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小沢純子氏、慶野由利子氏らナムコサウンドのレジェンド達が続々登場! 「NJBP Live! #11 SWEET IMAGINE SWEET DREAMS encore」は“ナムコサウンド特集”
2019年4月24日 12:09
- 4月20日
- 会場:文京シビックホール
プロ奏者によるゲーム音楽演奏集団である「新日本BGMフィルハーモニー管弦楽団」(以下「NJBP」)のコンサートである「NJBP Live #11」が4月20日、文京シビックホールで開催された。
本誌で何度か紹介させていただいているが、NJBPはゲーム音楽プロオーケストラとして固定された団員を擁し、定期的に様々な編成で公演を行なっている。通算45回目の主催公演となる今回は「ナムコサウンド特集」として当初2018年9月30に行われる予定だったが、当日の関東圏への台風直撃により延期を余儀なくされた振替の公演となった。
「NJBP Live! #11 SWEET IMAGINE SWEET DREAMS encore」のセットリストは以下の通り。
【セットリスト】
【第一幕】
・DAWN -Theme of NJBP- (作曲:国本剛章)
・ラリーX & ニューラリーX
ラリーX
ゲームスタートミュージック~インゲームミュージック
ニューラリーX
インゲームミュージック~チャレンジングステージミュージック
・マッピー
オープニングアニメーションミュージック~インゲームミュージック-メイン~ラウンドクリアミュージック~ボーナスラウンドファンファーレ~ボーナスラウンドミュージック~リザルトミュージック~ゲームオーバー~ネームエントリー~エンディング
・ドルアーガの塔
スタートミュージック~インゲームミュージック~クリアミュージック~イシターのテーマ~エンディングファンファーレ~ネームエントリー~ゲームオーバー
・UGSF 5 STARS Space - Subsurface - Surface - Stellar interior - Space again
ギャラクシアン/ギャラガ
スタートミュージック
ディグダグ
スタートミュージック~インゲームミュージック~ステージクリア
ディグダグII
スタートミュージック~BGM1~ラウンドクリア
バラデューク
コイン投入音~Game Start~Grand Finale
スターラスター
ゲームスタート ファンファーレ~Ranking BGM 1~Ranking BGM 3~Ranking BGM 2~ Mission Complete
・セリア姫のポプリ
ドラゴンバスター
プリンセス登場ミュージック~プリンセスとのラブシーン・ミュージック
~ディグダグ
歩行ミュージック
~パック&パル
BGM
~ゼビウス
<2-5位>名前入れミュージック
~ポールポジション
<1位>名前入れミュージック
【第二幕】
・トイポップ
クレジットサウンド
ストーリーミュージック
ラウンドスタート~インゲームミュージック
ラウンドクリアミュージック
ボーナスラウンドミュージック
ゲームオーバーミュージック
ネームエントリーミュージック
・ワギャンランド
NEXT COURCE~LAND BGM 1~LAND BGM 3~ボス登場~ボスバトル
・妖怪道中記
メインBGM~サイコロ道場「よろず屋」~鬼ヶ島~龍宮城-マンボ龍宮~玉手箱~天界-極楽
・源平討魔伝
源平討魔伝のテーマ~横モードからBIGモード~義経~ボーナス・ステージ
・ワルキューレの冒険 時の鍵伝説
BGM A(地上)~エンディング
・ワルキューレの伝説
メインテーマ~ブラックドラゴン~地下のテーマ~城のテーマ~エピローグI~エピローグII
【アンコール】
・UGSF 5 STARSより
スターラスター
【編曲(敬称略)】
ピアノ・管弦楽編曲
羽田 二十八
Burt ACHORACH / 共同編曲 羽田 二十八
ほか
ナムコの数々の伝説が蘇る第一幕
セットリストを見て頂ければ判るが、それぞれの曲に固有のタイトルというものが付いていないのが殆どであり、ゲームミュージックにタイトルを付けるという概念が存在しなかった時代のゲームを中心にチョイスされている。今回のゲストも当時のナムコ(現 バンダイナムコエンターテインメント)ビデオゲーム黎明期を支えたレジェンド達がずらっと並び、当時のゲームセンターでなけなしの100円玉を握りしめて筐体と向かいあったファンのハートを狙い撃ちした企画になっていた。余談だが今回のセットリストの中では「ワルキューレの伝説」の1989年が最も新しいタイトルであった。
まずは、NJBPの代名詞ともいえる「DAWN」がウェルカムミュージックよろしく演奏され、演奏が終わると会場の拍手に迎えられNJBP代表であり、本公演司会進行役の市原雄亮氏が登場。いつものマリオペイントマウスパッド片手に演奏するゲームの説明そして余談をたっぷりのジョークを交えて繰り広げた。
「ラリーX」~「ニューラリーX」では両作品をメドレー形式で演奏。「ラリーX」は原曲では1音のみだが、巧みに音を重ねていき、その間にアクセントをつけるかのようにフラッグ取得音、スペシャルフラッグ取得音を混ぜてゲームシーンを再現。「ニューラリーX」ではさらにラッキーフラッグ取得音まで再現されており、マニアにとってはたまらない展開となった。
「マッピー」はピアノ佐々木智令・佐々木視令姉妹の息の合った連弾でゲームスタートからゲーム展開をなぞるように軽快に進んでいった。セットリストには載っていなかったが、タイムアップが迫ってきた時のテンポが速くなるメインミュージックも当然のように入っており、タイムアップ時のおしおきキャラである「ご先祖様」に散々追い回されたプレイヤーも満足したことであろう。
「ドルアーガの塔」も忠実にゲーム内容を追う展開で、クレジット音から始まりゲームオーバー音までを丁寧に表現した。残念ながらクオックスとドルアーガBGMは無かったが、エンディングにて1ループで転調する部分はPCエンジン版を、エンディングが終わった後にゲームオーバーのBGMになる進行はアーケード版を強く意識した構成になっていると思われる。編曲を担当した編曲家の羽田二十八氏は、編曲にあたってコンシューマ版、アーケード版双方の良いところを取り入れつつも、それぞれの特有の要素にはとことんこだわったとコメントしている。
続いての「UGSF」メドレーだが、「UGSF」とはナムコのゲームに共通して登場する「銀河宇宙連邦軍」の略であり、その世界で描かれ、なおかつ今回のゲストが手掛けたものからそれぞれ1タイトルずつチョイスされている。「ディグダグ」1と2のBGMを重ねたり等の工夫が見受けられたが、特筆すべきは「バラデューク」であろう。セットリストには載っていないが、「バラデューク」のメインBGMは心臓の鼓動のような効果音のみとなっており、シールドが減少してピンチになるとその鼓動が早まり危機感が増す仕掛けになっている。その鼓動をコントラバスなどの低音楽器で表現しているのだ。NJBPの公演はこういったパンフレットに載っていない隠し要素がふんだんに盛り込まれているので、そういう部分を見つけてほくそ笑むのも楽しみ方のひとつである。
第一幕最後は「セリア姫のポプリ」。「ドラゴンバスター」のヒロインであるセリア姫を初めとするメドレーであり、メドレー自体の原編曲を各タイトルの作曲者である慶野由利子氏自体が手掛け、羽田氏が編曲している。各タイトルからメロディアスなBGMがチョイスされ、優しく穏やかで一息つけるような編曲と演奏であった。
最近の(?)タイトル多めの第二幕
幕間を挟んでの最初は「トイポップ」。今回の公演で初お披露目となる当タイトルはその名の通りポップなゲームデザインとミュージックが特徴の作品だが、メインBGMを片方で奏でつつももう片方でアイテム取得時の効果音等を混ぜるという連弾という特性を活かし軽やかなタッチで進行していった。「トイポップ」と「マッピー」のBGMはラグタイム(強拍と弱拍の組み合わせが特徴的な、ピアノ演奏を中心とした音楽ジャンル)を基調にしておりピアノとの親和性がとても高く、ファンの期待通りの王道を見せつける形となった。
続いては「ワギャンランド」。こちらもゲームスタートからボス戦までの一連の流れを踏襲していき、マンボ調の軽快なステージBGMを弦楽器チームを中心としてピチカートで表現しつつ、無敵になった時のBGMは疾走感溢れる演奏へシフト、そしてボス戦では管楽器メンバーを中心としたビッグバンド形式で華やかにと、各セクションが八面六臂の活躍を見せた。
そして「妖怪道中記」と「源平討魔伝」が登場。和風な世界観、地獄から始まるステージ構成等似通った部分はあるものの、片やコミカル片や硬派という対照的な2タイトルであるが、和楽器を使用せずともその世界観を見事に表現した編曲、そして演奏であった。「妖怪道中記」ではやはりメインBGMがポピュラーだと思うがサイコロ道場BGMが入っていたところ、そして「源平討魔伝」は義経戦が終わった(義経を倒した)後に通常のBIGモードのBGMに戻るというゲーム内容に忠実に沿っていたところに個人的ながら称賛を贈りたい。
最後は「ワルキューレの冒険」、「ワルキューレの伝説」の2作が続けて演奏された。「ワルキューレの冒険」は原曲が管弦楽編成と親和性が高いものであり、市原氏もプレイ当時からそれを感じており現実のものとなって感無量であるとのコメントを残している。実際に演奏が始まるとなるほど低音部を初めとした素晴らしいマッチングであった。続編となる「ワルキューレの伝説」では、当時ナムコ最新のシステム基盤であるSystem2に搭載されていた音源チップYM2151(FM音源チップ)+C140(カスタムチップ)の性能を活かした美麗で透明感のあるサウンドが特徴的と言えるが、ストリングスを初めとした原曲の雰囲気を残しつつ管弦楽ならではの構成で世界を再現した。その堂に入った演奏ぶりには、「ワルキューレ」シリーズの作曲者である川田宏行氏も最終リハーサルチェック時に太鼓判を押していたほどであった。
盛大な拍手に送られる形で一旦奏者は退場したが、鳴りやまない満場の拍手に迎えられるようにして市原氏と羽田氏が登場、そしてアンコールとして「スターラスター」が再度演奏され、本公演は終了となった。
小野浩氏、小沢純子氏ら公演を彩ったレジェンド達
演奏の合間には各タイトルにちなんだゲストが登場し、市原氏と事前打ち合わせなしのアドリブ全開なトークが繰り広げられた。このトーク目当てに公演に足を運ぶファンも多く、今回もトークが盛り上がるあまり時間押しのベルが進行から鳴らされつつも貴重な話を聞くことが出来た。せっかくなので本稿でもいくつか紹介したい。
【小野浩氏】「ニューラリーX」、「マッピー」などのドット絵を制作
・手掛けてきたドット絵で最も気に入っているのは「マッピー」に出てくる取得アイテムである絵画(モナ・リザ)であるが、実物を見ずに記憶頼りに作ったため手の組み方が違っていた。
・ドット絵を作るときには元絵から「何を削るか、何を残すか」に苦心しており、時には1週間かかることもあるがその制約が楽しくもありやりがいがある。「半ドット」があれば楽なのになと本末転倒な事を考えたこともある。
【小沢純子氏】「トイポップ」、「ドルアーガの塔」などを作曲
・4/13に開催されたドルアーガのリアル謎解きイベントに挑んだがクリアまで7時間かかってしまい、その間会場で流れ続けていた「ドルアーガの塔」BGMが頭から離れなくなってしまった。
・前回の公演で「バラデューク」のゲームスタートBGMが演奏された際、思わず立ち上がってパケット族よろしく「I'm your FRIEND」と言いそうになった。(小沢氏はバラデュークに登場する友好種族「パケット族」のボイスを担当している)
・ドット絵のドルアーガがラスボスにもかかわらず強そうに見えず(それどころかドルアーガの動きがくるくる回っているようにしか見えなかった)、その弱そうなイメージでドルアーガフロアの曲を作ったらゲーム・デザイナーの遠藤雅伸氏にダメ出しされてしまい、その曲は57F・60Fのイシター(サキュバス)登場フロアで使われることになった。ちなみに「マッピー」や「ニューラリーX」などを作曲した大野木宣幸氏もドルアーガは回っているように見えたようで、ドルアーガフロアBGMに「ドルアーガドルアーガくるくるくるくる~」という歌詞を付けていた。
【慶野由利子氏】「ディグダグ」、「ドラゴンバスター」などを作曲
・音楽専門スタッフとして当時のナムコに入社したが、ハード屋ソフト屋をこなす、まるで機械語を話すような開発スタッフの中に飛び込む形になり、コンピュータに関わる知識などを勉強しながら仕事することになった。
・先輩である大野木氏に治具(工具の制御などを行う装置)を作ってもらった。打ち込むと打ち込んだ内容の音が流れるという特別仕様のサウンド開発用基板がテーブル筐体に収まっており、それを使ってサウンドの確認をしていた。
・1979年当時、音色というものを作ることが出来る基盤が存在したのは画期的であった。
・ドラゴンバスターで使われている基盤の同時発音数は8。
【中潟憲雄氏】「バラデューク」、「源平討魔伝」などを作曲
・現在でも“源平の呪い”と思わしきトラブルが度々身の回りに起きている。
前回公演収録時に源平討魔伝の部分だけが何故か録音できていなかった。
中潟氏率いるロックバンドのメンバーがリハーサル前日に餅を喉に詰まらせた、また別のリハーサル前日には別メンバーが心筋梗塞で倒れた。
【川田宏行氏】「妖怪道中記」、「ワルキューレの伝説」などを作曲
・「妖怪道中記」の1シーンのために桃太郎と浦島太郎の歌を違和感なくつなぎ合わせた曲を勝手に作ったり、龍宮城のシーンなのにマンボを取り入れたりと、フリーダムかつ楽しく制作していた。
・ある朝起きた時点でメロディが頭の中に浮かんでいることがあり、(何故起きているときに思い浮かばなかったのかと)舌打ちしながらメモに書きとっている。※小沢氏によると、大野木氏も同様の現象が起きることがあるとのこと
“第四の壁”を感じないアットホームな公演
NJBPでは市原氏のゲームにまつわるトークやゲストを交えての軽妙なやりとり、さらには今回は観客からゲストへ向けての質問など、いわゆる「第四の壁」を余り感じないような気軽に足を運べる公演となっている。そして何よりもゲームミュージックというものに対する編曲や演奏のこだわりが半端ではない。それは本セットリストを見て頂ければゲームスタートからゲームオーバーまでの一連の流れを忠実に組み込んでいるあたり明白なので、昔の思い出に浸ってみたいゲームファンは一度足を運んでいただきたい。また、今後の活動予定としてファン感謝デーが5月に、“国本剛章スペシャル”が6月に、そして「NJBP Famicon #1」という公演が2019年8月に予定されている。「NJBP Famicon #1」に関しては後日詳細発表とのことだが、こちらも公式サイトをチェックされてはいかがだろうか。