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「キングダム ハーツ」の旅を映像と演奏で振り返る!「KH III」DLCの情報も
「KINGDOM HEARTS Orchestra -World of Tres-」レポート
2019年5月23日 00:00
「キングダム ハーツIII」発売後の初めてのオフィシャルオーケストラコンサートツアーとなる、「KINGDOM HEARTS Orchestra -World of Tres-(キングダム ハーツ オーケストラ ワールド オブ トレス)」。そのツアーの皮切りとなる東京での日本公演が開催されたので、その模様をお伝えしよう。
有料DLC「キングダム ハーツIII ReMIND(仮)」を開発中! 続報は“雨が多く降るようになる頃”
コンサート中には、「キングダム ハーツIII」およびシリーズの今後についての情報が明かされた。まずはそちらからお伝えしよう。
ステージに登場したのは、「キングダム ハーツ」シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーおよびブランドマネージャーを務める橋本真司氏。シリーズ1作目が開発中だった約22年前からシリーズに尽力されてきた橋本氏だが、2018年で還暦を迎え、それを機に次の世代へとバトンを渡すことにしたとのことだ。
新たに「キングダム ハーツ」シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーを務めるのは間一朗氏。間氏は、「DISSIDIA FINAL FANTASY NT」、「ファイナルファンタジー レコードキーパー」、「THEATRHYTHM FINAL FANTASY」など多数の作品でプロデューサーを務めてきた。
なお、橋本氏は退職されるわけではなく、「キングダム ハーツ」においてもブランドマネージャーの役職を継続。今回のようなコンサートイベントなどを含めたシリーズ全体の責任者として、今後も関わっていくということだ。
続いて登場したのは、「キングダム ハーツ」シリーズディレクターである野村哲也氏。「今回はまだ何もお見せできる物がない」と前置きしつつ、文字情報だけはお伝えしたいと、「キングダム ハーツIII」のダウンロードコンテンツ(DLC)について紹介した。
有料配信予定のDLCは「キングダム ハーツIII ReMIND(仮)」というもので、複数の内容をひとまとめにしたものになるという。
【有料DLC】「キングダム ハーツIII ReMIND(仮)」
・追加シナリオ「ReMIND(仮)」
・シークレットエピソード&ボス
・リミットカットエピソード&ボス
・英語ボイス切り替え
・その他
【無料DLC】
・新キーブレード&新フォーム
DLCの配信時期や価格は今のところ未定。だが、続報を“雨が多く降るようになる頃”にお伝えしたいということだ。
第1部でこれまでの物語を、第2部では「キングダム ハーツIII」を映像と生演奏でリプレイするかのような構成に
「KINGDOM HEARTS Orchestra -World of Tres-」は、「キングダム ハーツIII」をはじめとした「キングダム ハーツ」シリーズの楽曲をフルオーケストラで演奏するコンサートツアーだ。4月27日28日に開催された東京公演を皮切りに、世界9カ国を巡って11月30日の日本・大阪公演まで続いていく。
公演は第1部と第2部に別れた構成となっていて、1部は「キングダム ハーツIII」以前の「キングダム ハーツ」シリーズの楽曲を、2部は「キングダム ハーツIII」の楽曲でプレイを振り返るような構成となっていた。
東京公演では、オーケストラは神奈川フィルハーモニー管弦楽団、コーラスは洗足フレッシュマン・シンガーズが務め、約3時間あまりの生演奏となった。
【第1部セットリスト】
1. Dearly Beloved from KINGDOM HEARTS III(作曲:下村陽子/編曲:和田薫)
2. Music from KINGDOM HEARTS(作曲:下村陽子/編曲:和田薫)
・Destiny Islands
・Traverse Town
・Hand In Hand
・Friends in My Heart
3. Music from Re: Chain of Memories(作曲:下村陽子/編曲:和田薫)
・Scent of Silence
・Castle Oblivion
4. Music from KINGDOM HEARTS II(作曲:下村陽子/編曲:亀岡夏海)
・The Afternoon Streets
・Working Together
・Reviving Hollow Bastion
・Cavern of Remembrance
・Deep Anxiety
5. Music from 358/2 Days(作曲:下村陽子/編曲:宮野幸子)
・Critical Drive
・Sacred Moon
・Musique pour la tristesse de Xion
6. Pretty Pretty Abilities from coded(作曲:下村陽子/編曲:亀岡夏海)
7. Music from Birth by Sleep(作曲:下村陽子/編曲:マリアム・アボンナサー)
・The Worlds
・Dearly Dreams
・Destiny's Union
・Night in the Dark Dream
・Night of Tragedy
8. Music from Dream Drop Distance(作曲:下村陽子・関戸剛/編曲:竹岡智行)
・Dream Eaters
・Sweet Spirits
・Majestic Wings
・Link to All
9. Music of Another Time(作曲:下村陽子/編曲:亀岡夏海)
10. Diabolic Bash(作曲:下村陽子/編曲:山下康介)
・Destiny's Force
・Shrouding Dark Cloud
・The Fight for My Friends
・Vim and Vigor
・The Encounter
・Another Side -Battle Ver.-
・Unforgettable
・Rage Awakened -The Origin-
・L'Impeto Oscuro
コンサートの第1部は、初代「キングダム ハーツ」から物語を順に辿っていくような構成となっていたが、最初の1曲だけは「Dearly Beloved from KINGDOM HEARTS III」から始まった。シリーズを代表するこの曲から始めていくというわけだ。
豪華な演奏とともに各シリーズ作品の映像が次々に映し出されていくが、このコンサートはこれまでとは違って、「キングダム ハーツIII」の発売後であり、長く続いたダークシーカー編に区切りがついてからのコンサートとなっている。来場していた多くのファンにとって、過去シリーズの映像も、後の結末を知った上であらためて振り返るというこれまでとは違った気持ちで受け止めるものとなっていて、蘇る思い出を感慨深く味わえるものとなっていた。
演奏と映像も見事なもので、映像が切り替わるのに併せて演奏も切り替わっていくのだが、そのタイミングの上手さ、それによる一体感が素晴らしく、「キングダム ハーツ」の歩みを全身でスピーディーに浴びていくような、このコンサートならではの体験を作り出していた。
【第2部セットリスト】
11. Face My Fears -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-
(原曲:宇多田ヒカル & Skrillex/編曲:和田薫)
12. Symphonic Suite: The Worlds of Tres I -Of Gods and Toys-
(作曲:下村陽子・石元丈晴・関戸剛・Disney/編曲:亀岡夏海)
13. Symphonic Suite: The Worlds of Tres II -Tangled with Scares-
(作曲:下村陽子・関戸剛/編曲:亀岡夏海)
14. Symphonic Suite: The Worlds of Tres III -A Frozen Fracas-
(作曲:下村陽子・石元丈晴/編曲:宮野幸子)
15. Symphonic Suite: The Worlds of Tres IV -A Pirate's Tale-
(作曲:下村陽子・石元丈晴/編曲:竹岡智行)
16. Symphonic Suite: The Worlds of Tres V -A Hero's Journey-
(作曲:下村陽子・石元丈晴・関戸剛/編曲:山下康介)
17. Overture to the Decisive Battle
(作曲:下村陽子・石元丈晴/編曲:マリアム・アボンナサー)
18. 光 -KINGDOM Tres Orchestra Instrumental Version-
(原曲:宇多田ヒカル/編曲:和田薫)
19. Rhapsody in Tres for Piano, Chorus and Orchestra
(作曲:下村陽子・石元丈晴/編曲:西木康智)
20. アンコール:誓い -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-
(原曲:宇多田ヒカル/編曲:和田薫)
※メドレータイトルのみ掲載
2部は、「キングダム ハーツIII」の楽曲で、“実際のゲームプレイを丸ごとリプレイする”かのような構成となっていた。各ワールドのフィールド曲から、ディズニーの楽曲、ボスバトル曲と、さらに映像でも演奏にぴったりと合ったゲーム内映像を使用し、各ワールドのオープニングからクライマックス、そしてエピローグまでもたっぷりと見せていく。音と映像での豪華なゲームリプレイ体験だ。
宇多田ヒカルさんが歌う「Face My Fears」や「光」の演奏では、ボーカルをバイオリンソロで表現。最後の「Rhapsody in Tres」では、「キングダム ハーツ」シリーズのコンサートではもうお約束と言える、下村陽子氏のピアノ演奏もあり、特別編集された「キングダム ハーツIII」のシーン映像とともに、このコンサートならではの体験を作っていた。
下村陽子氏、石元丈晴氏、関戸剛氏へ公演後インタビュー
公演終了後、下村陽子氏、石元丈晴氏、関戸剛氏にメディア合同でのインタビューが行なわれた。その模様をお伝えしよう。
また、インタビューとは別にディレクターの野村哲也氏と、新エグゼクティブ・プロデューサー/間一朗氏のコメントも掲載しているので、そちらもぜひご覧頂きたい。
――ツアー初日を終えられましたが、今のお気持ちや感想はいかがでしょうか。
下村氏:スケジュール的にかなり大変な上に、私がやりたいことと野村哲也氏がやりたいことがそれぞれにあって、それをガッチャンコした結果、ものすごく盛りだくさんな内容になりました。正直なところ、今日の初演が無事に終わってホッとした気持ちです。
石元氏:フルオーケストラというのはレコーディングではやったことがあるのですが、ライブコンサートは初めてなので、とうとう筆降ろしをした的な……、今日ついに男になった的な、大人の男性として。
下村氏:大人の階段を昇ったぐらいにしておきましょうか(笑)。
全員:(笑)。
石元氏:運転免許で言えば、やっと仮免がもらえたかなって。
下村氏:仮免!?(笑)。
石元氏:(笑)。音楽の究極ってコンサートとかライブだと思うんですよ。ボーカルにしても、スタジオで編集して音源を作りましたっていうものより、コンサートで歌うっていうことが究極だと思います。
9,000円ものチケット代を払ってもらって満足してもらうことってコンサートでしかできないと思うんですよ。手元には何も残らなくて、聴くしかない、自分の脳にしか残らない。どれだけ衝撃を与えて、その人の印象に残るものにできるかというのがすごく大事なことで。今日の3時間近くの中で楽器や声が空気を揺らして人に伝わっていったんですよね。それはやはりこの場にいないと味わえない世界だと思うんです。
コンサートやライブをすると、そういう感動があるとはよく聞いてきたのですが、自分自身も感動しました。なにしろ今日は筆降ろしでしたから……(笑)。
下村氏:どうしても、それ言いたいのね(笑)。
全員:(笑)。
関戸氏:まずお客様への感謝があるのですが、同時に、編曲の方々と指揮者を含め演奏されたオーケストラの皆様がすごいなと思って。プロ魂というかね。それをお客様と一緒に共有できたというのが、僕としては嬉しくて。「こんなに幸せなことって、この先ないのでは?」っていうぐらいにワクワクドキドキさせて頂きました。本当に素晴らしかったと思います。
――3時間近くのプログラムで、セットリストもメドレーが多かったです。どういったコンセプトで曲を選んでいったのでしょうか?
下村氏:私はなかなか自分の気に入っている曲を選ぶというような“何かを選ぶ”というのがすごく苦手な性格なんですね。なので、1部の「キングダム ハーツ(1)」のメドレーなら、たくさんワールドがある中で例えば特別に「アグラバー(アラジンのワールド曲)」を選ぶとかはできなくて。何かのワールドとかではなく、皆さんがよく訪れる場所であったり、共通して流れるイベントの曲であったりとか、そういう感じで“何かに特化はしない”、汎用的と感じられる曲というのを主に、特に1部では選ばせて頂きました。
それと相反する形で、「キングダム ハーツIII」の2部は「全てのワールドの曲を演りたい」というのを、最初から私は決めていたんです。フィールドだけとかバトルだけとかでもなく、それらもセットにしたワールドの全てを演奏して、そのワールドに実際にいるようなっていう形でメドレーを組みました。ところどころ、哲さん(野村哲也氏)からの要望もあって、ボス戦やグミシップの曲も、メドレー中に実際にゲームをプレイしているような順番でチョイスしていったんですよ。
――「キングダム ハーツIII」楽曲がアレンジされ、オーケストラで生演奏されたのを聴いてみて、いかがでしたか?
関戸氏:僕は……建物が好きなんですよ。ビルとかね。今、大阪のスクウェア・エニックス支社の前に50階建てのビルが建設中で、「同じ人間があれを作っているのか」って思いながら工事の進捗を眺めているんです。
ショッピングモールとホテルの複合施設のようなんですけど、それが大体100mぐらい高さがあってね、あれを完成させる人間の力ってすごいなと。今回も同じで、アレンジャーさん、コンポーザーさん、演奏家の方、1人1人の力が結集してコンサートというひとつの大きな作品が完成したんだと思っています。皆さんと同じ時代に生きていて本当に良かったというか。すごい人達がいるんだなと。何を食べたらあんな風になるんだろうなって。特に演奏家の方はね……、僕もちょっとは演奏もするんですけどそんなに言うほど上手くないので、本当に感動するんですよ。特にアンサンブルですね。なんかうるうるくるんですよ。ぐわーっと盛り上がってくると熱いものがこみ上げてきますね。
――石元さんは「ザ・カリビアン」のワールドの楽曲などを手がけられていますが、今日の演奏を聴いてみていかがでしたか?
石元氏:「ザ・カリビアン」の曲って、皆さんがよく聴いてこられた「パイレーツ・オブ・カリビアン」の曲がそもそもある中で、別の曲を作るというものだったので、最初は「しんどい仕事だなあ」って思ったんです。印象がついているわけで、映画で言えばある役者さんがずっと演じていた役を別の人が演じると否定されがちじゃないですか。
作る前からそういう背景があったので「何を言われてもいいや」と思って作った曲だったんですよね。みんなが知っている曲じゃなくなっちゃうというプレッシャーを感じながらも、それを原動力にした曲でした。でも、今日の演奏を聴いたら、やって良かった、ありがたい仕事だったなって思えましたね。
――今回のオーケストラコンサートツアーの企画というのは、いつ頃からスタートしたのでしょう?
下村氏:具体的にはお話できないのですが、2018年もワールドツアーを行なってきて、その時から「キングダム ハーツIII」に近い時期に「キングダム ハーツIII」の新曲でコンサートをやりたいねっていう話はしていました。でも、それが決定して動き出したのは……、この規模のコンサートをするならどれぐらいの準備期間が必要だろうと想像されるのより、かなり短い期間でまとめていますね。
――今回のセットリストはメドレーが多いですが、総曲数で言うと何曲ぐらいになったのでしょう?
下村氏:最終段階で入れ替えた曲などがあるので、最終的に全部で何曲入っているというのは私もきちんと数えていないのですが、セットリストを組む時にiTunesでプレイリストにしていたんです。その時の曲数は77曲でした。
1つのメドレーに5曲ぐらいが入っているとして、10曲のメドレーで50曲なので。まぁ、それぐらいになっているのかなというところですね。本当にできるのかなってプレイリストを見ながら考え込んだのですが、やってしまいました。
――77曲もとなると、アレンジされる方や演奏される方は相当に大変だったのではと思いますね。
下村氏:そうですねー! コンサートって時間がどうしても決まっているので、いかにその中に収めるかっていうのが大変で。やはりフルでは時間内には収まらず、何度も「あと5分削ってください……!」みたいなやりとりが続く感じでした。
――石元さんや関戸さんからは今回のオーケストラアレンジについて、「ここをこうして欲しい」というような監修などはされたのでしょうか?
石元氏:監修というほどのことは(していません)。出てきたものを聴いて、一言二言ぐらい返したりはしましたが、あまり口うるさいことはしないようにと思って。これまでも下村さんとご一緒にやってこられた皆様ですし、いい感じのアレンジをしてくださって。僕が口出すと逆にダメになっちゃうような感じですよ(笑)。
関戸氏:僕も全く同じで。今回のオーケストラアレンジして頂いた亀岡夏海さんとは、以前にお仕事をご一緒させて頂いたことがありまして、もう全然心配なことはなかったです。ただ、僕が作ったグミシップの曲については大変苦労されたということなんですよね。
というのも、グミシップの曲って元々が長いんですよね。それは僕の勘違いがあったんですけど、「キングダム ハーツIII」制作中に「このムービーの尺で曲を作って下さい」っていうお話で曲を作ったのですが、そのムービーが長かったんですよ。4分ぐらいあって、それだと1分ぐらいの曲では4ループさせないといけない。さすがに4ループはどうかということで、2分ぐらいの曲を作って2ループするというものにしたんです。
実際にゲームが発売されてその曲が流れてるところを見てみると、わりと早く場面が切り替わるんですよね。通常バトルとボスバトルを含め、敵の数や強さによって5つのバリエーションが用意されてるんですけど、個々のレイヤーが意外と早く切り替わって。もらったムービーでは1レイヤー1ステージみたいな感覚だったんですけど、違っていたんですよね。「あれ、やってもうた」って思って(笑)。
そういうこともあって、アレンジは相当苦労されたと思います。それでも、そうとうに良い出来でしたから。素晴らしかったです。
――先ほど、今回のツアーでは下村さんのやりたいことと、野村哲也さんがやりたいことの両方を詰め込んだというお話ありましたが、それぞれどんなことをやりたかったのでしょう?
下村氏:哲さんがやりたかったのは、まさに今回の公演の構成で、「前半はこれまでのシリーズ作の曲をやって、後半に『キングダム ハーツIII』を入れる」というものだったんです。でも私がやりたかったのは、基本的に全て「キングダム ハーツIII」の曲にして、その中のいくつかを過去シリーズ作のメドレーなどを挟むという構成だったんですよ。私としては、「キングダム ハーツIII」のワールドの曲をよりたっぷり聴いていただきたいと思っていたんです。「キングダム ハーツIII」で前後半作るという構成ですね
で、意見が合わなかったんですけど、私が言ったところで哲さんの考えは全く変わらないので(笑)。私のやりたい事をどうやって入れようかなって考えた結果、私がやりたかった「キングダム ハーツIII」のワールド曲をというものが、コンサートの後半にギュッと凝縮されたわけです。なかなかこういう機会はないですから、私も妥協したくなくて、各ステージのフィールドやバトルも詰め込んだメドレーになりました。
――キーブレード墓場あたりからボス曲のラッシュに入っていく構成には苦労されたのではないでしょうか。
下村氏:そうですね。あのあたりからゲームの後半へと向かっていって、最後はボスラッシュで終わるという流れでしたが、ボス戦の曲を各ワールドのメドレーに入れていくかは迷いました。でも、今回の構成の方がワールドを巡っているという感じがあっていいかなと。あとはもう、なんとか上手く、メドレー1曲が10分以内に収まるようにというような細かい調整をしていきました。
――下村さんから見た石元さんや関戸さんの楽曲の魅力、逆に石元さん関戸さんから見た下村さんの楽曲の魅力というのはどんなものか、お聞かせ頂けますでしょうか。
下村氏:なんて怖い質問を(笑)。関戸さんの曲はすっごく要素が多いんですよね。たくさんのものがワーッとある感じで、それが出たり入ったりしていて、ものすごく凝ってる。本当にワクワクする曲が多くて、かわいらしいというかキラキラした明るい曲。でも明るいんだけどバトル曲だったりもして、元気が出る感じ。普段ギターを弾いている関戸さんとは違ったオーケストレーションの色彩が豊かなすごい曲という印象です。今回もアレンジのときにそういうところが出てきたらいいなと思っていたのですが、何も言わずともそういう良さが出ていたので良かったです。
一方で石元さんの曲は、どストレートでロックなんですよ。シンプルに真っ直ぐガンとくる。カッコいいと思います。お2人はすごく対照的ですよね。2人ともギターを弾いている人なのに曲の方向性が全然違う。かわいい担当とかっこいい担当だなんて、今日も昼公演でちょっと話したんですけど、かわいいながらもかっこいいがあったり、その逆もあって。「キングダム ハーツ」という作品はかわいい中にも、どこかかっこいいというか、バトルに熱い要素があったりするんですよね。そういうところが2人の曲にもあって、魅力的に仕上がっていると思います。
……さて、私はそろそろ帰ろうかな(笑)。
関戸氏:(笑)。まず格好良いピアノとキャッチーなメロディーですよね。でもキャッチーって飽きられやすさも含んでいるんです。すぐ覚えられるけど飽きやすいとかね。でも、下村さんの曲のキャッチーさは飽きさせないんですよ。
下村氏:またそんな上手いこと言っちゃって(笑)。
関戸氏:で、僕は、実は下村さんの曲を解析したことがあるんですよ。「フロントミッション」の頃とか、最近ものもありますね。もちろん仕事ではなく興味があって勉強させてもらおうと思って。
下村氏:えーなになになに、怖い!
関戸氏:僕はどちらかというとロックやポップスが好きなんですが、ロックやポップスはコードで曲を表現するので、たとえば1小節に1つのコードがつくと、その1小節は1つのハーモニーになるんです。でも、下村さんの曲はメロディーはキャッチーなのにバックグラウンドは非常に短時間にハーモニーが変わるようになっていて飽きさせないんです。オーケストレーションも時間の経過とともにハーモニーが頻繁に変わるんですよね。それがすごいんですよ、よく思いつくなって感心させられます。
石元氏:すごい研究されてますね(笑)。
下村氏:かっこよく言うとアナリーゼ(楽曲分析)ってやつだね! ありがとうございます(笑)。
――石元さんから見た下村さんの曲はいかがですか?
石元氏:「聖剣伝説」シリーズから「キングダム ハーツ」シリーズなど、下村サウンドを数多く聴いてきたのですが、すごくわかりやすさがあると思います。でも、「ディシディアファイナルファンター」という作品で下村さんが作られた曲のアレンジをしてみたら、それはそれでまた他の曲とは全然違うことをされていて、びっくりしました。
やはり、これだけの人に愛されるタイトルなわけで、プレイされてきた人にとってもクセになるようなメロディーの魅力があるんだなと思います。それが強みですよね。その個性で、聴いただけでその人の曲だってわかるところまで到達している。素晴らしいなと思います。
下村氏:ありがとうございます。
――最後に「キングダム ハーツ」ファンの人に向けて、最後に一言ずつ頂けますでしょうか。
関戸氏:「キングダム ハーツ」からずっとメドレーが続いていく中で、感極って涙を流すお客様をちらほら見かけました。僕もコーラスとかアンサンブルの分厚いものを聴くだけで熱くなって。そこに鼻をすする音が聞こえてきて「あ、みんな同じ気持ちなのかな」って思ったときに、本当にここに居られて良かったと思いました。
石元氏:僕も今日は筆降ろしでしたから……。
下村氏:まだ言う! それ言いたいだけでしょ(笑)。
石元氏:いやいや、僕も1ファンとして初めて体験したというところもあったんですよ。昨日リハーサルで観客席で聴いて、今日はステージ袖で聴いていたのですが、すごいとかそういう言葉では表現できないなって思いました。音楽って。すごい、かわいい、美味しいとかテレビの人がよく言っているような言葉ではなくて。言葉で表現できるのなら文章を書けばいいですが、それじゃ表現できないから音楽をやってるんだっていうこと。アピールのために言葉は使っていますけど、音を表現するというのは生で聴いてもらうしかないんだというのを、改めて感じました。
下村氏:初代から楽曲を担当しているのですが、今日、橋本さんがご挨拶された時にすごく初代のことを思い出して。初代の曲を担当しているときはアレンジ作品が出たり、こんなコンサートをやるなんていうのもまったく思っていなかったので。
なんだか本当に夢のような出来事だなって。こういうことが自分の人生に起きるんだっていうことが、いまだに正直なところ信じられないです。ファンの皆様が来てくださるからこうやって3年目のツアーをできるわけで、感謝してもしたりないですね。私は曲を書くということが好きで、やりたいことをやってきて。それに応えてくださるファンの方がたくさんいてくれて、その思いが大きな力になってこういったコンサートができることが、本当に嬉しいことなんです。
決して、ここで驕ったり、舞い上がり過ぎたり……まぁ、ちょこっとぐらいは舞い上がりたいですけど、驕らず舞い上がり過ぎず、応援してくださっているファンの皆さんを裏切らないような、作品創りをこれからもがんばっていかなければいけないなと、改めて思いました。
小学生の頃とかに「キングダム ハーツ」を好きになってくれた人が、もう大人になって、それでも好きでいてくれて自分で働いたお金でチケットを買って来てくださっていたりする。ゲームを遊んでくれた人、何年も何年も愛してくれている人、みんなを裏切らないように、がんばっていきます。ぜひ、「キングダム ハーツ」のゲームも音楽もこれからもどうぞよろしくお願いいたします……という言葉で締めくくらせて頂こうと思います。ありがとうございました。
――ありがとうございました。
【ディレクター野村哲也氏よりコメントを頂きました】
というわけで、前回来られた方も今回いらっしゃったでしょうか?
自分も来ていました。
さすがに毎回登壇するので、「どうせまた出て来るだろうな」という空気をひしひしと感じました。
自分自身、慣れてしまったせいか、ついついしゃべりすぎ予定を押してしまいました。次回あたりからはあえて登壇を控える回を作り、「出るのかな? 出ないのかな?」という感じにしていこうと考えています。次回があればですが。
さて、本題です。コンサートの準備も、実は本番の3週間前から編集が始まり、数日前まで映像の編集がかかってしまい、絵と音をシンクロさせるこのコンサートの形式からいえばオーケストラの皆さんには大変な思いをさせてしまったかと思います。
にもかかわらず、本番では映像にぴったり合わせて演奏していただき、とても感動的なコンサートになっていました。
また次回があれば、今まで来てくださった方も、まだ1度も来ていない方も、ぜひ会場へ足を運んでいただければと思っています。
ただその時、自分は出ないかもしれません。
以上です。
【新エグゼクティブ・プロデューサー間一朗氏よりコメントを頂きました】
担当とは言え日が浅く、正直未だ何のお手伝いも出来ていないのですが……素晴らしいコンサートにございました!
お呼びいただきまして、光栄です。
壇上からもお話しさせていただきましたよう、演奏、映像は勿論、グッズ等の細部に至るまで、会場全てを以て「キングダム ハーツ」を体感できたよう思います。
ご来場の皆さんにおかれましても、きっとそうだったのではないでしょうか。
なお自身にとっては、大いに幸せ! であるだけでなく、これからを思うに身の引き締まるひと時でもありました。
心より、この素晴らしい空間にて、また皆さんとお会いいたしたく存じます。
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