【特別企画】

アーケードゲーム「出世大相撲」が40周年。突き押し、投げ、張り手も自由自在。懐かしの相撲ゲームを振り返るでゴンス!

【出世大相撲】

1984年6月 稼働開始

 テクノスジャパンが1984年6月に発売したアーケードゲーム「出世大相撲」が、2024年6月で稼働40周年を迎えた。

 本作はその名のとおり、主人公の力士を8方向レバーとハッキョイ(攻撃)、気合の2ボタンで操作して、CPUの力士と戦う相撲ゲーム。一場所につき3番ずつ対戦し、勝ち越せば昇進して次の場所へと進み、負け越した時点でゲームオーバーとなる(※横綱昇進後は1敗で即ゲームオーバー)。

 家庭用への移植がなかなか実現しなかったこともあり、本作は同じ時期に出たほかのアーケードゲームに比べると、知名度はさほど高くないかもしれない。だが、なかなかどうしてコレが実に面白いのだ。

 以下、正直かなり記憶が薄れているが、最初に遊んだ当時を思い出しつつ、本作ならでの楽しさを振り返ってみた。

※写真はNintendo Switch版「アーケードアーカイブス 出世大相撲」で撮影(以下同)

全身汗だく必至! ボタンを連打しまくるアツい取組が楽しめる

 筆者の本作の第一印象は、生まれて初めて相撲ゲームに出会った新鮮さとともに「人間(力士)がデカイ!」であった。

 丸々とした、いかにも力士らしい体の大きなキャラクターが動かせる迫力に加え、技が決まったときには相手を豪快に投げ飛たり倒したりできるのが快感で、1、2度遊んだだけですぐに気に入ってしまった。

行事の軍配が返ってから攻撃ボタンを押すと取り組み開始。カウントダウンする数字が「0」になったタイミングで立つと、相手を大きく吹っ飛ばすことができる
これだけ大きなサイズの力士が動くのは、当時としてはかなり迫力があった

 最初の対戦相手、幕下の「よわの里」こそ、攻撃ボタンを適当に連打して突っ張るだけでも勝てるが、以降に登場するCPUたちはそうはいかない。そこで必要となるのが相手のまわしを取り、四つ相撲に持ち込んだうえでの攻撃だ。

 CPUのまわしを取ると「根性メーター」が表示される。本メーターが表示中に攻撃ボタンを連打し続けるとゲージたまり、一定時間内に満タンにすると、レバーの入力方向に応じて「寄り切り」、「浴びせ倒し」、「つり出し」、「上手投げ」など、さまざまな技が決まって勝利することができる。逆に、CPUにまわしを取られた場合は「辛抱メーター」が表示され、一定時間内に満タンにすれば振りほどけるが、満タンにできなかった場合は技を掛けられて負けとなる。

 よって本作は、いかに連射スピードを高めるかが要求される、「ハイパーオリンピック」のようなスポーツゲームと相通じる面白さがあったように思われる。なお余談になるが、筆者の田舎にあった駄菓子屋では、ガチャガチャコーナーに捨ててあった空カプセルを持ち出し、ボタンをこするプレーヤーが続出した(※良い子の皆さんは、けっしてマネをしないように!)。

 ただし「肩透かし」や「はたき込み」など、引き技系の得意技を持つCPUの場合は、まわしを取りに行った際にいなされて、体勢を立て直す前に技を食ってしまうこともある。突き押しか、それとも四つに組むのか、CPUのタイプごとに攻略パターンを考えながら遊べるのも、本作ならではの面白いところだ。

まわしを取って「根性メーター」が表示されたらボタンを連打しまくり……、
ゲージを満タンにできれば、技が決まって勝負あり!
「辛抱メーター」が表示中に、ゲージを満タンにできなければ負けとなる。写真はCPUの「つり出し」が決まったところ

 CPUが強くなるほど「根性」、「辛抱」の両メーターを満タンにするのがとても難しくなる。そこで重宝するのが「気合い」だ。

 「気合い」を使用すると、ほんの一瞬だけブーストが掛かり、ボタンをゆっくり連打するだけでゲージを大きく増やすることができる。「気合い」は突っ張り合いのときにも有効で、横綱・大関クラスでも大きく突き飛ばしたり、張り手を食らわせた勢いで「突き落とし」や「突き倒し」を決めたりすることも可能だ。

 「気合い」の使用回数には制限があるが、同じ相手に繰り返しダメージを与えたり、いなしたりするとストックが増えるので、単に勝つだけでなく、いかに「気合い」を増やせるパターンを考えながらプレイすることで、本作はさらに楽しくなる。

 CPUに張り手を数発食らわせる、または長時間粘っているとCPUの肌の色が変わって怒り出し、急に強くなるのも本作の面白いところ。怒ったCPUは張り手を連発するので、まわしを取るべく突っ込むとあっという間に「突き倒し」を食ってしまう。怒った後のCPUは、例えばレバーを上下いずれかに入力して体を開いていなし、背中を突いて「送り出し」や「はたき込み」、あるいはまわしを狙うなど、同じ相手でも新たな攻略パターンの構築が必要となる。

チャンス、またはピンチになったら「気合い」を発動! 土俵際で「辛抱」を満タンにすれば「うっちゃり」での大逆転も狙える
「気合」を使って突っ張れば最強の敵、横綱をも大きく吹っ飛ばせる
張り手を数発食らわせると、CPUが怒りモードに変身!
サッと体を開いて相手いなしたら……、
すかさず背中を突き、「送り出し」などの技を掛けて勝つことも可能だ

思わず笑ってしまう演出も満載

 本作をさらに面白くしているのが、数々のユニークな演出だ。

 まず挙げられるのが、ゲーム開始時に「しこ名」を自分で決められるアイデア。ひらがなのほかに「山」、「川」、「里」、「海」、「谷」の漢字も用意され、力士らしい名前が付けられるので実に気が利いている。

漢字を交えた日本語で、自由にしこ名を決めらるのが嬉しい
ゲームオーバー後は、ハイスコアの代わりに番付でランキングを表示するのも素晴らしいアイデア

 キャラクターのボイス自体がまだ珍しかった時代にあって、そのバリエーションが豊富に用意されている点でも本作は特筆に値する。クレジット(お金)を入れると、いかにも年配の男性のしわがれた声で「ごっつぁんです!」とボイスが流れ、「気合い」を発動したときは「ハッキョイ」、CPUにまわしを取られると「のこった」、つり出しが決まったときには「よいしょ!」などのボイスを聞くことができる。中でも筆者の一番のお気に入りは、CPUに張り手を浴びせて怒らせたときに叫ぶ「痛いでゴンス!」で、何度聞いても笑ってしまう。

 横綱に昇進すると、場所が始まるごとに土俵入りのパフォーマンスを見ることができる。さらに優勝すると、相撲協会の理事長と思われる人物から表彰状が授与され、2万点のボーナス得点が加算される。冒頭にも書いたように、横綱昇進後は1敗した時点で即ゲームオーバー、つまり毎場所全勝がノルマとなり、急激に難度が上がるシステムも今振り返ると実に面白いアイデアだ。

 とりわけ傑作なのが、関脇のときに千秋楽で対戦する横綱に勝つと、画面内に座布団などの物が飛び交い、頭にターバンを巻いて上半身が裸の、当時の某人気プロレスラーに似た男が土俵の脇を走り抜ける演出だ。おそらく、横綱が金星を献上すると座布団がしばしば投げ込まれる光景(?)をヒントに作られた演出だと思われるが、今見ても本当におかしい。

横綱に昇進後すると見られる土俵入り。四股を踏んだ反動で、行事と従えた力士が飛び上がる演出も楽しい
横綱昇進後に全勝すると優勝となり、ボーナス得点が加算される
関脇のときに横綱を倒すと座布団などが飛び交い、画面手前にインドの猛虎(?)と思しき男が乱入する演出も必見

 本作は、1994年に電波新聞社から発売されたX68000版(※「エキサイティングアワー」とのカップリングで発売)以降、長らく移植されていなかった。だが、現在ではハムスターがアーケードアーカイブス版がプレイステーション 4/Nintendo Switch向けに配信されており、気軽に遊べるので実に喜ばしい。

 昨今は、相撲ゲームの新作リリースの報をほとんど耳にしない感があり、今となっては相撲ゲームを遊んだ経験を持つ人は非常に少ないと思われる。よって本作を遊べば、きっと新鮮な体験が得られることだろう。

・PS4版「アーケードアーカイブス 出世大相撲」のストアページ
・Switch版「アーケードアーカイブス 出世大相撲」のストアページ