【特別企画】

発売2週間で休止「CONCORD」。“ゲーム体験“は果たして悪かったのか実際にプレイして確かめてみた

【CONCORD】

9月6日(北米時間) サービス停止

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントが8月24日にリリースした
プレイステーション 5/PC用ヒーローシューター「CONCORD」が、北米時間の9月6日にサービス休止となる。配信から僅か2週間足らずでの休止には驚きだ。

 本作に関して、開発元であるFirewalk Studiosのディレクター、Ryan Ellis氏は「PlayStation.Blog」にて、「皆さんに受け入れられた側面がある一方で、ゲームのローンチや一部の要素が私たちの意図したようにいかなかったことも認識しています」「プレイヤーの皆さんにより良いものをお届けできるよう、さまざまな選択肢を模索することにしました」と述べている。尚、本作の販売は停止され、全ての購入者に対して返金対応が実施される。

 実際、本作はリリース前から後述する理由で懐疑的な意見も多かった作品ではあった。リリース後も、Steamにおける最大同時接続数は697人しかおらず、オンラインゲームとして適切なマッチングが機能する数字ではなかったことも事実だ。何故、本作がここまでの苦境に追いやられてしまったのだろうか。その理由を考察する。

【『CONCORD』 ゲームプレイ紹介映像】

尖った性能のキャラクターが魅力のバトル

 まずは本作を簡単に紹介しよう。「CONCORD」は個性的なキャラクターを操作して戦う5vs5のPvPシューターで、キャラクターがそれぞれ保有する固有の武器やスキルを活かしながら勝利を目指す。というヒーローシューターとしてはお馴染みの内容となっている。また、宇宙を舞台にしたSFの世界観もかなり作りこまれており、ゲーム内で様々な設定を読むことができるのも特徴のひとつだ。

個性的なキャラクターと宇宙を舞台にした世界観が特徴の作品だ

 本作の休止が発表されてからの僅かな時間ではあるが、筆者は本作をプレイしてみた。なお本作は、敵をキルすることでポイントを稼ぐ「プロール」と、ゾーンを奪取し合う「オーバーラン」、リスポーンがない「ライバル」の3つのモードが実装されているが、今回はさくっと遊べる「プロール」を数回プレイした。プレイ時は同時接続数が30数人しかいなかったが、ランク戦が存在しないこともあってか思ったよりはやくマッチングできた。

 実際にプレイしてみると、本作は中々面白い。操作はシンプルで、この手のゲームをプレイしたことがある人ならば直ぐに動かすことができるだろう。アクションもスライディングやダッシュといった基本的なものが揃っており、回避も存在する。また、キャラクターによってはジャンプ長押しで空を飛べたり、回避をするとステルスになったりといった固有のムーブも用意されている。

 キャラクターの使用する固有武器やスキルも個性的で、ロケットランチャーで戦い、スキルで空中から奇襲をしかけられる「ロカ」や、ダッシュでステルスになれる「キプス」、火の魔法を使う「ヘイマー」など、シューターアクションの常識からはみ出た尖った性能をしたものも多い。そのため、使用するキャラクターの固有アクションや武器、スキル全てを活用しながら、そのキャラに合った立ち回りを考えながら戦う必要があり、キャラを変える度に新鮮な気持ちで戦場に足を運ぶことができた。

ロケットランチャーで戦うロカ
ステルスによる奇襲が得意なキプス
特徴的なスキルを用いた戦闘は新鮮だった

 また、本作の特徴として、チーム構成においては個々の役割の概念が薄いという点が挙げられる。要するにキャラクターの個性が強いため、性能面の強みと弱みがはっきりとしている。瞬間火力に特化したキャラは体力の多いキャラを倒し辛いといったような、自キャラと相手キャラの間での対戦相性はあるものの、味方のキャラクターとのシナジーはそこまで存在しないのだ。これにより、「誰かがタンクをやらなければいけない」、「誰かがヒーラーをやらなければいけない」といった状況がほとんどなく(それでも味方にタンクやヒーラーがほしいと思う場面はある)、比較的自由にキャラクターを選ぶことができるのは嬉しいポイントだった。

 キャラ選択に関しては、キルされた後はキャラクターを変更して戦場に戻ることができるので、敵味方の使用するキャラクターに対応しながら戦闘を進めることが重要だと感じた。また、リスポーンする度に、前に選んだキャラクターによって異なるバフを得られる「クルーボーナス」でキャラクターを強化するシステムも、デッキ構築のようにキャラをピックしていくことができる面白いアイデアだと感じた(「クルーボーナス」に関しては、もう少しプレイして有効な戦術を発見したかった)。

 実際の戦場ではマップは高低差が激しい場所こそあるものの、意図的に狭く設計されているようで、撃ち合いが発生しやすくなっており、常にどこかで戦闘が起きている印象だった。また、設置物を置くスキルが多く、置かれたスキルはゲーム中残り続けるので撃ち合いが発生するたびに戦場の状況が変わるのも程よいアクセントになっていると感じた。

 試合の多くが味方との強固な連携やチーム構成で勝つというよりも、個々が敵味方の状況を見て独自に判断し、裏取りやスキルによる奇襲・正面突破を狙っていくなどチームの連携よりも個の技量で勝敗が決する展開が多かった。

 総じて、尖ったキャラクターをどう動かすかを考えながらプレイするのが面白い、チームより個のスキルを重視したライトなヒーローシューターといった手触りだった。

 その一方で、尖ったキャラクターを操作する楽しさ以上の面白さ味わえるかというと疑問が残る。キャラクターは個性的ではあるものの、戦闘の流れやシステム面では多くの類似ゲームに比べて特筆すべき点を感じない。また、本作にはランクマッチのようなシステムが存在しないため、競技的な面白さを味わうことも難しい。

 人口の少なさから、ランクマッチが実装されていても上手く機能しなかったことは間違いないが、もし競技として盛り上がっていれば個人の立ち回りだけでなく、薄めに感じたチームでの連携や、構成といった点でも発展があったのではないだろうか。

飽和したジャンルで有料での競争は厳しい

 では、そんな本作はなぜ販売休止となったのだろうか? 理由はいくつかあるが、まず挙げられるのはライバルの多さと、4,480円(39.99ドル)という強気な値段設定だ。

 確かに、本作はゲームとしては普通に面白い作品ではある。しかし、FPSというジャンルは既に「Apex Legends」「VALORANT」「オーバーウォッチ 2」「Counter-Strike 2」等の人気タイトルが無料で遊ぶことができる、新規参入するには非常に厳しいレッドオーシャンだ。

 そんな同ジャンルで、本作は4,480円という価格に見合った体験を提供できていたかといえば疑問が残る。確かに、本作は購入時点でかなりの数のキャラクターやマップが解放されており、グラフィック面も悪くない。しかし、肝心のゲームプレイとしては手堅く纏まっており、尖ったキャラクターなどの個性はあるものの、先に挙げた無料ゲームに比べて突出した点があるとは言えないレベルに収まっている。こうした市場の状況が、本作を手に取るユーザーが少なかった原因の1つであることは想像に難くないだろう。

キャラクターデザインの魅力に疑問符

 また、キャラクターはゲームプレイ時の性能だけではなく、そのデザインも個性的ではあるものの、それがユーザーにとって魅力的に映っていたかは疑問が残る。本作は発表時点から動画のコメント欄やSNS上でキャラクターへのネガティブな意見が目立っていた。ネガティブな意見の中には「ポリコレに配慮しすぎだ」という声もあり、これに関してはどこまで意図して開発していたか不明だが、昨今はゲームと多様性への配慮のバランスが度々話題になっているだけに、本作の個性的なキャラクターデザインは悪い意味で話題になってしまったことは否めないだろう。

キャラクターデザインには否定的な意見も少なくなかった

 本作が「過剰な配慮」のゲームかどうかは置いておくにしても、プレーヤーの分身となるキャラクターが魅力的かどうかは、ゲームをプレイする切っ掛けとして重要だ。それだけに、本作のキャラクターデザインがネガティブに捉えられてしまったことも、本作にとっては大きな打撃となったのではないだろうか。

スタート時点ユーザー数が少なかったのは致命的だった

 最後に、上述した理由から、リリース開始時時点でユーザー数が少なかったのは致命的だった。本作のようなオンラインゲームでは、ユーザー数の多さが適切なマッチングや、攻略情報の共有などに繋がり、またSNSでの感想の投稿のような「口コミ」的な広がりを呼ぶ源泉となる。人数はゲームの盛り上がりとイコールであり、ゲームの盛り上がりはマーケットでの成功には欠かせない。そう考えると、本作はリリース前にゲーマーが抱いてしまったネガティブな印象を払拭するようなマーケティングを行なうなど、何らかの施策をとる必要があったのではないだろうか。

 本作はあくまでも「サービス休止」であり、今後なんらかの形で再開する可能性もなくはない。「尖ったキャラ性能で戦うヒーローシューター」「宇宙を舞台にしたSFの世界観」といった要素は魅力的なので、今後の展開次第では逆転復活を果たすこともできるかもしれない。因みに、個人的には、作りこまれた世界観を活かしたソロプレイモードが欲しいと思っている。いずれにしろ、同ジャンルとしては歴史的な「爆死」をした本作の今後には注目したい。