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【特別企画】最新ゲーミングヘッドセット3機種を「PUBG」で聴き比べ

半分は運ゲーの「PUBG」で“もう半分”を引き寄せる音環境の提案

3機種をまったく同一環境でテストした

 ゲームを遊ぶにあたり、「音」はプレイ体験の質を左右する重要な要素だ。特に対人モードのある対戦ゲームでは、音によって相手の位置や行動を掴むことが勝敗を分けることも多い。

 PC/Xbox One向け大規模オンラインバトルロワイヤルシューター「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下、「PUBG」)も、「音」が重要なゲームだ。広大なフィールドではいろいろなことが起きるが、多くの事象には物音が伴う。例えば、遠くでほかのプレイヤーがたてる銃声や乗り物の駆動音、近くであれば敵の足音や手榴弾の転がる音、ドアの開閉音などがそれだ。

 物音は主に敵の居場所を掴むための情報となるが、よほど近くにいない限りその聞こえ方は大変微妙であり、物陰に隠れて聞き耳をたてないと、自分の身じろぎする音や足音、環境音にかき消されてよく聞こえないし、逆に敵に物音を聞かれて、自分の位置を特定される結果を招きかねない。

【「PUBG」は音が重要になるシーンが多い】
建物を探索中、階下から足音がしたので隠れて息を潜め、敵が顔を出すのを待つ
稜線の向こうから車両の停車音と足音がするので、咄嗟に身を隠して耳をすませる

 いささか大げさに思えるかもしれないが、プレイに慣れてくると、相手の音環境がなんとなく察せる場面が多い。それはこちらが先に敵を発見して、銃撃を加えているときだ。

 「PUBG」では消音器(サプレッサー)を付けていない銃で発砲した場合、かなりはっきりと自分のいる方角が悟られてしまう。相手がまともな音環境であればすぐに撃たれた方向を察知して退避行動に移るのだが、そうでない場合は周囲をぐるぐると見回しながら右往左往することが多い。これは明らかに「聞こえていない」サインであって、敵が視覚によってこちらを発見するまでは、撃ち放題になるケースもよくある。これなどはまさに音環境がゲームプレイに致命的な影響を与えているケースで、「PUBG」をプレイする場合、音にこだわることは決して無駄な投資ではないと筆者は考えている。

 ゲーム音をしっかりと聞くには、一般的にスピーカーよりもヘッドフォンを使った方が聞き取りやすいと言われている。筆者もそう思う。こと「PUBG」の場合は、ソロだけでなく2人組の「デュオ」や4人チームで戦う「スクアッド」でボイスチャットしながらプレイすることも考慮すると、マイクも備えたヘッドセットを使うのが無難だろう。

 今回は数あるゲーミングヘッドセットの中から、比較的買い求めやすいミドルレンジクラス、1万~1万5,000円前後の価格帯に属するゲーミングヘッドセット3機種(Kingston「HyperX Cloud Alpha」、Logicool「G433」、MSI「Immerse GH70」)を各メーカーよりお借りして、「PUBG」で使い比べてみた。いずれもゲーミンググレードのヘッドセットとして売られているものだが、当然ながらメーカーやモデルによって装着感や聞こえ方は異なる。今回の試用では、「PUBG」をデュオモードでプレイし、ゲーム内サウンドや「PUBG」内蔵ボイスチャットを試用した際の聞こえ方の違いをそれぞれレポートする。

屋外にスモークグレネードを投げて視界を遮ったところ。建物内は射線が限定的なので、自分は静止し、周囲の音に耳をすませて、足音から敵の居場所を探る
敵と相対しているところ。敵は奥の積み上がった干し草の脇にバギーを停めて遮蔽を取っている。こうなるとあとはほとんどエイム勝負だが、干し草から手前の牧草ロールまで距離を詰めてくる場合は足音がする。また、まれに第三者が狙撃などの形で横から介入してくることもあるので、撃ってきた方向を瞬時に察知する意味でも音環境は重要だ

音の聞き分けに重点を置いたKingston「HyperX Cloud Alpha」

Kingston「HyperX Cloud Alpha」

 メモリメーカーとしても有名なKingstonが擁するゲーミングブランド「HyperX」シリーズの最新ヘッドセット。ヘッドフォン部分はほぼ密閉型の金属外装で、マイクは着脱式。3.5mmの4極端子を採用しており、アナログ接続のみ対応する。発売時期は2017年9月21日、実勢価格は税込1万4,000円前後。

 最大の特徴は低音用と中高音用のデュアルチャンバーを採用した内部構造で、音の特徴を際立たせる方向性の音作りがなされている。主な機能はノイズキャンセリングやインラインボリュームコントロール/マイクミュートとシンプルにまとめられている。

 音の聞こえ方は、一言でいえば「効果音や声の聞き分け」がしやすい調整になっている。特に銃声や足音などのゲーム内の効果音とボイスチャットの声がはっきりと分かれて聞こえ、例えば探索中に敵の足音が聞こえた場合には、音がした方向を掴んだ上で、場所の共有や対処の方針を話し合うことができた。音がした方向のわかりやすさはほかの2機種よりも明らかに優れている点で、こうした特性は「PUBG」ときわめて相性が良いと感じた。

 イヤーパッドはレザー製で肌触りもよく、長時間の使用時でも快適な装着感だった。やや側圧が強めだが、その分ずれにくく、軽く頭を振ってもほとんどずれない。重量は336gとやや重めだが、装着感が良いせいかそれほど気にはならない。筆者個人としては、今回試用した中では総合的に本機種の使い心地が最も良いと感じた。

高級感のある金属製ハウジング
ケーブルとマイクは着脱式
イヤーパッドはレザー製で肌触りが良い

装着感抜群の軽量サラウンドモデル ロジクール「G433」

ロジクール「G433」

 G433は、イヤーカップ部(エンクロージャー部)に繊維素材を採用。マイクは着脱式で、全体のカラーは一色で統一されている。カラー展開は黒、赤、青の3色。ゲーミンググレードらしいゴツめのシルエットにLEDが光るハイエンドモデル「G933」/「G633」と比較すると、非常にカジュアルな外装で、いかにもなゲーミングデバイス感は皆無だ。発売時期は2017年7月30日、実勢価格は税込1万1,000円前後。

 本機では、3.5mmの4極ピンジャックによるアナログ接続と、付属のアダプタによるUSB接続の両方が利用できる。USB接続では、無料ソフト「Logicool Gaming Software」を使うことで、7.1chのサラウンドモードと通常のオーディオモードが切り替えられる。サラウンドモードと通常モードではゲーム音の聞こえ方が大きく異なり、「PUBG」での傾向としては、サラウンドモードでは音の方向が掴みやすく、通常モードではひとつひとつの音が強調されて聞こえるような感覚だ。

 例えば乗り物がすぐそばを通過するシーンでは、サラウンドモードの方が移動する音源の推移がより滑らかに感じられる。通常モードの場合は、近くに敵がいる際の足音がよりクッキリと聞き取りやすく、距離感が掴みやすい。

 音の聞き分けという面ではHyperX Cloud Alphaに一歩譲る印象があるが、ソフトウェアによる細かな音量調整が可能で、かつ好みに応じてサラウンドと通常の2モードを使い分けられるのもメリットだ。さらに今回試した中では唯一アナログとデジタルの両方の接続に対応しており、ひとつ持っておけば様々なシーンで活用できる汎用性の高さは見逃せないポイントといえる。

 なお、2つのモードは音の聞こえ方が大きく変わるため、プレイ中の状況に応じて使い分けるような使い方はおすすめしない。音の方向を掴むという意味ではどちらのモードも問題なく使えるので好みの部分が大きいので、気に入った方を使えばいいと思う。ちなみにボイスチャットに関しては、通常モードの方がクリアに聞こえる。

 装着感は今回試用した中では最も快適。イヤーパッドに用いられた繊維素材は重さを感じさせず、肌触りも良い。重量も259gと最軽量で、がっつり長時間の使用に最も適しているのが本機だろう。

G433もマイクは着脱式
軽量な繊維素材とプラスチックの本体で、一般的なゲーミングデバイスとは一線を画す外観となっている。ただし、アーム内部にはスチールが使われており十分な強度を持つ
USBアダプタを装着することで、ソフトウェアと連携する
設定用ソフト「Logitech Gaming Software」

マイク内蔵式のサラウンド搭載USBゲーミングヘッドセット MSI「Immerse GH70」

MSI「Immerse GH70」

 Immerse GH70は、USB接続のみに対応した密閉型のゲーミングヘッドセット。G433とは対極的に、重厚な外観に内蔵LEDが光る、ある意味で最も“ゲーミングデバイスらしさ”のある製品だ。マイクは内蔵式で、必要なときに引き出して使えるようになっている。こちらの製品のみ未発売で、発売時期は2018年1月、価格は12,000円前後を予定。

 この種のゲーミングヘッドセットには珍しく、大型のインラインコントローラを備えており、ダイヤルによる音量調整や、単体ボタンによる7.1chサラウンドモードへの切り替え、マイクのミュート/アンミュートなどが行なえる。コントローラの重量もそこそこあり、滑り止めもついているので、操作デバイスの脇に置いて、とっさに音量調整やマイクミュートができる使い方が便利だ。

 連携するソフトウェアとしては、MSIの各種ゲーミングデバイスの設定を集約的に行なえる「Gaming Center」を用意しており、Immerse GH70の場合は、7.1chサラウンドモードと通常モードの切り替えやソフトウェア上での音量調整などが行なえる。

 「PUBG」における音の出方としては、重低音が強めに出ていた。車両の走行音など低音の強い効果音はかなり遠くからでも聞き取れる一方、人の足音などはほかの2機種と比べるとやや苦手な印象を受けた。

 そして「PUBG」で最も重要となる音の方向については、特にほかの2機種と大差はなく、ハッキリ感じ取ることができた。7.1chサラウンドに関しては、デフォルトでは声の聞こえ方が少し遠い感じで、特にHyperX Cloud Alphaと比べると、薄布を一枚隔てたくらいの差がある。ボイスチャットをする際にはあらかじめ設定を調整する一手間がかかるが、それさえ行なえば、後は快適なデュオプレイが楽しめる。

 イヤーパッドは繊維素材とレザー素材が一組ずつ付属しており、好みに合わせて交換できる。見た目にはかなり厚みがあるが、装着してみるとそれほど側圧は強くなく、思いの外快適だ。ただ重さはやや気になるところで、ケーブルを含まない本体重量も実測値で412gと3機種の中ではダントツで重い。重いだけあって首を振るなどラフなプレイでも大きくズレることはあまりないが、疲れやすいので長時間使用する際には留意する必要があるだろう。

マイクは必要なときにイヤーカップから引き出す形式
大型のインラインコントローラを装備
ゲーミングデバイスらしく、ハウジングがLEDできらびやかに光る

運ゲーの「PUBG」、“ドン勝”するためには音環境の強化も視野に入れたい

 自分でプレイするだけでなく、大会の試合や配信動画などを長いこと見て感じるのは、「『PUBG』は半分くらい運ゲーである」ということだ。

 「運」の部分は、ランダムに決まる(少なくともランダムのように見える)パルス範囲が自分の今いる位置を安全地帯に含むかどうかである。安全地帯の面積が徐々に狭まる中で移動することは、それ自体が敵に発見されるリスクそのものなので、動かずに敵を待ち構えることができる、ある意味で「パルス範囲に愛されるかどうか」も勝ち残りの難易度を大きく変動させる要因だ。

 だがもう半分は実力勝負である。ここでいう実力とは、プレイヤー本人のエイム力や、攻める、あるいは引くタイミングを見極める判断力、長いプレイ経験から敵の心理を読む勘などからなる総合的な立ち回りのこと。この中には音を聞いて敵の動きを察知し、どう行動するかを判断する力も含む。

 先述の通り、音がまともに聞こえていないと敵に遅れを取ることになるので、音環境を整える一環としてヘッドセットにこだわることは、十分意味のあることだ。

 ハードウェアの常だが、音周りの製品は、音質やマイク品質、耐久性といった面で価格によるクオリティの差が出やすいので、筆者としては今回紹介したような、実売価格が1万円を超えるクラスの製品を推したい。多くのゲーマーは「PUBG」専用にヘッドセットを買うわけではないだろうから、このクラスからなら普通にヘッドフォンとして使っても概ね問題ないレベルの品質だということもある。

 ヘッドセットは日常的に、長く付き合うことになるデバイスだ。最近では量販店の売り場などで装着感を試せるようになっているような展示もよく見かけるので、是非積極的に試してみて、自分に合うデバイスを見つけてほしい。

12月21日に、砂漠を舞台とした新マップが実装された。マップローテーションは従来の「島」と混在する
広大な砂漠に多くの建物が点在する
従来のバージョンにない新装備も追加されている
「乗り越え」アクションが追加されたことで、従来よりもはるかに多彩な場所へ行けるようになった
少しの運と立ち回りで、たった2キルで「ドン勝」を取れた一例