを見せつけた
最後はウメハラ選手の勝利 会場からは大きな歓声が沸き起こった

 エキシビションマッチの後、締めくくりとして、「大阪万博に向けたeスポーツの可能性」についてのパネルディスカッションが行なわれた。パネラーには浜村弘一氏、ウメハラ選手のほか、立命館大学教授の鐘ヶ江秀彦氏、大阪観光局常務理事の市政誠氏、大阪市商店街総連盟理事長の千田忠司氏、アメリカ村の会顧問の井原正博氏の6名が参加した。

左から、浜村弘一氏、梅原大吾氏、立命館大学教授の鐘ヶ江秀彦氏
左から、大阪観光局常務理事の市政誠氏、大阪市商店街総連盟理事長の千田忠司氏、アメリカ村の会顧問の井原正博氏

 パネルディスカッションでは、“大阪市は、eスポーツをどのように活用していくことが大切か”という議題に。

 これについて市政氏は、観光局からの視点から「eスポーツを通じて、世界各国の選手が大阪でゲームをやりたいと思ってもらえるようにしたい」とコメント。また、梅原氏に対して、「選手の立場から、どのような街に行きたいと思うか?」という質問が投げかけられた。梅原氏は「まったく分からないですけど……」と前置きしつつも、「ゲームは人を集めることができる。今はオンラインで繋がって対戦したり協力したりできるけど、それでも人の顔見てゲームするのが一番面白い」と語る。人の熱を感じて遊ぶことに価値があり、面白いと思えるのだから、大会をやれば人は自然に集まるとの見解を示した。

 千田氏は商店街の人口密度が一番多い時間帯は夜の20時~22時であることに触れ、「食事と買い物にプラスして、eスポーツをナイトカルチャーとして推奨していきたい」と述べた。井原氏は、ミナミのアメリカ村でやりたい事として「eスポーツの“見える化”を推進したい」との展望を示し、会場(インドア)で行なわれるeスポーツは大勢あるが、例えばプロゲーマーがアメリカ村の三角公園で対戦し、eスポーツを知らない通行人の目にも届くようにしたいと続けた。

 鐘ヶ江氏は、このような空間の作り方について、街づくりには人々の多様性を排除しない事が大事であると主張。人が来ることによる騒音問題などにも触れ、eスポーツで盛り上がるにはいろんな人の努力が必要であると指摘した。そのため「eスポーツはプロプレイヤーが大きな役割を担うが、それを支えるには多くの人々が参加し、今回だけでなく継続的に関与してほしい」と説いた。最後のまとめとして、浜村氏は「大阪はこれから万博などもあり、大阪でeスポーツ選手が育てば盛り上がると思う。大阪がeスポーツの聖地、甲子園になる事を期待している」とコメントし、イベントを締めくくった。

 今回のセミナーで筆者が感じたのは、浜村氏やプロゲーマーの選手たちが「eスポーツを知らない人にeスポーツの魅力を知ってもらう事」に重きを置き、それを徹底していたことだった。今回のセミナーは、すでにeスポーツを知っている関係者だけが集まっているわけではない。むしろ「大阪の街を盛り上げたいけど、eスポーツって何だろう」という、まだeスポーツを体感したことがない一般企業の関係者たちが大多数を占めていた。その配慮が十分なされていたことに好印象を持った。

 例えばエキシビションマッチで実況解説を担当したどぐら選手や小路KOG選手は、「このゲージが体力で、これが無くなると負ける」、「このゲージが溜まっているので必殺技が打てた」といった、格闘ゲームの見方が分からない人にも伝わるような解説を取り入れていた。

 エキシビションマッチではeスポーツの魅力がしっかり伝わるだろうかと若干の不安を感じていたが、そんな不安はどこ吹く風。ウメハラ選手が大逆転した瞬間に上がった歓声と拍手は、我々eスポーツを知る者がいつも感じている熱さと同様のものであった。今回のセミナーは、大阪からeスポーツを盛り上げるための第一歩として、大成功だったように思う。大阪eスポーツ研究会の今後の活動に注目したいところだ。