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「TETRIS EFFECT」クリエイター水口哲也氏インタビュー
音とビジュアルが感情を揺さぶり“ゾーン”で突き抜けていく“体験進化型テトリス”!
2018年6月26日 12:00
6月6日、「世界 Tetrisの日(ワールド・テトリス・デイ)」で「テトリス」が誕生から34周年目を迎えたこの日、「PlayStation’s Countdown to E3 2018」新作タイトル連日発表の第1弾として登場して世界中を驚かせた「TETRIS EFFECT」。プレイステーション 4用タイトルおよびPlayStation VRにも対応して、2018年秋発売予定となっている。
制作するのは「Rez Infinite」や「ルミネス」を手がけたクリエイター水口哲也氏とその制作を担当してきたクリエイターチーム。ビジュアルと音をゲームデザインに活かし、ほかにない気持ち良さを追求し続ける水口哲也氏が、誰もが知るパズルゲーム「テトリス」を扱ってどんなゲームを作っているのか? E3から帰国したばかりのご本人にお話を伺ったので、その模様をお伝えしよう。
「テトリス」の体験を進化! ゲージを貯め、時を止めて一気に消していく“ゾーン”が気持ちいい
――本日はよろしくお願い致します。誰もが良く知る「テトリス」を使った新感覚パズルアクションということで、いろいろ興味深いのですが。水口さんが思う「TETRIS EFFECT」の特徴はどういうものになるのでしょうか?
水口氏:「ゾーン」という独自のシステムですね。普通にテトリミノ(ブロックの名称)を消していくと左下のゲージが貯まっていくんです。それがMAXになってから発動すると、時間が止まったようになるんです。
普通は「テトリス」って放っておくと勝手に下へ落ちていくじゃないですか。でもゾーン発動中は落ちてこなくなって、自分が全てをコントロールできるようになります。テトリミノをいっぱい積み上げてギリギリになってからゾーンを発動して一気に消していく……みたいなことができます。
ちなみに、ゾーン中はラインを消すと画面の下に貯まっていくようになっています。次々に下に貯まっているのを消していけるようにですね。このゾーンの瞬間はそういう風にルールも少し変えているのですが、それだけでなくエフェクトも変わるし、音も変わります。
「テトリス」での新しい気持ち良さを求めて、いろんなものを試して最終的にこのゾーンという要素に行き着きました。積み上げてゾーンで一気に消してまた積み上げて……という繰り返しが、すごく気持ちいいプレイになっています。
――「ゾーン」という名称は、プロアスリートの人が競技中に感覚が研ぎ澄まされて世界がゆっくり見えるようになる……というものをゾーンに入ると呼んだりしますが、そういったところから名付けられたのでしょうか?
水口氏:そうですね、まさにそのあたりからのものです。どんな感覚なのかは、実際にプレイしてもらうのがいいでしょうし、やってみてください。
――では早速……。(PS VRを装着してプレイ開始)。PS VRタイトルもいろいろありますが、これは解像感が高いしジャギ感もなくてグラフィックスがかなりキレイですね。
正面に「テトリス」の画面があって、そこから水のエフェクトや映像が広がって……。テトリミノを回転させるだけでも音が鳴り、エフェクトも演出されてシンクロしますね。曲のリズムに合わせてエフェクトが強くなって広がって……あ、ボーカルも入ってきた! エフェクトの粒子が泳いで……イルカだ! たくさんのイルカが泳いで自分の体を通り過ぎていくように……。気持ちいい……!
おっと、背景がガラッと変わって……アンビエントな曲がラップ調のボーカルが重なって、それにあわせてオーディエンスが手を振るような動き。あ、次は和風の傘がいくつも広がって琴の音のような効果音でアジアンですね。次は……おぉ……(ここから夢中になり過ぎて無言でプレイしてしまう)
水口氏:そろそろ「ゾーン」を発動してみてください、もうゲージが満タンになっているので(笑)。
――あっと、そういえばそうでした。ゾーン発動! あ、世界から色が薄くなってフリーズしたような、まさに“今、時を止めた”っていう画面に。ラインをどんどん消して……効果音もエフェクトもすごく派手になって気持ちいい。あぁ、ゾーンタイムが終わってしまった。8ライン消したっていう表示が出てますけど、これもっと集中してバーッと消しまくらないともったいないんですね。
おっ、次のこの曲は……テトリミノを回転すると「ハッ!」っていうボイスのサンプラー音が出るんですね。これは無駄に回して曲に合わせてリズムを刻みたくなる(ボタン連打で「ハッハッハッハッハッハッ!!」っと鳴らしまくりながらプレイ。そこからはデモプレイ終了まで夢中になり過ぎの無言プレイに)。
……あぁ、ここで1度区切りなんですね。想像以上です。素晴らしいですねこれ。
水口氏:「『テトリス』をVRでやってどうするの?」って最初は思う人もいるとは思うんですけど、実際にやってもらうとこんな感じなんです。
――タイトル発表の時も、水口さんの作品を知っている人……、特に「ルミネス」あたりで音を楽しみながらひたすらにパズルを解く気持ち良さを知っている人だと、「この『テトリス』はやばいゲームだ!しかもVRもできるんだ!」って察したと思うのですが、それを知らない人だと「『テトリス』かぁ、どうなんだろう?」となるようなところが、あったかもしれないですね。
水口氏:そうですね。「テトリス」ってすごく完成されてますし、これ以上の進化させる道は何かあるだろうかと悩むぐらいによく出来ているのですが、体験を進化させることはまだまだあるだろうなって思っていたんですよ。
ザ・テトリス・カンパニーの代表のヘンク・ブラウアー・ロジャースさんとは昔からの友人なのですが、「もしやるとしたらどんな『テトリス』が作れるか?」みたいな会話をずっとしていたんです。そこでVRも世に出てきたところで「やってみよう」となり、ライセンスしてもらったという流れになります。
――スタートしてからの期間としてはどれぐらいになるのでしょう?
水口氏:実際に作っている期間としては、「Rez infinite」が一段落してからの1年半ほどなのですが、構想はかなり長くやっていますね。
――ザ・テトリス・カンパニーのロジャースさんとの会話が、今作の構想期間の始まりと言えるということですが、それはどれぐらい前からあったのでしょう?
水口氏:15年ぐらい前からですかね。それを今回、満を持してやってみたという感じですね。
音楽とビジュアルの旅を楽しむストーリーモード、ギミック満載のエフェクトモードなど、多彩なプレイモードを開発中
水口氏:続いては、VRではなく4K解像度のディスプレイでプレイしてみてください。VRはあくまで対応であって、VRでなくてもまた別の、解像度の高い美しいビジュアルを楽しめるゲームになっていますので。
さきほどVRでプレイしてもらったのは「ストーリーモード」の1ステージなんです。なので一定数クリアで終わったのですが、ストーリーモードの各ステージは“音楽のアルバムを楽しんでもらう”みたいに流れを作っているんです。音楽とビジュアルで旅をしてもらうような、いろんな気分を楽しんでもらおうという取り組みになっています。
難易度別にビギナー、ノーマル、エキスパートとあってステージ数も異なるのですが、エキスパートだと30ステージぐらい入れてありますね。今はストーリーモードという呼び方をしているんですけど、最終的にどういう名称になるかはまだ調整中です。
――ビギナー、ノーマル、エキスパートそれぞれにツリーのようにステージを辿っていくような画面があって、ステージ数も多いですね。
水口氏:その他にも「エフェクトモード」というものがあります。いろんな気分を楽しんでもらいたいと思っていて、開発中のものですけど今だと「エフェクトモード」にインパルス、ハート、エナジーという種類があります。ちょっとこちらもプレイしてみてください。
――わかりました。インパルスは……衝動というか閃きというか、そんなイメージのエフェクトモードなんですかね。おっと、なんだか普通の「テトリス」にないブロックが出てきた!?
水口氏:これは爆発するやつですね。爆発すると周りのテトリミノも吹き飛びます。
――置いてからカウントダウン後に爆発するんですね。おっとまた変わって「NO GHOST」という表示が。あ、操作しているテトリミノが着地する地点の影が出なくなってる、そういうことですか。あ、また次の仕掛けが!
水口氏:テトリミノの形が変則的になりましたね。普通の形から1つ欠けているのが降ってきます。
――こういう、いろんな仕掛けが次々に出てくるモードなんですね。
水口氏:そうなんです。もうひとつ別のをプレイしてみてもらいましょうか。
――次はエフェクトモードの「ハート」ですね。操作音がコーラスの声で曲も壮大な感じ。ハートというのはハートフルみたいな、エモーショナルなエフェクトで楽しむっていうことなんですかね。
あ、突然の画面が「テトリス」を上から立体的に見てみたみたいな視点に!
水口氏:(笑)。これはまさに実験的に入れているものなんですけど、こういういろんな視点でもプレイできないかなって思ってるんです。
――なるほどー、今のはビックリしますね。
うわ、なにこれでっかい!!(普通のテトリミノの10倍ぐらいの数が集まった巨大なのが出現!)
水口氏:実は今のもキープできるので、出てきたらキープして余裕のあるときに置くのがいいんですよ。
――なるほど戦略的にさばくのも必要なんですね。やばい、今のでっかいので積み上がっちゃいそう!!
水口氏:すんごいがんばってリカバーしてる(笑)。あ、でも次は真っ直ぐのテトリミノだけがひたすら出てくるやつですね。
――誰もが一度は夢見るストレートオンリー!
水口氏:初めてなのに上手いですね。
――いやいや、それほどでも……え、そんなバカな!!(ここで画面の上下が反転!!)
水口氏:(笑)。
――これはやばい!
(首を大きく捻って上下反転でもなんとかプレイし続けるも、ここで積み上がって終了)
あー終わっちゃいました。いやぁこれは衝撃的です。こんなにゲーム側から挑まれる「テトリス」初めてやりました(笑)。
水口氏:これはまだ完成しているものではないんですけど、いろいろな仕掛けを入れてみているんです。これから新しい仕掛けも入れてみて、作り込んでいるところですね。
――プレイさせて頂いて、「テトリス」に没頭する楽しさをエフェクトや音が彩っていて、感覚が広がっていって。まさに水口さんの作る「テトリス」ならではという感じがしました。やはり象徴的なのは「ゾーン」ですね。
水口氏:そうですね。テトリミノがすごく速く落ちてくるのを、頭が真っ白になってロジックではなく反射でやっていくあの感覚を、もっと別な形に、誰でも楽しめるものにできないかなと思ったんです。
通常の「テトリス」をプレイする中に、「ゾーン」という一気に消す瞬間を組み合わせることでプレイに揺らぎが生まれた感じがあって、そこに音を演奏するような気持ち良さが上手くくっつけば、いつまでもプレイし続けたくなるゲームになるんじゃないかなと考えたんです。
――これはひたすらに気持ち良くて、ずっとやってしまいますね。
水口氏:僕らがいつも目指したいものが“プレイすると気持ちが良い”っていうことなんですよね。僕らにとって大事なものです。
――なるほど。ひたすらにプレイし続けられる上手な人がプレイしたときに、例えばテトリミノが最高速で落ちてくるときの挙動であったり、操作の感触であったりはいかがでしょうか?
水口氏:そのあたりはこれまで「テトリス」はいろいろなバージョンがありましたがその中でも受け入れられているものを踏襲していますね。そこは「テトリス」というゲームが完成されていて変える必要がないあたりですね。ただ、「ゾーン」であったり「エフェクトモード」みたいな新しい提案を追加しているところもあります。
上手い人でも下手な人でも「今までの『テトリス』の中でもベストだ!」って言ってもらえるように、気持ちよくて、ずっと愛されるようなものにはしたいなと思っています。
――今日はステージクリア型なストーリーモードと、ギミック満載なエフェクトモードをプレイさせて頂きましたが、エンドレスにプレイし続けるようなモードや、シンプルなモードも収録されるのでしょうか?
水口氏:ありますね。最終的な詳細は後日に発表させてもらう予定です。
――その他のプレイモードについてですが、シングルプレイに特化しているのでしょうか?
水口氏:そうですね。なるべくそこを作り込みたいと思っていて。もちろん対戦などを希望する声ももらっているのですが、今のところはそういうマルチプレイは確定していないです。
全体的に「気持ちいい」を追求したパッケージにしたいんですよね。そこで対戦で誰かをこてんぱんにしたとかされたとかは、ちょっと相性が違うのかなと思うんです。ただ、他の人との繋がりを感じるようなものをやってみたいとは考えているんですよ。
――確かに対戦よりも、協力とか一緒に遊んで体験するという方向のものがあいそうですよね。
水口氏:ですよね。僕らはちょっと違った協力とか共有っていうコンセプトのものをやってみたいと思っています。詳細はまだ伝えられないのですが。
「音楽とゲームの構造を組み合わせるともっと面白くなる」、水口哲也氏が描くプレーヤーの感情を揺さぶる「TETRIS EFFECT」
――やはりサウンド周りの気持ち良さが魅力です。「ルミネス」にも通じるような曲と音の組み合わせがありましたが、今日プレイして耳にした曲だとボーカルやコーラスのあるものが多かったのですが、収録されている楽曲は歌ありのエモーショナルなものが多めになっているのでしょうか?
水口氏:「どう感情が動くか?」というのをすごく話していて。そこを目指すときに、やっぱり歌ってすごく大切なんですよね。声色もそうですし歌詞もメロディーも、感情を揺さぶってくれるじゃないですか。それが背後でBGMのように流れているだけじゃなく、自分が操作している指先で音が出ていて、自分が紡いでいるものだとなって。その声の断片がだんだんと歌になっていって、オーケストラになっていってというような。
僕らはずっと音楽というものがすごく好きでチャレンジをしてきたんですけど、音楽というものが持っている構造と、ゲームというものが持っている構造の相性って、組み合わせるともっと面白くなるって思っているんです。
それは「タイミングに合わせてタップしてください」っていうような単純なものではなくて、「自分のスタイルでプレイしているだけで、それがミュージカルのように展開されていくよ」っていう気持ち良さを目指してます。そんなことをずっと考え続けて、もう20年ぐらいになりますね。
――これまでの作品でも常にそこは共通していますよね。今回は特に「テトリス」という題材が無機質さがあるというか、デジタルソリッドの代表みたいなデザインですが、それだけにエモーショナルなものにしたい、表情をつけたいっていう意識があったのでしょうか。
水口氏:そうですね。ここで展開されるビジュアルも音楽もそれぞれに意味があって。意味がないものは入れないんですよね。効果が入れてあること、そこに存在していることに、意義や意味があるようにしています。その連続が気持ち良さに繋がると思っていますね。余計なものは入れないんです。
――ゲームプレイとしては「テトリス」というものは変わらないですけど、ビジュアルやサウンドが変わると、違ったもののように感じられていきますよね。その効果を今日すごく感じました。
水口氏:それは僕らが聞いて1番嬉しい話ですね。みんなどこかで「『テトリス』はしょせん『テトリス』じゃん」って思っていると思うんです。でも、「まぁ、ちょっとやってみてください」ってお願いしたいです。
――これはプレイすれば1発で印象が変わりますね。
水口氏:言葉にするのは難しいですけども。
――シンプルに見えて高度な味わいですよね。「テトリス」のプレイに集中している思考に、サウンドとリズムが乗ってくる。ゲームプレイのことを考え続けながら、曲のメロディーが心地よいこと、ビジュアルエフェクトの広がりや形に何かを感じること、操作する指でリズムを刻むこと。そういう4つや5つの感覚を、絡めながら夢中で味わっていくような。他にない気持ち良さだと思います。
水口氏:ぜひ、そのあたりを伝えてもらえれば。
――それでは最後に一言頂けますでしょうか。
水口氏:4K対応していて、ビジュアルとサウンドに包まれながら没頭して「テトリス」を味わっていくというという作品になっています。ぜひ、気持ち良さを体験してみてもらいたいなと思います。また、今作もPS VRにも対応していますので。お持ちの方はVRだとまた拡張された違った体験が楽しめますので。ディスプレイでもVRでも、どちらでも楽しんでもらいたいなと思います。
――本日はありがとうございました。
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