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eモータースポーツの楽しさをアピール!「グランツーリスモSPORT」を用いた「これがe-Motor Sportsだ!」&「真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」開催

10月8日 開催

 東京・お台場で10月6日から8日まで、3日間に渡って「東京モーターフェス2018」が開催された。最終日である8日には、クルマのテーマパーク「MEGA WEB(メガウェブ)」のライドスタジオに設営されたeモータースポーツ専用のサーキット「e-Circuit」を会場に、「グランツーリスモSPORT」を用いたイベント「これがe-Motor Sportsだ!」と、「グランツーリスモ真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」が行なわれ、クルマ好きの来場者たちを大いに楽しませた。

千原ジュニアさんらがeモータースポーツに挑戦! 「これがe-Motor Sportsだ!」

 14時20分からはじまったこのイベントでは、MCの平岩康佑氏の紹介で、クルマ好き著名人のお笑いコンビ「千原兄弟」の千原ジュニアさん、お笑いコンビ「FUJIWARA」の原西孝幸さん、そして元サッカー日本代表、大黒将志さんが登壇。

 原西さんはもともとアメ車好きだが維持費の高さから家族が反対。今はアウディに乗っているというエピソードを披露。バイク好きで知られ、今日もお台場へはバイクで来たという千原ジュニアさんは、クルマも大好き。遊びはバイク、仕事はクルマと使い分けているとのこと。そして大黒さんもまた、かなりのクルマ好き。ガンバ大阪時代に「山へ行くと人格が変わるくらい」というスピード狂の先輩から影響を受け、スポーツカーをいろいろ乗り継いでいるそうだ。

左からMCの平岩康佑氏、原西孝幸さん、千原ジュニアさん、そして大黒将志さん

 まずは平岩氏のリードで「eモータースポーツ」について解説。この前日まで同じ会場で「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権」が開催されていたが、これはFIA、国際自動車連盟と「グランツーリスモ」による公式な大会。モータースポーツにはF1やスーパーGTといったさまざまなカテゴリーがあるが、FIAとしては、そのカテゴリーのひとつとしてeモータースポーツを立ち上げているところなのだという。

 その後、登壇者たちは現在のeモータースポーツではかなりリアルな走りが楽しめる一方、ぶつけても怪我をしたりクルマが壊れたりしないという点に言及。ニュースとなった元アイドルやお笑い芸人の名前を挙げつつ、きわどい笑いを取っていた。

 そしてこの3人に対し、「グランツーリスモSPORT」を教えるため、元レーシングドライバーであり、チームルマンの監督も務める脇坂寿一氏、そして「グランツーリスモSPORT」の開発元であるポリフォニー・デジタルの代表取締役にしてプロデューサーの山内一典氏が登壇した。

 平岩氏から3人に向けたタイムを縮めるためのアドバイスを求められた脇坂寿一氏だったが、「お笑い界やサッカー界の戦いを勝ち抜いてこられたお三方に僕から何か言う必要はない」とまさかの拒否。一方、山内氏は今回3人が走るコースが身近な首都高であることをまず伝え、「ご自身のクルマで走っているように走らせるといいと思います。ぶつけちゃダメです」と優しく助言を与えた。

3人のレースに解説を加えたのは、明るいキャラクターで知られ、幅広い活躍を見せる元レーサーの脇坂寿一氏と、「グランツーリスモ」を作った男、山内一典氏

 千原ジュニアさんは日産GT-R GT3、原西さんはマツダ アテンザ Gr.3、大黒さんがホンダ NSX Gr.3に乗り込み、レースがスタート。意外にも3人ともあまり外壁に接触することもなく、スタートしたグリッド順に千原ジュニアさん、原西さん、大黒さんの順でレースは展開していった。

 2周目に入り、「メチャメチャおもろいな!」と興奮気味の千原ジュニアさんを原西さんがパス、さらにその2台の様子を後ろからうかがっていた大黒氏がすかさず2台まとめて抜き去ろうとしたその瞬間、ハードウェアトラブルで大黒さんは脱落。最終的に原西さんが先頭でフィニッシュとなった。

首都高をモデルにしたコースを走る3人。先行する千原ジュニアさんを原西さん、大黒さんが追う展開だったが、レース中盤で原西さんがトップを奪取。大黒さんは機材トラブルで無念のリタイアとなってしまった

 巧みなトークを織り交ぜながら、来場者にそのリアルさと楽しさをアピールした3人。そのなかなか見事な走りに、脇坂氏、山内氏がともに賛辞を送り約30分のイベントは終了となった。

3人1組のチーム戦で各メーカーがガチバトル! 「グランツーリスモ真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」

 15時過ぎからは、同じe-Circuitを会場に、「グランツーリスモ真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」が開催された。これは日本国内の自動車メーカー6社によるメーカー対抗戦だ。

 現在、「グランツーリスモSPORT」では、「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ マニュファクチャラーシリーズ」という、オンラインのシリーズ戦が開催されている。これは一般のプレーヤーが任意のメーカーとドライバー契約を結び、メーカー同士で勝利を競い合うチャンピオンシップ。今回の「グランツーリスモ真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」は、言うなればそれの特別版みたいなものと言える。

 MCの平岩康佑氏の紹介で登壇したのは、ARTA Project(AUTOBACS RACING TEAM AGURI)でエグゼクティブ・アドバイザーを務め、ドリキンの愛称でも知られる土屋圭市氏、「グランツーリスモ」の元アジアチャンピオンで現在はポリフォニー・デジタルで開発に携わるYAM氏、そしてプロレスやインディカー・シリーズの実況などで活躍する村田晴郎氏だ。

実況解説に元レースドライバーの土屋圭市氏、「グランツーリスモ」の元アジアチャンピオンYAM氏、それにインディカー・シリーズの実況などを務める村田晴郎氏を迎え、「グランツーリスモ真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」が開幕

 土屋氏とYAM氏は前日に行なわれた「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権」でもわかりやすい解説を聞かせてくれた。インディカー・シリーズの実況などでも知られる村田氏は、eモータースポーツの実況を務めるのはこれが初めての様子。「困りましたねぇ。まだインディ500のほうが気が楽です」とコメントしていた。

 続いて壇上には今回のレースを争うドライバー、総勢18名が登場した。今回のレースでユニークなのは、3人1組のチームで15周という長いレースを争うという点。しかも各チームとも、メーカーのワークスドライバーなどを務めた「選出ドライバー」、「自動車メーカー社員」、そして前述の「グランツーリスモ マニュファクチャラーシリーズ」で6メーカーのトップにランキングされている「eモータースポーツ選手」という3人で構成されている。

 注目すべきは、トヨタと日産、そして三菱。これらのチームには前日の「ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権」で2位となったYamanaka選手、優勝したKokubun選手、4位に入ったYoshida選手がそれぞれ名を連ねているのだ。

 リアルなモータースポーツを熟知した選出ドライバー、クルマを知り尽くしたメーカー社員、そして「グランツーリスモSPORT」に精通したeモータースポーツ選手。3人のチームワークと交代のタイミングが勝敗を左右することは間違いない。

自動車メーカー対抗戦に出場した全18選手。左からスバル、日産、マツダ、三菱、ホンダ、トヨタと並ぶ。それぞれ得意とする分野の違うプロ3人がチームを組んでいる

自動車メーカー対抗戦・出場ドライバー・使用車両

※メーカーは五十音順、またGT選手名の()はPSNのプレーヤーネーム。

スバル
使用車両WRX Gr.3
選出ドライバーJRCドライバー 新井敏弘氏
社員取締役開発本部長 森宏志氏
GT選手Takuya Miyazono(Kerokkuma_ej20)選手
トヨタ
使用車両GRスープラ レーシング・コンセプト
選出ドライバーレーシングドライバー/TGRアンバサダー 脇阪寿一氏
社員GR開発統括部チーフエンジニア 多田哲哉氏
GT選手Tomoaki Yamanaka(yamado_racing38)選手
ホンダ
使用車両NSX Gr.3
選出ドライバーレーシングドライバー 牧野任祐氏
社員部長 山本雅史氏
GT選手Shouhei Sugimori(s-shohei)選手
日産
使用車両GT-R GT3
選出ドライバーNISMOアンバサダー 柳田真考氏
社員日本マーケティング本部 ブランド&メディア戦略部 福永洋輔氏
GT選手Ryota Kokubun(Akagi_1942mi)選手
マツダ
使用車両アテンザ Gr.3
選出ドライバーTCR JAPAN代表者/レーシングドライバー 加藤彰彬氏
社員商品戦略本部 商品ビジネス戦略企画部 横浜先行商品企画G アシスタントマネージャー 板垣勇気氏
GT選手Shoutarou Ryu(Ryu_Ryu_RS)選手
三菱
使用車両ランサー・エボリューション ファイナル Gr.3
選出ドライバー奴田原文雄氏
社員EV・パワートレイン技術開発本部CTE 百瀬信夫氏
GT選手Shogo Yoshida(gilles_honda_v12)選手

各ドライバーのコメントが、各社のプライドを賭けた戦いを盛り上げる

 全選手がステージ上に揃ったところで、平岩氏が各チームの選出ドライバーにレース前の意気込みを尋ねた。最初に答えたのは、スバルの新井選手で、「まったく畑違いなので三菱チームにだけは負けないようにしたい」とのこと。

 続いてトヨタの脇坂選手は「メーカー対決でしょ? 負けたくないです。先ほど土屋さんにバラされましたが、3日間、コソ練してきたんです。でも先ほどYamanaka選手に聞いてみたら、5秒くらいタイムが違いました」とコメント。

 日産の柳田選手は「昨日まで韓国にいたんですが、(脇坂)寿一さんが練習していると聞いてひとつ早い便で帰ってきました。僕たちにはチャンピオンという心強い助っ人がいるんで頑張ります」と、Kokubun選手のサポートへの期待を述べた。

日産の柳田選手は「ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権」で見事王者に輝いたKokubun選手の走りに期待を寄せた

 また、今回のレースに向けて、事前の準備をしていたチームも。マツダの加藤選手は「マツダチームは先週、PS4を急遽買ってきて練習会を開きました。ハンドリングのいいマツダ車を活かしていい結果を残したいと思っています」と抱負を語った。

 スバルからライバル心剥き出しのコメントをぶつけられた三菱の奴田原選手は、「ランエボで走るんですけど、ダートが好きなんですぐコースから飛び出しちゃうんですよね(笑)」と笑いを取りつつ、「今日はYoshida選手の指導でコースの上をちゃんと走ります。新井選手が意識しているようなので、スバルチームには負けないように頑張りたいと思います」と、世界ラリー選手権(World Rally Championship、以下WRC)でしのぎを削ったスバルへ返答。

 最後にコメントしたのは、ホンダの牧野選手。「今日、10時に会場入りしたんですけど、その時点で脇坂選手は練習してましたし、さっきは日産の柳田選手とトヨタの脇坂選手がどうやって僕を落とすかという作戦会議をしていたんで、今後が心配です(笑)」とのこと。牧野選手はトヨタ、日産からかなり警戒されている様子だ。

 モータースポーツファンなら思わずニヤリとしてしまうコメントの数々に、これからはじまるレースへの期待は高まった。

劇的な幕切れ! 優勝は最下位スタートのマツダ!!

 今回のレースは鈴鹿サーキットを舞台にGr.3のカテゴリーで全15周を走り、争われる。また、選出ドライバー、社員、eモータースポーツ選手という順で、それぞれ最低3周を走らなければならない。タイヤについても規定があり、ハード、ミディアム、ソフトと最低1度は使うことが義務づけられている。3人それぞれがどのタイヤを使うかもまた、戦略として大きな意味を持つはずだ。

 事前にチーム代表によるじゃんけんで決められたというスターティンググリッドは、ホンダ、スバル、日産、三菱、トヨタ、マツダの順。ローリングスタートによって戦いの火蓋は切って落とされた。

 スタートは選出ドライバーによる対決。WRCなどで活躍したスバルの新井選手と、SUPER GTに参戦中の日産・柳田選手のバトルなど、1周目からリアルなモータースポーツではまず見られない組み合わせのバトルが勃発。新井選手がラリードライバーらしく(?)デグナーカーブ付近でコースアウトしてダートに出てしまうなど、いきなり盛り上がる展開となった。各チームともほとんどミディアムタイヤを選択するなか、スバルだけはハードタイヤを選択した影響かもしれない。

 ファーストラップの最終コーナー手前で日産・柳田選手もコースアウトすると、2位に浮上したのは、なんと最後尾スタートだった、マツダの加藤選手。しかしそのアテンザをホームストレートでスリップストリームに入ったトヨタ・脇坂選手が抜き去っていく。この3者による熱い2位争いがしばらくレースの見どころとなった。

 3周を終えスバルが、そして4周を終えて日産とトヨタ、三菱と、次々とピットインし、社員ドライバーへと交代。ここからは各車ともにミスが増え、中位以降が混沌としていくなか、独走を続けるホンダの牧野選手をマツダ・加藤選手が猛追。牧野選手のタイヤがグリップを失うのを見極めると、加藤選手が首位に立った。

マツダの加藤選手を巧みに押さえるトヨタの脇坂選手。そこに日産の柳田選手が絡むのだが、柳田選手は追いつくたびにミスをしてまた差を開けられる展開
タイヤが限界に来たホンダの牧野選手。虎視眈々と後ろから抜き去るタイミングを伺っていたマツダの加藤選手はチャンスを見逃すことなく、首位に

 そのマツダは2位に30秒の差を付け、8周目で1回目のピットイン。しかし、この頃すでにトヨタ、日産、三菱などはeモータースポーツ選手へと交代を終え、Yamanaka選手、Kokubun選手、Yoshida選手による3、4、5位争いが白熱。テール・トゥ・ノーズのバトルで実況と会場の注目を独占していく。

ホンダ、三菱、日産と、eモータースポーツ選手3人による白熱の3位争い。Yamanaka選手のブロッキングに苦戦するYoshida選手が抜き去るタイミングをなかなか見出せないなか、Kokubun選手が2人をぴたりと追い続ける

 しかしその影で2回目のピットインを終えたマツダ。他のeモータースポーツ選手がソフトタイヤをもう1度履き替える作戦を採るなか、ハードタイヤでピットインの回数を抑えたRyu選手が淡々と首位をキープしたまま周回を重ね、そのまま優勝。その後ろでは130R出口でスバル・Miyazono選手がオーバースピードでコースアウトしたのをきっかけに、2位から5位が急接近! シケインでは熾烈な順位争いが起き、最終コーナー入口ですでにタイヤが限界に来ていたトヨタ・Yamanaka選手がスピンを喫し、最終的に6位へと順位を落としてしまう。

 沸き起こる混乱のなか、スバル、日産がいち早く最終コーナーを抜け、また、他車より4秒以上速いベストラップをたたき出したホンダ・Sugimori選手が三菱を抜いて4位に入り、こうして「グランツーリスモ真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」は劇的な幕切れを迎えたのだった。

ファイナルラップ終盤にドラマは起こった。スバルのMiyazono選手がアウトに膨らんだのを機に2位以下の差が一気に詰まり、状況は混沌! スピンしてしまったトヨタのYamanaka選手は最下位に沈んでしまった。

 レース終了後には、原西さん、大黒さんとともに、ポリフォニー・デジタルの山内氏も再び登場した。今回のレースを受け、「新しいモータースポーツの形が見えてきた気がする」と語りかけた平岩氏に対し、山内氏は「モータースポーツはこれまで限られた人しか体験できないものだったが、eモータースポーツの世界がはじまることでいろんな方々がレースを楽しめるようになると思います」とコメント。

 また、トッププレーヤーたちのレースを間近で見た大黒さんは「最終ラップの順位争いはおもしろかったですし、タイヤがタレるといったところまで表現されているリアリティに驚きました」とコメント。「タイヤがタレるって、そんな専門的なこと(笑)」と疑っていたという原西さんは、最終ラップでグリップを失ったスープラを見て、「グランツーリスモSPORT」のリアルさに驚いていた。

 この「グランツーリスモ真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」、蓋を開けてみれば筆者が想像していた以上におもしろいレースとなった。これはひとえにジャンルがまったく違う「3人のプロ」を1組として長距離を走らせるというレギュレーションの妙に尽きると思う。3人それぞれにどれだけの周回を走らせ、それぞれにどんなタイヤを履かせるかで、各社の戦略にかなりの幅が生まれ、さらに、走行時のミスといった予期せぬアクシデントが加わることで、レースは非常に見応えのあるものとなった。

 前日まで開催されていた「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権」のようなプロによるストイックな大会ももちろんおもしろいのだが、今回の「グランツーリスモ真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」のような、エンターテインメント的な要素を加味したレースもまた違った楽しさがある。

 今回の「グランツーリスモ真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」のようなエキシビションレースはeモータースポーツの発展という面だけでなく、リアルのモータースポーツの認知拡大、人気向上への相乗効果も期待できるのではないだろうか。そんなことも考えさせられた。

優勝はピットインのタイミングとタイヤチョイスの戦略が見事にはまったマツダ(中央)。2位にはスバル(左)、3位に日産(右)が入った

「グランツーリスモ真剣勝負・自動車メーカー対抗戦」最終結果

順位チームベストラップトータルタイムギャップ
1位マツダ2:00.99731;28.419+00.000
2位スバル1:59.44331:30.551+02.132
3位日産1:59.96731:30.804+02.385
4位ホンダ1:52.53231:31.565+03.146
5位三菱1:58.66331:32.075+03.656
6位トヨタ1:58.48831:49.035+20.616