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Jリーグがeスポーツ大会「明治安田生命 eJ.LEAGUE」開催を発表
競技タイトルは「FIFA 18」に
2018年3月9日 22:22
Jリーグは3月9日、初のeスポーツ大会開催を東京にあるJFAハウスにて発表した。
「明治安田生命 eJ.LEAGUE(以下、eJ.LEAGUE)」と名付けられたこの大会には、エレクトロニック・アーツのサッカーゲーム「EA SPORTS FIFA 18(以下、FIFA 18)」が採用され、国際サッカー連盟(FIFA)が主催する「FIFA eWorld Cup 2018」の予選を兼ねた大会となる。
「FIFA eWorld Cup 2018」の予選を兼ねる「eJ.LEAGUE」
今回の発表では、公益社団法人日本プロサッカーリーグのチェアマン、村井 満氏、Jリーグマーケティングの代表取締役社長の窪田慎二氏に加え、途中からゲストとしてプロeスポーツプレーヤーのマイキー選手が登場。この3人によって、「eJ.LEAGUE」とその背景にある「FIFA eWorld Cup 2018」、そして世界におけるeスポーツサッカーの現状などが語られた。
まずマイクを取った村井チェアマンは「eJ.LEAGUE」の開催を宣言するとともに、年齢や性別、国籍、また、身体的なハンディキャップでピッチ上でのサッカーがプレイできない人でも楽しめるeスポーツへの新たな取り組みを「チャレンジ」と表現した。
eスポーツは世界的に市場規模が急速に拡大しているだけでなく、アジア競技大会などへの正式採用の流れもある。そんな状況のなか、サッカー界ではオランダやドイツなどのプロサッカーリーグがすでにeスポーツのリーグを開催中であるほか、さらにFIFAもまた2004年から昨年まで「FIFA Interactive World Cup」としてeスポーツの大会を開催してきた。
この「FIFA Interactive World Cup」が今年度より「FIFA eWorld Cup 2018」へと大会形式が刷新されることになり、Jリーグはこれにあわせて国内における1予選として「eJ.LEAGUE」を開催する。
ドイツやオランダもeスポーツリーグを開催し、「FIFA eWorld Cup」の予選に参入
「FIFA eWorld Cup 2018」と「eJ.LEAGUE」の関係、具体的な開催内容についての説明は窪田氏が行なった。
今年から開催される「FIFA eWorld Cup」に出場するためには、昨年11月から今年の6月までに渡って行なわれる「EA SPORTS FIFA 18 Global Series」と呼ばれる予選大会のひとつに参加しなければならない。「Global Series」は4つのカテゴリから構成され、「eJ.LEAGUE」はその4つのうち「Official League Qualifying Competitions」に属する1大会にあたるのだそうだ。
「eJ.LEAGUE」で見事優勝ができれば、同じように「Global Series」を勝ち抜いた勝者全128人で争われる6月開催の「Global Series Playoffs」への出場権が獲得でき、そこでさらに優勝したプレーヤーが8月開催の「FIFA eWorld Cup 2018 Grand Final」へと進めるとのこと。
ちなみに前述のように海外のプロサッカーリーグもeスポーツのリーグを開催中で、たとえばドイツのブンデスリーガは「eブンデスリーガ」を、オランダのエールディビジは「E-DIVISIE」を開催し、「EA SPORTS FIFA Global Series」へ参入するという。
J1クラブ推薦選手として現役サッカー選手が出場する可能性も!?
さて、「eJ.LEAGUE」の具体的な内容についてだが、基本的には前述の「Global Series」のルールに則り、「EA SPORTS FIFA 18」を用いて争われる。本作には2017シーズンにおけるJ1全18クラブがクラブ名、選手名ともに実名で収録されているが、使⽤するゲームモードは「FUT フレンドリーシーズン」で、⾃分の好きな選⼿を集めて理想のチームを編成して試合に臨むことが可能だ。
また、「FIFA 18」はXbox Oneでも発売されているが、「eJ.LEAGUE」に限ってはPS4のみと対象機種を限定するとのこと。
大会はまず一般公募で選ばれたプレーヤーによりオンラインで争われる予選ラウンドが行なわれ、さらにその予選ラウンドを抜けた勝者と、J1クラブ推薦選手計15名とで戦い、そこから15名の選手を選出。この15名で決勝ラウンドを戦い、優勝者1名を決定するそうだ。
前述の様に「FIFA 18」には2017シーズンのJ1に属する全18クラブが収録されているが、J1クラブ推薦選手が15名なのは、そのうち3つのクラブがJ2へと降格してしまったため。この推薦選手の選出方法は完全にクラブに一任されているそうで、会見後半で行なわれた質疑応答で窪田氏が語ったところによると、現役Jリーグ選手であっても構わないそうだ。もっとも「eJ.LEAGUE」の決勝ラウンドが開催されるのは5月4日。窪田氏は「Jリーグの日程的に難しいだろう」との見解を述べた。
試合にはJリーグの選手だけでなく、海外選手も使用可能
前述のように使われるモードが「FUT フレンドリーシーズン」であるため、J1登録選手に限らず、メッシをはじめとする海外の選手や、さらにすでに引退してしまったレジェンド選手も含め、自分の好きな選手を集めて理想のチームを編成できるところが「eJ.LEAGUE」のポイントと言えるだろう。
また、決勝ラウンドに進出した選手は全員がJ1クラブのユニフォーム着用が義務づけられるほか、ゲーム内のチームにもプレーヤーと同じJ1クラブのユニフォーム、バッジを使用しなければならない。この規則は上位大会の「Global Series Playoffs」や「eWorld Cup」本選へと勝ち上がった際にもそのまま適用され、プレーヤーは各Jリーグクラブの代表者として戦うことになる。
こうした規則は基本的に「FIFA eWorld Cup」の規則そのままで、ユニフォームに関しては、海外の「eブンデスリーガ」などでも同様に着用されるのだそうだ。
決勝ラウンドは5月4日、日本サッカーミュージアム内に設けられた「ヴァーチャルスタジアム」にて行なわれ、一般観覧者の募集が行なわれるほか、当日はライブ配信も実施される予定があるという。
この後ゲストとしてステージに登場したのは、プロeスポーツプレーヤー、マイキー選手だ。マイキー選手は「eWorld Cup 2018」へ出場するために、先月まで1ヶ月間に渡り、アメリカで「FIFA 18」の合宿を敢行。見事「Global Series Playoffs」への出場権を獲得して日本へと戻ってきたそうだ。
実際に身体にハンデキャップを持った選手と戦ったこともあるというマイキー選手は、性別や年齢を超えて気軽に誰でも参加できることがeスポーツ最大の魅力と感じているという。そのeスポーツにおいて、アジアのトップリーグであるJリーグが「eJ.LEAGUE」を開幕することは、競技人口拡大につながり、ゆくゆくは日本人のeスポーツプレーヤーが世界一となる未来が訪れることに期待しているとのコメントを述べた。
また、この後に続いた質疑応答では、優勝賞金はJリーグから提供され、その金額については現在検討中であることや、Jリーグが「FIFA 18」以外のタイトルでeスポーツ大会を開催するかは今後検討する予定であることなどが窪田氏から語られた。
「eJ.LEAGUE」の目的は「より多くの方々にスポーツの魅力を提供すること」
今回の「eJ.LEAGUEに関しては、FIFAの「eWorld Cup」があってのものだが、今後、eスポーツの競技人口が増え、その動きが本格化するとなれば、東京ヴェルディに続き、eスポーツ選手と契約を結ぶクラブが出てくるかもしれない。
Jリーグとしても「eJ.LEAGUE」開催こそ決定したものの、未だeスポーツに関しては手探りの状態と言ってよい。いみじくも質疑応答のなかで窪田氏が言った「走りながら考える」という言葉は、まさに偽らざる本音なのだろう。
現状ではJeSUとの連携についてもまったく未定だそうだ。サッカーゲームに関してはJeSUではコナミデジタルエンタテインメントの「ウイニングイレブン 2018」を認定タイトルとしている。今後のeスポーツを巡る社会的な動向、「eJ.LEAGUE」の成否によっては、「eWorld Cup」とは別枠でJリーグが「ウイニングイレブン」シリーズでの大会を開く可能性もある。
Jリーグは1983年の開幕より一貫して「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」を理念としてきた。リリースによれば、開幕25年を迎えたJリーグがeスポーツへと進出するのは「より多くの方々にスポーツの魅力を提供していくこと」が目的だという。
日本では「スポーツ」という言葉を「運動」という意味に捉える誤解が横溢し、これがeスポーツ振興に対する否定的な声に繋がっている面が否めない。しかし、このリリースでJリーグが発する「スポーツ」という言葉は、まさに本来の語義通りの「スポーツ」、つまり「競技」としての意味で使われている点が興味深い。
個人的には「eJ.LEAGUE」が大きな話題になることで、前述の“誤解”を抱く層に対する啓蒙が進むことを期待している。