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【特別企画】「RDR2」をプレイする前に、めくるめく西部劇の世界を見てみよう!
“西部劇の教科書”からぶっ飛びドラマまで4本をオススメ
2018年8月10日 12:34
いよいよ10月26日に発売となる「レッド・デッド・リデンプション2(「RDR2」)」。発売に向けてプロモーションもスタートし、盛り上がりを見せている。
「RDR2」は、西部劇をテーマにしたオープンワールドアドベンチャーだ。プレーヤーは銃を持ち、馬を相棒に西部の荒野を旅していく。しかし、「そもそも西部劇って何?」という人も多いと思う。北米の人にとって西部劇は、日本の時代劇と同じ、「昔の人達、歴史を題材にしたドラマ」である。が、現代の日本人には縁遠いところがある。
西部劇は19世紀、西海岸のゴールドラッシュによって始まった西部開拓時代を扱うドラマである。1950年代、戦後まもなくの大きな娯楽として西部劇の映画がたくさん制作され、日本でも上映された。その後の娯楽作品にも大きな影響を与えた。
現在の70歳前後の人達は、子供の頃ガンマンになって、悪い先住民や、ならず者達と戦うヒーローに夢中になった。そう、現代の私達にとって西部劇は、「親や祖父が夢中になったもの」という感覚があると思う。西部劇は現在でも映画が作られることはあるが、“古典”という扱いになっている。
「RDR2」のPVには、とてもリアルに、そして美しく西部開拓時代の風景が描きだしている。このPVに西部劇へ興味を強めた人は多いだろう。ゲーム発売前に、そのエッセンスに触れてみたいが、「どんな西部劇映画を見れば良いかわからない」という人は多いはずだ。DVDのパッケージを見ても白黒だったり、時代背景もよくわからない、何らかの“ヒント”が欲しい、そう思っている人もいると思う。
そこで今回、筆者は西部劇映画から4本の作品を選んだ。ガッツ石松氏のギャグ「OK牧場」での戦いをテーマにした「荒野の決闘」、ビリー・ザ・キッドの危険な青春を描く「ヤングガン」、緊張感溢れる実験作「真昼の決闘」、そしてサム・ライミ監督のぶっ飛んだ西部劇「クイック & デッド」。今回はこのユニークな切り口の作品をピックアップしてみた。本稿を皮切りに、めくるめく西部劇の世界に足を踏み入れてはいかがだろうか。
西部の街、人の生活が垣間見える“西部劇の入門書”、「荒野の決闘」
1947年制作
監督:ジョン・フォード
主演:ヘンリー・フォンダ
「荒野の決闘」は、ガッツ石松氏の一発ギャグの元ネタである「OK牧場」がクライマックスの戦いの舞台となり、この戦いで西部開拓史に名を轟かした保安官・ワイアット・アープが主人公となっている。ワイアット・アープを長兄とするアープ4兄弟はカルフォルニアを目指して大量の牛を輸送していたが、末っ子ジェームズを見張りに残し、近くの町・トゥームストンを訪れた隙を狙い何者かに襲撃され、ジェームズは殺され、牛は全て奪われてしまう。
ワイアットは弟たちを連れてトゥームストンへ戻り、町長の誘いを受け保安官に就任する。ワイアットはかつてダッジシティの保安官として名を知られた男だったのだ。ワイアットは強面の保安官として町ににらみを利かす。ワイアットは、弟を殺し、牛を盗んだ犯人として、この街で「OK牧場」を経営しているクライアント一家を疑うが、証拠はない。
トゥームストンには町に名を轟かすガンマンのドク・ホリディがいた。ワイアットとドクは最初は反発するも、友情で結ばれる。映画のクライマックスはアープ兄弟とクライアントの対決である。アープ兄弟は弟殺しの証拠を掴むが、クライアント一家は「OK牧場で待っている」と挑戦状を叩きつけてくる。ドクはアープ兄弟に力を貸し、歴史に名高い「OK牧場の決闘」が始まる。
……実は、この映画は単純にドラマとしてみるといささか退屈だ。本作で犯人捜しや決闘シーン以上に丹念に書かれているのは「西部の人々の生活」なのだ。いかさまポーカー、旅芸人、酒場での乱闘や、町で唯一“オシャレ”をもたらす理髪店など、本作は西部の日常描写を丹念にしており、「西部劇の教科書」とも言える映画になっている。「RDR2」をプレイする前に見ておいて損のない映画である。
ドクの描写もとても魅力的だ。ドクはハンサムな男であり、教養も高いが、肺病を病み、この地に流れ着いてきた。映画では彼にベタ惚れな娼婦チワワや、ドクを追ってボストンからやってきた可憐な娘クレメンタイン・カーターへのワイアットの恋など、ドクのエピソードに重きが置かれている。撃ちまくり、戦いまくりのアクション映画とは一味違う、西部の空気を感じられる映画である。
荒野を生きぬく若者達の戦いと、ビリーの狂気……「ヤングガン」
1988年制作
監督:クリストファー・ケイン
主演:エミリオ・エステベス
1988年製作の映画であり、エミリオ・エステベス、チャーリー・シーン、ルー・ダイアモンド・フィリップス、「24」で大ブレイクしたキーファー・サザーランドといった俳優達が出演するのも注目である。
主人公のビリーは、元英国紳士であり、アメリカで牧場を大きくしようとするタンストールに拾われる。彼は行き場のなくなった若者達を雇い、自警団「ヤングガン」を結成していた。ビリーはそこで5人の若者と共に働くこととなる。しかしタンストールを邪魔に思う土地の権力者マーフィは、手下を使いタンストールを暗殺、ビリーと5人の若者は復讐を誓う。しかしマーフィーは保安官や知事と結託し「サンタフェ・ファミリー」を結成し、手が出せない。
タンスールの友人、アレックスはヤングガン達を臨時保安官にするように働きかけ、法の番人としてサンタフェ・ファミリーを切り崩そうとする。ヤングガンは犯罪者を生きたまま逮捕しようとするも、ビリーが暴走、犯罪者達を撃ち殺してしまう。ヤングガンのリーダー・ディックは「俺達は保安官だぞ」とビリーを止めようとするが、彼は犯罪者を撃ち殺し続け、やがてヤングガン達そのものが賞金稼ぎに追われる存在となってしまう。ディックが死に、ヤングガンはビリーの狂気に引っ張られるまま、逃走と戦いを繰り返す。
ヤングガン達は疲弊し、さすがのビリーもメキシコへの逃亡を決意するしか道は無くなる。しかし、マーフィーがアレックスを手に掛けようとすることを聞き、救出に乗り出す。マーフィーの息がかかった数十人の賞金稼ぎがアレックスの家を取り囲む中、ヤングガンの最後の戦いが始まる。そしてついに、軍隊までもが包囲網に加わるのだった……。
ワイアット・アープの「OK牧場の決闘」同様、軍隊までもが出撃した「リンカーン郡戦争」も史実から西部の伝説へと繋がり、様々な作品のテーマとなった。「ヤングガン」は史実を大いに脚色している作品であるが、無法の世界に身を置く若者達が、狂気を秘めたビリーに引っ張られながら、暴走していく青春の物語として、グッとくる作品となっている。
その後様々な作品で活躍する若き俳優達も大いに魅力であるが、本作は時代考証がしっかりしており、マーフィーの成金風の衣装、タンスールのしっかりした仕立てもの、ヤングガン達の出で立ちなども練られていて、チェックすると楽しい。不正が横行する当時の政治力学も興味深いし、賞金稼ぎや、軍隊の描写など、こちらも時代を学べる作品となっている。
映画と現実の時間がシンクロした緊迫の1時間。古典西部劇の実験作「真昼の決闘」
1952年制作
監督:フレッド・ジンネマン
主演:ゲイリー・クーパー
ウィル・ケインは、結婚を機に、保安官をやめ、街を出ることになった。街の住人はこれまで街を守ってくれた英雄に惜しみない賞賛を与え、彼と花嫁を祝福する。しかしそこに不吉な知らせが来る。ケインと街が一丸となって逮捕した悪党フランク・ミラーが正午に到着する列車で帰って来るというのだ。
ミラーはこの辺り一帯を脅かしていたギャングであり、5年前ケインが街の人々と協力して捕らえた。しかし彼はどんな手を使ったか保釈となり、ミラーの手下が駅に出迎えに行っている。ミラーの目的は間違いなく復讐だ。ケインは街の住人から急かされ一旦は花嫁と共に街を出るが……彼は戻ってくる。街をミラーから救うために。
花嫁は「もうあなたが戦う理由などない」とケインを責め自分1人だけで街を去るという。それでもケインは街の平和を守るために動き始める。列車が到着するまであと1時間、「真昼の決闘」の実験的で面白いところは、ミラーが到着するまでの1時間を、ほぼリアルタイムで描いているところなのだ。
ケインはかつて力を合わせた仲間を訪ね、再びミラーと戦おうと声を掛ける。しかし皆は怖じ気づいてしまっていた。ほんの少し前、彼を祝福してくれた友や仲間達は皆ケインに背を向ける。絶望に覆われていく中、時計の針は回っていく。「真昼の決闘」では協力者を求め街を巡るケインの姿をリアルタイムで描写し、その徒労と迫り来るタイムリミットを残酷に描き出している。ケインはどうなるか、強い緊張感の中、やがて決定的な結末が訪れる……。
「真昼の決闘」はこれまでの友情と開拓者精神に満ちた「西部劇」という映画ジャンルを変えた作品として知られているという。本作を境に、西部劇でも深く人間性に根ざしたドラマが描かれるようになった。年を経たゲイリー・クーパーの憂いを感じさせる風貌が、正義が空回りしながらも、それでも信念を貫こうとする男の哀しみを表現していて、引き込まれる。
そして本作のテーマのクライマックスは、そのラストになる。ネタバレのため書けないが、「クェーカー教徒」という、当時のアメリカに強い影響を与えた人々の事を調べておくと、監督が本作に託したテーマを一層理解できると思う。本作を見てから、色々調べて欲しい作品だ。
色物枠だが、そのカッコ良さはまさに西部劇! 「クイック & デッド」
1995年制作
監督:サム・ライミ
主演:シャロン・ストーン
ギャング団のボス・ジョン・ヘロッドに支配される街リデンプション。ここでは年に1回「早撃ち大会」が行なわれていた。勝者にはへロッドが銀行や列車を襲って得た膨大な賞金が与えられる。この大会の優勝候補はへロッド本人だ。彼は卓越したガンマンであり、この大会を利用し、邪魔な敵を排除し続けているのだ。挑戦者は富と名声を求めてだけの者もいるが……へロッドの命を狙う者もいる。
この大会に、暗い目をした美女が参加する。彼女の名はエレン。その目は鋭くへロッドに注がれている。大会には怪しげなならず者が集まってくる。洒落者のエース・ハンロン、脱獄した歳の囚人服を着続けている(もちろん風呂には入らない)スカーズ、白人には負けないというネイティブ・アメリカンのスポーテッド・ホース……へロッドの息子でガンマニアのキッドも参加を表明する。
さらにへロッドは特別ゲストとして“牧師”を連れてくる。彼の名はコート。かつてはへロッドの右腕としてギャング団に所属していたが、改心し牧師となり教会を営んでいたが、へロッドに教会を燃やされ、無理矢理大会に参加させられる。コートは「2度と銃は撃たない」というものの、いざというとき習い覚えたそのワザが目を覚ましてしまう。
サム・ライミ監督は、「スパイダーマン」でブレイクする前も、コアな映画ファンに取って注目の映画監督だった。「クイック & デッド」は筆者が大好きな映画である。個性豊かなガンマン達が、格闘ゲームの様に決闘を繰り広げる展開など、キャラクターのアクがとにかく強く、西部劇ファンでなくても楽しめると思う。
コートはもう1人の主人公とも言える存在だが、サム・ライミ作品のヒーローらしく、徹底的にいじめられ、その心を試される。何度自分の信念を踏みにじられても、正しさを否定されても、それでもあがき続けるその姿はグッとくるものがある。
そして、本作で最も魅力的に描かれているのは、ジーン・ハックマンが演じるへロッドだ。彼は帝王として君臨し、その冷徹さと、無敵の強さを見せつける。しかし、かつての仲間であるコートに向ける憎しみや、「父親を超える」という無邪気だが必死な思いをぶつけてくるキッドとの不器用な親子関係、街の住人が雇った賞金稼ぎへの苛烈な制裁など、様々なところで見せる“帝王の孤独”は強く印象に残る。正体不明のエレンを探る駆け引きなど、映画の悪役としてとてもカッコイイ。
「クイック & デッド」はジーン・ハックマンを始め、キッドを演じるレオナルド・ディカプリオ、コートを演じるラッセル・クロウ。個性豊かなガンマン達から、酒場の親父、エレンを助ける盲目の少年など、どの役者もそのキャラクターを楽しみ、ノリノリで演じているのが良いのだ。サム・ライミ監督ならではの「劇空間」とも言える雰囲気が良い。その中でエレンを演じるシャロン・ストーンはすごく生真面目にタフな女ガンマンを演じていて、そのちょっとした“違和感”が映画の良いスパイスになっている。楽しんで見てもらいたい映画である。
今回は4本の映画を抽出したが、まだまだオススメは多い。ロードムービーとして楽しい「駅馬車」、持ち主を次々と変える銃が主人公の「ウィンチェスター銃'73」などがあるし、クリント・イーストウッドの「許されざる者」や、「7人の侍」を西部劇としてリメイクした「荒野の7人」もいい。終わりゆく西部を描いた「ウエスタン」は筆者が大好きな映画だ。もちろん、筆者が見ていない楽しい作品はたくさんある。
「レッド・デッド・リデンプション2」は西部劇への思いが詰まったゲームだ。プレイすることでまるでタイムスリップしたように、その世界の住人になった気持ちになれる。そのときに、西部劇への知識や、想いがあれば一層ゲームは楽しくなると思う。本稿を足がかりに、西部劇を楽しんで欲しい。
8月10日には、ゲームプレイトレーラーが公開され、実際のゲームシステムが明らかになった。ギャングの1員としての生活、プレーヤーのインタラクションが関係性に変化をもたらすコミュニケーションシステム、拳の感触や、銃の反動も体験できる戦闘システムなど、ゲームプレイにリアリティを盛り込み、西部劇の世界に没入できる作品であることが明らかになった。
「映画の登場人物のように、その世界に入っていきたい」という夢を実現してくれるゲームであることは間違いない。今後の情報を待ちながら、西部劇映画で世界観を予習しておこう。