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【年末特別企画】ゲームショップ&軍事博物館レポート2016年総集編

ボツネタや秘蔵ネタも織り交ぜながら、今年の街歩きをディレクターズカットで振り返る

2016年取材

 2016年も残すところあとわずかとなった。今年も海外取材にかこつけては訪れた街をぶらつき、各地のゲームマーケットの事情をレポートしたり、こっそり軍事博物館に足を運び、GAME Watchと全然関係のないレポートを書いてきたりした。

 メインの取材を終えた翌日、ウキウキ気分で別の取材に行こうとしているところを、メーカー担当者に見られ、かつ上司にバラされるという、プロらしからぬ失態を演じてしまったり、海賊版ショップを海賊版を撮っているのがバレて、スタッフに追いかけられ、人混みでごった返す夕暮れ時の街で「007」ばりの逃走劇を繰り広げたりなど、すべてが順風満帆というわけではなかったが、おおむね安全に、おおむね良好な形でゲームファンの皆さんにレポートをお届けできたのではないかと思う。

 今年お届けしたレポートは下記8本だが、実際は数倍の場所を訪れている。形にできなかった理由は、メインの取材が忙しすぎて、執筆する時間が確保できなかったり、歩いた街がゲームショップレポート的にそこまでおもしろくなかったり、軍事博物館では、ネタが小粒過ぎたりお目当ての戦車などがレストアや移管といった理由により置いてなかったりしたためだ。

 本稿では今年の総集編として、掲載したレポートに盛り込めなかったネタをご紹介しつつ、どさくさに紛れて没になったネタもできるだけサルベージしていきたい。年末年始の読み物としてご活用いただければ幸いだ。

ゲームショップレポート

2016年5月2日
【特別企画】ローザンヌゲームショップレポート
中世の雰囲気を残した“オリンピックシティ”にゲーム文化は根付いていたのか?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/754911.html

2016年5月19日
【特別企画】弾ける笑顔と生活感溢れるマニラゲームショップ特大レポート
大型モールからスラムまで、あらゆる所にゲームがあるカオスゲームマーケット
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/757770.html

2016年5月20日
【特別企画】フィリピン独自のインターネットサービス「PISONET」って何だ?
1ペソから利用できる“魔法のコンソール”。家庭からスラムまであらゆるところに浸透
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/757782.html

2016年5月28日
【特別企画】昔も今もPCゲームが大好き! ポーランドゲームショップレポート
「劇場版は神作品」という謎のポーランド人にお国のゲーム事情を聞いた
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/759558.html

2016年11月26日
【特別企画】“ゲーム”と“ギーク”の素晴らしき融合!
ニューヨークのホビーショップ「ThinkGeek / GameStop」に行ってきた
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1031841.html

軍事博物館レポート

2016年4月12日
【特別企画】「ガルパンはいいぞ」という謎のポーランド人とポーランド軍事技術博物館に行って戦車に乗ってきた
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/752684.html

2016年6月6日
【特別企画】「ガルパン劇場版」のラスボス「センチュリオンMk.I」に会いに世界最大の戦車博物館に行ってきた
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1003435.html

2016年11月19日
Wargaming.net、空母イントレピッドにてファンミーティングを開催
「WoWS」界伝説のアイドル ダーシャ・ペローヴァさんがゲストとして登場!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/interview/1030930.html

ゲームショップレポート編。1番おもしろかったのはマニラ。上海やラスベガスにもちょいネタあり

2016年のベスト1位はマニラでした
これがPISONET。屋外にあり、1ペソを入れて遊ぶ
日本のリースアップ品はマニラに
ニューヨークで巡り会ったゲーム&ホビーショップ「ThinkGeek / GameStop」

 さて、ゲームショップを求めて歩いた街は、上記のローザンヌ(スイス)、マニラ(フィリピン)、ワルシャワ(ポーランド)、ニューヨーク(米国)以外にも、ジュネーヴ(スイス)、台北(台湾)、サンフランシスコ(米国)、ロンドン(英国)、ロサンゼルス(米国)、上海(中国)、バンコク(タイ)、ラスベガス(米国)、シドニー(オーストラリア)あたり。

 この中でもっとも印象に残っていておもしろかったのは、マニラだ。2015年に取材したジャカルタ(参考記事に勝るとも劣らないぐらいカオスなゲームマーケットが躍動しており、罪の意識のない若者達が屈託のない笑顔で海賊版を売りまくっていた。

 また、現地に入ってからPISONETという屋外型のインターネット端末の事を知り、調べていくうちに極めて興味深く、スラムの奥深くまで浸透している人びとの生活に欠かせないインフラということがわかり、フィリピンゲームメーカー取材ツアーのつもりが、いつのまにかPISONET取材ツアーになっていた。

 とりわけ個人的に印象深かったのは、日本でリース切れで廃棄されたPCが大量にマニラに入っており、PISONETの中に組み込まれて余生を送っていることだ。PCに人格はないとはいえ、官公庁でバリバリに働いたPCたちが、明かりすら十分に届かないスラムの片隅で一生を終えるというのは、何とも言えない切ない気持ちになった。

 逆に基本的につまらないのは欧米だ。その理由については昨年掲載したポートランドゲームショップレポートでも触れたとおりだが、これらの地域でゲームを購入しようと思ったら各地の家電量販店(米国ならBestBuy、Target等、ヨーロッパならInterdiscount、COOP、SATURN等)か、ゲームショップ(米国ならGameStop、英国ならGAME等)しか選択肢がなく、個性がまったくないからだ。

 ニューヨークのゲーム&ホビーショップ「ThinkGeek / GameStop」のように、ギークという共通点でゲームとホビーをくっつける小規模トイザらス的な展開もあったり、ときおりおもしろいショップを見つけることもあるが、全体的には面白みに欠けることが多い。

今年は豫園の南側を攻めてみた。ここは小南門駅から出てすぐの小石橋街
上海は大通りから1本入ると一気に庶民の街になる。これは量り売りの紹興酒屋。値段の安さに衝撃を受ける

 今年の没ネタとしては上海がある。上海と言えば、台北と並んでゲームショップ巡りの面白さに気づかせてくれた街で言わばゲームショップレポートの原点とも言える街だが、2012年のレポートでも触れたように、今は物理店舗は置かず、オンラインに溶けて消えてなくなっている。

 上海中心部にわずかに点在する配送センターも廃業していたり、上海を代表する大型ITモールである「百脳匯(Buynow)」と「太平洋数碼(Pacific Digital Mall)」も相次いで廃業するなど、ゲームを含めたIT全般の物理店舗ショップそのものがビジネスにならなくなってきている。

 しかし不思議に思っていたのは、10年ほど前まで上海であれほど隆盛を誇った電脳城において、ゲームとセットで人気だったオタクショップはどこに行ったのかということだ。今年の上海街歩きはそこら辺をとっかかりに練り歩いてみたが、半日の街歩きで文廟(ウェンミャオ)が唯一のヒットだった。

 その中心地に古い仏教寺院 上海文廟があり、その周囲には参拝客に向けた大小のショップが軒を連ねているのだが、すべて廃業しており、その跡地にオタクショップが入居し、無限増殖しているというユニークなオタク街。ターゲットはもちろん参拝客ではなく、文廟の向かいにある中学校の生徒達。我々オッサンが子供の頃、何故か学校通路に駄菓子屋の類いがひしめいていた記憶があるが、同じような形で学校帰りの学生たちを相手に商売を行なっている。ゲームにまったく関係ないのでボツとなったが、時間があれば覗いてみてはいかがだろうか。

【上海文廟】
上海市の文化史蹟に登録されている上海文廟

【文廟路】
かつて動漫城(参考記事)にあったオタクショップは文廟へ。「お前らここに居たのか」という感じである

 もうひとつおもしろかったのはラスベガス。一発ネタ過ぎてこれもボツになったが、ラスベガスのダウンタウンにあるゲームセンターFREMONT ARCADEには「World's Largest Pac-Man」がある。読んで字の如く、世界でもっとも大きい「パックマン」だ。同名のタイトルがブラウザゲームにもあるが、それとはまったく別物で、大きいのはステージではなく筐体で、ゲーム自体は初代「パックマン」だ。

 その存在は知っていたが目の当たりにしたのは初めてで、高さ250センチ、横幅170センチほどの巨大なモニター全面に「パックマン」が映し出されており、驚きと笑いが同時に押し寄せてくる。玄人がひとりで根詰めて遊ぶゲームというよりは、その筐体のドデカさからカップルやファミリーでワイワイ遊ぶ感じのゲームで、ポートランドにある伝説のゲームセンター「GROUND KONTROL」(関連記事)にあった4人用「パックマン」「Pac-Man Battle Royale」と同じ香りがする。それにしてもアメリカ人は「パックマン」が大好きだ。

 来年も機会を見つけてはゲームショップを求めて街歩きを敢行しようと思うので、あまり期待せずにレポートをお待ち頂きたい。

【ラスベガス ダウンタウン】
ラスベガスというと「オーシャンズ11」で舞台になったベラッジオなどメガホテルがひしめくストリップという印象が強いが、おもしろいのは圧倒的にダウンタウン。リニューアルし尽くされて「Fallout: NewVegas」的な風景はほとんど姿を消したが、馬鹿げたアトラクションや催しが満載だ

【FREMONT ARCADE】
そんなダウンタウンにあるゲームセンターFREMONT ARCADEには「World's Largest Pac-Man」がある。もちろんオフィシャルプロダクトで、2人同時プレイも可能

軍事博物館編。ゲームとあまり関係ないけど大人気企画です

ポーランドでお世話になったオペちゃん。この後、ポーランド軍事技術博物館ツアーも組まれ、オペちゃんのアテンドで好評を博したそうだ
ボービントン戦車博物館に現存するセンチュリオンMk.I

 2015年、Wargaming.netの誘いでポーランド軍事博物館を訪れる機会があったため、それをレポートしたらウケた(関連記事ので「皆さん好きなんだな」ということで、今年から少しずつ意識し始めた企画。

 今年4月に取材したポーランド軍事技術博物館では、ポーランドを代表する「ガルパン」おじさんことオペちゃんに出会い、それが縁でセンチュリオン Mk.Iに会いにボービントン戦車博物館までいって記事にしたらこれが大いに受けたため、3匹目のドジョウがないかあちこち歩き回ってみたものの、読者の皆さんに興味関心を持って読んで貰えるネタはなかなかなく、11月に訪れたイントレピッドがやっとだった。

 取材がもっとも大変だったのはボービントン戦車博物館で、ロンドンから往復するだけで6時間掛かり、複数の館内には合計で300台を超える戦車がひしめいている。ボランティアの解説や、英文の解説を読んでいる暇も無く、写真を押さえるだけで閉館時間を迎えてしまう感じで、最低でも1泊2日は欲しいところ。またいつか訪れたい博物館である。

 ボービントンでひとつやり残したこととしては、第一次世界大戦エリアを紹介しなかったこと。第一次世界大戦までの戦車と、それ以降の戦車は戦場での役割も形もまったく異なり、一緒に紹介してしまうと異物感がもの凄いことになってしまうため、別の機会に紹介しようと意図的に除外していたのだが、結局1度も使う機会がなかった。罪滅ぼしにここに掲載しておくので、お楽しみ頂きたい。

【ボービントン戦車博物館蔵出しショット 屋外にも戦車が一杯】
記事では紹介しきれなかったが、実は屋外にも無造作に戦車が置かれていて、汚れやサビが圧倒的なリアリティを生んでいる。戦闘車両に乗れる屋外アクティビティなどもあり、ぜひ再度訪れたい博物館だ

【ボービントン戦車博物館蔵出しショットその2 第一次世界大戦エリア】
ボービントンには、Mark Iから最終型のMark IXまで10輌以上のMark戦車が展示されている。デザイン面ではまさに英国面の象徴といってもいいものであり、当初の予定では戦車100周年、「バトルフィールド1」向けに1つ1つMark戦車を解説する、ボービントン戦車博物館レポートパート2を企画していたが、「そもそも誰がそんな記事を読みたいのか」疑惑が持ち上がり、ボツとなった

 ちなみに、記事にした場所以外で訪れた軍事博物館は、ロンドンのImperial War Museum、コブレンツのコブレンツ国防技術博物館、シドニーのオーストラリア国立海洋博物館など。

 ロンドンのImperial War Museumは、入り口にある15ポンド主砲をはじめ、展示の仕方に一工夫あるミュージアムで、戦車100周年を記念してMark Iが塹壕風の岩場から乗り上げる感じで展示されていた。ロンドン中心部にあるため、帰国日にふらりと立ち寄れる博物館だ。

 常設展示の戦車はT-34とM4シャーマンのみに変わっていて、過去に撮った写真と見比べてみると別のT-34に置き換わっている。ツインメリットコーティングがお気に入りだったヤークトパンターはどこかに移管されており、戦車ファン的には物足りない感じになっていたのが残念だった。

【Imperial War Museum】
展示の仕方に英国らしいセンスが光るImperial War Museum。ここにあるMark戦車は量産型のMark V。戦車はM4シャーマンとT34とこちらも量産型。日本人的にぜひ見て貰いたいのは、マーシャル諸島のタロア島から運んだというゼロ戦

 コブレンツは、稼働状態の暗視装置付きのパンターG型があると聞きつけ、Gamescomの開催地ケルンから遠路はるばる向かったが、とっくに移管済みで、めぼしい第二次世界大戦戦車は、ティーガーのエンジンのみという惨憺たる有様で、あえなくボツとなった。

【コブレンツに行こうと思い立った動画】
本文にも書いたとおり、コブレンツにはこの夜戦仕様のパンターはない

 ただ、戦後型の戦闘車両には見るべきものが多く、実験車両の宝箱のような博物館だった。一例を挙げるとカットモデル化されたレオパルト1、戦後型の偵察車両Spahpanzer ICのプロトタイプ、戦後のベストセラー戦車レオパルト2のプロトタイプ、主砲が2門あるガンタンクのような世にも珍しい双砲戦車V 1-2などなど、技術実験・展示が多いのが特徴。ちなみにレオパルト1については、その素敵性能の高さに衝撃を受け、「World of Tanks」でTier Xのレオパルト1を開発しようと画策しているが、未だ到達できず。Tier 8のSpahpanzer Ru 251までは来たので、2017年春頃には到達できる予定。

【素敵性能が高すぎるレオパルト1】
ドイツの戦車は戦中戦後を問わずカッコイイ。戦後の代表格がこのレオパルト1だろう。カットモデル化されたことで装甲厚も確認できるのだが、その薄さには驚きである

【君はどこまでわかるか!? ドイツ連邦軍の実験車両たち】
Spahpanzer IC
レオパルト2(プロトタイプ)
Radpanzer 90
VTS-1
VT 1-2
Kampfpanzer 70(プロトタイプ)
T-72 M(教習機)
T-55AM2B(教習機)
ティーガーIのエンジン
T-34/85のエンジン

 実はこのコブレンツでもっとも優れたコレクションは野砲だ。ティーガーIにも転用された傑作高射砲8.8 cm FlaKをはじめ、バルバロッサでも活躍した24cmカノン砲、そしてその両脇には、“パリ砲”として知られる第一次世界大戦でドイツがパリ砲撃に使用した列車砲カイザーヴィルヘルム砲と、ナチスドイツの最終兵器80cm列車砲グスタフ(2両目がドーラ)の精巧な模型が飾られている。さらに「ガルパン劇場版」でもお馴染みのカール自走臼砲の600mm砲弾が写真と共に展示されている。砲弾は寝かせるように置かれ、「ガルパン劇場版」のアンチョビの見せ場「こっち見てるぞおおおおおおお」も再現できる(!?)など、「ガルパン」ファンには巡礼地のひとつとしていい施設だと思う。

【野砲コレクション(ごく一部)】
8.8 cm FlaK 37
24cmカノン砲と80cm列車砲グスタフ
80cm列車砲グスタフ
カイザーヴィルヘルム砲
カール自走臼砲の写真と、600mm砲弾
「こっち見てるぞおおおおおおお」

 シドニーのオーストラリア国立海洋博物館は、実際に使われていた帆船や潜水艦、駆逐艦に乗船して、元軍人のボランディアから説明を受けることができるほか、本館ではオーストラリア海軍の歴史を学ぶことができる。

 知る人ぞ知るオーストラリア海軍唯一の空母シドニー(英マジェスティック級2番艦)の写真や模型、それから日本でもお馴染みのマッカーサー元帥のオーストラリアでの活動写真など、レア度の高い展示物が特徴となっている。ゲームにどこにも繋がらなかったため、こちらもボツとなってしまったが、船好きには良い施設だと思う。

 こうして振り返ってみると、記事にしておけば良かったなとか、こっちから攻めれば良かったなとか、色々後悔の念に駆られてしまうが、来年も機会があれば引き続き軍事博物館レポートをお届けしようと考えているので、皆様のご支援をよろしくお願いしたい。

【オーストラリア国立海洋博物館】
館内の様子
マッカーサー元帥への忠誠を促すポスター
空母シドニー
James Craig
HMS Endeavor
HMAS Vampire
HMAS Onslow