2017年9月21日 14:30
FPSやTPS、特に対戦ゲームでしばしば重要になる要素のひとつに、「音」がある。
例えば隠れたところから足音を聞いて敵の位置を探ったり、敵が出す武器の発射音や叫び声から敵の種類や武器を推測したりなど、ゲームを有利に進めるための情報を集める中で、音が果たす役割は大きい。
特にほかのプレーヤーとチームを組んで対戦したり、一緒にミッションをクリアしていくようなタイトルでは、ボイスチャットを使ってゲームの状況を逐次報告しながら次の行動を判断することも多い。ゲーム内音声+ボイスチャットという組み合わせで遊ぶ環境は、マルチプレイでゲームを有利に進めるためにはもはや必須といえるだろう。
では、ボイスチャットの環境はどのように構築すればいいのか。一般的に、PC環境であればサウンドカードやオンボードの端子にヘッドフォンとマイク、あるいはヘッドセットを接続すればいいし、USBタイプを選ぶ手もある。据え置き機ではヘッドセットを使うのが一般的だ。
なにしろ音周りのデバイスは種類が豊富なので、自分のゲーム環境や予算に合わせたものを選びやすいが、その分、品質もまちまちだ。お気に入りのヘッドフォンとスタンドマイクというオーソドックスな組み合わせも捨てがたいが、ことゲーム用途に絞るならば、1つですべて整うヘッドセットがおすすめだ。
ヘッドセットの特徴は、ヘッドフォンとマイクがセットなので着脱や取り回しがしやすいところと、最近の環境ならPC/コンソール問わず使える利便性の高さだ。ヘッドフォンやマイクの品質は、ある程度価格でダイレクトに違いが出てしまうので、長く使うことを考えるなら、ミドルレンジ以上の製品を選びたいところ。今回はKingstonが9月21日に発売を予定しているミドルレンジのヘッドセット「HyperX Cloud Alpha」を紹介したい。
Kingstonが手がけるゲーミングヘッドセット「HyperX Cloud Alpha」
「HyperX」は、メモリモジュールメーカーのKingstonが展開しているゲーミングデバイスのブランドで、ヘッドセット「Cloud」シリーズの現行機種は本機を含めて4シリーズ。今回紹介する「Cloud Alpha」の特徴は、このクラスのゲーミングヘッドセットには珍しい金属外装と、複数のチャンバーを備えた内部構造だ。ゲーミングヘッドセットらしく、機能面ではマイクのノイズキャンセリングやインラインボリュームコントロール、マイクミュート切り替えなど、一通りの機能を備えている。市場想定価格は12,981円(税込)。
ヘッドフォン部分はいわゆる密閉型で、ドライバーにはネオジム磁石を採用。周波数特性は13~27,000Hz、インピーダンスは65Ω、音圧レベル(感度)は98dBSPL/mW (1kHz時)。
特徴のひとつである内部構造としては、ハウジング内部のチャンバー(空気室)を低音用と中高音用の2つに分けており、公称のスペック表においてもTHD(全高調波歪み率)が現行4シリーズの中で唯一1%未満に抑えられている。
マイクは着脱式で、ヘッドセットとして使わない場合は、普通にヘッドフォンとしても使用できる。プラグの形状は3.5mmの4極端子を採用しており、ヘッドフォン出力とマイク入力をひとつの端子で担う。付属ケーブルの長さは1.3m。同梱のPC用延長ケーブルを使うと2mまで延長可能で、延長ケーブルを使った場合はそれぞれ3極のヘッドフォンプラグとマイクプラグに分岐する。使用時の重量は約336g。
ヘッドセットを評価するポイントは人それぞれだが、本記事では普通のヘッドフォンと比べたときの「聞こえ方の違い」と「装着感」に注目して使い勝手をお伝えしたい。
聞こえ方は「聞き分け重視」
ヘッドセットといっても、基本的な構造は普通のヘッドフォンとそう変わらない。先述の通り3.5mmオーディオミニプラグによるアナログ接続なので音量調整もしやすく、PCに接続した際には「TeamSpeak 3」や「Discord」といった現在主流のボイスチャットソフトで何ら問題なく扱える。マイクの音声についても、内蔵のノイズキャンセリング機能のおかげで余計な音を拾うこともなく、問題なく使えている。
本機がいわゆる「ゲーミングヘッドセット」として優れている点は、人の声や足音、射撃音、爆発音など同時に鳴っている音声が、きちんとそれぞれの輪郭を持って、聞き分けられるようにチューニングされていることだ。
実は筆者は普段、PC用タイトルのマルチプレイを遊ぶときは、オーディオ用のヘッドフォンと単体のマイクを使っているのだが、Cloud Alphaを試用して最も違いを感じたのがこの点で、オーディオ用ヘッドフォンを使っている時よりも明らかにゲーム中の音の聞き分けがしやすかった。
Cloud Alphaを試用するにあたっては、大規模対戦TPS/FPSタイトル「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下、「PUBG」)をプレイして聴き比べを行なったのだが、このタイトルでは「音」の聞き分けが非常に重要な要素となっている。
具体的には、地形や壁越しに聞こえる敵の足音や銃声、ドアを開ける音、窓を割る音と、それらの方向を把握する必要がある。プレーヤーキャラは撃ち合いで撃たれると比較的すぐに倒されてしまうことから、先に敵を発見した方が圧倒的に有利になる関係で、時には静止して自分が出す物音を消し、周囲に耳を澄ませる場面も多い。このとき、敵が出す物音と環境音を間違いなく聞き分け、正確な位置を把握することが、「ドン勝」への第一歩というわけだ。
なお、「PUBG」について詳しくは下記の記事が詳しく紹介しているので、併せてご一読いただければ幸いだ。
100人バトロワで“ドン勝”だ! 話題の「PUBG」徹底解説
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」サバイバルガイド~基礎編~
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1064013.html
100人バトロワを最後まで生き延びろ! “ドン勝”を目指すサバイバーへ贈る
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」サバイバルガイド~攻略編~
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1064233.html
「聞き分けやすさ重視」の調整は、ボイスチャット使用時にも効力を発揮している。Cloud Alphaと普通のヘッドフォンを大体同じ音量になるように調整して比べてみると、Cloud Alphaの場合は人の声がよりはっきりと、聞き取りやすく感じられる。しかし、聞こえ方は人それぞれ感じ方が違うし、環境も異なるので、ここでは絶対的な違いとして断言はできない。ただ、音作りの傾向として、より聞き取りやすいように調整されているという点は確かだ。
PUBGではほかのプレーヤーとチームを組んで生き残りを目指す「スクワッド」(最大4人)と「デュオ」(2人)のモードが用意されており、ゲーム内VCやボイスチャットソフトなどでお互いに周囲の状況を報告し、連携を取ることができるので、本機のこうした特徴もプラスに働くだろう。
ヘッドセット本体はアルミ製。装着感は良好
Cloud Alphaではアルミニウム製のハウジング(内側部分。外側は樹脂製とみられる)とフレームを採用しており、HyperXシリーズに属する現行ヘッドセットの中でも軽い部類に入る。実際に装着してみても、特に重量感を感じないし、ちょうどいいバランスで使える。側圧はやや強めに感じたが、柔らかいレザー製のイヤーパッドを採用していることもあって、長時間装着していても疲れにくくなっている。
ハウジング付近の赤いフレームはゆったりと大きめで、着脱の際に両手で掴みやすい形状。ヒンジ部分もバンドの調節幅は10段階で、余裕のあるサイズ調整が可能だ。密閉型ということで遮音性もそれなりにある。試用時はCloud Alphaを装着したまま4時間ほどぶっ続けで「PUBG」をプレイしたが、特に不快感や疲れを感じることもなかった。環境により夏場は多少蒸れそうだが、それはほかのヘッドフォンやヘッドセットにも言えることなので本機特有の問題ではない。ちなみに、布製のイヤーパッドを採用している製品のように、汗でじっとりと湿って、一度外した後に乾くまで再度着けたくなくなる感じはないので、その点はレザー製イヤーパッドの恩恵といえるかもしれない。
Cloud Alphaの特徴は、なんといってもゲーミング用途にふさわしい「本気」感のある音作りだろう。Cloudシリーズの中でもCloud Alphaだけが持つデュアルチャンバー構造は、オフィシャルWebサイトの製品紹介によれば「サウンドの特徴を際立たせながら歪みを最小限に抑え」るために採用されたとのことで、まさに今回の試用で感じた特徴と一致する。
店頭価格は13,000円となる予定で、有線のアナログ接続ゲーミングヘッドセットとしては高価な部類に入るが、使ってみて目指す方向性がはっきりと分かる形で製品化されている点は大変好感が持てる。見て、触れた感じの質感も悪くないし、価格相応の出来という印象だ。
さらに余談であるが、HyperX Cloud Alphaは、8月にドイツで開催されたゲーム展示会「Gamescom 2017」に合わせて催された「PUBG」初の招待制世界大会「PUBG Invitational」(賞金総額35万ドル)においても出場選手に支給され、日本を含む世界各国のプロゲーマーやストリーマーが、4日間にわたる個人戦およびチーム戦を戦っている。
HyperXは本大会のスポンサーとしても参加しており、Cloud Alphaの特徴を考えれば、「PUBG」との相性は良く、この機会にアピールしておきたいと考えたのもうなずける。それはさておき、本機の聞き分け性能は情報収集に間違いなく役立つが、結局のところそれを活かせるかどうかは自分の腕次第。Cloud Alphaの発売はまだ少し先だが、試用する機会があれば、是非試してみてほしい。